2019年3月20日 (水)

「第六百六十六話」

「それで?話ってのは?」
「実は・・・。」
「うん。」
「実は・・・。」
「うん。」
「やっぱ何でもない!」
「はあ!?何でもないって、大事な話があるからって喫茶店に呼び出したんだろ?」
「そうなんだけどさ。」
「だったら話してみろよ。」
「実は・・・。」
「うん。」
「実は・・・。」
「うん。」
「やっぱ何でもない!」
「無限か!無限に続けるつもりか!これを!だったら帰るぞ?」
「いや!話す!話すよ!」
「頼むぞ。」
「実はな。」
「うん。」
「失恋したんだよ。」
「え?」
「やっぱ何でもない!今の聞かなかった事にしてくれ!してない!失恋なんかしてない!」
「いやそれは無理だろ!がっつり聞いちゃったから!失恋?失恋って言ったよな!」
「そんなに傷をえぐるように何度も言うなよ!精神的におかしくさせたいのかよ!」
「させたくねぇよ!でも言うよ!言うだろ!言っちゃうだろ!だって失恋って事はだぞ!それ以前に恋愛があったって事になるだろ!熱愛があったって事になるだろ!」
「そうだよ。それがなくて急に失恋なんて言ってたら、俺は精神的におかしくなる前から狂人だよ。」
「いやいやいや、だから、そこだよ!」
「狂人!?」
「違うよ!そもそも俺は、お前に彼女がいたなんて知らなかったぞ!」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「言ってねぇよ!お前、彼女いたのかよ!」
「うん。いた。」
「彼女いたのかよ!」
「いたよ。だから、それはもう過去の話だからえぐらないでくれよ。」
「いやいやいや、えぐるつもりはないけど、ちょっとショックだわ。彼女いたの知らなかったのショックだわ。」
「言ってなかったのは悪かったよ。でも今は、そこじゃなくて、慰めて欲しいんだよ。ハッピーな気分にさせて欲しいんだよ。」
「じゃあ、サーカスでも見に行けばいいだろ!」
「いやまあ、丁度運良く来てるけど!」
「来てんの!?」
「そう言うんじゃなくてさ!髭の団長にじゃなくて、俺は親友にハッピーな気分にさせてもらいたいの!」
「その親友に彼女がいた事を隠してたくせに?失恋したらハッピーな気分にさせて欲しい?ちょっとお前、それはあまりにも都合が良い話ってもんじゃないか?」
「次からは彼女が出来たらいの一番に報告するよ!」
「今回その報告しなかったくせに?次からは報告する?そんなの信じられるかよ!」
「それはもう信じてもらうしかない!頼む!本当に次からはちゃんと報告するから!な?だから今は失恋してズタズタに傷付いた俺の心を癒やしてくれ!」
「マジで次報告しなかったら、絶交だからな!」
「分かった!約束する!だから早く失恋で傷付いた俺の心を癒やしてくれ!」
「で、どんな彼女だったんだ?その別れた彼女ってのはさ。」
「そこを聞くか!今一番思い出したくない過去をえぐるか!」
「いやだって、俺にしてみたら興味があるのはそこからじゃん!どうやって出会って、どうやって別れたんだよ。」
「丸ごとえぐる!?情緒不安定な思い出を!?」
「いやだから、こうなるぜ!って話だよ。彼女出来た事を親友に言わなかったら、こんな風になっちゃうぜ!」
「図書館で出会って、図書館で別れたんだよ。」
「それ彼女か?向かいの席に座った女性を疑似彼女にしてただけじゃないのか?」
「何だ!疑似彼女って!その間には三年って月日があるんだよ!」
「三年!?お前ちょっと待て!三年もの間!俺に彼女がいた事を隠してたのか!」
「隠してた訳じゃなくて、言うタイミングがなかったんだよ。」
「あるだろ!三年ぶりって訳じゃないんだぞ!って、お前は図書館で何してたんだよ!そんなタイプじゃないだろ!」
「いやそこは、どうでもいいだろ。そもそも図書館にはよく行くよ。」
「よく!?初めて知ったよ!?」
「ちょっと星座について調べようと思ってさ。」
「星座!?お前、星座とかに興味あんの!?初めて知ったよ!?」
「いやまあ、星座と言うか宇宙に興味があるんだよ。じゃなきゃロケット作らないだろ?」
「ロケット作ってんの!?そんな仕事してたの!?」
「まあ、作ってるって言ってもまだ仕事し始めて日も浅いけどな。言ってなかったっけ?」
「言ってねぇよ!お前、さっきっから初耳のオンパレードだな!俺は、果たして本当にお前の親友なのかその自信が揺らいでるぞ!」
「親友だからって俺の事を何でもかんでも知ってなきゃいけないって話でもないだろ?」
「何でもかんでも知ってなきゃって言うか!何もかも知らない気がして来てもはや怖いぞ!」
「でな。別れ話を出会った図書館で切り出された訳だよ。」
「うん。」
「その理由が最悪中の最悪なんだよ。」
「うん。」
「四つ子の一番下の弟が好きになっちゃったんだと!もう最悪中の最悪だろ!」
「最悪中の最悪だよ!」
「そうだろ!」
「お前、四つ子だったのかよ!?」
「言ってなかったっけ?」
「言ってねぇよ中の言ってねぇよ!だよ!」
「とにかくそう言う訳で、ハッピーな気分にさせて欲しいんだよ。」
「いやもうこんな大パニックの最中そんなの無理だろ!」
「マジで?」
「マジだ!」
「どうにかこうにかでも?」
「にっちもさっちもだ!」
「本当に無理か?」
「本当に無理だ!」
「そうか。親友の力でどうにかこの難局を乗り越えられると思ったんだけどな。」
「いやもう、親友なのか?俺達?」
「激痛が伴うから使いたくなかったんだけど仕方ない。彼女と出会う前に戻るか。」
「戻る?」
「じゃあ!また三年ぐらい前で会おう!」
「はあ?」
「あ!その時はなるべくちゃんと説明するから!」
「ええーっ!?消えた!?どうなってんだ?って、えっ!?てか、全体的に消え始めてないか?どうなっ」

第六百六十六話
「親友はタイムトラベラー」

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