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2007年8月

2007年8月 1日 (水)

「第五十九話」

 みんなは、自分の宝物を持っているだろうか?

『国民宝物分配制度』

半年前に決まったこの制度。国民全員に宝物を分配すると言う制度だ。以前から宝物を所有する者は、国が行う『宝物鑑定検査所』に持って行き、そこで合格の『宝物印』を押してもらわなければならない。じゃあ、そこで不合格となった者や元々宝物を所有していなかった者はどうするのか?

『国民宝物分配制度』

そこで登場するのが、この制度だ。国は、宝物を通じて喜びや幸せ、逆に失った時の後悔や悲しみなどを教えていく方針らしい。因みに、宝物を失った者は、一定期間内に新たな宝物を自分で見つけるか、もしくは再び国から宝物を受け取るかのどちらかを行わなければならない。話が少し横道に逸れたが、国から宝物を受け取る場合、『宝物鑑定検査所』で手続きを踏んだあと、国がランダムに決めた宝物が自宅に送り付けられてくる。

『ヘドロ君』

そして、これが国から送り付けられてきた全身ヘドロで出来た僕の宝物、ヘドロ君だ。
「腹減ッタ。」
ヘドロ君は喋る。きっと存在的には、ペットのような感じなんだろうと思う。
「ウェェェェェェェェェ!!」
ヘドロ君は、口からヘドロを吐く。しかも、かなり頻繁にヘドロを吐く。そして、そのヘドロは強烈な異臭を放つ。でもって、普通に部屋が汚れる。
「眠イ。」
ヘドロ君は、よく寝る。だから、よく育つ。最初は、手の平に乗るぐらいの大きさだったのに、今では二メートルぐらいに成長した。高さもそうだけど、同時に幅もよく育った。もちろん、ヘドロ君は手の平に乗るぐらいの大きさの頃から可愛くない。ヘドロ君に可愛い時期なんてない。
「ブギィィィィィィィィ!!」
これは、ヘドロ君の鳴き声だ。聞いてるだけでも吐き気のする鳴き声だ。しばらくすると、窓にはびっしり虫達が張り付いている。何匹か事典で調べても名前が分からない虫も付いていた時もあった。
「デカイ鼻糞トレタ!」
ヘドロ君は、自分の鼻糞を収集している。いわゆる鼻糞収集家だ。もちろん鼻糞もヘドロだ。僕には区別がつかないが、ヘドロ君には区別がつくみたいだ。その鼻糞も強烈に臭い。ヘドロ君は、それを大事そうに一個一個ビンの中に入れて、そこら辺に保管している。今では、足の踏み場もないぐらいだ。
「ウェェェェェェェェェ!!」
僕は、なぜ自分が提出した家族の写真が宝物として不合格になり、おまけに没収までされたにも係わらず、どうしてこんなヘドロの化け物が宝物として合格なのかを考えた。
「ウェェェェェェェェェ!!」
まあ、答えなんか出る訳がない。問い合わせをしたとこで、「国の決定です。」と素っ気なく言われておしまいだ。

『国民宝物分配制度』

これの厄介な点を説明しなければいけない。基本的には、国から送り付けられてきた宝物は、手放す事が出来ない。誰かと交換したり、誰かと売買したり、故意に破壊した時点で即逮捕だ。場合によっては、極刑になる恐れもある。つまり、死刑だ。
「ウェェェェェェェェェ!!」
だから、僕はヘドロ君を手放したり売ったりする事が出来ない。まあ、貰ってくれる人も買ってくれる人もいないだろうけど・・・・・・・・・。自らの手で破壊する事も出来ない。ヘドロ君が自然に死ぬか、何かしらの国を納得させられるだけの紛失理由がない限り、僕は死ぬまでヘドロ君と一緒だ。
「ヘドロ君?」
「ナニ?」
「君って死ぬの?」
「分カラナイ。」
ヘドロ君と一緒にダンボールに入っていたもの。

『ヘドロ君取り扱い説明書』

によると、「基本的にヘドロ君は死にません。」と書かれていた。基本的って何だ?確かに、見るからに死にそうもない。「ただし、きちんと育ててあげないと死にます。」と付け加えて書かれていた。他には、生息地「下水道」とも書かれていた。
「ヘドロ君?」
「ナニ?」
「夕ご飯なににする?」
「汚イ物!」
好きな食べ物の欄には、読んだだけでも気分が悪くなるような物が書かれていた。でも、ヘドロ君の死=僕の死なので、僕は毎日一生懸命に汚い物を集めた。
「ヘドロ君?」
「ナニ?」
「暑くない?」
「調度イイ!」
ヘドロ君は、寒さを嫌い暑さを好む。だから、強烈な異臭が激烈な悪臭に変わり、猛烈な刺激臭になる。鼻の穴に何を詰めたって、それは無意味の一言。何度か警察が僕の家にやって来た事があった。でも、ヘドロ君の事を説明すると、「頑張って下さい!」と握手を交わし、納得して帰って行く。
「ヘドロ君?」
「ナニ?」
「お風呂入ってもいい?」
「ダメ!」
何が我慢出来ないって、僕も不潔にしないといけないって事だ。ヘドロ君は、基本的に清潔を嫌い不潔を好む。不潔にしていないと死んでしまうらしい。
「ウェェェェェェェェェ!!」
よく考えてみれば、こんな珍しいと言うか未知の生物は宝物かもしれない。でも、わざわざ宝物にする必要もない。そもそも宝物にしたくもない。誰にも自慢出来ないし、誰にも理解されないと思う。
「ヘドロ君?」
「ナニ?」
「君なんて宝物じゃない!!」
「オデ、ヘドロ君!オデ、オ前ノ事、好キ!」
その言葉だけなら素直に受け取ろう。だけど、抱き着くのだけはやめてくれヘドロ君。
「オ前モ、ヘドロ君!」
確かにヘドロ君のヘドロが全身にネチャネチャくっついてるけど、僕は断じて
「ヘドロ君なんかじゃない!!」
「ブギィィィィィィィィ!!」
聞いてないよ。
「ヘドロ君?」
「ナニ?」
「君は」
それは突然の事だった。

「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!」

「えっ!?」
大地震だった。
「ウェェェェェェェェェ!!」
「暢気に吐いてる場合じゃないよヘドロ君!このままじゃ!マンションが崩壊しちゃうよ!早く逃げないとダメだ!」
「ウェェェェェェェェェ!!」
「ヘドロ君!!」
そして

「ドガァァァァァァァン!!」

あっという間にマンションは、崩壊した。
「ん?」
生きてる。そう、僕は生きていた。この大地震が引き起こした大惨事の中、僕は生きていた。12階建てのマンションの5階に住んでいたのに、僕は無傷で生きていた。マンションは、跡形もなく崩壊したと言うのに・・・・・・・・・。
「ヘドロ君?」
しばらくして僕は、ヘドロ君の姿を探した。しかし、僕の回りには、ヘドロが飛び散って出来たと思われるヘドロの沼しかなかった。
「ピーポーピーポーピーポーピーポー!」
遠くの方からやって来るサイレンの音を聞きながら、僕は全てを理解した。マンションが崩壊する寸前にヘドロ君が僕を自分の体の中に入れて守ってくれたのだと・・・・・・・・・。
「ヘドロ君・・・・・・・・・。」
僕は、ヘドロの沼を見ながら呟いた。
「ありがとう・・・・・・・・・ヘドロ君。」
そして、命懸けで僕を守ってくれたヘドロ君に感謝した。僕は、最高の宝物を手にしていたんだと、この時初めて理解した。
「オデ、ヘドロ君!」
「ヘドロ君!?」
目を疑った。ヘドロの沼からちっちゃな、手の平に乗るぐらいの大きさのヘドロ君が出て来た。
「生きてたの?」
「生キテタ!!」
この時僕は、近くに落ちていた粉末洗剤の箱を無意識に手に取ると、何の迷いもなくヘドロ君に向け、ぶちまけていた。

第五十九話
「潔癖症な男」

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2007年8月 8日 (水)

「第六十話」

「ピッ!」
「指紋及ビ網膜情報ヲ承認シマシタ。」
「ウィーン!」
白衣を着た男が、幾多の厳重なセキュリティを通過してエレベーターに乗り込んだ。
「ピッ!」
「ウィーン!」
「ウーン!」
男は、地下1104階のボタンを押した。エレベーターの扉が閉まり、そして静かに動き出した。
「随分とのんびりしたご登場だな。」
エレベーター内に備え付けられているスピーカーから男の声が聞こえて来た。
「ごめんごめん。空が渋滞してたんだよ。」
「だったら地下でも地上でも使えばいいだろ?」
「落下事故でルートが全面封鎖されてたんだよ。」
「ならしょうがないな。でも最近は、下手くそなくせして珍しがってやたらと空を走りたがるドライバーが増えて困ったもんだな。」
「まあ、仕方ないさ。新しい事に興味を持つ。人間のいい部分だよ。」
「車が空を飛ぶ事がそんなに珍しいかねぇ。」
「僕らは、実験や試作を何度も繰り返して試乗していたからそうは思わないけど、世の中の人からしてみれば、画期的で好奇心をくすぐられる夢の未来カーなんだよ。」
「それで作った本人が事故に巻き込まれたんじゃあ、皮肉な話だな。はっはっはっはっはっ!」
「はいはい。どうせ僕は自業自得ですよ。でも今回の研究は、そうならないように願っててよ。」
「そうそう。今日だろ?第一号としてお前が実験台になるのは?」
「実験台って言われとあれだけど、この実験が成功すれば、人類にとっては大きな一歩になると思うんだ。」
「でも、本当にやるのか?ギリギリまで考えさせてくれって言ってただろ?」
「正直、ここに来る直前まで迷ってたんだ。でも、あの落下事故で決意が固まったんだよ。完璧なクローン技術が完成すれば、人間は失った箇所の体や病魔に侵された箇所の体を完璧に再生出来る。ただ、倫理に反する部分では、今でも本当にこのまま実験を進めていいものなのか迷ってるけどね。」
「まあ、準備万端で下で待ってるから、エレベーターの中でゆっくり答えを探せばいいさ。別に土壇場になってお前が中止にしたとこで、研究チームの誰一人として文句を言う奴なんかいないんだからな。」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ。」
「クローンの研究が全てじゃないんだ。お前にとっては、まだまだそんなもんは通過地点なんだからな。」
「君にそんな風に言われるなんて、何だか気持ち悪いな。」
「おいおい。俺だってたまには女以外も慰めてやる事もあるんだぜ?」
「君に慰められるとはね。天変地異でも起きなきゃいいけど?」
「はっはっはっはっはっ!言ってくれるじゃないか。だがなぁ、みんなお前の発想力や想像力や技術力には期待してるんだよ。まあ、何よりもお前と一緒に研究出来るのが楽しいんだけどな。」
「何だかくすぐったいな。」
「ちょっと子供っぽいけどな。」
「一言多いんだよ。」
「はっはっはっ!それじゃあ、下で待ってるからな。」
「うん。」
「淋しくなったら通話ボタンを押すんだぞ?」
「分かったよ。」
「じゃあ、退屈な旅を満喫して下さいコ」

「ガゴォォォォォォォォンッ!!」

大きな音と激しい揺れと共にエレベーターは、停止した。
「えっ!?どうしたんだ?」
男は、突然の出来事に動揺していた。何が起こったのか分からず、想定外の事態を引き起こした最新設備のエレベーター内。その密室の中に一人閉じ込められてしまった男は、必死に通話ボタンを押していた。
「おい!どうしたんだよ!いったい何が起こったんだよ!」
男は、軽いパニック状態に陥っていた。
「おい!みんな大丈夫なのか!返事をしてくれ!僕はエレベーターに閉じ込められた!外でいったい何が起こったんだ!誰か返事をしてくれよ!!」
「ガンガンガン!」
男は、必死になってエレベーターの扉を叩いた。
「ガンガンガン!」
「おーい!誰か!誰か返事をしてくれ!いったい外で何が起きたんだ!」
「ピッ!」
男は、再び通話ボタンのスイッチを押した。
「こちらコマツ!誰でもいい!頼む!誰か返事をしてくれ!!」

第六十話
「彼の名は、コマツ」

「こちらコ」
「ウーン!」
コマツが通話ボタンを押して喋っていると、静かにエレベーターが動きだした。
「どうでしたかコマツ博士?退屈な旅がスリリングな旅に変わった感想は?」
エレベーター内のスピーカーからは、先程の男の声が聞こえて来た。
「悪い冗談はやめてくれよ。」
「実は、冗談なんかじゃないんだ。」
「えっ!?本当に何かあったのかい?」
「旧冥王星の軌道が急に変わったんだ。」
「えっ!?」
「だが安心してくれ。SS財団の開発した軌道修正装置が作動して、すぐに旧冥王星の軌道は元に戻った。軌道修正装置から放たれたレーザーの反動で地球全体が多少の衝撃を受けたが、被害はゼロと確認された。」
「良かった。でも、もし旧冥王星が軌道を外したままだったらどうなっていたんだろう?」
「さあな?何にも起こらなかったかもしれないし、とんでもない天変地異が起こってたかもしれないな。まあ、何も起こらなかったからいいじゃないか。」
「SS財団・・・・・・・・・スカイシュリンプ財団・・・・・・・・・。」
「天才博士の無用の遺産がやっと役に立った訳だ。あれを作るに当たって博士は、他からの猛反対の声があったにもかかわらず、半ば強引に完成させたらしいからな。」
「そこまでして天才が残した遺産・・・・・・・・・やっぱり何か意味があったんじゃないのかなぁ?」
「考え過ぎなんだよコマツは。博士亡き後、その真相を知る者は誰一人としていないんだ。考えたってしょうがない事さ。まあ、タイムマシーンでもあれば話は別なんだけどな。」
「タイムマシーンか・・・・・・・・・。」
「案外あの博士だったらひそかにタイムマシーンを作ってたかもしれないな。」
「かもね。」
「それにしてもコマツ?」
「なんだい?」
「モニターから見えたお前の慌てっぷりには笑わせてもらったよ。」
「えっ?」
「いや~、人類に残された最後の人間って感じがして良かったぞ?迫真の演技だったよ!はっはっはっはっはっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「どうしたんだコマツ?もしかして怒ったのか?わりぃわりぃ。すぐに音声回線が回復しなかったんだ。わざとお前の呼び掛けに答えなかった訳じゃないんだ。すまなかった。」
「そうじゃないんだ。別に僕は怒ってる訳じゃないんだよ。」
「ん?だったらどうした?もしかして衝撃でどこか打ったのか?気分が悪いなら近くの階に止まって診てもらった方がいいぞ。」
「ありがとう。体は大丈夫だよ。」
「ならどうした?」
「やめようと思うんだよ。今日やろうとしていたクローン実験を・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「中止にするよ。」
「いいのかコマツ。」
「うん。」
「でも、なぜ急にやめる事にしたんだ?」
「何となく。」
「何となく?」
「そう、何となくやめようと思ったんだ。きっとこの研究は、まだ必要ないんだって思ったんだよ。」
「何となくか・・・・・・・・・はっはっはっはっはっ!全くお前らしいよコマツ。分かった。チームのみんなには、お前がこっちに着く前に俺から説明しといてやる。」
「ありがとうコマツ。」
「同じ苗字の誼みだ。でも、そのかわり昼飯おごれよな。」
「分かったよ。そうだ!この前、美味しいエビフライを出すお店を見つけたんだけどどうだい?」
「エビフライか。いいな!そこに行こう!昼飯を食いながらでも俺の合体お手伝いロボットの案を聞いてくれよ。」
「何だか面白そうな話だね。」
「お前ならそう言ってくれると思ったよ。」
コマツを乗せたエレベーターは、間もなくコマツの待つ研究室に着こうとしていた。

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2007年8月15日 (水)

「第六十一話」

「ギギ・・・・・・ギギギ・・・・・・。」
「おかしいなぁ?」
「ギギ・・・・・・ギ・・・・・・。」
「変だなぁ?」
「ギ・・・・・・・・・ギギ・・・。」
「こうかなぁ?」
「ギギギ・・・・・・ボフッ!」
「うわぁ!?煙り出てきちゃったよ。」
「プシュ~・・・・・・・・・。」
「止まっちゃったよ。」
「ガチャッ。」
「どうしたのお兄ちゃん?何か凄い音がしたけど?」
「別に・・・・・・・・・。」
「ああーっ!!」
「馬鹿!大きい声出すなよ!父ちゃんに気付かれちゃうだろ!」
「パパに見つかったら怒られるよぉ。」
「そんなの分かってるよ。だから修理しようとしてたんだよ!いいか?でもこれは、兄ちゃんが壊したんじゃないからな。兄ちゃんが見つけた時には、もう止まりかけてたんだからな。」
「本当に~?」
「本当だって!」
「また、何とかごっことかして遊んでたら壊しちゃったんじゃないの?」
「違うって!これで何とかごっこなんかしないよ!」
「本当の本当に~?」
「信じろよな!」
「じゃあ、おやつ半分くれたら信じてあげる!」
「なっ!?しょうがないなぁ。分かったよ。おやつ半分な!」
「やったぁ!!」
「だから誰にも言うなよ!」
「分かってるって!」
「さてと、あとはこれをどうやって修理するかだな。」
「そんなの簡単だよ。」
「お前、直せるのか?」
「このままほっとけばいいんだよ。」
「あのなぁ。それで済むんだったら最初からそうしてるよ。どうせこれを父ちゃんが見つけたら、兄ちゃんが呼び出されて怒られるんだぞ?だったら修理出来なくても修理してみた方がいいだろ?」
「何かよく分からないけど、お兄ちゃんがそうしたいって言うなら、あたしも手伝う!」
「じゃあ、兄ちゃんが修理するから、お前はドアの所に立って父ちゃんが来ないか見張っててくれ。」
「ママは?」
「母ちゃんもダメ!」
「何とかマンとか何とか仮面とか何とか警備隊とかは?」
「そう言うヒーロー系も全部ダメ!」
「お兄ちゃん好きじゃん!」
「好きだし会えたら嬉しいけど、とにかく今は誰でもいいからこの部屋に近付く者がいたらお前が遠ざけてくれればいいの!」
「遠ざけるって?」
「遊ぼう!とか何とか言ってリビングとか外に連れて行けばいいんだよ。」
「映画観に行きたいなぁ。」
「映画観に行きたい!でもいいよ。」
「やったぁ!!」
「じゃあ頼んだぞ!」
「ラジャー!」
「さてと、どうしようかなぁ?」
「お兄ちゃん!」
「誰か来たのか!?」
「ううん。」
「何だよ驚かすなよな!どうしたんだよ?」
「パパって、何でそれを大事にしてるのかなぁ?」
「さあね?大事だからだろ?」
「ねぇねぇ。もしかしてパパって殺し屋とかスパイとかで国からの依頼を受けて働いてる謎の組織の一員なんじゃないの?」
「何かいろいろごちゃ混ぜんなってるぞ?」
「きっとそれを使って陰ながら地球の平和とかを守ってるんだよ!」
「スーツ着てか?」
「スーツマンだ!」
「あんなに太ってか?」
「デブッチョマンだ!」
「ハゲてるのにか?」
「ツルッパゲ仮面だ!」
「何で仮面かぶってんのにパゲばれてるんだよ。」
「そこだけ出てんの!」
「むしろそこを何かで隠したい気分だろ。って、父ちゃんはハゲてるけどツルッパゲじゃないぞ?」
「電撃メガネ!」
「メガネしてないだろ!だいたいあの父ちゃんが正義のヒーローな訳ないだろ!カロリー制限も守れないのに地球の平和が守れる訳がないっての!」
「そっかぁ。」
「そうだよ。」
「じゃあ、逆にそれを使って地球を支配しようとしてる悪者の親玉だったりして!」
「ないない。毎日、夕ご飯の時に父ちゃんの愚痴を聞いてるだろ?会社で部下もまとめられないのに、悪者の下っ端をまとめられる訳がないっての!」
「でもあれって部下の人達が言う事を聞いてくれないからなんでしょ?」
「真実は違うと思うな。父ちゃんって柔軟性ないし、ボキャブラリないし、自分の言った事が間違ってても曲げない頑固者だし、そこ指摘されると怒り出すし、さらに自分が怒ってる事に怒り出すしさ。部下の人達も苦労してると思うよ?ほら、ファミリーレストランに行った時もそうだろ?」
「確かに!ファミリーレストランではいろいろあったなぁ。」
「旅行の時もそうだろ?」
「確かに!旅行の時もいろいろあったなぁ。」
「だから悪の親玉なんか絶対に無理無理。」
「だったらそれって本当に何なんだろう?」
「知らないよ。ガラクタなんじゃないか?」
「でもパパって休みの日には、綺麗に洗ったりしてるよね?」
「してるしてる!話し掛けちゃったりもしてるよな!」
「うんうん。してる!それからそれから!乗っかって動かしてたりもしてる!」
「子供みたいにはしゃいでな!」
「写真撮ってアルバムにしたりしてるよね!」
「それをニヤニヤ笑いながら見てるしな!」
「お風呂も一緒に入ったりしてるよね!」
「そうそう!綺麗に洗ったのに、また一緒にお風呂に入るんだよな!しかも一緒に鼻歌なんか歌っちゃったりしてさ!」
「パパもそれも音痴なんだよね!」
「母ちゃんに毎回、怒られてるもんな!近所で有名らしいぞ?」
「そうなんだぁ!」
「それに、こいつって今日は緑色してるけど、昨日は赤だったし一昨日は青だったもんなぁ?」
「形だって大きさだっていろいろ変わるよね?」
「感触だって、今日カチカチだけど昨日はネチャネチャで、一昨日はドロドロだったもんなぁ?」
「ねぇお兄ちゃん?」
「何だ何だ!どうしたどうした!」
「ゲッ!?父ちゃん!?」
「パパ!?」
「お前!見張ってろって言ったろ!」
「ごめん。お兄ちゃんの方を向いててパパに気付かなかった。」
「何をそんなに二人で楽しそうに会話をしてるんだ?父さんも入れてくれよ。」
「何でもないよ父ちゃん!」
「そうそう。お兄ちゃんがあれを壊しちゃったりなんかしちゃってないからね!あっ!?」
「なに!?」
「馬鹿!」
「ごめんお兄ちゃん・・・・・・・・・。」
「どきなさい!」
「違うんだよ父ちゃん。気付いた時にはこれがさぁ。」
「な~んだ。驚かすんじゃないよ。」
「へ?」
「ただの電池切れじゃないか。」
「電池!?父ちゃんこれって電池で動いてたの?」
「当たり前じゃないか!よし!これで直ったぞ!」
「ギギギギギ・・・・・・ギ。」
「本当だ!?」
「よかったねお兄ちゃん!」
「そんな事よりも、今日のお昼はファミリーレストランに行くから二人とも用意してきなさい。」
「レストラン!?やったぁ!チョコレートパフェ食べてもいい?」
「いいぞ!何でも好きなものを食べなさい。」
「わーい!」
「ほら、お前も用意してきなさい。」
「そうなんだ。電池だったんだ。でも父ちゃん?」
「何だ?」

第六十一話
「これ何?」

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2007年8月22日 (水)

「第六十二話」

ぷら~ん ぷら~ん
ぷら~ん 垂れ下がってる

ぷら~ん ぷら~ん
ぷら~ん 垂れ下がってる


眺める景色は
意外と綺麗だね

見上げた景色は
これまた綺麗だね


落っこちちゃいそうで
落っこちないんだな



ぷら~ん ぷら~ん
ぷら~ん 垂れ下がってる

ぷら~ん ぷら~ん
ぷら~ん 垂れ下がってる


行き交う人々は
とっても楽しそう

飛び交う会話は
何だか幸せそう


笑っちゃいそうで
笑ってるんだな



ぷら~ん ぷら~ん
ぷら~ん 垂れ下がってる

ぷら~ん ぷら~ん
ぷら~ん 垂れ下がってる


世界は繋がって
一つになってる

何だかあれだね
捨てたもんじゃないね


体が踊っちゃいそうで
心が踊っちゃうんだな



ぷら~ん ぷら~ん
ぷら~ん 垂れ下がってる

ぷら~ん ぷら~ん
ぷら~ん 垂れ下がってる

幸せいっぱいで
ぷら~ん 垂れ下がってる

夢がいっぱいで
ぷら~ん 垂れ下がってる

愛がいっぱいで
ぷら~ん 垂れ下がってる

とにかく僕は
ぷら~ん 垂れ下がってる

一生懸命に
ぷら~ん 垂れ下がってる

垂れ下がれる限り
ぷら~ん 垂れ下がってる

嗚呼 明日も
嗚呼 明後日も
嗚呼 ずっとずーっと

ぷら~ん 垂れ下がってる

第六十二話
「はなみずのうた」

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2007年8月29日 (水)

「第六十三話」

「行ってきま~す!」
僕は、お母さんに頼まれて電球を買いに行く事になった。近くにコンビニやスーパーがあるけど、僕はちょっと離れてる電気屋さんに行く事にした。面倒臭くなんかないよ。だって僕は、電気屋さんのおじさんが大好きなんだもん。優しくって力持ちでかっこいいんだ。それに、電気の事で困った事があったら直ぐに駆け付けてくれるんだ。

電気屋さんまで700m

「コケコッコ~!」
家を出て直ぐに出会ったのは、ニワトリおじさんだった。
「こんにちは!」
「コケコッコ~!」
ニワトリおじさんは、コケコッコ~!としか喋らない。だからニワトリおじさんなんだ。特にニワトリっぽい格好はしてない。
「どうしておじさんは、いつもコケコッコ~!って言ってるの?」
「コケコッコ~!」
「楽しい時も?」
「コケコッコ~!」
「悲しい時も?」
「コケコッコ~!」
「怒ってる時も?」
「コケコッコ~!」
「コが言えない病気になった時も?」
「コケコッコ~!」
「うそだ~!」
「コケコッコ~!」
「さようなら!」
「コケコッコ~!」
ほらね。でも、僕はこの前ニワトリおじさんがスーパーでタマゴを選んでるとこを見ちゃったんだ。でね、その時こう言ったんだ。「うまそっ!」ってね。
「コケコッコ~!」

電気屋さんまで650m

「コケコッコ~!」
ニワトリおじさんの鳴き声がまだ聞こえる中、今度は大切マンに出会った。
「よう!」
「やあ、大切マン!」
「遊びに行くのかい?」
「違うよ。お母さんに頼まれて買い物に行くんだ!」
「なんと!偉いじゃないか少年!」
「えへへ。」
大切マンに褒められて、僕はちょっぴり嬉し恥ずかしで頭をかいた。
「夕御飯の材料かい?」
「違うよ。電球が切れちゃったから、電気屋さんまで買いに行くんだ!」
「なるほど・・・・・・・・・しかし少年!その電球は、本当に切れてしまったのかい?」
「うん!お母さんがよ~く見て、もうダメだって言ってたから本当だよ!」
「そうか。少年の母上が言うのならば本当なのだろうな。」
「うん!ところで大切マン!両手に何を持ってるの?」
「よくぞ聞いてくれた少年!これはな。先ほどゴミ置き場から拾って来たまだ使える物達なのだよ。最近は、やたらと物を大切にせず!直ぐに捨ててしまう連中が増えてしまったからな。こうやって、まだ使える物達を救って上げているのだよ。」
「さすが大切マン!」
「じゃあ少年!車や妖怪などに気を付けて電気屋さんに行くのだぞ!」
「うん!」
「いい返事だ!さらばだ少年!」
そう言って大切マンは、走って自分の家に帰っていった。因みに大切マンの家は、近所の人達からはゴミ屋敷って言われてるんだよ。

電気屋さんまで580m

「あっ!?」
こんなとこに苦しそうに倒れてる人の形が書いてある。落書きしちゃいけないんだ。そうそう。この辺で最近、女の人が殺されたんだ。ストーカーって外人の人に殺されたらしいよ。道路の至る所にまだ血の痕があるや。まだ犯人は捕まってないんだってさ。夜は絶対に通りたくない道ランキング4位には入るよね。

電気屋さんまで510m

「あっ!?」
先生だ!やばい!隠れなきゃ!僕はちょっとした壁と壁の間に挟まるようにして隠れた。
「見つかりませんように!」
違うよ。僕が小学校で何か悪い事をしたって訳じゃないよ。先生の方が小学校で悪い事をしたんだよ。あっ、だから今は、先生じゃないんだった。でも、なんか会ったら気まずいでしょ?そうそう、元先生ってね。テレビにも出たんだよ!凄いよね!まあ、名前だけだけどね。でも河童の校長先生は、本当にテレビに出たんだよ!凄いよね!でね、何回も河童のお皿の部分を見せてたんだよ。

電気屋さんまで460m

「コケコッコ~!」
相変わらずニワトリおじさんの鳴き声がはっきりと聞こえるよ。

電気屋さんまで420m

公園まで来た。この公園の中を通って行くと電気屋さんまでの近道になるんだよね。
「やめよ!」
でも僕は行かない。だってこの公園って妖怪が出るんだもん。しかもね。昼間でもお構いなしに出て来ちゃうんだよ。実はね。僕も見た事があるんだ。だから友達もみんな別の公園で遊んでるんだ。もう!迷惑な話だよね!ここの公園すっごく気に入ってたのにさ!
「あっ!?」
ほら!ダンボールの中から出て来る妖怪達!そうそう、大切マンと妖怪達って、すっごく仲が悪いんだよ。大切マン、やっつけてくれないかなぁ~。

電気屋さんまで370m

「ブーン!」
ここはね。車の通りがいっぱいの道なんだ。道が狭いのに運転手さん達は、ずっごいスピード出して歩いてる人の横を通って行くんだよ。
「あれ?」
おかしいなぁ?この前、お母さんとここを通った時には、こんな所にたくさんのお花なんか置いてなかったのになぁ?
「何だろう?」

電気屋さんまで300m

「コケコッコ~!」
まだ聞こえるよ。着いて来てるんじゃないかと思って、振り向いちゃったよ。ここまでくると逆に尊敬しちゃうよね。

電気屋さんまで270m

この辺は特に何もない。

電気屋さんまで260m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで250m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで240m

「あっ!?」
このマンション知ってる!テレビでやってたもん!でもこわ~いマンションなんだよ。隣の部屋から騒音がするってだけでその部屋の人を殺しちゃったり、逆に騒音がするって注意しに来た隣の部屋の人の事を殺しちゃったり、各階でありとあらゆる自殺があったりしたんだよ。なんか、あと少ししたら壊しちゃうってお母さんが言ってた。よく分からないけど、このままだと地震が来たら壊れちゃうかもしれないからなんだってさ。じゃあ僕の家も?って聞いたら、僕の家は何とか強度がちゃんとしてるから大丈夫なんだってさ。何か難しすぎてよく分かんないや。でも、このマンションがなくなっちゃうと本当にこの辺は特に何もなくなっちゃうよ。

電気屋さんまで230m

この辺は特に何もない。

電気屋さんまで220m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで210m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで200m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで190m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで180m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで170m

とにかくこの辺は特に何もない。

電気屋さんまで160m

やった!商店街に着いた!ここまで来れば僕の勝ちだ!ちょっぴり疲れたけど、電気屋さんまでもう少しだ!って思うと疲れなんて、なんのそのだね。
「頑張るぞ~!」

電気屋さんまで120m

「コケコッコ~!」
これってもう僕の耳の中にちっちゃなニワトリおじさんを飼ってるとしか考えられないよ。この力を何かに使ったら、きっと何か凄い何かが出来ちゃうよ。

電気屋さんまで80m

「おう!」
「食堂のおじさん!」
「ボウズ一人か?」
「うん!お母さんに頼まれて電球買いに来たの!」
「偉いぞボウズ!」
どちらかと言えば、食堂のおじさんの頭の方がボウズだ。とにかくこのおじさんは怒りっぽい。やたらと人に怒ってる。そう言う仕事なのかなって思うぐらい怒ってる。この人に怒られてない人なんかいないんじゃないかってほど怒ってる。きっと人じゃなくても壁とか床とか蟻とか雲とかうんちとかにも怒ってるんだ。どうせなら、コケコッコ~!って怒ればいいんだよ。
「電気屋に行くのか!」
「そうだよ!」
怒られないうちに僕は、走って電気屋さんに向かう事にした。
「おい!ボウズ!」
だから、おじさんの頭の方がボウズだってば!
「おい!!」
ほら怒った!すぐ怒るからみんなから嫌がられるんだよ。何で怒るんだろう?怒らないと死んじゃうのかな?とにかく帰りは、別の道にしよっと!
「さようなら~!」
「ちょっと待て!」

電気屋さんまで40m

よし!あの角を曲がればもう電気屋さんは直ぐそこだ!このまま走って行っちゃおう!

電気屋さんまで15m

あっ!電気屋さんが見えた!
「よーし!」
運動会のリレーのアンカーの僕の力を見せてやるぞ!このまま一気にラストスパートだ!!

電気屋さんまで30cm

第六十三話
「臨時休業」

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