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2007年6月20日 (水)

「第五十三話」

「ブーン!」
わし、寝てたの。
「ブーン!」
したら耳元で虫が飛んでんの。
「ブーン!」
わし、こう見えても神経質だから虫の羽音が物凄く気になったの。一度気になり出すともう駄目なの。だからわし、そのまま眠り続けてる事が出来なかったの。
「ブーン!」
「ガバッ!」
わし、掛け布団をガバッ!ってやって上半身を起こしたの。
「ブーン!」
この五月蝿い虫を退治する為にわし、上半身を起こしたの。
「ブーン!」
まずわし、本当に虫がいるのか肉眼で確認する事にしたの。
「ブーン!」
いたの。確かにいたの。わしの顔の回りをクルクル回ってるの。わし、直視し過ぎてちょっと酔いそうになったの。
「パチンッ!」
まずわし、右手と左手で挟み打ちにしてやろうと思ったの。だから、予行練習してみたの。
「パチンッ!」
「パチンッ!」
一回の練習じゃ不安だったから、後二回練習してみたの。だんだん右手と左手のタイミングが合ってきたの。わし、これならいける!って思ったの。
「パチンッ!」
やったの。タイミングばっちりだったの。
「ブーン!」
後は、虫が右手と左手にタイミングを合わせてくれれば退治出来たの。わし、こう見えても頭の切り替えが早いの。だから、挟み打ちやめて別の方法を考える事にしたの。
「ブーン!」
わし、ベットの脇にある三段目の引き出しからスプレーを取り出したの。これで虫を一撃必殺なの。
「プシュー!」
「ブーン!」
なんか金色が噴出したの。布団とか金色になっちゃったの。スプレー缶を凝視してみたら、金色って大きな字で書いてあったの。取り間違えたっぽいの。だから、今度はちゃんと殺虫スプレーって書いてあるやつを手に取ったの。そして、虫の方に噴出口を向けたの。これでジ・エンドなの。
「ブーン!」
「スー!」
空なの。中身が空だったの。バーサンのやつ買っとけなの。
「ガンッ!」
「ブーン!」
だから、殺虫スプレーを虫目掛けて投げたの。当たるはずもなく外れたの。
「ブーン!」
したら金色の虫がわしから離れて、ちょこっとへっこんだ奥の壁の方に飛んで行ったの。
「パン!パン!パン!」
「ブーン!」
だからわし、右手を銃の形にして撃ったの。三発目が確かに虫を撃ち抜いたの。でも、嘘んこの銃だったから死ななかったの。
「パン!パン!パン!」
「パン!パン!パン!」
「ブーン!」
だからわし、今度はベットの脇にある二段目の引き出しから本物の銃を二丁取り出して撃ったの。でも、壁に穴が開いただけだったの。たぶん、あの穴を見たらバーサン怒るの。激怒しちゃうの。
「ブーン!」
わし、だんだん腹が立ってきたの。朝から虫におちょくられてる事に腹が立ってきたの。
「ボッ!!」
だからわし、近くにあった火炎瓶を虫目掛けて投げてやったの。
「ブーン!」
ジュウタンは燃えたけど、虫は燃えなかったの。ジュウタンだからよく燃えるの。でもわし、頭の回転が早いから気付いたの。このまま燃え続けると確実に虫は殺せるけど、わしも殺せるって気付いたの。
「パリーンッ!」
だから、これまた近くにあった大きな花瓶を両手で投げて消火活動したの。
「シュー!」
「ブーン!」
見事に火を消す事は出来たの。でも、虫を消す事は出来なかったの。
「ブーン!」
わし、ベットの下にあるバットを取り出して車椅子に乗り込んだの。虫に近寄ってって、直接叩き殺す事にしたの。
「ブーン!」
「ボコッ!」
「ブーン!」
「バリッ!」
「ブーン!」
「ガシャーンッ!」
「ブーン!」
「ボコッ!ボコッ!」
「ブーン!」
「メキッ!メキッ!」
「ブーン!」
「バリバリバリ!」
「ブーン!」
「ガンッ!ガンッ!」
「ブーン!」
「パリーンッ!」
「ブーン!」
「ゴンッ!ゴンッ!」
「ブーン!」
随分としぶとい虫なの。なかなかの虫なの。虫ながらあっぱれなの。部屋が大変な事になってるの。
「ブーン!」
でも、今はそんな事関係ないの。虫がまたわしの顔の回りをクルクル回って挑発してきたの。わし、勘忍袋の緒が切れそうになったの。でも、切れなかったの。だから、タンスの一番上の引き出しからマシンガンを取り出したの。
「ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ!!」
わし、ぶっ放したの。辺り構わずぶっ放したの。ストレス解消も兼ねてぶっ放したの。
「ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ!!」
「ブーン!」
でも、虫には一発も当たらなかったの。もはやこれって、かなりの強運を持った虫なんだな。と思うしかなかったの。気付くとさらに部屋が大変な事になってたの。大変な事どころじゃなくて、大惨事なの。
「ブーン!」
わし、生まれて初めてなの。こんなに頭にきたの生まれて初めてなの。このとんでもない状態になってる部屋の中を悠々と飛び回ってる虫が憎くて憎くてしょうがないの。だからわし、クローゼットの中にあるバスーカ砲を取り出したの。
「ブーン!」
優雅に飛び回っていられるのも今のうちなの。もうすぐ木っ端みじんなの。わし、構えたの。憎たらしい虫目掛けてバスーカ砲を構えたの。そしてわし、うっすら笑ったの。勝利を確信したからうっすら笑ったの。虫は、あまりにもなめ過ぎたの。わしの事をなめ過ぎたの。
「ブーン!」
「終わりなの。」
「ドガーンッ!!」
「……………。」
物凄い煙と埃の先に見えたのは、いつも窓から見えるはずの景色だったの。それが壁から見えてるの。ついにやったの。わし、ついに虫を退治したの。
「ブーン!」
「!?」
まさかなの。そんな馬鹿ななの。虫が生きてたの。無傷で元気に飛び回ってるの。
「ブーン!」
こうなったらなの。こうなったらあれを使うしかないの。もう家なんかどうなったっていいの。また、建て直せばいいの。
「ブーン!」
「パカッ!」
わし、隠してあった自爆スイッチのある部分の壁を取り外したの。
「ブーン!」
この赤いボタンを押せばあの虫も終わりなの。
「ブーン!」
「!?」
その時なの。ボタンを押そうとしたまさにその時なの。虫が壁に開いた大きな穴から外に出て行ったの。わし、喜びのあまり涙が出てきそうになったの。でも、出なかったの。やっと終わったの。長い長い戦いがやっと終わったの。と同時にわし、最初から窓を開けてればよかったと言う邪念が脳裏を過ぎったの。けど、過ぎらなかった事にしたの。まあ、でもこれで一安心なの。
「ブーン!」
「ブーン!」
「!?」
と思ってたら入って来たの。今度は、二匹入って来たの。お友達も一緒に入って来たの。わし、再び自爆スイッチに指を当てたの。本当の本当に終わりにする為に自爆スイッチを押そうとしたの。
「ブーン!」
「ブーン!」
「ジ・エンドなの。」
「ガチャッ。」
「ジーサン!」
バーサンなの。バーサンが入って来たの。やばいの。この部屋を見たら絶対に確実に怒られるの。
「ジーサン!」
「ごめんなの。これには深い理由があるの。」
「自分の足で立っとるよジーサン!」
「えっ!?」
本当なの。本当に車椅子無しで自分の足で立ってるの。スキップとかも出来ちゃったりするの。これはまさに奇跡なの。これを奇跡と言わずに何を奇跡と言うのって事なの。ある意味、虫に感謝なの。

第五十三話
「Ⅰt’s a miracle!」

「って夢を見たの。」
「随分と派手な夢を見たんじゃのぅ。」
「バーサン、これはきっと何かのお告げみたいなものなの。たぶん正夢みたいなものだと思うの。」
「正夢のぅ。」
「そうなの。絶対に正夢なの。きっと近いうちに夢と同じ出来事が現実に起こるの。」
「でもジーサン?」
「何なの?」
「ジーサンは、車椅子に乗っとらんじゃろ。」
「そうなの。」

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コメント

やはり、PYNさんはこの手の話を書かせたら天才なの。

いや、久しぶりにお腹を抱えて笑いました!

オチがまたいい!

もう最高!

最近の世の中、おかしな話が多くてナンですが、ここは本当にパラダイスみたいなところだなぁ……。誉め過ぎでしたか?

また、お邪魔しますhappy01

投稿: MASSIVE | 2010年10月30日 (土) 10時06分

誉め過ぎです・・・・・・。
でも、素直に嬉しいの!嬉し過ぎちゃうの!

しかし、あまりハードルを上げ過ぎずにチラ見感覚で読んで下さいなの。

コメントありがとうございました。

投稿: PYN | 2010年11月 3日 (水) 13時18分

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