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2006年12月

2006年12月 6日 (水)

「第二十五話」

「博士~!博士~!」
「おお!やっと来たか!待ちくたびれたぞ!」
「ハァ、ハァ、ハァ。いやこの時代に伝書鳩はおかしいでしょ。」
「フォロッフォ~。」
「私は、近代文明が生んだ機械社会に埋もれたくなどないんだよ。」
「バサバサバサ~。」
「でも、この手紙ってパソコンを使って打ち出していますよね?」
「そうだよ。」
「おもいっきり近代文明の利器を活用しているじゃないですか!」
「気付かんかった。」
「無意識レベルにまで達しているじゃないですか!ったく・・・・・・・・・それよりも、見せたい物があるって言うのは?」
「ふっふっふっふっふっ。」
「何ですか?その不敵な笑いは?」
「遂に完成してしまったんだよ!助手君!」
「博士?いい加減名前を覚えて下さい。結構長い付き合いなんですから。」
「まあまあ、御愛嬌ですよ。助手君。」
「どんな御愛嬌ですか!失礼ですよ。」
「気にする事はない。二人で過ごした時間は、けして無駄ではないのだよ。新しい恋を探しなさい。」
「失恋じゃなくって、失礼です!何の話をしているのかと思いましたよ。」
「いい事言って損した。」
「どんな感覚ですか!それで?いったい何が完成したんですか?」
「よくぞ聞いてくれた!!」
「博士の方から言ってきたんですよ?」
「タイムマシーンだ!!」
「今なんて!?」
「タイムカプセルだ!!」
「変わったじゃないですか!前者と後者じゃ驚きがまったく異なりますよ?」
「タイムマシーンだ!!」
「近代文明だの機械社会だのと、言ってる事とやってる事が矛盾していますが・・・・・・・・・凄いじゃないですか!いったいどうやって!」
「私が昼間、いつものように公園のベンチに座ってカレーライスの味を思い出していた時。」
「毎回そんな事をするために、公園に行ってたんですか!」
「子供達がブーメランをして遊んでいたんだよ。」
「なるほど!ブーメランは、投げると戻ってくる!そこからヒントを得たと言う訳ですか!」
「いや、何となく出来ちゃった。」
「ブーメランは、何だったんですか!」
「それは、上手い事やるもんだなぁ。って感心していただけだよ。」
「羨ましかっただけですか!何となくですか・・・・・・・・・まあ、博士らしいと言ったら博士らしいですね。」
「しかも二つ。」
「二つも出来ちゃったんですか!天才ですよ博士は!」
「忘れた頃にやって来るんだよ。」
「それは天災です。さっそく学会に発表する論文の作成に取り掛かりましょう!」
「待つんだ助手君!」
「どうしたんです?まさか!?何となく僕の事を騙したんじゃないでしょうね?本当は、タイムマシーンなんて作っていないのでは?」
「タイムマシーンは、ちゃんと作ったよ。」
「またまた。騙されませんよ?この前だって砂糖を塩にする機械を発明したと言って、大変な目に遭わされましたからね。作ったのなら実物を見せて下さい!」
「さっきっから目にしているじゃないか。」
「えっ!?」
「ほら。それだよ。」
「それってまさか!?この冷蔵庫ですか!?」
「いや冷蔵庫じゃなくってタイムマシーンだ。」
「冷蔵庫でしょ。」
「元はな。元は確かに冷蔵庫だが今はもうタイムマシーンなんだから、あんまり旧姓で呼ぶんじゃないよ。」
「俄かに信じがたい光景ですね。」
「勝手に氷を作ってくれるやつだ。」
「冷蔵庫の機能については聞いてませんよ!」
「その機能は、ちゃんと残しておいたから安心しなさい。」
「どんだけ僕は、氷好きだと思われていたんですか!」
「では、行くぞ!」
「行くって?」
「論文を書くには、まだやり残した事がある。理論上タイムマシーンであっても、正確に作動するかテストする必要があるのだよ。助手君!」
「我々自ら実験台になると言うのですか!?」
「当たり前だ!我々がやらずに誰がやる!!」
「分かりました博士!博士の世紀の大発明に僕もお供します!」
「ありがとう。」
「で、いったいどの時代に行くんですか?未来ですか?それとも江戸時代や平安時代ですか?」
「何をヌルい事を言っているのだね!」
「では、博士の大好きな戦国時代ですか?」
「確かにその時代にも行ってみたいが、まず最初に行くのならば、まだ誰も目にした事のない時代・・・・・・・・・。」
「やはり未来ですか!」
「いいや!恐竜時代だ!!」
「なるほど!確かに実物の恐竜をこの目で見た人間はいない!」
「そして映像に記録し、それをこの時代に持ち帰って来るのだよ。二つの意味で人類の大きな一歩になるはずだ!助手君!」
「行きましょう博士!」
「よし!開けるぞ!まだ見ぬ未開の地への扉を!」
「ガチャッ。」
「ずいぶんと冷ややかですね博士。そして狭い。」
「まあ、元々は冷蔵庫だからな。いいか?この弱・中・強のダイヤルで行く年代を決める。過去・現在・未来と言った具合にな。だいたい恐竜時代ならこの辺だ。そしてドアを閉めれば時空の旅に出発する。」
「タイムマシーンに乗っている気がしませんね。まるで野菜や肉の気持ちですよ。」
「実験が失敗に終われば、こいつはただの冷蔵庫にすぎんからな。行くぞ?」
「緊張しますね。」
「では!恐竜時代に!タ~イム!ワ~プ!」
「それ言わないといけないんですか?」
「別に。」
「バタンッ。」
「真っ暗ですね博士。」
「冷蔵庫だからな。」
「冷蔵庫なんですか?」
「冷蔵庫みたいなタイムマシーンだよ。」
「タイムマシーンみたいな冷蔵庫にならないように願っていますよ。」
「ありがとう。」
「いえ。」
「ウィ~ン。カラカラカラカラカラカラ。」
「何の音ですか?」
「勝手に氷が出来た音だ。つまり、到着したと言う事だよ。」
「勝手に氷の部分にも意味があったんですね。」
「当たり前だ。では、未開の地への扉を開けるぞ!」
「待って下さい博士!」
「どうした?」
「確か冷蔵庫って中から開けられないのでは?」
「そんな目に二度と合わんようにしているに決まってるだろ!」
「なるほど。製作段階で一度閉じ込められたのですね?」
「当たり前だ!」
「そのピンチをどう切り抜けたのか気になるとこですが・・・・・・・・・まったく、天才なのか馬鹿なのか分からない人だ。」
「何か言ったか?」
「いいえ。」
「さあ、開けるぞ!」
「ガチャッ。」
「は、博士!」
「助手君!」
「成功ですよ博士!タイムマシーンは完成したんですよ!!」
「痛い痛い。喜ぶ気持ちは分かるが、頭叩きすぎだよ助手君。」
「すいません。」
「まあいい。では、恐竜をこのカメラで撮影しようじゃないか。こりゃ、年甲斐もなくワクワクしてくるってもんだよ!なあ、助手君!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「どうした?この光景に開いた口が塞がらないのか?うんうん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「その気持ちは、手に取るように分かるぞ助手君。だが、今は私情よりも人類への」
「博士!!」
「びっくりしたなぁ!?なに?どうしたんだ?」
「あああああ・・・・・・・・・あれ!!」
「後ろに何かいるのか?ななななな・・・・・・・・・なんと!?」
「あれって博士!!」
「間違いない!ティラノサウルスだ!!」
「最強の肉食恐竜と言われているやつですよね?」
「そうだ。まずいぞ助手君!私達は、とっくにあいつに気付かれていたようだ!」
「どうするんですか?」
「どうするもなにもないだろ!!逃げろー!!」
「はいー!!」
「ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!」
「でも博士!追って来ますよ!」
「そりゃそうだ!私達は、餌なのだからな!!」
「ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!」
「ガシャーンッ!!」
「あぁぁぁぁぁ!!タイムマシーンが踏み潰されてしまいましたよ!!」
「そりゃそうだ!私達は、タイムマシーンから直線上に逃げているのだからな!!」
「何を悠長な事を言ってるんですか!!僕達は、もう二度と元の時代に戻れなくなってしまったんですよ!!」
「そりゃそうだ!タイムマシーンが壊されたのだからな!だがなぁ助手君!私がさっき言った事を思い出してみるのだ!!」
「博士の言った事ですか?」
「タイムマシーンを二つ作ったと言ったろ!!」
「言いました!確かに言いました!が博士!あんな大きな物!いったいどこにあるんですか!」
「ふっふっふっふっふっ。」
「その不敵な笑いは!持っているんですね!もう一つのタイムマシーンを持っているんですね!ボタン一つか何かで瞬時に時空を越えられるリモコン型のようなタイムマシーンを」
「ほれ!」
「何ですか?この手の平の上にある小さな冷蔵庫は?」
「さっきのタイムマシーンを最軽量化し最小化したものだ!!」
「えっ!?」
「まさに時代の最先端をいったタイムマシーンなのだよ!助手君!!」
「どうやって乗るんですかー!!」
「あっ!」
「ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!」
「助手君!とにかく今は逃げろー!!」
「はいー!!」

第二十五話
「モダン・タイムス」

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2006年12月13日 (水)

「第二十六話」

「ゲンさん!」
「おぉ!シゲさん!腰の具合はどうでぇ?」
「だいぶ良くなってきとるよ。ゲンさんの方こそ、肩の具合は良くなったのかい?」
「良くなったんだか良くなってないんだか。よく分かんねぇな。まあ、毎年の事だからな。ところでシゲさん。あっちの方はどうなんでぇ?」
「それなんじゃがな・・・・・・・・・。」
「なんでぇ?あんまし良くねぇのか?」
「その逆なんじゃ。今年はえらい豊作なんじゃよ!」
「なに!シゲさんとこもか!」
「ゲンさんとこもなのかい?こりゃあ今年は、やり甲斐があるのぅ。」
「まったくでぇ!ところでシゲさん!いい具合に太ったんじゃねぇか?」
「ゲンさん。あんたが言うと嫌みに聞こえるよ?ゲンさんには負けるよ。お腹も髭も。」
「いやいやいや。わしだって村長に比べたら赤子も同然よ。」
「あの人は、わしらの鏡じゃからな。」
「違いねぇ。あの人がいなかったら、この村は成り立たなかったからな。」
「それよりゲンさん。たっつぁんの事、聞いとるかい?」
「なんでぇ?たっつぁんがどうかしたのか?」
「どうやら一頭逃げたらしいんじゃよ。」
「あんだってぇ!?たっつぁんもツイてねぇなぁ。去年は、風邪で参加出来なかったってのに今年もかぁ。」
「どうやらそうでもないらしいんじゃよ。」
「たっつぁんの奴!無理矢理にでも参加する気なのか!?やめとけやめとけ。一頭いねぇだけでもだいぶ違うんだぞ?下手したら振り落とされて怪我しちまう!」
「そうじゃないんじゃよゲンさん。今年から役場が貸し出しを行うそうなんじゃ。」
「なに?やっとやるってぇのか!わしら何年も前から言ってたんだぞ!」
「まあまあ、ゲンさんそう熱くならんで、ええじゃないか。これでたっつぁんも今年は参加出来るんじゃから。」
「シゲさんは、甘過ぎるんだよ!もっと早くに役場は、貸し出しを行うべきだったんだ!今年の行事が終わったら文句の一つでも言ってやんねぇとな!そうでもしねぇとわしの腹の虫がおさまんねぇよ!」
「相変わらずじゃなゲンさん。そうじゃ!風邪で思い出したんじゃがな。」
「ん?」
「今年は、クマハチの奴がひきおったみたいじゃ。」
「クマハチが!?あの馬鹿!あれほどわしが体調管理には気を付けろと、口を酸っぺくして言っておいたってのに!何をやってやがるんだ!」
「だから、午後一番で編成についての集会があるんじゃよ。」
「なんでぇシゲさん。それを伝えに来たのか!」
「うっかり話が脱線してしまったようじゃな。ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」
「相変わらずはどっちでぇシゲさん。ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」
「じゃあ、ゲンさん。わしは、あとジロウさんとがんちゃんとサクゾウとコウノスケにこの事を伝えに行かなきゃならんからこの辺で。」
「あっ!シゲさん!」
「なんじゃ?」
「コウノスケのとこには、わしが行くよ。」
「ええのか?」
「あのやろうときたら、三日前に収穫用の袋を借りに来たまんま、返すのをすっかり忘れてやがるからよ。取りに行くついでに伝えとくよ。」
「コウノスケも相変わらず忘れっぽいのぅ。あれは、忘れっぽいんじゃなくて単に自分勝手で図々しいだけか。ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」
「笑い事じゃねぇよシゲさん!」
「すまんすまん。」
「あれがねぇとせっかく豊作に実った玩具も収穫出来ねぇんだからよ。」
「収穫が終わったらそろそろじゃな。今日あたり、わしもソリの最終調整に取り掛かるとするかのぅ。」
「何を言ってやがるんでぇシゲさん!あんた、毎日ソリと睨めっこじゃねぇか!ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」
「ゲンさんも人が悪いのぅ。見とったんなら声を掛けてくれればええじゃないか。」
「楽しそうに手入れをしてたもんだからついつい。ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」
「のぅゲンさん?」
「ん?」
「今年もええクリスマスにせんとな。」
「あったりめぇよ!今から子供達の喜ぶ顔が目に浮かぶってもんよ!」
「そうじゃなぁ。わしらは、あの笑顔を見るために頑張っとるようなもんじゃからな。じゃあ、ゲンさん。またあとで。」
「おう。トナカイに襲われんなよ!」
「ゲンさん?いくらなんでも、まだまだわしだってトナカイなんぞに負けはせんよ!ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」
「ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。じゃあ、シゲさん。午後の集会で・・・・・・・・・。さてと、これから忙しくなってきやがるぞ!ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」

第二十六話
「さんたくろーす村」

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2006年12月20日 (水)

「第二十七話」

「次の次の方どうぞ!」
立ち上がろうとした僕は、思わずズッコケそうになった。なぜ僕をとばす!てか、次の次と言っても僕しかいないじゃないか!
「ガチャッ。バタン。」
僕は、医者の姿を見て再びズッコケそうになった。ハゲヅラに付けヒゲって!なんてコントな医者なんだ!まあ、百歩譲ってハゲヅラは何となく分かるよ。けど、なんでお師匠さんみたいなヒゲなんだよ!それ、チョイスおかしいだろ!だが、僕はツッコミを入れなかった。熱っぽくて体がだるくてお腹の調子も良くなかったので、そんな余裕は微塵もなかったからだ。もし、そんな余裕があったなら、とっくに会社に行っている。
「お掛け下さい。」
いやいやいや、あんたの手の方向に腰掛けたらひっくり返って頭打っちゃうよ!また違う病院行かなきゃいけなくなるよ!
「ここでいいんですよね?」
そう言って僕は、丸い回転椅子に座った。
「ブッブッーッ!!」
その音に驚いた僕は、思わず立ち上がってしまった。椅子の下にブーブークッションって!
「なんで?」
あまりの出来事に僕は、気付くと無意識に自然と出て来た言葉で医者に尋ねていた。
「今日は、どうなさいました?」
だいぶ普通だ!ノンリアクションだよ!あんたが仕掛けたんじゃないのかよ!引っ掛かった僕の方が馬鹿みたいじゃないか!一人で驚いちゃったりなんかしちゃったりしちゃってさ!なんか面倒臭い雰囲気満々だなぁ。さっさと進めよう。
「なんか熱っぽくて体がだるくてお腹の調子も良くないんですよ。」
「いやそうじゃなくって、ちくわで例えて症状を言ってもらわないと。」
えっ!?ちくわ!?
「なぜにちくわ?」
「私の好物だから。」
知らないよ!あんたの好物なんかどうだっていいよ!特に知りたくもないプチ情報だよ!だいたいどうやって体の具合をちくわで例えるんだよ!
「どうやって言えばいいんですか?」
「そうだねぇ。長細くて真ん中に穴が開いてて・・・」
ちくわで例えるんじゃなくて、ちくわを例えちゃってるよこの人。案の定、面倒臭いなぁこの医者。
「真面目に診てもらえませんか?」
「これは失敬。では、気を取り直して・・・・・・・・・あなたの病気は!いったいどれだー!!のコーナー!!」
なんかご陽気に始めちゃったよこの医者。
「さて、このコーナーはですね。私が三つ病気の名前をあげます。そしてあなたには、その中の一つを選んでもらいます。」
三択ね。って言ってもクイズなんだか何なのかよく分からないけどさ。でもツッコミなんか入れないよ。だって面倒臭いからね。病気が分かるなら何でもいいよ。
「1番風邪。」
ああ、きっとそれだよ。
「2番風邪。」
それもだよ。
「3番風邪。」
まさかの展開だよ!いい加減過ぎるだろ!
「さあ!どれ!」
えっ?どれ?って聞く事なの?もうどれだっていいよ。どれだって同じだろ?何なんだこの無意味な作業は!何番だっていいよ!
「1番で。」
「いいんですね?」
「はい。」
「本当に1番でいいんですね?」
「いいです。」
「本当に?」
こんなとこ引っ張ってどうするんだよ!もう、さっさっとやってくれよな!
「1番で。」
「もっと大きな声で!」
「1番で!」
「もっともっと!!」
「1番で!!」
「なるほど。熱っぽくて体がだるくてお腹の調子も良くないんですか。」
なんだこの敗北感は・・・・・・・・・なぜ僕が負い目を感じなければならないんだ。とにかく面倒臭い。早く薬を貰って帰りたい。むしろ薬だけでいい。
「そうです。熱っぽくて体がだるくてお腹の調子も良くないんですよ。」
「難しいなぁ。赤いボタンと青いボタンを同時に押しながらレバーを上下に動かしてダイヤルを回さないと開かない金庫をお持ちなんですかぁ。」
確かに難しいよ。そんな風にしないと開かない金庫を持っていたらね。でもだよ?もしも僕がそんな金庫を本当に持っていたとしよう。だからってそれをなぜ医者のあんたに話さなきゃならないんだよ!どんなに僕とあんたの間に人を入れて伝言を頼んだとこで、そんな風には伝わらないだろ!面倒臭い指数かなりのもんだなぁ。
「そんな事、言ってませんよ。早いとこ診察して下さいよ。」
「もちろんだとも!」
僕は、初めて本気で人を殴りたいと思った。
「熱っぽくて体がだるくてお腹の調子も良くないんですね?」
「そうです。」
「私思うんですよ。」
「何ですか?」
「病院に行きなさい。そして、人に優しくしなさい。けして、自分一人だけで生きているだなんて思うんじゃないぞ。先生、いつでもここにいるからな。今日はもう寝なさい。おやすみ。」
優しな言い方とお言葉やなぁ。先生に相談して本当に良かった。って馬鹿!
「ここが病院じゃなかったら、いったいここは何なんですか?八百屋さんですか?」
「安いよー安いよー!奥さん!今日はねぇ。大根が安いよ。ってコラ!やらせるんじゃないよ!」
乗っかってきちゃったよ!それにしてもノリツッコミ下手だなぁ。セリフもだいぶ棒読みだったしさ。
「熱っぽくて体がだるくてお腹の調子も良くないと言ったらあれですよ。」
何回同じ事を言ってんだよこの医者は!まあ、だいたい分かるけどさ。
「やっぱり・・・・・・・・・か」
「やっぱりガンです!」
そのやっぱりって言葉は、いったいどこに掛かってるんだよ!本当に面倒臭いなぁ。
「何で精密検査もしてないのにガンと言い切れるんですか?」
「やだ?じゃあ何がいいかなぁ?どんな病気が似合うかなぁ?」
洋服屋さんじゃないんだからさ!似合うってなんだよ似合うって!もう答え言っちゃおう。だって、この医者面倒臭いんだもん。
「風邪でしょ?」
「まあね。」
僕は思った。人を不愉快にさせる笑顔って本当にあるんだなと。
「心配せんでもただの風邪じゃ。」
ここにきてお師匠さん出て来ちゃったよ!登場までえらい長かったなぁ。
「でも、ただの風邪で安心しました。」
「ただの風邪って言っても支払いがただって訳じゃないですよ。」
ガキみたいな事を言ってんじゃないよ。
「分かってますよ。」
「ただの風邪って言うのは、あなたがただで風邪になったと言う意味です。」
「お金を払ってなる風邪なんてあるんですか?」
「ありますよ。」
ないよ!
「そこのコンビニの横にある自動販売機で売ってますよ。あっ!?でも昨日、撤去されてたなぁ。」
なんでしてやったりみたいな顔してんだよ!見に行かないよ!別に帰りに確かめに見に行ったりなんかしないんだからガキみたいな下手な言い訳すんなよな!心底面倒臭い医者だなぁ。
「じゃあ、念のために一応診察しますんで上着を脱いで下さい。」
まったく、とんでもなく時間の無駄しちゃったよ!
「はい。後ろ向いて。」
なんか無駄にエネルギーを使った感じがするなぁ。
「はい。それじゃあ、上着を着たら次は熱を測りましょう。」
ん?待てよ?なんだか様子がおかしくないか?なんか変だぞ?
「やっぱりちょっとありますね。」
これ?普通じゃない?普通に診察してない?ここら辺のくだりこそ、ボケる要素満載じゃないの?
「念のために注射を打っときましょう。」
「は、はい。」
「注射を取ってきますんでお待ち下さい。」
「はい。」
「ガチャッ。バタン。」
なんだか拍子抜けした感じだなぁ。まるで、今まで起きていた事が全て絵空事のようにさえ思えてきたよ。もしかしたら僕は、勘違いしていたのかもしれない。
「ガチャッ。バタン。」
「それでは腕を捲くって下さい。」
って!?なんでパイまみれになっちゃってんだよ!「あんた誰だよ!」的になっちゃってるよ?向こうでいったい何があったんだよ!勘違いしていたのが勘違いだったよ!
「はい。終わりましたよ。」
そんな視界で無事に注射が終わった事が奇跡に近いよ!
「それじゃあ、お薬の方を19種類出しときますね。」
多っ!?とてもじゃないけど、もし食後の話だったら無理な量だよ!
「2、3種類程度にしてもらえませんか?」
「分かりました。じゃあ、3種類を一回分出しときます。」
少なっ!?昼過ぎには、また取りに来なきゃならないだろ!
「二、三日分ぐらいもらえませんか?」
「分かりました。じゃあ、三日分お出ししましょう。」
ここら辺は、相変わらずの面倒臭さだなぁ。そうだ!
「運動は出来ますか?」
「ああ、運動ね。どんぐり拾い以上でんぐり返し未満の運動なら出来ますよ。」
基準が分からないよ!悪かったんだね。聞いた僕が悪かったんだね。
「軽い運動なら出来るって事ですか?」
「そうですね。あと食事の方は、しばらく油っこいものは控えて下さい。」
満面クリーム顔で言うなよな!さっきっからパイがボタボタ落ちてるし、なんか見た目からしてグダグダ感あり過ぎだろ!
「それじゃあ、すぐお薬をお出ししますんで、受付の方でお待ち下さい。」
「はい。」
やっとだよ。やっと終わったよ。なんか病状が悪化した気がプンプンするよ。
「ガチャッ。」
「はぁ。」
出ちゃうよ。そりゃ溜め息も出ちゃうよ。出ちゃいますよ。
「バタン。」
「ガーン!」
タライだ。きっとドアの向こうで医者の頭の上にタライが落ちたんだ。でも僕は、ドアを開けて確かめる事などせず、長椅子に腰掛けた。なぜかって?それはどうでもいい事だからだ。そして、それはとても面倒臭い事だからだ。僕は、しばらく座りながら考えていた。次、病気になったらどこに行こうかと。ん?それにしても?すぐって言ってたのに気持ち遅くないか?僕は、受付を覗き込んだ。
「すいません。」
さっきいた受付の女性の姿が見当たらない。
「すいませーん。」
なにしてるんだ?こっちは早く帰って薬飲んで寝たいのに。
「すいませーん!」
待たせ過ぎじゃないか?
「すいませんっ!!」
「お待たせしました。」
案の定だよ!案の定あの医者が女装して出て来ちゃったよ!パイが残ってるし化粧が中途半端だし!やるならちゃんとやれよな!とことん面倒臭いなぁ。
「こちらを食後にお飲み下さい。」
絶対にツッコミを入れるものか!入れてたまるか!
「分かりました。」
「お大事に。」
「ありがとうございました。」
こんな屈辱的な気持ちで感謝の言葉を述べたのは、生まれて初めてだよ!
「ガチャッ。」
どうせ・・・・・・・・・。そう思いながら僕は、ドアを開けて外に出た。
「バタン。」
「ガーン!」
ほらね。やっぱりだ。僕は、もちろん振り返る事もツッコミを入れる事もなく、もう病気なんてうんざりだと思いながら家路を急いだ。

第二十七話
「コントな医者」

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2006年12月27日 (水)

「第二十八話」

モシ
完全犯罪ノルールガ
「完全犯罪=捕マラナイ」
「完全犯罪=証拠ガナイ」
ダトシタラ
僕ハ完全犯罪者デス!!
シカモ
詐欺
痴漢
窃盗
誘拐
強盗
放火
ナドノ犯罪デハナク
殺人デデス!!
捕マラナイドコロカ
現ニ
警察モFBIモ
ドンナ機関モガ
僕ヲ捕マエル事ガデキテイナイ!
僕ガ完全犯罪者ダト言ウ事スラ
気付イテモイナイ!
コノ段階デ
完全犯罪ノ成立デス!
ヤリ方デスカ?
知リタイデスカ?
教エマショウカ?
誰ニモ分カラナイヨウニ殺シ
誰ニモ見ラレナイヨウニ死体ヲ処理シ
誰ニモ知ラレナイヨウニ社会ニ溶ケ込ム
実ニ簡単デ安易デス!!
言ッテシマエバ
怨恨
憎悪
快楽
復讐
ナドニ惑ワサレズ
タダヒタスラニ
殺人ダケヲ遂行スレバイイノデス
無関心
無関係
無意味
デ行エバイイノデス
ソレト
少シノ知識ト
少シノ注意力ガ
必要デス
プラスα
綿密ナ計画ダトバレナイヨウナ
計画性ガ大切デス
アトハ
空気ヲ吸ウヨウニ
瞬キヲスルヨウニ
ゴク自然ニ
マルデソレガ
当タリ前カノヨウニ
実行スルダケナノデス
ヤル時ハ
何ノ躊躇イモナク
オモイキッテヤレバイイダケノ事デス
完全犯罪ナド
タワイモナイ!!
ダガ!!
ソンナ
クダラナクテ
ナンノ得ニモナラナイ
馬鹿ラシイ事ヲ
僕ハヤラナイ!!
絶対ニヤラナイ!!
ヤラナイカラコソ
僕ハ完全犯罪者ナノダ!
ヤレルノニヤラナイ
ヤラナイカラ捕マラナイ
ヤラナイカラ証拠モナイ
「捕マラナイ=完全犯罪」
「証拠ガナイ=完全犯罪」
ユエニ
ココニ完全犯罪成立!!
イカニ凄腕刑事デモ
ドンナ名探偵デスラ
僕ヲ
捕マエル事ナドデキヤシナイ!!
イカナル大国ダロウガ
ドレホドノ情報機関デサエモ
僕ヲ
完全犯罪者ダト
認識スル事サエモデキヤシナイ!!
密室デモナケレバ
トリックモナイ
殺人ヲ犯シテイナイノダカラ
死体モナイ
マルデ事件ニスラナラナイ
マサニ僕ハ
完全犯罪者ナノデス!!

第二十八話
「完全犯罪者ノ完全犯罪」

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