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2007年5月

2007年5月 2日 (水)

「第四十六話」

 二人の男がだだっ広い廃墟の真ん中の鉄の支柱に背中合わせに座りながら鎖で縛り付けられていた。男達の視界の先には、デジタル表示でカウントダウンを刻み続けている時限爆弾が置かれていた。
「どうするんだ!」
中年刑事が体をくねらせながら言った。
「俺に聞くなって!」
若いカメラマンもまた、体をくねらせながら答えた。
「だいたい君があんな写真を撮ってくるからこんな目に遭うんじゃないのか?」
「あんたら警察が間抜けだからだろ!だから俺が代わりにスクープ写真を撮ってきてやったんじゃないか!」
「確かに我々警察は、連続殺人鬼である奴の手掛かりを見失っていた。だがな!君に間抜け呼ばわりされる覚えはないぞ!」
「へっ!よく言うよ!こうやって俺らがまんまと奴の罠にはまって爆弾を目の前にして縛り付けられてんのも!元はと言えばあんたのせいじゃないか!」
「何で私のせいなんだ!」
「奴は確か、二人でこの廃墟に来いって言ったよな?」
「ああ。だからちゃんと二人で来たじゃないか!」
「来るのは二人だって構わないさ。」
「なら問題ないじゃないか。」
「応援もなしで本当に二人だけで来る馬鹿がどこにいるんだよ!」
「いや、だが奴は二人で来いと言ったんだぞ?だから私は、その大事な約束を守ってだな。ここに来る事を誰にも言ってないんだぞ?約束を守った私がなぜ責められないといけないんだ!」
「真面目かっ!」
「真面目の何が悪い!どこがいけない!私と言ったら真面目!真面目と言ったら私!ってぐらい私は、署内でも真面目な男で通ってるんだ!」
「そんなんじゃ奥さんに逃げられちまうぜ?つまらない男ね。とか言われてな!」
「もう逃げられたよ・・・・・・・・・。」
「えっ!?」
「しかも今・・・君が言った言葉を残してな・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・悪かったな。」
「いいさ・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・罪の擦り合いをしている場合じゃないな。とりあえず俺らが今やらなきゃならない事は、一秒でも早くここから逃げ出す事だ。」
「そうだな。」
「罪の擦り合いは、その後だ。」
「どこでやるんだ?」
「はあ!?」
「いや、気持ち悪いんだよ。何かそう言うあやふやな約束って、性格的にとても気持ち悪いんだよ。はっきり決めて欲しいんだよ。」
「・・・・・・・・あんた友達いないだろ?」
「らしき人間は、ちらほらいるよ。」
「らしきでちらほらだったら、絶対いないな。」
「で?どこの公園で罪の擦り合いをするんだ?」
「何で公園は、決定済みなんだよ!だったら、あんたの好きな公園でいいよ!」
「五つあるんだが。」
「一番好きな公園でいいよ!」
「だとすると・・・・・・この建物の裏にある公園だな。あそこは、ひっそりとしていて人も滅多に来ない穴場的な公園なんだよ。私はね。何か悩み事があったりすると、よくあの公園に足を運ぶんだよ。あの公園は不思議といろ」
「話の腰を折っちまって悪いんだけどさ。」
「何だ?」
「死ぬ気かっ!!何でせっかく逃げ出したのに、わざわざこの建物の真裏にある公園に行かなきゃならないんだよ!確実に爆発に巻き込まれるだろ!」
「君が一番好きな公園を選べと言うから、私は素直に答えただけじゃないか!何で私が怒られないといけないんだ!」
「とことん真面目かっ!!少しは頭を使えよ!この建物から一番遠い公園でいいよ!」
「軽い旅行になるが準備は出来ているのか?」
「出来てる訳がないだろ!どこまで行く気なんだよ!」
「新婚旅行で一度だけ行った事のある海外の公園なんだがな。とても素晴らしい公園だったんだよ。確か国宝に指定されてい」
「おい!」
「ん?」
「現状をよく考えろよな!あんたの公園100選なんかどうだっていいんだよ!とりあえず俺は、爆弾が爆発する前にここを逃げ出したいんだよ!」
「同感だ。やっと意見が一致したみたいだな。」
「やっとなのかよっ!で?どうやってこの体に巻き付いてる鎖と鉄柱に溶接されてる足枷を外すんだ?」
「君は、やけに丁寧な説明口調なんだな。」
「あんたが間抜けだから分かりやすく説明してやってんだよ!」
「意外と優しいんだな。」
「真面目一本やりかっ!!で?何かいいアイディアとかないのか?」
「思ったんだがな。」
「小さい事でもいいから、どんどん試していこう。」
「あの爆弾って本物なのか?」
「そこからかっ!!」
「考えてもみたまえ。もしあの爆弾が偽者で、カウントがゼロになっても爆発しなかったらだよ?それまであれこれと一生懸命にもがいていた私達は、まるで馬鹿じゃないか。」
「何もしないで爆弾が爆発したら、俺らはもっと馬鹿だろ!」
「なるほど。一理あるな。」
「一理じゃなくって全理だよ!!あんた物凄く疲れる人だな!」
「妻もよくそれと似たような言葉を言っていたよ。」
「なんか奥さんの出てった気持ちが分かるよ。」
「分かるだと!?まさかお前が妻の浮気相手なんじゃないだろうな!だとしたら許さんぞ!」
「出てった理由って浮気だったのかよっ!ついでに変な言い掛かりすんなよ!あんた自分のガキとも真剣にケンカするだろ?」
「君は、さっきから私の事がよく分かるのだな。まさか!?エスパー!?」
「んな訳ないだろ!ガキかっ!!どっからエスパー出て来たんだよ!」
「もし君がエスパーなら、一つ頼みがあるんだが!」
「エスパーじゃないって言ってるだろ!!」
「あっそ。」
「あんた人を怒らすの得意だろ?」
「やっぱりエス」
「パーじゃない!!何か悪かったな!あんたの頼みを聞いてやれないでさ!」
「気にするな。さあ、早くこんな所とは、おさらばしようじゃないか!」
「何なんだあんた!・・・・・・爆弾の解除は諦めるとしてだ。」
「一番盛り上がるのにか?」
「盛り上がるって何だよ!」
「だってほら、よく映画とかで三秒前とかにコードを切って止めたりするじゃないか。あのシーンが観ていて一番ハラハラドキドキするとは思わないのか?」
「なら、あんた一人でハラハラドキドキしててくれ。俺は逃げる!」
「私も逃げる!」
「もう、好きにしてくれ・・・・・・そうだ!あんた刑事だろ?何か鎖を切るのに使えそうな道具とか持ってないのか?」
「家に帰れば立派なのがあるぞ!必要なら取ってくるが?」
「その時点で必要ないんだよ!今は、持ってないんだな?」
「自慢じゃないが持ってない!!」
「まったくだな!!くそっ!こんな下らない会話をしてる最中にも爆破へのカウントダウンがされてるってのに!ちくしょうっっっ!どうすりゃいいんだ!!」
「少しは落ち着いたらどうなんだ?」
「分かってる!分かってるが爆弾を目の前にしちまうと気持ちが焦っちまうんだよ!」
「私だってこう見えても君と同じだ。」
「全然そんな風には見えないけどな。」
「私も爆弾が爆発した時の事を考えると気が気ではない!だがな。カウントダウンしているデジタル表示の数字を見てみろ。逆にこう考えるんだ。まだあんなに時間がある!とな。」
「初めてまともな事を言ってくれたな。でもな・・・・・・・・・本当にあり過ぎなんだよ!!」

第四十六話
「爆発まで残り365日」

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2007年5月 9日 (水)

「第四十七話」

「じーちゃん!」
「・・・・・・・・・。」
「ねぇ!じーちゃん!」
「・・・・・・・・・。」
「じーちゃん?」
「・・・・・・・・・。」
「じー・・・・・・・・・ちゃん?」
「・・・・・・・・・。」
「ちょっと!?じーちゃん!じーちゃん!」
「・・・・・・・・・。」
「しっかりしてよ!じーちゃん!じーちゃーん!!」
「何じゃ?」
「じーちゃん!何やってんだよ!」
「死んだフリじゃが?」
「じゃーちゃんがやるとシャレにならないからやめてよね!心配した時間の無駄感が否めないよ。」
「・・・・・・・・・。」
「じーちゃん聞いてんの?」
「・・・・・・・・・。」
「じーちゃん?」
「・・・・・・・・・。」
「じーちゃーん!」
「それよりさっきっから、じーちゃん!じーちゃん!って、いったい何がそんなにじーちゃん何じゃ?」
「死んだフリ、ちょっとイラッとくるからやめてよね。」
「すまねぇ。孫よ。」
「いつの時代の人?」
「遠い未来よりの使者じゃ!」
「絶対むかしの人だったよね?」
「名前をジーチャンと言うんじゃ!」
「嘘じゃん!じーちゃんは名前じゃないでしょ!じーちゃんが名前だったら、世の中じーちゃんだらけでうじゃうじゃだよ。」
「それよりいい加減にじーちゃんに何の用があったのかを教えてくれんか?」
「僕が悪いの?・・・・・・あのね・・・・・・実はね・・・・・・学校でいじ」
「カァァァァァァァッペッ!!」
「何で話の途中で痰吐いちゃうの?しかも縁側にいるんだから庭の方に吐きなよ!どーしてわざわざ後ろ向いて部屋に吐いちゃうんだよ!ばーちゃんに怒られても知らないからね!」
「あの痰はのう。奇跡の痰と言ってな。あらゆる病気を治してくれるんじゃ。」
「吐いちゃダメじゃん!」
「学校でどうしたんじゃ?」
「ちゃんと拭いときなね。・・・・・・学校でいじめられてるんだ・・・・・・。」
「なんじゃと!?そりゃえらいこっちゃ!ママも大変じゃな!」
「どーしてママが学校でいじめられてる事になっちゃうの!?」
「いつもわしをいじめとるから罰が当たったんじゃと思ってな。いや、むしろ罰が当たれと思ったんじゃ!」
「じーちゃん!ちょっとじーちゃんってば!熱くなりすぎだよ!いいから座ってよ!ママはじーちゃんをいじめてなんかいないでしょ?あれは、じーちゃんが余計な事ばーっかするから怒られてるだけじゃん。」
「はて?」
「はて?じゃないよ。この前だってママの大事な化粧品を使ってお腹に顔書いてたじゃないか。」
「ちゃんと謝ったじゃろ?」
「お腹に書いた顔で謝ってたじゃん!」
「真の腹話術じゃ!」
「何言ってんだよ。それに口紅でお尻にハートマーク書いてお尻をくっつけたり離したりして遊んでたじゃん!」
「あれは新しい恋占いじゃ!」
「じーちゃんのさじ加減一つじゃないか!」
「お前?学校でいじめられとるのか?」
「たまにじーちゃんのペースに着いてけないんだよね。・・・・・・そうだよ。いじめられてるんだよ。」
「じゃっ!」
「ちょっちょっと!?どこ行くんだよ!じーちゃんってば!」
「小遣いをせびりに来たんじゃろ?じーちゃん今月あと三百円しか持っとらんのじゃよ。勘弁しとくれよお代官さま~って誰がお代官さま何だよバカヤロー!」
「え~!?何かいろいろ言いたい事があるんだけど何を言っていいのか分かんないよ。とにかく小遣いが欲しくて来たんじゃないよ。」
「何じゃ。びっくりして寿命が五百年も縮んじゃったじゃないか。」
「どんだけ長生きする気なの?・・・・・・だからね。どうやったら学校でいじめられないか聞こうと思ったんだよ。」
「いじめられとるって、いったいどんな風にいじめられとるんだ?」
「クラスにね。」
「クラスって何じゃ?そやつが我が孫をいじめとるのか!」
「そこからなの!?クラスってのは教室の事だよ。」
「ならその教室君が我が孫をいじめとるのか!」
「そこ分からないのおかしいでしょ!教室君て何なの?教室が僕をいじめるってどんな風になっちゃうの?」
「それはもう世にも恐ろしい事になっとるじゃろうな。」
「でね。」
「出おったな!必殺無視無視攻撃!」
「だって、何かきっと突き詰めて聞いても具体的に中身がないかなと思ってさ。」
「さすが我が孫じゃ!千里眼じゃな!」
「えっ?何か難しい言葉使わないでよ。」
「具体的に意味聞かれんで助かったわい。」
「何かモヤモヤ感が否めないよ。話を戻していい?」
「どんと来なさい!」
「クラ・・・教室にね。僕より背が高くて体格のいい奴がいるんだ。」
「十八メートルか!」
「スーパーロボットじゃん!何なら僕もそこそこのもんじゃん!ちゃんと最後まで話を聞いてよ!でね。そいつがいつも僕にケンカを吹っ掛けてくるんだよ。」
「何じゃ何じゃ。ケンカで負けとるのか!」
「だって・・・・・・・・・。」
「だったら強くなりんしゃい!」
「どこの人?・・・・・・でもどうやって?」
「わしを誰だと思っとるんじゃ!」
「じーちゃん。」
「そうじゃよ!じーちゃんじゃよ!わしがじーちゃんだと何か問題でもあるんですか!」
「どこに怒り出す要素があったのか分からないよ。」
「わしもじゃ!」
「・・・・・・だったらケンカに強くなる方法を教えてくれるの?」
「もちろんじゃ!」
「本当!?」
「ジーチャン ウソ ツカナイ ジーチャン ソラ トベル!」
「さっそくついちゃったじゃん!」
「お前には、教えとらんかったがな。実は、じーちゃんは何を隠そう!拳法の使い手なんじゃよ!」
「本当に!?」
「ジーチャン ウソ ツカナイ ジーチャン バーチャン!」
「見た目でバレバレの嘘じゃん!ねぇねぇ。だったら拳法を僕に教えてよ!」
「そうじゃな。そろそろ我が家系に代々伝わる秘伝の拳法をお前に教えてもいいかもしれんな。」
「やったー!これでもうケンカに負けないぞ!ところでじーちゃん?」
「何じゃ?」
「秘伝の拳法って名前ってあるの?ほら、だってよく拳法って名前があるでしょ?酔拳とか蛇拳とかさ。」
「じゃーちゃん拳じゃ!」
「じゃーちゃんじゃん!代々伝わってないじゃん!じーちゃんから始まってるじゃん!歴史浅いじゃん!」
「歴史とは多少の誤りがあるもんなんじゃよ。」
「多少じゃなくってほぼだよ!ほぼ!」
「細かい事にこだわる孫じゃな。」
「かなり大事なとこだと思うよ?」
「強くなれればいいんじゃろ?」
「うん。強くなれるならそれでいいよ。」
「じゃったらまずは、庭に出るんじゃ!」
「分かった。」
「トゥ!」
「トー!でしょ?トゥになっちゃってるよ?」
「さあ!わしのやる動きをよく見とくんじゃぞ?」
「分かった!」
「まず入れ歯がなくてあたふたするさまから名付けられた入れ歯の舞じゃ!」
「えっ!?」
「ふぁふふぁほぉほぉふぁふほぉ。」
「喋り方までその時にならないでよ!何言ってるか分からないじゃん!何て言ってるの?」
「ふぁふふぁほぉほぉふぁふほぉ。って言ったんじゃが?」
「まんまだったのね。ややこしい感が否めないよ。ふぁふふぁほぉほぉふぁふほぉ。って言えばいいの?」
「なかなか筋がいいじゃないか!」
「ただ、ふぁふふぁほぉほぉふぁふほぉ。って言ってるだけだよ?全然、舞ってないんだけどいいの?」
「次じゃ!」
「いいんだ!」
「究極奥義じゃ!」
「早くないじーちゃん!いきなり究極奥義教えてくれちゃうの?」
「仕方ないじゃろ?じーちゃんはな。後ちょっとで囲碁をやりに行かないとならんのじゃよ。」
「ええ~っ!何か片手間感が否めないよ!」
「なーに!この究極奥義はすぐに体得出来るから大丈夫じゃ!」
「そこが究極奥義として疑わしいんだよね。」
「その見た目から名付けられた。」
「られたってじーちゃんが名付けたんでしょ?」
「究極奥義!死んだフリじゃ!・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ええーっ!!残念感が物凄く否めない究極奥義だったよ。」
「いいか!今日のとこは、入れ歯の舞と究極奥義死んだフリの二つの技を伝授するのが、お前の技量から見てもやっとじゃ。」
「囲碁行くからでしょ?」
「あんまりたくさん技を伝授し過ぎてお前の体が壊れたらあれじゃからな。」
「囲碁行くからなんでしょ?あれって何?あれって?ええーっ!こんなんで本当に強くなれるの?」
「じーちゃんを信じるんじゃ!もし今度ケンカに負けたなら、そん時はそん時じゃ!」
「いやフォローとかしてよ!」
「じゃっ!じーちゃんは、囲碁に行ってくるけどちゃんと稽古をやっとくんじゃぞ!」
「本当に行くの?」
「当たり前じゃ!今日のこの日をどれほど楽しみにしとった事か!!」
「わ・・・分かったよ。行ってらっしゃい。」
「孫よ!もし生きて帰って来れたなら!この手で抱きしめてもいいでありますか!」
「囲碁行くだけでしょ?」
「ほな行ってくるで~!」
「陽気過ぎだよ。どんだけ楽しみにしてたんだよ。はぁ~本当にこんなんで強くなれるのかな~?・・・・・・うん!じーちゃんを信じよう!よし!入れ歯の舞だ!ふぁふふぁほぉほぉふぁふほぉ。」

第四十七話
「OLD IS NEW」

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2007年5月16日 (水)

「第四十八話」

「おい人間!人間の男!男人間!」
「うるさい兎だな?何だよ!」
「我輩の耳を放してくれ!」
「放したらお前は逃げるだろ?」
「逃げるなどと卑怯な真似などしないから、我輩の耳を放してくれ!」
「信じられないね。」
「男人間!信じる心を失ってしまうってのは、とても悲しい事なのだぞ?」
「お前さっき逃げただろ!」
「過去を振り返るな男人間!」
「はいはい。」
「我輩には、全てお見通しだぞ?お前は、我輩を食べる気だろ!」
「そうだ。」
「しかも家族で食べる気だろ!」
「ああ、そうだ。」
「悪い事は言わない。男人間よ。我輩を食べるのは、やめておけ!」
「何でだ?」
「我輩には、毒があるのだ!我輩は、毒兎なのだよ!」
「そうかい。」
「いや男人間!本当なのだよ!」
「何でお前に毒があるって分かるんだ?」
「昔、我輩を食べた人間が死んだのだ。」
「どうして食われたのにお前は生きてるんだ?」
「その辺は、シークレットと洒落込もうじゃないか。男人間よ。」
「嘘なんだろ?」
「嘘ではない!男人間よ!」
「そもそもお前みたいに喋る兎自体が嘘みたいな存在なんだから、お前の言ってる事なんか最初から信じちゃいないさ。」
「男人間!お前とお前の家族が死んでも我輩は知らんぞ?」
「お前は、鍋の中から俺達一家の行く末を見守っていてくれ。」
「そうだ男人間よ!」
「何だ?」
「こんな事もあったのだぞ!ある日、我輩の所にそれはそれは偉い。とてもとても偉すぎる学者がやって来たのだ。でな、そのとてつもなく偉い学者が言うにはな。我輩の体には毒があるのだと。」
「何て学者だ?」
「えっ?」
「学者の名前だよ。有名な学者だったんだろ?」
「有名人間だったな。有名過ぎる人間だったぞ!」
「教えてくれよ。何て名前の学者だったんだ?」
「確か・・・・・・ここまで出てるんだが・・・・・・。」
「やっぱり嘘か。」
「嘘ではない!えいと・・・・・・そうだ男人間!」
「思い出したのか?」
「我輩の耳を放してくれたら思い出せそうだ。」
「やっぱり逃げたいだけか。」
「違う!我輩は、ただ男人間に有名人間の名前を教えたいだけだ!我輩は、生まれてから一度も逃げた事などない!」
「だからお前は、さっき逃げたばっかりだろ?」
「逃げると言うのはな男人間よ!逃げ切れてこそ初めて逃げたと言えるのだよ!」
「逃げようとしたんだろ?」
「男人間よ!」
「何だ?」
「何とか食べる方向ではなく、我輩を飼うと言う方向に話を持って行く事は、出来ないものだろうか?」
「そりゃ無理だ。なんせ俺達一家は、兎が大の好物だからな。悪いな兎。」
「我輩は、家事手伝いなら何でも熟せるぞ?美味しい兎鍋も作ってやろう。」
「別にいいよ。」
「何を遠慮しているのだ男人間よ。お前らしくもない。我輩は、知っているぞ?男人間の一家は兎が大の好物だって事をな。」
「俺がさっき言ったからだろ?兎よ。お前さっきから自分で何を言ってるのか分かってて話をしているのか?兎が兎を料理するなんて聞いた事ないぞ?」
「我輩もだ。」
「食われたくないだけなんだろ?もういい加減に観念したらどうだ?」
「男人間!観念しろとは、我輩に負けを認めろと言う事か?」
「簡単に言うとそうだな。」
「我輩は、敗北など認めないぞ!例えこの肉体が滅びようとも魂はこの世に生き続けるのだ!」
「だったら食われてもいいじゃないか。」
「いや男人間。それとこれとは、話が全然別なのだ。恥を承知で正直に言おうではないか!実は我輩、今ちょっとだけ恰好付けたかっただけなのだ!」
「そうかい。」
「男人間!!!」
「何だよ大きな声だして!」
「びっくりして手を放すかなと思ってな。実験を試みただけだ。」
「兎。」
「何なのだ?手を放す気になったのか?」
「お前、必死だな。」
「まあな。我輩は、何事にも一生懸命に取り組む兎だからな。」
「だったら一生懸命に食べられてくれ。」
「そうだ男人間!」
「今度は何だ?」
「今度とか言うな。男人間よ。我輩と組んで一儲けしようではないか!」
「何だって?」
「喋る兎などきっと世にも珍しいぞ!すぐに有名になってお金が入ってくるぞ!どうだ!なかなかのナイスアイディアだとは思わないか?男金持ち人間になれるのだぞ!」
「興味ないね。俺は今のままの暮らしで十分に満足している。それこそ大金なんてもんは、俺にとったら毒みたいなもんだ。」
「よし!ではこうしようじゃないか!男人間は、今までの暮らしをする。その間に我輩が稼いでくる!どうだ?悪い話しではないと思うのだが?」
「おいおい兎。俺の話をちゃんと聞いてなかったのか?金なんかいらないんだよ。それに、何だかんだでお前逃げる気なんだろ?」
「逃げるものか!」
「まあ、どっちにしろお前はもうすぐ家族みんなの胃袋の中だ。」
「面白いな男人間!そのジョークを食われる前に森の動物達に教えたいから耳を放してくれ。」
「次から次へと、よくもまあ下らない事を考えつくもんだな。」
「やはり我輩を食べる気なのか?」
「食べる気はない。」
「男人間!考え直してくれたのだな!うむうむ。男人間ならそうするだろうと我輩は、信じていたぞ!さすが男人間だ!立派だ!男人間の中の男人間だ!」
「食べる気じゃなく食べるって決定してるんだよ。」
「返してくれ男人間!今の我輩の大絶賛の言葉を返してくれ!」
「さて兎。あの赤い屋根の家が俺の家だ。」
「男人間!今まで黙っていた事を許してくれ!」
「まだ何か下らない事を言うつもりなのか?」
「我輩には、男人間に隠していた重大な秘密があるのだ!」
「別に聞きたくないって言っても喋るんだろ?」
「実はな・・・我輩はな・・・この国の国王なのだ!」
「・・・・・・・・・。」
「ん?どうした男人間よ?なるほど、さすがにこの真実には、男人間も驚いたって事か。分かるぞ男人間。しかし、我輩は男人間が我輩にしている我輩の耳を掴むと言う行為を許してやるぞ!男人間は、きっと我輩と兎を間違えたのだろうからな。我輩が男人間の立場でも同じ事をしただろう。さあ、お遊びはこれぐらいにして、我輩の耳を放してくれ。男人間とその家族を我輩の城に招いて兎を使った料理を振る舞おうではないか!」
「プッハハハハハ!」
「嬉しいか男人間!嬉しい時や楽しい時には、そのように大声で笑っていいのだぞ!逆に悲しい時や淋しい時には、大声で泣いていいのだぞ!」
「ハハハハハ!兎よ。そこまでの嘘をよく考えついたな。」
「いや男人間よ。これは嘘ではないのだ。」
「ほら、もうすぐ家だ。」
「男人間?よく聞くのだ!今までついた嘘に対しては、我輩が謝ろうではないか。だがな。男人間よ。我輩が国王って事は、本当なのだぞ!」
「分かっています分かっています。分かっていますよ国王さま。」
「そうか。ありがとう男人間よ。ならば、この手を放してくれないか?」
「ちゃんと国王さまを家族みんなで美味しく食べさせてもらいますよ。」
「おい男人間!話が違うではないか!」
「はいはい。」
「我輩は、この国の国王なのだぞ男人間!お前は、国王を鍋にして食べると言うのか!」
「久しぶりの兎鍋だ。」
「よだれを垂らすな男人間!何度も言うが我輩は、国王なのだぞ!」
「さあ、家に着きましたよ国王さま。」
「貴様!我輩を食べたら重罪なのだぞ!処刑なのだぞ!」
「国王さまに家の鍋の湯加減を気に入ってもらえるといいんですけどね。」
「まだ遅くはない!考え直せ男人間よ!」
「楽しかったよ兎。」
「我輩は兎ではない!」
「ガチャッ。」
「帰ったぞー!今日は、兎鍋だー!」
「我輩は国王だー!!」
「バタンッ!」

第四十八話
「謎の死を遂げた一家」

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2007年5月23日 (水)

「第四十九話」

「シャーッ!」
勢いよくカーテンを開けると今日は凄く快晴だ。
「!?」
「シャーッ!」
そして、勢いよくカーテンを閉めた。まずい!僕は、殺し屋に命を狙われているんだった!うかつにカーテンなんか開けてマンションの部屋の向かいにあるビルの屋上なんかからライフルで撃たれたりなんかしたら洒落にならないじゃないか。
「今日一日どうやって過ごそうか・・・・・・・・・。」
う~ん。悩むな~。悩みまくりだな~。こんないい天気なんだからどこかに出かけたりしたいけど・・・・・・命を狙われてる身なんだからお出かけはまずいよな?
「とりあえず朝飯でも食おう。」
ちょっと待てよ?果たして家にある食料を食っちゃったりして大丈夫なのか?信じちゃっていいのか?もしかしたら殺し屋が食料に毒を入れてる可能性だってあるんだよな。超一流の殺し屋だったらそれぐらい朝飯前だよな。
「食べるのやめよう。」
どうせ今、家には食料がない事なんだしね。実に簡単な話だ。今日一日は、何にも食べずに過ごせば済む事なんだよ。簡単過ぎる話だ。あまりにも簡単過ぎて
「グゥ~。」
思わずお腹が鳴っちゃうね。あ~難しくなってきた。朝の段階でこのお腹の減り具合だと夜までに確実に僕は、空腹で死んでしまうな。
「はっ!?」
もしかしたらこれは殺し屋の綿密に練られた『僕暗殺計画』の一つなのかもしれないぞ?こうやって僕の事を餓死させようとしているに違いないぞ!
「そうはさせない!」
させてたまるか!お出かけしてやる!食料を買いに行ってやる!買い物袋いっぱい!両手いっぱい!夢いっぱい!ガッツリ買ってやるからな!殺し屋の思い通りにさせてたまるか!
「さて!」
僕は細心の注意をはらって歯磨きと洗顔と寝グセ直しと着替えをいつも通りの時間をかけてササッと終わらした。
「ヘヤ~!」
トイレではいつもより長い時間をかけて格闘した。
「ジャァァァァァ!」
今日の相手は、なかなかの強敵だったと『うんち戦記』に書き記しておこう。
「バタンッ!」
さあ準備はととのったぞ!いざ買い出しに行こう!
「!?」
僕は、ドアを開けようとドアノブに手を掛けた瞬間にある考えが頭を過ぎった。
「ガチャッ。」
こうやってドアを開けたと同時に
「バタン。」
爆発でもしたら今頃僕は、ドアの外側に立っていないだろうってね。木っ端みじんだろうってね。危ない危ない。
「気を付けよう。」
これからは、何をするにも慎重にやらねば!
「カチャカチャ。」
そう心に誓いながら鍵を掛けて
「ポチッ。」
僕はエレベーターのボタンを押した。
「待てよ?」
エレベーターの扉が開いた瞬間に殺し屋がマシンガンを持って立っていたら?エレベーターの中に手榴弾が置いてあったら?
「タッタッタッタッ!」
「やっぱり階段だな!」
殺し屋の裏をかくナイスアイディアだ!しかも日頃の運動不足も解消出来るし、まさに一石二鳥のワンダフルでスーパーでアメージングでビューティフルなアイディアだ!僕は、六階から一階までとことん猛烈ダッシュで駆け下りた。
「これは!?」
マンションの入り口までやっとの思いで辿り着いた僕を待ち受けていたのは
「ザァァァァァァァァァ!!」
大粒の雨だった。何でだよ!どうしてだよ!あんなにもいい天気だったじゃないか!僕が雨男だからか?いやいや、そんなはずはない!だって僕は、雨男じゃなくって犬好き男なんだから!マンションの入り口に犬が群がって僕の行く手を遮っていたのなら諦めがつくけど・・・・・・これは諦めがつかないぞ!
「雨か・・・・・・もしや!?」
これも殺し屋の仕業なのか!?僕をこのマンションから出さない為の『僕暗殺計画』のこれも一貫だってのか!?とんでもない殺し屋だ!なんて一流なんだ!
「負けるもんか!」
僕は、こんな嵐のような天候に負けるような犬好き男じゃない!
「タッタッタッタッ!」
出前だ!
「カチャカチャ。」
出前をとってやる!
「ガチャッ。」
朝昼晩と三食おそばを食べてやるからな!
「バタン。」
確か出前用のおしながきがどこかにあったはずだ!こんな時の為に取っておいたはずだ!
「ガサゴソガサゴソ!」
「あったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
僕は、歓喜の雄叫びを上げた。遠くまだ見ぬ未開の地に住んでいるであろう海王星人に聞こえるような感じで・・・・・・・・・。ざまあみろ一流の殺し屋!今からざるそばを出前してやるからな!
「ガビーン!」
まるでブラックホールに吸い込まれて行く気分だった。我が両眼を疑いたくなかったけど、とことん疑ったよ。ホント、後で眼医者さんに行かなきゃって思うぐらい擦りまくったよ。まさか今日がおそば屋さんの定休日だなんて・・・・・・あんまりだ。
「はっ!?」
これすらも殺し屋の仕業なのか!?違う違う!これはおそば屋さんの仕業だ!つまり殺し屋=おそば屋さんの店主って事か?あの岡持ちの中には、あらゆる殺しの道具が入ってるって事なのか?そんなおそば屋さんのおそばなんか・・・・・・そんなおそば屋さんのおそばなんか・・・・・・そんなおそば屋さんのおそばなんか・・・・・・
「食えるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ビリビリビリ!」
僕は、出前用のおしながきをビリビリに破り捨てた。殺し屋おそば屋さんのおそばをこれから先もニコニコ食べ続けていく自信がなかったからだ。
「ん?」
何やらお腹に痛みが走ったような?走らなかったような?
「!?」
走ったね。
「!!」
完璧に走っちゃってるね。
「!!!」
激痛だね。
「!!!!」
やばいね。
「トイレ!!」
僕は、お尻の穴に相当気を使いながら、ゆっくりゆっくりトイレに向かい、ドアを開けズボンとズボンの下に履いてる何かを脱いで、何の事故もなく無事に便器とのドッキングに成功した。
「ヒョエ~!」
それはそれは、物凄い下痢だった。まさか!?これも殺し屋の仕業!?いつの間に僕に毒を!?なんて考える余裕なんかある訳がなかった。
「キョエ~!」
お腹を出して寝ていた僕が悪いんだ。最近ちょっと暖かくなってきたと思って油断していた僕が悪いんだ。
「ムギョ~!」
油断が僕に下痢を招き入れたに違いない。
「ムヒョ~!」
そして僕は今、その招き入れた油断をお尻の穴から放出しているんだ。

 結局、僕の下痢は夜まで続いた。薬を飲みベットとトイレとの往復を繰り返すだけの一日だった。『うんち戦記』をパート5からパート7まで書き終えてしまうぐらい凄まじい戦いだった。この日を外伝として書いてもよかったかもしれないけど、それは僕のプライドが許さなかった。『うんち戦記』はあくまで『うんち戦記』なのだから!そして、戦いに疲れ果てた孤独の戦士は、いつしか眠りについていた。殺し屋と下痢に振り回された暇な一日だったと思いながら・・・・・・・・・。

 きっと暇な日って誰にでもありますよね?もしあなただったらどんな風に暇な日を過ごしますか?そんな完璧なまでに暇な日をどう過ごすかによって人間の真価が問われる。と僕は思うんです。

「シャーッ!」
カーテンを開けると今日も外は今のところ快晴だ。お腹の調子も今のところは快調だ。
「さて!昨日は、殺し屋に狙われてるって設定で暇な一日を乗り切ったけど、今日はどんな設定で今日一日をの」
「ピシッ!」
「!?」
う・・・撃た・・・・・・れた!?
「ドサッ!」

第四十九話
「暇な日」

「ふぅ~。」
私は、殺し屋。こうやって依頼の無い暇な日には、自分の腕が鈍らないようにトレーニングをしているの。

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2007年5月30日 (水)

「第五十話」


















































第五十話
「書かない!!」








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