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2007年4月 4日 (水)

「第四十二話」

「すいません。お聞きしたいのですが?宜しいですか?」
「聞くがいい。」
「この扉を開けたいのです。」
「なら開けるがいい。」
「ですが開かないのです。」
「なら諦めるがいい。」
「どうしても開けたいのです。」
「なら開けるがいい。」
「何度も開けようとしているのですが、開かないのです。」
「なら諦めるがいい。」
「諦める訳にはいかないのです。」
「なら開けるがいい。」
「でも扉の開け方が分からないのです。」
「なら諦めるがいい。」
「向こう側に、どうしても行きたいのです。行かなければならないのです。」
「なら行くがいい。」
「この扉を開けなければ行けないのです。」
「なら開けるがいい。」
「どうやれば開けられるのか?この扉の真横に立ってらっしゃる貴方なら、もしやご存知かと?」
「なら聞いてみるがいい。」
「知っているのですか?」
「喜ぶがいい。」
「良かった。知っているのですね。でしたら僕に扉の開け方を教えて下さい。お願いします。」
「こうやって!こうやって!この辺をこうやっといてから!ここをこう!そしてこう!さらにはこう!こんな感じで開けるがいい。」
「出来ればジェスチャーも取り入れて説明して欲しいのですが?」
「なら出題するがいい。」
「別にクイズをやりたい訳ではないのです。そう言う意味のジェスチャーではないのです。」
「ハイレベルなものから出題するがいい。」
「ですからそう言う意味ではないのです。それに、僕が出題して僕が解答するのは、あまりにも不自然な事なのでは?」
「なら司会にまわるがいい。」
「特にクイズ番組をやりたい訳ではないのです。それに、出題している時点で僕は司会者なのでは?」
「ならトーク中心にゲストの感動エピソードを引き出すがいい。番組の最後には、豪華プレゼントをハガキ抽選で発表は発送をもって行うがいい。」
「番組どうこうではなく、全体的に司会者になるつもりはないのです。僕はただ、この扉を開けたいだけなのです。」
「なら開けるがいい。」
「開かなくて困っているのです。ですから、扉の開け方を知っているのなら教えて下さい。」
「なら呪文を唱えるがいい。」
「呪文ですか?」
「なら呪文を唱えるがいい。」
「でしたら、その呪文を教えて下さい。お願いします。」
「適当に唱えるがいい。」
「えっ!?適当にですか?」
「とにかく思い当たる呪文を適当に唱えるがいい。何となく唱えてみるがいい。」
「何となくでいいのですか?」
「早く唱えるがいい。」
「は、はい。分かりました。では・・・ひらけ!扉!・・・・・・・・・開きませんが?」
「三回連続で唱えるがいい。」
「ひらけ!扉!ひらけ!扉!ひらけ!扉!・・・・・・・・・開きませんが?」
「もっと“ひ”の部分を強調して唱えるがいい。」
「ひ!らけ扉!ひ!らけ扉!ひ!らけ扉!・・・・・・・・・やはり開きませんが?」
「なら帰るがいい。」
「どうしてそうなるのですか?僕の事をからかっているのですか?でしたらやめていただきたい。」
「なら頬を殴るがいい。」
「そこまで怒ってはいません。それに、僕は暴力は嫌いです。それはなぜか?暴力では何も解決されないからです。」
「右頬を殴るがいい。」
「だから、暴力は嫌いだと言っているではないですか。」
「あの時のあの酒場の時のように、あの看板娘のあの取り合いの時のあのケンカの時のように殴るがいい。」
「あの多過ぎです。勝手にストーリーを組み立てないで下さい。」
「全治三週間ぐらい殴るがいい。」
「結構な怪我ではないですか。それに、貴方とは初対面ではないですか。誰かが聞いたら誤解するような人聞きの悪い事を言わないで下さい。」
「なら疑われないようにするがいい。」
「貴方が原因です。」
「なら謝るがいい。」
「貴方がです。・・・本当に扉の開け方を知っているのですか?」
「疑いたいなら疑うがいい。」
「疑いたくもなります。」
「なら帰るがいい。そして、帰る途中に犬に首根っこを噛まれるがいい。」
「嫌です。」
「帰る途中に意味もなく会う人、会う人に苦笑いされるがいい。」
「嫌です。」
「後ろ向きに歩きながら帰るがいい。」
「嫌です。」
「なら帰るのやめるがいい。」
「僕は、一度として帰るなどと口にはしていません。」
「帰るのやめるのやめるがいい!」
「だから、僕は帰りません。それになぜ、少し怒り口調なのですか?僕は、早くこの扉の向こうに行きたいのです。」
「なら行くがいい。」
「何度も言っていると思いますが、扉が開かないのです。」
「なら寝るがいい。」
「寝る?」
「そう。いくらやっても無理ならば、腹をくくって寝るがいい。一夜漬けなどと甘い考えをしていた自分を後悔しながら眠りにつくがいい。」
「今は、テスト勉強をしている訳ではないのですよ?」
「受験戦争に巻き込まれるがいい。」
「ましてや受験をする気などないのです。」
「なら働くがいい。」
「就職か進学かで悩んでいるのではないのです。」
「ならこれからは、一家の大黒柱として存分に大黒するがいい。」
「何がどうなったら話がそんな方向に進むのですか?どうでもいい事ですが、僕はまだ独身です。だいたい大黒するとは何なのですか?僕は、この扉を開けたい。ただそれだけなのです。」
「なら開けるがいい。」
「だから開け方を教えて下さい。タダとは言いません。ちゃんとそれなりに御礼はします。」
「金では人の心を動かす事など出来ないのだと思い知るがいい。」
「す、すいません。安易な発言をしてしまいました。貴方の誇りを傷付けてしまった事を深くお詫びします。」
「なら振り込むがいい。」
「なんだかんだで、結局はお金で解決しようとしているではないですか。」
「手数料は差し引いて振り込むがいい。」
「変なとこに小さなサービス精神を見せないで下さい。」
「小さなサービスの積み重ねで我が社が大きくなった事を新入社員の君も肝に銘ずるがいい。」
「勝手に就職させないで下さい。僕を助けると思って、どうか扉の開け方を教えて下さい。」
「なら聞くがいい。」
「お願いです。扉の向こう側で大切な人が待っているのです。」
「なら急ぐがいい。」
「貴方に言われずとも十分急いでいます。ですから、扉の開け方を本当の本当に知っているのなら教えて下さい。」
「鍵穴を見るがいい。」
「鍵穴ですか?鍵穴・・・・・・鍵穴・・・・・・鍵穴・・・・・・すいません。鍵穴が見当たらないのですが?」
「子供騙しに引っ掛かるがいい。」
「見事に引っ掛かりましたよ。結構、入念にチェックしてしまいましたよ。」
「なら笑うがいい。」
「ふざけないで下さい!貴方って人は!人が困っているのがそんなに面白いですか!人を茶化してそんなに楽しいですか!それが真面目に貴方の言っている事に耳を傾けている者に対してする行為ですか!少しは人の気持ちを考えたらどうですか!!」
「なら怒るがいい。」
「もう怒りましたよ!」
「気がすんだのなら帰るがいい。」
「だから!僕は扉の向こう側で助けを待っている大切な人のとこへ行かなければならないのです!」
「なら開けるがいい。」
「馬鹿ですか貴方は!開けたくても開けられないのです!さっきっから何度言えば分かるのですか!」
「なら諦めるがいい。」
「そんな事は絶対に出来ない!僕がここで諦めたら!大切な人は、死んでしまうのです!ですからお願いです!扉の開け方を!どうか僕に教えて下さい!!」
「ミイラ取りがミイラになるがいい。」
「何て事を言うのですか!例え僕が死のうが!彼女の命は助けます!」
「ならこんなとこで油を売ってないで、さっさと行くがいい。」
「キーッ!!分からない人だな!扉が開かないんだ!僕は!絶対に諦める訳にも帰る訳にもいかないんだ!」
「なら呪文を唱えるがいい。」
「やりました!開きませんでした!」
「なら“ら”の部分を強調して唱えるがいい。」
「もう騙されませんよ!次は鍵穴ですか?そうやって子供がする悪戯のような事を言って僕をからかうのは!いい加減やめていただきたい!!何なら貴方がこの扉を開けて下さっても良いのですよ!」
「なら・・・・・・・・・。」
「なら?」

第四十二話
「なら他を当たるがいい」

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