2024年5月15日 (水)

「第九百三十五話」

「どうされました?」
「先生、何か寒いんです。」
「なるほど、風邪ですかね?熱はありますか?」
「ありません。ただただ何か寒いんです。」
「喉は痛みますか?」
「喉、ですか?」
「はい。痛みますか?」
「痛みません。」
「頭は?」
「頭?」
「ええ、頭は痛みますか?」
「痛みません。」
「咳は出ますか?」
「咳?」
「出ますか?」
「出ません。」
「鼻は詰まりますか?」
「鼻?」
「申し訳ないが、そのさっきから聞き返すのやめてもらえませんか?」
「いやだって、先生がまるで風邪の症状を疑う感じで来るから、一体全体これは何なんだろうって思って。」
「鼻は詰まってないんですね?」
「詰まってないです。」
「体が怠い感じはありますか?」
「体が怠い?」
「だから、聞き返すのやめて下さいよ。」
「なら、風邪の症状を疑う感じやめて下さい。僕は、健康ですよ。ほら、ピンピンしてるでしょ。」
「診察室で飛び跳ねないで下さい。」
「すいません。」
「座って下さい。」
「すいません。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「え?じゃあ、何で病院来たの?」
「だから、何度も言ってるじゃないですか?寒いんです。何か寒いんですよ。」
「飛び跳ねてたじゃないですか。」
「飛び跳ねられるぐらい元気なんですけど、寒いから病院に来たんですよ。だってそうでしょ?飛び跳ねられるぐらい元気なのに、寒かったら、先生だってきっと病院行くでしょ?異常事態ですもん。」
「すいません、そのさっきっから、寒い寒いって、何が寒いんですか?」
「屁です。屁がです。」
「え?」
「屁をした後、お尻が寒いんです。これって、屁が寒いって事ですよね?」
「何それ!?」
「ほら!お医者さんも驚いた!やっぱり病気的なヤツなんだ!」
「いや、いやいやいや、屁は寒くないでしょ。」
「屁は、寒くないですよ。熱っ!みたいのは、たまにありますけど、寒くないですよ。だから、来たんじゃないですか。」
「なら、肛門科に行った方がいいんじゃないですか?なぜ内科に?」
「何で?」
「何で?だって、屁が寒いんだから、肛門が異常なんだって思うでしょ。」
「屁が寒いんだったら、肛門科じゃないでしょ。屁が寒いんだから。」
「いやもうちょっと、この空間が異次元過ぎて何がなんだかですよ。」
「屁を寒くするウイルスって可能性が大じゃないですか!」
「それで何がどうなるんですか?」
「どう言う事ですか?」
「屁が寒かったからって、何がどうなるんですか?だって現にキミは健康そのものじゃないか。」
「今は健康体かもしれないけど、屁が寒いのが原因で風邪引くかもしれないじゃないですか!」
「はあ。」
「先生!何ですか今の生返事!それが目の前で風邪を引きそうな人間を前にした医者のとる態度ですか!」
「してみて下さい。」
「はい?」
「屁ですよ。屁。」
「何でそんな事しなきゃならないんですか!」
「本当にキミの屁が寒いかどうか確認する為ですよ。」
「疑ってるんですか!」
「疑うと言うか、医者は数値を元に診断するもんなんでね。熱があると言っても実際に計ってみたら平熱だったとかね。」
「僕は、いい大人ですよ!そんな子供が今日、学校に行きたくないから吐く嘘みたいのと一緒にしないで下さい!」
「同じですよ。」
「同じ?」
「平熱のその先には、熱があると言う原因がある。その原因を突き詰めて解決すれば、本人は熱を感じなくなる。」
「いや、それは精神的なヤツでしょ!僕の屁は本当に寒いんですよ!」
「だったら、してみて下さい。」
「はあ!?」
「ちょっと立って。」
「いや、無理ですよ。」
「立ちなさい!」
「!?」
「はい、後ろを向いて?」
「先生?」
「はい、出して。」
「何でお尻に顔面押し付けてんだ!」
「こうしなきゃ感じられないでしょ。屁の寒さが。はい、出して!」
「そんな、いきなり出ませんよ。」
「待ちます。」
「待ちますって!」
「いいから、キミは黙って屁に集中しなさい。」
「何してんだよ診察室で。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・やっぱ出ませんって。」
「喋らない!集中!」
「逆にこんなの緊張して出ないですって!」
「いいから!黙って」
「ブゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
「あ、すいません!」
「寒っ!!」
「ほら!やっぱり寒いでしょ!」
「甘っ!!」
「甘い!?」

第九百三十五話
「でも、臭っ!!」

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