2020年7月 1日 (水)

「第七百三十三話」

 なにやら雰囲気のある建物の雰囲気のある一室で雰囲気のあるボスとその手下が、マル秘訓練をしていた。
「銃を捨てろ!」
「はい!」
「だから。」
「はい?」
「捨てるなって言ってるだろ!」
「でもボス?銃を捨てないとボスが殺されちゃうんですよ?」
「だから、何度も言ってるだろ?これは、敵の罠だ!俺を人質にして、手下に銃を捨てさせて、その場から逃げようとしてんだ!分かったか?」
「分かりました。」
「じゃあ、最初からやるぞ?」
「お願いします。」
「敵が俺を盾にしながら建物から出て来ました。で、そこにお前が銃を構えてます。」
「はい。」
「それを見た敵が言います。銃を捨てろ!」
「はい!」
「捨てんなって!」
「でもボス!」
「でもボスじゃねぇよ!素直に、はいじゃねぇんだよ!」
「でもボス!!」
「何だよ!」
「敵は銃をボスに突き付けてるんですよ?」
「そりゃあ、突き付けてるよ!敵も必死だからな!」
「だったら絶対に従っちゃいますよ!」
「だったら絶対に従っちゃいますよじゃねぇよ!従うな!いいか?敵は必死だけど絶対に俺を撃ったりしない!」
「何でですか!?」
「敵の目的は、あくまでその場から逃げる事だからだ!だから、絶対にお前は銃を捨てろと言われて銃を捨てたらダメなんだ!俺はな?こう言う時にそうやってまんまと敵に逃げられる場面を何度も映画やドラマで観てるんだ!ここで敵に逃げられるから、後でとんでもないしっぺ返しを食らうんだ!いいか?ここで、銃で撃たれたボス観た事ないんだから銃を捨てるな!」
「なるほど!さすがボス!」
「じゃあ、もう一度だ!」
「はい!」
「銃を捨てろ!」
「捨てるか!」
「ボスを殺すぞ!」
「分かった!」
「分かるな!」
「だってボス!」
「だってボスじゃねぇよ!」
「だってボス!!」
「何だよ!」
「ボスを殺すぞって言われたら捨てちゃいますって!それ言われたらダメですって!」
「敵はそんな事を言ってくる!そんな事をほのめかしてくる!でも忘れるな?絶対に殺さない!」
「本当ですか?」
「本当だ!何たって敵の目的はその場から逃げる事だからだ!よーく頭に叩き込め!敵は絶対に俺を殺さない!敵の目的はその場から逃げる事!」
「敵は絶対にボスを殺さない!敵の目的はその場から逃げる事!」
「もう一回!」
「敵は絶対にボスを殺さない!敵の目的はその場から逃げる事!」
「よーし!じゃあ、やるぞ!」
「お願いします!」
「銃を捨てろ!」
「その手に乗るか!」
「ボスを殺すぞ!」
「その手に乗るか!」
「いいんだな?本当に殺すぞ!」
「その手に乗るか!」
「いい!いいじゃん!」
「ありがとうございます!」
「そうだよ!銃を捨てちゃダメなんだよ!今までのお前だったら今ので絶対に銃を捨ててたよ!やっと分かってきたじゃないか!」
「ボスのお蔭です!」
「止めて悪かったな。続けて行くぞ!」
「お願いします!」
「銃を捨てろ!」
「その手に乗るか!」
「いいんだな?ボスを撃ち殺すぞ?俺の目的はこの場から逃げる事じゃないんだぞ!」
「分かった。」
「分かるな!」
「いやでもボス!」
「いやでもボスじゃねぇよ!」
「いやでもボス!!」
「何だよ!」
「逃げるのが目的じゃない的な事を言われたら!逃げるのが目的じゃない的な事をほのめかされたら捨てちゃいますよ!」
「あのな?言う!敵は言うよ!逃げるのが目的じゃない的な事を!でも、逃げるのが目的なんだよ!」
「逃げるのが目的じゃない的な事を言ってるのにですか!?」
「逃げるのが目的なが故の逃げるのが目的じゃない的な事だ!」
「難しいですね。」
「いや、難しくないんだよ。お前は、何があっても銃を捨てなきゃいいだけの話なんだよ。」
「ボス、俺にはそれが難しいんですよ。どんな難問よりも難しいんですよ。」
「分かった。じゃあ、俺がお手本を見せる。」
「本当ですか!?それは有難い!お願いします。」
「じゃあ、お前が敵な。」
「分かりました!」
「いいか?俺はお前がどんな脅しを言って来ても銃を捨てないから、よく見とけよ!」
「分かりました!」
「始め!」
「銃を捨てろ!」
「ボスを解放しろ!」
「銃を捨てないとボスを撃ち殺すぞ!」
「脅しても無駄だ!」
「いいのか?本当にボスを撃ち殺すぞ!」
「お前こそ銃を捨てろ!」
「バン!」
「バンじゃない!バンじゃねぇよ!それをしないで話を進めて行こうぜって約束だろ?」
「すいません!ボスがあまりにも抵抗するもんで、ついついボスを撃ち殺しちゃいました。」
「ややこしい言い方すんな!」
「いやでもボスの迫真の演技でやり方が分かりました!」
「そうか!よし!じゃあ、改めて最初からやるぞ!」
「はい!でもボス?」
「何だよ!」
「こう言う事ってあるんですか?」
「念には念をだ!」

第七百三十三話
「ボスは心配性」

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