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2007年5月 2日 (水)

「第四十六話」

 二人の男がだだっ広い廃墟の真ん中の鉄の支柱に背中合わせに座りながら鎖で縛り付けられていた。男達の視界の先には、デジタル表示でカウントダウンを刻み続けている時限爆弾が置かれていた。
「どうするんだ!」
中年刑事が体をくねらせながら言った。
「俺に聞くなって!」
若いカメラマンもまた、体をくねらせながら答えた。
「だいたい君があんな写真を撮ってくるからこんな目に遭うんじゃないのか?」
「あんたら警察が間抜けだからだろ!だから俺が代わりにスクープ写真を撮ってきてやったんじゃないか!」
「確かに我々警察は、連続殺人鬼である奴の手掛かりを見失っていた。だがな!君に間抜け呼ばわりされる覚えはないぞ!」
「へっ!よく言うよ!こうやって俺らがまんまと奴の罠にはまって爆弾を目の前にして縛り付けられてんのも!元はと言えばあんたのせいじゃないか!」
「何で私のせいなんだ!」
「奴は確か、二人でこの廃墟に来いって言ったよな?」
「ああ。だからちゃんと二人で来たじゃないか!」
「来るのは二人だって構わないさ。」
「なら問題ないじゃないか。」
「応援もなしで本当に二人だけで来る馬鹿がどこにいるんだよ!」
「いや、だが奴は二人で来いと言ったんだぞ?だから私は、その大事な約束を守ってだな。ここに来る事を誰にも言ってないんだぞ?約束を守った私がなぜ責められないといけないんだ!」
「真面目かっ!」
「真面目の何が悪い!どこがいけない!私と言ったら真面目!真面目と言ったら私!ってぐらい私は、署内でも真面目な男で通ってるんだ!」
「そんなんじゃ奥さんに逃げられちまうぜ?つまらない男ね。とか言われてな!」
「もう逃げられたよ・・・・・・・・・。」
「えっ!?」
「しかも今・・・君が言った言葉を残してな・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・悪かったな。」
「いいさ・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・罪の擦り合いをしている場合じゃないな。とりあえず俺らが今やらなきゃならない事は、一秒でも早くここから逃げ出す事だ。」
「そうだな。」
「罪の擦り合いは、その後だ。」
「どこでやるんだ?」
「はあ!?」
「いや、気持ち悪いんだよ。何かそう言うあやふやな約束って、性格的にとても気持ち悪いんだよ。はっきり決めて欲しいんだよ。」
「・・・・・・・・あんた友達いないだろ?」
「らしき人間は、ちらほらいるよ。」
「らしきでちらほらだったら、絶対いないな。」
「で?どこの公園で罪の擦り合いをするんだ?」
「何で公園は、決定済みなんだよ!だったら、あんたの好きな公園でいいよ!」
「五つあるんだが。」
「一番好きな公園でいいよ!」
「だとすると・・・・・・この建物の裏にある公園だな。あそこは、ひっそりとしていて人も滅多に来ない穴場的な公園なんだよ。私はね。何か悩み事があったりすると、よくあの公園に足を運ぶんだよ。あの公園は不思議といろ」
「話の腰を折っちまって悪いんだけどさ。」
「何だ?」
「死ぬ気かっ!!何でせっかく逃げ出したのに、わざわざこの建物の真裏にある公園に行かなきゃならないんだよ!確実に爆発に巻き込まれるだろ!」
「君が一番好きな公園を選べと言うから、私は素直に答えただけじゃないか!何で私が怒られないといけないんだ!」
「とことん真面目かっ!!少しは頭を使えよ!この建物から一番遠い公園でいいよ!」
「軽い旅行になるが準備は出来ているのか?」
「出来てる訳がないだろ!どこまで行く気なんだよ!」
「新婚旅行で一度だけ行った事のある海外の公園なんだがな。とても素晴らしい公園だったんだよ。確か国宝に指定されてい」
「おい!」
「ん?」
「現状をよく考えろよな!あんたの公園100選なんかどうだっていいんだよ!とりあえず俺は、爆弾が爆発する前にここを逃げ出したいんだよ!」
「同感だ。やっと意見が一致したみたいだな。」
「やっとなのかよっ!で?どうやってこの体に巻き付いてる鎖と鉄柱に溶接されてる足枷を外すんだ?」
「君は、やけに丁寧な説明口調なんだな。」
「あんたが間抜けだから分かりやすく説明してやってんだよ!」
「意外と優しいんだな。」
「真面目一本やりかっ!!で?何かいいアイディアとかないのか?」
「思ったんだがな。」
「小さい事でもいいから、どんどん試していこう。」
「あの爆弾って本物なのか?」
「そこからかっ!!」
「考えてもみたまえ。もしあの爆弾が偽者で、カウントがゼロになっても爆発しなかったらだよ?それまであれこれと一生懸命にもがいていた私達は、まるで馬鹿じゃないか。」
「何もしないで爆弾が爆発したら、俺らはもっと馬鹿だろ!」
「なるほど。一理あるな。」
「一理じゃなくって全理だよ!!あんた物凄く疲れる人だな!」
「妻もよくそれと似たような言葉を言っていたよ。」
「なんか奥さんの出てった気持ちが分かるよ。」
「分かるだと!?まさかお前が妻の浮気相手なんじゃないだろうな!だとしたら許さんぞ!」
「出てった理由って浮気だったのかよっ!ついでに変な言い掛かりすんなよ!あんた自分のガキとも真剣にケンカするだろ?」
「君は、さっきから私の事がよく分かるのだな。まさか!?エスパー!?」
「んな訳ないだろ!ガキかっ!!どっからエスパー出て来たんだよ!」
「もし君がエスパーなら、一つ頼みがあるんだが!」
「エスパーじゃないって言ってるだろ!!」
「あっそ。」
「あんた人を怒らすの得意だろ?」
「やっぱりエス」
「パーじゃない!!何か悪かったな!あんたの頼みを聞いてやれないでさ!」
「気にするな。さあ、早くこんな所とは、おさらばしようじゃないか!」
「何なんだあんた!・・・・・・爆弾の解除は諦めるとしてだ。」
「一番盛り上がるのにか?」
「盛り上がるって何だよ!」
「だってほら、よく映画とかで三秒前とかにコードを切って止めたりするじゃないか。あのシーンが観ていて一番ハラハラドキドキするとは思わないのか?」
「なら、あんた一人でハラハラドキドキしててくれ。俺は逃げる!」
「私も逃げる!」
「もう、好きにしてくれ・・・・・・そうだ!あんた刑事だろ?何か鎖を切るのに使えそうな道具とか持ってないのか?」
「家に帰れば立派なのがあるぞ!必要なら取ってくるが?」
「その時点で必要ないんだよ!今は、持ってないんだな?」
「自慢じゃないが持ってない!!」
「まったくだな!!くそっ!こんな下らない会話をしてる最中にも爆破へのカウントダウンがされてるってのに!ちくしょうっっっ!どうすりゃいいんだ!!」
「少しは落ち着いたらどうなんだ?」
「分かってる!分かってるが爆弾を目の前にしちまうと気持ちが焦っちまうんだよ!」
「私だってこう見えても君と同じだ。」
「全然そんな風には見えないけどな。」
「私も爆弾が爆発した時の事を考えると気が気ではない!だがな。カウントダウンしているデジタル表示の数字を見てみろ。逆にこう考えるんだ。まだあんなに時間がある!とな。」
「初めてまともな事を言ってくれたな。でもな・・・・・・・・・本当にあり過ぎなんだよ!!」

第四十六話
「爆発まで残り365日」

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コメント

にゃはは!一緒に年越すこの二人みたいですよ(^∀^)

投稿: にゃん吉 | 2007年5月11日 (金) 19時47分

きっと相変わらずな感じなんでしょうね。
コメントありがとうございました。

投稿: PYN | 2007年5月12日 (土) 09時58分

……でも、やはり、こういう話の方が、「無邪気に笑えて好きだ!」というわたしは単細胞なんでしょうか???

今回は、オチが最後まで見えませんでした。脱帽!展開も冴えてました!特にキャラ設定!

投稿: MASSIVE | 2010年7月 8日 (木) 05時53分

無駄にキャラ設定の濃いパターンですね。

いえいえ!単細胞ではないですよ。無邪気に笑えるって、裏を返せば無邪気に笑えない事を知っているって事ですからね。って真面目かっ!偉そうに語っちゃって嫌ですね。

超短編の方は、短編以上にイロイロお試しな感じで、いろんな角度から好き勝手書いちゃってます。なので、短編よりも作品毎に好き嫌いが、はっきりしちゃうと思います。

コメントありがとうございました。

投稿: PYN | 2010年7月 8日 (木) 20時24分

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