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2006年8月 2日 (水)

「第七話」

 ここに、二人の男がいる。会話は、朝からなされている。晴天の中。
「ハンバーグ。」
「ハンバーグ?グ、グ、グ、グラタン!あっ!」
「おいおい。」
「強いなぁ。」
「俺が強いんじゃなくて、お前が弱いんだよ。今日まで俺に一度として勝ってないだろ。・・・・・・・・・あれ?だいぶ爪伸びてるなぁ。」
「えっ?」
「ほら。」
「本当だ。切れば?」
「そん時が来たら、そうするよ。」
「そうだなぁ。俺も髪の毛切りに行きたいしなぁ。あっ!そう言えば、花屋のさっちゃん。来月、結婚だってな。」
「ああ、知ってるよ。」
「お前、確かずっと好きだったよな。」
「・・・・・・・・・むかしな。」
「むかし?嘘つけ!今だって好きなくせに。」
「うっせぇ!」
「告白したのか?」
「・・・・・・・・・してない。」
「なーんだよ。してないのかよぉ。待ってたんじゃないの?さっちゃん。」
「まさか!?で、でたらめな事言うなよ。」
「でたらめ?でたらめじゃないよ。俺からしてみれば、何でお前とさっちゃんが結婚しないんだろうなぁ?って感じだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「奪っちゃう?」
「奪う?」
「式当日にさぁ、花嫁を奪うんだよ。今まさに!二人が誓いのキッスをする瞬間!お前がドアを勢いよく開けて、花嫁に駆け寄る!そして、腕を掴みドアの方へと走り出す!なんか古い映画のワンシーンみたいだけど、ロマンチックじゃない?で、二人が教会の外に出ると、車が用意されてんのよ。もちろん!運転手は、俺ね。」
「何でお前いんの?」
「いいじゃんいいじゃん。お前の人生のビッグイベントに参加したいじゃない。俺はねぇ、世界中の人々がお前ら二人の結婚を認めなくても、お前とさっちゃんの結婚を認める!神様が反対しても俺が賛成する!」
「たまに羨ましくなるよ。お前のその性格。」
「あはは。なっ!いいアイディアだろ?絶対上手くいくって!」
「式に間に合えばな。」
「そっかぁ・・・・・・・・・まっ!だけどあれだ。女は、星の数ほどいるって言うだろ?男ならあんまりくよくよするなよ。」
「してないっての!お前が頭の中で勝手にさせてるだけだろ!」
「あはは。わりぃわりぃ。しかし良かったなぁ。」
「何が?」
「えっ?ほら、晴れて良かったなぁって事。」
「ああ、天気な。」
「そうそう。だって雨とか風とか嫌じゃん。」
「まあな。」
「お天道様が拝める日が一番だよ。」
「お前は、百姓か?一昨日だったっけか?物凄い天気だったの。」
「ああ、あれは、凄まじかったよ。まるで、台風が二つ同時に上陸したみたいだったよ。この時期にだよ?まったく!困っちゃうってんだよ!」
「だから、百姓かって!それに、時期は関係ないだろ?時期は!確かにありえない天気だったけどな。」
「なあなあ。」
「ん?」
「もしかしてお前って今日、誕生日?」
「・・・・・・・・・そう言えば、今日は十七日?」
「そうだよ!」
「お前、よくそんな事を覚えてたなぁ。」
「あれからずっと数えてたからね。任せなさい。」
「お前に任せたらロクな事にならないのは、身を持って体験してるからな。遠慮しときます。」
「それを言うなって。今は、仲良く元気にやってるじゃないか。」
「・・・・・・・・・やれやれ。」
「おめでとう!」
「いいよ別に。思い出したかのように言いやがって。それに、そんなにおめでたくもないっての。」
「照れんなって。こういうのは、縁起もんなんだからさ。とりあえず、素直に言葉だけでも受け取っておけって。プレゼントは、後々あげれたらちゃんとお前の欲しいものをあげるからさ。なっ。」
「はいはい。期待しないで待っとくよ。」
「そうそう。ポジティブ、ポジティブ。人間、ネガティブになっちゃあ、おしまいだよ?いかなる時にもポジティブ!苦しい時こそポジティブ!あれっ?と思ったらポジティブ!」
「なんか薬みたいになっちゃってるぞ。」
「なっ!だから、さっちゃんの事は、気にしない気にしない。」
「なっ!じゃねぇよ!さちの事は、これっぽっちも気にしてないっての。」
「またまたー。」
「はぁー。」
「ほら気にしてる!」
「今の溜め息は、そんなんじゃないよ。」
「じゃあ、なに?どしたん?」
「何て言うかさぁ。俺は、今日でまた、一つ歳をとったわけだろ?なのに、いったい何をしてんだか。と、思ってさ。」
「何もしてない。」
「うっせぇ!何もしてないじゃなくて、何も出来ないんだよ!」
「しょうがないよ。人間それぞれ立場ってもんがあんだからさ。他人が何をしようと、俺らは、俺らだよ。今出来る事を一生懸命にやればいいじゃない。むしろ、今やってる事は、今しか出来ないのかもしれないんだしさ。例えそれが、しりとりだとしても!そのしりとりを一生懸命にやってれば、きっといつか!いつの日か!いつの日にか!!ああ、あの時しりとりしといて良かったなって日が必ず来るよ。来るはず!」
「そんな日来なくっていんだよ!」
「それにしても暇だなぁ。まいったなぁ。なあ、俺らの長い人生の中でも、これほど暇な時間って無いんじゃない?そう思うと何だかこの時間も貴重に思えてくるよな。」
「お前だけだよ。」
「おいおい。ポジティブ、ポジティブ。」
「はいはい・・・・・・・・・。俺らの人生、長いかどうかも分かんないだろ?」
「またまたー。お前の悪い癖だよ?何でもマイナス思考になっちゃうとこ。」
「そう言えばお前。親父さんと仲直りしたのか?」
「何だよ急に。気持ちがブルーになるような話題すんなよな。」
「店継ぐの継がないので大喧嘩したろ?」
「したよ!しちゃ悪いの?するだろ!あの場合するのが普通だろ!して当たり前!しなきゃ損!」
「いっつも、この話題になると怒り出すよな。」
「あったりめぇよ。」
「なぜ江戸っ子?」
「だいたい何で長男だからって親の後を継がなきゃならんのよ!おかしくない?人権侵害だ!差別だ!もっと世の中の長男に自由を!of the people. by the people. for the people.」
「なぜリンカーン?まあな、お前の気持ちも分かるよ。でも、親父さんの気持ちも分からないでもないけどな。」
「何だお前!親父派か!親父派閥の人間か!親父国務長官か!親父書記長か!親父後援会会長か!親父マニアか!おや」
「うっせぇよ!親父国務長官とか親父書記長って何だよ!俺は、お前派でも親父さん派でもねぇよ!」
「お前が親父寄りに意見するからだろ!」
「してないって言ってんだろ!二人の言ってる事は、どっちが間違ってるってわけじゃなくって、どっちも正解だって事だよ。お前がこの先、人生をどう歩もうが、それは間違いじゃないってだけの話だよ。」
「いい事言うねぇ。この眼鏡の人。」
「かけてねぇよ!」
「眼鏡風味な人。」
「どんな味だ!」
「眼鏡。」
「もはや人じゃなくなってんじゃんかよ!」
「じゃあさあ。」
「ん?」
「今のこの現状も間違いじゃないって事?」
「ある意味な。」

第七話
「雪山遭難九日目の昼」

「あっ!!」
「どしたん?」
「・・・・・・・・・見間違えか。」
「・・・・・・・・・それにしても・・・・・・・・・暇だなぁ。」

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