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2006年9月

2006年9月 6日 (水)

「第十二話」

 その日は、水飴のような空色だった。大きなエビフライの雲が一つあり、他は、綿菓子のようだった。何の変哲も無い、いつもの空模様だった。気になると言えば、あの大きなエビフライには、プリッとしたエビが入っているのか?それとも、近所のファミリーレストランのように、ころもだらけなのか?それくらいだった。何が言いたいのかと言うと、まったくもって、いつもだって事。
 でも、一つだけいつもじゃない事と言えば、空を見ながらうたた寝中に、目覚まし代わりのチャイムが鳴り、玄関の扉を開けると、そこには、ミライジンが立っていた事だった。何でもミライからやって来たらしく、名前をコマツと言うらしい。しかも、ミライでは、全員がコマツと言う名前らしい。だったら、どうやって区別を付けているのか気になったけど、あえて聞かなかった。なんとなく聞くのが恐かったからだ。
 車は、やっぱり空を飛んでいるらしく、ピントのズレたぼやけた写真を数枚見せられた。でも、何が車で何が雲なのかまったくもって分からなかった。けど、なんとなく数回頷いてみたりしといた。
 思った通りコマツは、タイムマシーンで来たみたいだ。見せてくれなかったけど、タイムマシーンの一部だって言って、ネジを見せてくれた。そのネジは、かなり大事な役割を担っているらしく、ネジ自体がタイムマシーンと言っても過言ではないらしい。触りたかったけど、触らしてくれなかったから、やっぱり本物なのかなと思った。白い三本線の緑のジャージもそれようのスーツなのかなと思ったけど、そこには触れなかったし、触れたくなかった。
 何でここに来たのか尋ねると、コマツは、偉い人に言われて来たと言った。偉い人って?
 どんな用で来たのか尋ねると、コマツは、極秘と言った。極秘って?
 サンタクロースは、いるのか尋ねると、コマツは、いる!と激烈な勢いで答えた。タンコブできた。なんで?
 コマツの頭の上に付いてるアンテナみたいなのを触ろうとしたら、頭の中に引っ込んだ。それを23回繰り返したら、次やったら24回じゃんと言って、コマツは、再び右手を振り下ろした。タンコブの上にタンコブができた。物凄く痛かった。しばらく呼吸ができなかった。上にできたタンコブは、最初のタンコブが持ち上がったのか?それとも最初のタンコブの上にタンコブができたのか?どっちなんだ?ってコマツに聞いたら、くだらない事でうじうじするなとゲンコツされた。確かにくだらないけど、うじうじはしていなかった。タンコブが3段になっている所を写真に撮って欲しかったけど、コマツに撮らせると、ピントがズレてぼやけるのでやめた。無念だった。武士だったら腹を切ってるし、主婦だったら大根切ってるし、課長だったら部下の首を切ってるし、船長だったら面舵いっぱいだ。
 コマツにミライの世界について聞いてみる事にした。そもそもいつぐらい先のミライからやって来たのか?コマツが言うには、ブラックコーヒーがアメリカンコーヒーに変わるには、十分過ぎるほどの量の砂糖とミルクらしい。砂糖が年月で、ミルクはミルクだそうだ。じゃあ、アメリカンコーヒーがミライなのか聞くと、勢いあまって左右の門柱に頭をぶつけるぐらい、首を振った。意味分かんないよって言ったら、ミライとは、そんなものだとコマツが言った。
 そんな事より、コマツってホクロが多いねって言ったとたん。ブワァーって顔中ホクロだらけになって、数種類の幾何学模様と何かの設計図が浮かび上がり、次の瞬間には、ホクロが一つも無かった。ミライジンは、こんな事もできるとコマツは、誇らしげに言ってたけど、羨ましくなかったし、とても気持ちが悪かった。ゲボが出そうなくらい気持ちが悪かった。
 宇宙旅行ができるか聞いてみると、コマツに鼻で笑われた。そんなの日常茶飯事だと、3回ぐらいカミながら言った。冥王星がオススメだと言ってきたから、証拠は?って聞き返した。すると、ポケットからタバコを取り出して、ライターで火を付けて吸い出した。コマツ曰く、冥王星産のタバコで、木星限定シリアルナンバー入りライターらしい。どう見ても、地球産のタバコだし、地球産のライターだった。
 コマツの左腕を見ると、腕時計のような、無線機のような物を付けていたので、何なのか聞いてみると、コマツは、おもむろに青いボタンの方を押した。そしたら、パカって上が開き、コマツは、右手に持っていたタバコをその中で消した。携帯灰皿だった。なっ!みたいな顔をコマツはしてたけど、何でそんなに自慢げにしていられるのかが不思議でしょうがなかった。
 正義の巨大ロボットは、作られたのかワクワクしながら聞くと、正義じゃないけど作られたと答えたから、悪なのって聞くと、家政婦だと言った。一家に一台とも言った。ミライの家は、大きいんだねと言ったら、この時代とあんまり変わらないなんて言うもんだから、巨大じゃないじゃないかって少し怒り口調で言うと、合体タイプだって言った。だいたいが5体からなる合体ロボットなんだって、お金持ちになると、その合体ロボットを複数所有するから、家政婦が数え切れないぐらいいるんだって、なんか少しだけミライっていいなと思えた。
 本題に入ろうかってコマツが真顔で言ってきた。今更?って思ったけど言わなかった。コマツは、今までにない緊張した面持ちで、こう切り出した。トイレ貸して!ってね。うんいいよ!って言うと、コマツは、一目散にトイレに駆け込んだ。そんなに我慢してたんなら最初に言えばいいのにと思った。しばらくして、トイレから戻って来たコマツは、満面の笑みでありがとうと言ったが、あまりの気味の悪さにこっちがトイレに行きたくなった。コマツが言うには、長い時間旅行だったので、寝ながら来たら寝冷えしてしまったらしい。
 そして、コマツは、たまたま家の前を通り掛かったタクシーを呼び止め、僕に手を振りながら去って行った。いったい何だったんだろうと考えてみても分かるはずもなかった。でも、コマツがタクシーで帰る姿を見て、なんだかミライも平和なんだなって、妙に安心した。この不思議な体験を今日の夏休みの絵日記に書こうと思い、握りこぶしでガッツポーズを決めようとした僕は、握りこぶしをした右手に、ネジを持っている事に気が付いた。
「これって、コマツが言ってたタイムマシーンの大事なネジだ。コマツ大丈夫かなぁ。」
僕は、大きなエビフライの雲を見ながら呟いた。

第十二話
「ミライジンコマツ」

「ピピーッ!ピピーッ!ピピーッ!ピピーッ!」
左腕の機械からの音に反応して、コマツは、それを口元に持っていき、赤いボタンを押した。すると、アンテナが飛び出した。
「コマツです。」
「上手くいったか?」
「はい。」
「じゃあネジは?」
「はい。コマツさんの言った通り、小学生時代の博士に渡しました。それと、多くのヒントと共に、シナプス増幅剤を脳に直接3回。」
「博士なら分かってくれるはずだ。」
「小学生でも博士は、博士なんですね。すごい好奇心と豊かな発想の持ち主でしたよ。」
「私も会ってみたかったものだ。」
「教科書で見るのとは、大違いでしたけどね。」
「とにかくよくやってくれた。これであの発明は、予定よりかなり早い時代に完成する事になる。我々人類が、唯一生き残ったコマツと言う一人の人間のクローンであると言うのも避けられる。」
「冥王星の異常接近による木星大爆発、防げるでしょうか?」
「博士の発明があの時代に完成されていれば必ず成功する!君の働きは、歴史上に残る事はけしてないが、私が我々コマツを代表して感謝しよう。ありがとうコマツ君。」
「当たり前の事をしただけです。恥ずかしいからやめて下さいよ。」
「はっはっはっ。コマツ君らしいな。さあ、任務が完了したのなら長居は無用だ。コマツ君!」
「分かりました。」
そう言うとコマツは、もう一度赤いボタンを押し、通信を切った。
「さて、ミライに帰りますか。コマツさん。」
タクシーの運転手がバックミラーごしに言った。
「お願いします。コマツさん。」
タクシーは、空を飛び、大きなエビフライの雲の中に消えていった。

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2006年9月13日 (水)

「第十三話」

 全体を塀で囲まれた建造物。その裏手にひっそりと存在する出入り口。そこには、制服を着た二人の男が立っていた。炎天下の中、蝉達の鳴き声が絶え間無く鳴り響き、暑さを倍増させていた。
「あぢー!」
「夏だからな。」
「それを踏まえてあぢー!」
「確かに暑い。」
「冬がこのぐらいだったらいいのにー。」
「でも、冬がこんな感じだったらお前は、何て言うんだよ。」
「あぢー!」
「だろ?なら我慢するしかないって事だよ。」
「あのなぁ、俺はなぁ、そりゃもう、物凄く!お前が考えてるよりも、物凄く我慢してんだよ!我慢して我慢して我慢したうえでの!あぢー!!」
「やめい!!俺まで暑くなる!」
「はいはい・・・・・・・・・。」
「やる気出せよな。こんなダラダラしてるとこを所長にでも見られたら、二、三時間の小言と十枚以上の始末書だぞ。」
「わーったよー。やればいいんだろ?やればー。で?今日は、何で俺らがここに呼ばれてるわけ?」
「お前なぁ。ちゃんと渡された書類を読めよな。ここに俺らがいるって事はだよ?だいたい検討がつくだろ?」
「ここってあれだろ?新しく入所して来る受刑者を迎え入れるとこだろ?」
「そうだよ!」
「で?」
「馬鹿かお前は!そこまで分かってて聞くなよ!ダラダラすんなって!」
「あのなぁ、どんな奴が来ようが、この暑さは、変わらないんだよ?あぢー!だからさぁ、これから来る奴がどんなんだろうと、まっっったく!興味なし!あぢー!そいつがこの暑さをなんとかしてくれるわけでもあるまいし。」
「そうでもないぞ?これからやって来る男の事を知ったら、恐怖で暑さなんて吹っ飛んじまうぞ。」
「そりゃーありがたいねぇ。で?どんな奴?」
「犯罪史上もっとも残忍な殺人犯!」
「ほっほー。あぢー!続けて続けて。」
「あまりに残虐で、あまりに残酷。付いたあだ名が史上最凶の殺人鬼!」
「最強?」
「最凶!」
「あそう。あぢー!で?何で最凶なの?」
「捕まるまでに何人殺したと思う?」
「うーん。百。」
「おしい!百八人。」
「煩悩?あぢー!」
「本当にお前は、たまに鋭い事を言うよな。人を自分の煩悩として、一人殺害する度に自分の中の煩悩が断じられたって言う話みたいだぞ。」
「1ポイント獲得。でもさぁ、連続殺人鬼なんて今までだっていたじゃん。」
「殺した人数だけじゃないんだよ。とにかく殺した後の行動が残虐で残酷なんだよ。残虐で残酷と言うか異常!もはや人じゃない。」
「人なんだろ?」
「例えだよ例え!」
「知ってるよ。」
「どんなんだと思う?」
「そうだなー。目玉を刳り貫いて、手の平にくっつける!」
「妖怪か!」
「うんじゃーねー。四十九人の目玉を刳り貫いて、五十人目の体中にくっつける!」
「妖怪か!」
「だったらねー。目玉を」
「目玉もういいだろ!何でそうやってお前は、妖怪にしたがる?」
「だってさぁ、あぢー!んだもん。」
「暑さ関係ないだろ。」
「関係あんだろ!暑さ=妖怪だろ!」
「どんな根拠だ!」
「知らん!」
「逆切れか!」
「じゃあなんだってんだよ。勿体振らずに教えてくれりゃーいいじゃん。」
「人食い!」
「人食い?」
「殺した人間をありとあらゆる料理に変えて食べるんだよ。」
「連続殺人鬼でカニバリズムなんて、もはや珍しくもなんともないじゃん。殺人シェフなんて、今時流行んないっての。それにしてもあぢー!」
「んなもん。いつの時代だって流行ってないよ!百八人だぞ?」
「そんなの俺だって、今までに食ったもんを人間に換算すればそんぐらいいってるっての。あぢー!てかそれ以上は、食ってるね!人生何度も悟っちゃてるよ!」
「またお前は、訳の分からん理論を言い出しやがって。」
「あぢー!んだから言わしてくれよ。せめて、訳の分からん理論ぐらい言わしてくれよ。」
「意味が分からん。」
「あぢー!すまんすまん。で?なになに?食うって全部?」
「全部だよ。」
「老若男女?」
「そう。」
「骨も?」
「そうだよ。全部だよ。」
「おかしくない?」
「何が?」
「あぢー!」
「何が?」
「あぢー!」
「だから何がだよ!」
「ん?だってさぁ、丸ごと食べちゃうんだろ?それって証拠なんて残らないじゃん。完全犯罪じゃん。あぢー!あぢー!と言うかもはや、なぢー!だな。」
「なぢー!って何なんだよ!」
「なぢー!ってのは、あぢー!の比較級だよ。で、最上級があちー!だよ。」
「じゃあ、お前たいして暑くないんじゃん!」
「まあまあ、細かい事は、気にしない気にしない。で?その完全犯罪を解いたのは?どこのどいつだ?何探偵だ?」
「食あたりだよ。」
「そんな名前の探偵聞いた事ないなぁ?ショク・ア・タリ?」
「誰だそいつ!そもそもお前は、どんだけ探偵に詳しいんだよ!」
「ホームズに金田一。」
「実在しない奴らじゃんかよ!」
「あとは・・・・・・・・・ショク・ア・タリかな。」
「知ったかか!聞いた事ないんだろ!探偵じゃなくって病気だ!病気!ショク・ア・タリじゃなくて食あたり!」
「へ?」
「百八人目の犠牲者を食って、腹をこわしたんだよ。で、病院に行って検査をしたら、胃カメラで胃を見てた医者と犠牲者の目玉とが合っちゃったんだよ。そして、事件が発覚したってわけだよ。」
「やっぱ目玉じゃん。」
「たまたまだよ。」
「くだらない事を言うねぇ。さびー!」
「そういうつもりで言ったんじゃないよ!」
「でもさぁ。」
「何だよ。」
「それでも腑に落ちないんだけど。」
「どこが?」
「一人を殺害して食ったのは分かるよ。でも、あと百七人を食ったって証拠が無いじゃん。そいつが嘘をついてっかもしんないじゃん。」
「リスト。」
「リスト?」
「取り調べ中に、そいつが次々と自分が食した人間の名前と特徴を挙げてったんだよ。で、リストを作って、それを基に調べてみると、リストに載ってる全員がある日突然、行方不明になってんだよ。そのリストと完璧に一致したってわけだよ。」
「で?信じちゃったってわけか。」
「それとな。料理を作ってる一部始終が録画されたディスクが自宅から発見されたんだよ。」
「だいたいそいつは、人間をどう料理したんだよ。あぢー!」
「焼いたり煮たり生だったり、まあそれこそいろいろなんじゃないか?」
「もっと詳しく分からないのかよ。」
「分からん。」
「ステーキとか?」
「かもな。」
「寿司とか?」
「ああ。」
「なんとか風なんちゃらかんちゃらとか?」
「分からないなら言うなよ!」
「ボイルドエッグ?」
「ゆで卵じゃん!材料卵オンリーじゃん!」
「じゃあ何だよ!」
「ああ、そうだ。なんでも、そのディスクを最初から最後まで見た人間が、ここをやられちゃって、今じゃ病院のベットの上らしいんだよ。内容が相当なもんだったんだろうな。それ以来、誰もそのディスクを見てないらしい。だから、あんまり詳しく分からないんだよ。」
「ソフトボイルドエッグ風人間の頭部?」
「話し聞いてたか?半熟卵関係ないし、分かんないって言ってんだろ!」
「頭部をコツーンとスプーンで割って、中の」
「やめい!!気持ち悪い!見れるよ!お前ならきっと普通に見れるよ!」
「ふーん。なるほどねぇ。最凶ねぇ。」
「何だよ。あんまり納得してないみたいだな。」
「してないよ。あぢー!もっと、暑さが吹っ飛ぶぐらいの怖い話なのかと思ったら、全然だったよ。相変わらずあぢー!しな。」
「想像したら十分に暑さ吹っ飛ぶぐらいの怖い話だろ?お前の頭の中がそいつ寄りなだけだよ。」
「あぢー!俺には、この暑さの方が怖いよ。」
「はいはいそうですか。」
「大食漢でモンスターみたいな男だろうが、今や捕まってこれから檻の中。怖くもなんともないね。しかし、あぢー!」
「やれやれ。」
「プップー!!」
男達の前に、一台の乗用車がやって来て止まった。
「来たみたいだぞ。」
「はいはい。あぢー!のにご苦労様だねぇ。」
「ガチャッ。」
そして、後部座席のドアが開いた。
「ほら、出て来るぞ!」
「あぢー!さてさて、どんな奴なのかな?」
すると、そこからがっしりとした体格の男が出て来た。
「なぢー!あいつか?」
「制服着てんだろ!あの人は、護送を担当してた人だよ。」
「バタン!」
しばらくして、後部座席のドアがその男の手によって閉められた。そこには、がっしりとした体格の男の横に立つ、史上最凶の殺人鬼の姿があった。
「!!」
「!!」
制服を着た二人の男は、目を大きく見開き、驚いた様子であった。実際に史上最凶の殺人鬼を目の当たりにして、その全身から放たれる狂気に満ち溢れた鋭い殺気に畏怖したのか?はたまた、残虐で残酷なモンスターを目の前にして、その冷酷な野獣が放つ眼光により、体の自由を奪われてしまったのか?
そして次の瞬間、男達は、声を揃えてこう言った。

第十三話
「ちっさ!!」

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2006年9月20日 (水)

「第十四話」

「ねぇ魔人。」
「あははは。」
「ねぇ!」
「あははは。」
「ねぇってば!」
「ん?」
「ちょっと!」
「ん?」
「聞いてんの?」
「あははは。」
「ま・じ・ん!!」
「お・ん・な!!」
「テレビ見るのやめてこっち向きなさいよ!」
「ん?」
「ん?じゃない!あんたここに来て、三日間ずっと通販のテレビ番組なんか見てるけど、何がそんなに面白いわけ?」
「あははは。」
「ちょっと!人の話を聞きなさいよ!」
「プチン。」
「あー。いいとこだったのにー。」
「あのさぁ。あなた魔人なんでしょ?」
「そう!まじん!」
「はいはい。そんな自信満々にアピールしなくていいから。毎日、毎日、朝から夜までずーっと通販番組なんか見てないで、何か出来ないの?」
「?」
「魔人なんだからさぁ。魔人らしい事いろいろ出来んでしょ?そうだ!変身!例えば何かに変身するとか出来ないの?」
「できる。まじんだもん。かんたんかんたん。」
「うっそー!ちょっとやってみせてよ。うーん。じゃー、猫に変身して!」
「にゃー。」
「ちょっと。」
「つぎいぬ。わん。」
「魔人!」
「つぎくるま。ぶーん!ぷっぷー!」
「ま・じ・ん!!」
「お・ん・な!!」
「あんたねぇ。それってただ声出してるだけじゃない。変身じゃなくって、完成度のチョー低いモノマネじゃない!」
「だめ?」
「ダメに決まってるでしょ!だったらあんた、たくあんに変身してみなさいよ!たくあんに!」
「うーん・・・・・・・・・。」
「ほーらほーら、やれるもんならやってみなさいよ。たくあん。」
「うーん・・・・・・・・・。」
「どうしたの魔人?簡単なんでしょ?早く変身してみせてよ。それとも、ごめんなさいって謝る?嘘をついてごめんなさ」
「ボン!」
「何で出来るのよ!」
「ボン!」
「まじんできるっていった。うそつかない。」
「牛。」
「もー。」
「馬。」
「ひひーん。」
「たくあん。」
「ボン!」
「何でたくあんだけ変身すんのよ!」
「ボン!」
「まじんそれにしかへんしんできない。」
「その事実がびっくりよ!くだらないとこで、運を使っちゃったじゃない!何なの?魔人の好物がたくあんとかなの?」
「ちがう。まじんのこうぶつにんげん。」
「えっ?」
「にんげんのおんな。」
「!?」
「あははは。じょーだんじょーだん。」
「あんたが言うと冗談にならないのよ!ぜんっぜん!笑えないわよ!」
「うけたうけた!」
「うけてないわよ!むかつくわねぇ!」
「じゃー、てれびみてもいい?」
「ダーメ!なんかやってからにしなさい。変身がダメだからー。」
「だめじゃない。まじん、へんしんできた。」
「たくあんじゃない!あんなのに変身したとこで、何の役にも立たないじゃない!そうねぇ?魔法とか出来ないの?」
「できるできる。」
「それを早く言いなさいよ。あっ、でもちょっと待ってよ。また、しょーもない魔法なんじゃないでしょうねぇ?」
「ちがうちがう。まじん、まほうは、くらすでいちばんだった。」
「クラス?何やら興味をそそられるワードが出て来たけど、まぁその話は、今度でいいわ。今は、魔法よ。一番なら、チョー得意なんじゃない!」
「まかせろ。」
「なになに?炎を出したりとか?怪我を治したりとか?あー!まさかまさか、何か召喚出来ちゃったりするわけ?」
「おんな。まじんばかにしてもらっちゃーこまる。まじん、もーっとすごいことできちゃう。」
「えっ!何よ!何が出来ちゃうのよ!お金を増やしちゃうとか?」
「あのねー。」
「なになに?」
「えいとねー。」
「もー。勿体振ってないで教えなさいよ。このっこのっ。」
「じばく!」
「へー、じばくかぁ。やるねー魔人!自爆ね。それは、ちょっとすごいかも。えっ?自爆?」
「いくよー。」
「待って魔人!」
「なにおんな?」
「その自爆って、どのぐらいの威力があるの?」
「ほしなくなる。」
「星って?この星?地球の事?」
「そう。いくよー。」
「ちょ、ちょっと待って魔人!魔法いいや。やらなくってもいいや。」
「えんりょするな。」
「遠慮じゃないわよ!だいたい、ほら、そんな事したら魔人まで消えて無くなっちゃうじゃない。」
「へーきへーき。じばくっていっても、まじんがばくはつするんじゃなくて、まじんのまわりをばくはつさせるから、あんしんあんしん。それにまじん、ばりあでたすかる。しんぱいしなくていい。」
「何よそれ!自爆じゃなくって、他爆じゃない!それに!魔人は、助かるかもしれないけど、あたしが助からないじゃない!何が安心よ!」
「だったらおんなも、ばりあのなかにいれてやる。」
「いいわよ。あたしだけ生き残ったって、楽しくないわよ。そりゃー、大地震が来てくれないかなぁとか、宇宙人が攻めて来ないかなぁとか、一回この世界がリセットされればいいのにって考えた事あるわよ。もちろんあたしは、生き残るって設定でね。でも、実際にその状況になったらすっごい困るわけよ。だから、他爆しなくっていいの。」
「わがままだなぁ。」
「わがままでいいわよ!あたしのわがままで地球が救われたなら、全人類があたしに感謝すべきよ。」
「じゃー、みていい?」
「ダメだって言ってるじゃない。」
「えー。」
「それより、聞いてなかったけどさぁ。魔人は、何でここに来たの?」
「たまたま。」
「たまたまで洗濯しようと思って開けたら中にいないでよね!びっくりするじゃない!ってか、びっくりしたわよ!何なの?あたしの洗濯機と魔人のいる世界が繋がってるわけ?」
「ボン!」
「どのタイミングでたくあんに変身してんのよ!」
「ボン!」
「何なのよ。そうだ!魔人のいた世界について話してよ。やっぱりあれ?大魔王がいたりするわけ?」
「あははは。」
「何で笑うのよ。」
「あははは。おんな、てれびのみすぎ、そんなのいないいない。」
「そうなんだぁ。ぜーったいにいると思ったんだけどなぁ。大魔王。」
「だいまじんがいる。」
「一緒じゃない!大魔王だろうが大魔神だろうが、同じじゃない!」
「ちがうちがう。だいまおうとだいまじん。まーったくちがう!」
「何が違うのよ!」
「それきいちゃう?」
「聞いちゃうわよ。」
「これ、はなすとながくなるけどいい?」
「どれくらい?」
「まるふつか。」
「やめて。」
「ざんねん。」
「そんなどーでもいい話を丸二日もされたら、たまったもんじゃないわよ。大魔王だろうが大魔神だろうが、あたしには、どっちでもいいわよ。」
「よくない!やっぱりはなす!そもそもだい」
「分かったわよ!大魔神でしょ!大魔王じゃなくって、大魔神なんでしょ!ぜんっぜん!違うわ!」
「そう。わかってもらえてうれしい。」
「はぁー、疲れた。魔人と話すと疲れるわ。あんたこっそり、あたしの生気とかを吸い取ったりしてんじゃないの?」
「ばれた?」
「何してんのよ!!」
「あははは。じょーだんじょーだん。おんな、またひっかかった。」
「腹立つー。うっすら引っ掛かってる自分にも腹立つわ。」
「あははは。」
「笑うな!まったくもう!ところで、魔人のお父さんて何やってるの?」
「まじん。」
「知ってるわよ!」
「おんな!とーちゃんのことしってるのか!」
「違う違う。そう言う意味じゃなくって、まじ」
「ピーンポーン!」
「はーい。」
「はーい。」
「あんたは、返事しなくっていいの。ちょっと待ってなさいよ。戻って来たらお父さんの話の続きするんだからそのまま座ってなさいよ。テレビ見ちゃダメだからね。」
「わかってる。」
「タッタッタッタッタッ。」
「おんないった。いまのうちにてれびみよ。」
「まじーん!!」
「みてないよー!!」
「タッタッタッタッタッ!」
「注文したわね魔人?」
「へ?」
「これよ!これ電話で注文したでしょ!」
「だんぼーる?」
「ただのダンボールじゃないわよ。聞いて驚きなさい!なんと中には!チョー便利調理器具6点セット!プラスまな板が2枚!も入ってるのよ!」
「やったー!」
「やったー!じゃない!」
「わーい!」
「わーい!じゃない!」
「ほんとにきた!」
「来るわよ!来るに決まってるでしょ!そう言うシステムなんだから!」
「うれしー!」
「嬉しくなーい!」
「はやくあけよ。」
「ふっふっふっ。」
「どうしたおんな?なんでわらう?わかった!おんなもうれしいんだ!」
「魔人もまだまだ甘いわね。そっちが勝手に通販の電話注文を使うなら、こっちにも作戦があるわ!」
「?」
「ふっふっふっ。せいぜい今の内に別れを惜しんどくといいわ。」
「おんな、ちょっとこわい。」
「いい?こんなもんは!すぐに!早急に!即時!即刻!すぐさま返品よ!!」
「ピーンポーン!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「ま・じ・ん?」
「お・ん・な?」
「まさか、他にも注文しちゃってないわよね?」
「しちゃった。」
「いっぱいしちゃってないわよね?」
「いっぱいいっぱいしちゃった。」
「そう。しちゃったの。そっかぁ。しちゃったのかぁ。そうだよねぇ。しちゃうよねぇ。見てると欲しくなっちゃうもんねぇ。」
「そうそう。」
「あははは。」
「あははは。」
「バカ魔人!!」
「ばかいらない。ただのまじんでいい。」

第十四話
「女と魔人」

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2006年9月27日 (水)

「第十五話」

「ポッポー!」
「行けー!!」
わしは、機関車の運転士をやっとるかっちょいい男の中の男だ。だから皆からは、敬意を込めてこう呼ばれとる。「キャプテン!」とな。機関車の運転において、この西部中を見渡したとて、このわしの右に出るもんなんぞおらん。そして、このじゃじゃ馬を乗りこなせるのも、わしぐらいなもんだ。この雄大な荒野を乗客を乗せて、こいつと走るのがわしの毎日の日課であり、楽しみでもある。しかしだ!その楽しみを邪魔するもんが時折おるってのが、玉に瑕だ。
「キャプテン!!」
「どうだ!奴等も追い付いて来れんだろ!」
「追って来てます!」
「しつこい奴等だ!」
わしらの旅を邪魔するもんの一つに、列車強盗がおる。しかも、数分前からわしとじゃじゃ馬は、奴等と追い掛けっこをしとる。奴等め!わしの楽しみを邪魔しおって!乗客乗員の安全とわしのプライドに賭けて、負ける訳にはいかん!否、追い付かせる訳にはいかん!
「もっと石炭を入れんか!」
「分かりました!」
奴等がいくら列車強盗と言えども、所詮、乗りもんは馬だ!ええぞええぞ。どんどんスピードが上がってきとる。にゃっはっはっ!
「ポッポー!」
これならこのじゃじゃ馬に何者も追い付いて来れまい!ましてや、奴等の馬なんぞ、絶対に無理だ!
「キャプテン!!」
「よーし!このまま次の駅に向かうぞ!」
「キャプテン!!」
「わーった、わーった!焦る気持ちはあるだろうが、祝杯を挙げるなら駅に着いてからだ!」
「駄目です!」
「おいおい!ここでか?いくらなんでも、ここで祝杯は無理だろう!なんたってバーボンが無い!」
「追い付かれます!」
「なにー!!」
本当か?本当に追い付かれそうなのか?この若造が、わしをびっくりさせようとしとるんじゃないだろうな?驚かせてわしのリアクションを見て楽しむ魂胆じゃないだろうな?若い奴等の考えてる事は、分からんからな。どれどれ?確かめてみるかな。わざと大きなリアクションでもとってやるとするか。
「なんだとー!!」
本当だ!本当に追い付かれそうだ!あれ馬か?
「奴等が乗っとるあれ、馬じゃない可能性があるかもしれんな!」
「馬です!」
馬か!そうか!だったら話が早い!
「全速力だー!!」
「はい!」
見ておれ!わしを本気にさせた事を後悔させてやるわい!
「ポッポー!」
そして!じゃじゃ馬を甘く見た事を思い知れ!この列車強盗どもめ!
「にゃっはっはっ!さすがの列車強盗も、これで追い付いて来れまい!」
これで追い付いて来るならば、そいつは嘘だ!
「来てます!」
「うそだー!!」
「本当です!」
あっ、本当だ!しかし、最近の馬ってのも凄いもんだな。フルスロットルの機関車に追い付くんだからな。たいしたもんだ。って、
「ふざけるなー!!」
「キャプテン?」
「おい若造!何で馬が!馬ごときが!機関車に追い付こうとしとるんだ!」
「分かりません!」
「わしにも分かりません!」
いかんいかん。ついカッとなっちまった。こう言う時こそ、冷静にいこうじゃないか。キャプテンとして、冷静に指示を仰がんといかん!
「ワープ!」
「出来ません!」
落ち着け、落ち着くんだわし!
「飛行モードに切り替えるんだ!」
「なりません!」
「なれ!!」
「なれません!」
「そこの赤いレバーを引くんだ!!」
「見当たりません!」
「付けとけ!!」
なんて無茶苦茶言うんだわし!落ち着け、本当に落ち着けわし!
「ポッポー!」
よし!落ち着いた!
「こうなったら限界ギリギリまでスピードを出す!」
「分かりました!!」
頼むぞ!踏ん張っとくれよじゃじゃ馬!
「ポッポー!」
おーし!きたきたきたー!このボジィに響き渡る振動!ハァトゥに伝わる躍動!若い頃を思い出すわい。あの頃は、こんな無茶ばかりしとったもんだ。
「キャプテン!!」
「何だ!!今、思い出に浸っとるとこだ!!」
「浸らないで下さい!!」
「お前がわしの思い出に浸るタイミングまで仕切るな!!」
「追い付かれます!!」
「だったら!!猶の事!!思い出に浸らせてくれ!!ほっといてくれ!!現実逃避させてくれ!!」
「させられません!!」
「そう来ると思って次の手を用意しとる!!」
「何ですか!!」
「例のお助けロボを呼べ!!」
「キャプテン!!」
「何だ!!」
「真面目にお願いします!!」
「うむ!!」
さて、どうしたもんか?これ以上のスピードアップは、じゃじゃ馬を破壊しかねん。
「おい!」
「はい!」
「おい!!」
「はい!!」
「おい!!!」
「はい!!!」
だが、男には、やらんといかん時があるってなもんだ!!
「さらにスピードを上げるぞ!!」
「無理です!!」
「そんな事は、承知の上だ!!じゃじゃ馬を信じるんだ!!いいか若造!!男に」
「もう!!石炭がありません!!」
「なんてこった!!」
「どうしたらいいんですか!!キャプテン!!」
どーするもこーするも、あーするもそーするもないだろうが!
「ポッポー!」
「何をやってるんですか!!」
「考えとるんだ!!」
考えろ!考えるんだわし!考えて考えて考えまくるんだわし!
「その辺にあるもんを燃やせー!!」
「キャプテン!!」
「何だ!!」
「もうやりました!!」
「なんだってー!!」
すっぽんぽんじゃないか!偉いぞ若造!!立派だ!!今のすっぽんぽんのお前を笑う奴がおったら、その前を隠しとるスコップで、わしがそいつを殴り飛ばしてやる!
「ポッポー!」
この汽笛は、わしとじゃじゃ馬からの敬意の汽笛だ!取っておくんだ若造!
「プシュー。」
まあ、現実ってのは、こんなもんだな。そりゃ、止まるってもんだ。石炭で動いとるんだもん。若造の作業着とパンツで動いとる訳じゃないもん。
「シュー。」
じゃじゃ馬よ。ようここまで走り続けて皆の命を守ってくれたな。よう頑張った。後の事は、このわしに任せておけばええ。お前は、ここでゆっくり休んどれ。
「キャプテン!!」
「声デカイんだよ。もう走っとらんのだから、普通のトーンで聞こえるよ。」
「どうするんですか?」
愚問だ若造!勿の論でこうするまでだ!
「シールド全開!」
「完備してません!」
「レーザー砲の発射を許可する!」
「されても困ります!」
「こうなったら秘密兵器の」
「囲まれてます!!」
「なにをー!」
あっ、囲まれとる。完全に囲まれとるよ。まったくもって、逃げ道なんぞ見当たらんほどに、見事なまでに、囲まれとるよ。
「キャプテン。ここは、奴等の言う通りにしましょう。そうすれば、命だけは助かるはずです。」
「若造。」
「はい。」
「補償は、あるのか?」
「・・・・・・・・・ありません。ありませんけど」
「ばかもん!!乗客の命がかかっとるだ!そんな補償も出来んような事が出来るか!」
「すいません。だけど」
「見てみろ。荒野のサンセットだ。まったく、美しいってもんじゃないか。」
「キャプテン?」
「行くぞ!」
「行くって、いったいどこへです?」
「決まっとるだろ!外へだよ。」
「外に出て行くんですか?」
「当たり前だ!」
「どうするつもりなんですか?」
「戦う!」
「戦うって、武器なんて無いじゃないですか!」
「にゃっはっはっ!武器ならここにある!」
「カード?ですか?」
「男ならポーカーで勝負だ!!」
「それこそ、補償が無いどころの話じゃないじゃないですか!そんな提案をしに外へ出て行ったら、一番最初にキャプテンが殺されますよ!」
「ばっかもーん!お前は!わしが殺されたとこを一度でも見た事があるのか?無いだろ!」
「一度で十分ですよ。」
「さあ、行くぞ!」
「ガチャッ。」
「キャプテン!待って下さい!殺されちゃいますって!キャプテン!!」
さあ、列車強盗ども!目にもの見せてくれるわい!にゃっはっはっ!
「さーてと、リーダーは、どいつだー!!」
「俺だー!!」
「やめましょうよキャプテン。絶対に殺されちゃいますって!」
「うるさい!お前は、黙ってそいつで大事な部分でも隠しとれ!貴様かー!だったらわしとこいつで勝負しろー!!」
「もうどうなっても知りませんよ。」
「奇遇だなぁ。俺もこいつで勝負をつけようと思っていたとこだ!!」
「んな馬鹿な!」
「にゃっはっはっ!だったら話が早いわい!」
吠え面かくなよ列車強盗どもめ!返り討ちにしてくれるわい!!
「ルールは、ファイブカードスタッド!!勝負だ!運転士!!」
「運転士?わしゃキャプテンだ!さあ、来い!列車強盗!!」

第十五話
「サンライズポーカー」

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