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2007年1月 3日 (水)

「第二十九話」

 僕が学校帰りにたて笛を吹きながら歩いていると、大きな緑色のドラゴンが道を塞いでいた。
「どいて!」
僕は、寝ているドラゴンに向かって言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
ドラゴンは、何も言わなかった。目を片方開けて僕を見たけど、何も言わなかった。そしてまた、目を閉じて寝てしまった。
「こんなとこに寝てたら邪魔じゃないか!!」
僕は、さっきよりも大きな声で寝ているドラゴンに向かって言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
やっぱりドラゴンは、何も言わなかった。大きなあくびをしたけど、何も言わなかった。その時一瞬、火が出た事には驚いたけど、そんな僕の姿なんか見ようともせず、ドラゴンは寝ていた。
「どいてよ!!」
「ベシッ!」
僕は、のの字に曲がったドラゴンの尻尾をランドセルから抜き出した30センチ物差しでおもいっきり叩いた。
「ギロッ!」
ドラゴンは、閉じていた両目を大きく開けて僕を睨み付けた。
「ギロッ!」
僕もドラゴンの事を睨み付けた。
「エーン、エーン、エーン、エーン。」
そしたらドラゴンが急に泣き出した。僕は、一瞬何が起こったのか分からなかったけど、それでもドラゴンを睨み付けていた。
「グスン・・・・・・なん・・・・・・なんでみんな・・・・・・ぼっぼっ・・・・・・僕の事を邪魔者扱いするんだ!」
そして、ドラゴンは震えた大きな声で僕に向かって言った。
「えっ!?」
僕は、ドラゴンの迫力と涙に驚いた。
「ズズズー!ぼく・・・・・・僕は、ただ寝ているだけじゃ・・・・・・ないか!」
鼻を啜りドラゴンが言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
僕は、黙ってドラゴンの言ってる事を聞いていた。
「おじいざんぼおばあざんぼ・・・・・・おじざんぼおばざんぼ・・・・・・おにいざんぼおねえざんぼ・・・・・・びんなびんなぼぐを・・・・・・ぼぐを・・・・・・ヒック、ヒック。」
ドラゴンの顔は、グシャグシャになってた。そして、ドラゴンは大きく一回深呼吸をした。
「ねぇ?僕はいったいどこで寝たらいいの?」
ドラゴンは、真っ赤な目で僕を見た。
「分からないよ。分からないけど・・・・・・きっとここで寝ちゃいけないんだよ。ここは、みんなの道なんだからさ。みんなが通る道なんだからさ。君だけの道じゃないんだからさ。だから・・・・・・ここで寝てちゃいけないんだよ!」
ってドラゴンに言おうと思ったけどやめた。ちょっと遠回りだけど、僕は空き地の方から帰る事にした。
「じゃあね。」
僕は、ドラゴンにさよならして歩き出した。また、たて笛を吹きながら歩き出した。すると僕の後ろからドラゴンの声が聞こえた。
「ありがとう!」
って声が聞こえた。

第二十九話
「少年とたて笛
      ドラゴンと道」

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