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2007年8月29日 (水)

「第六十三話」

「行ってきま~す!」
僕は、お母さんに頼まれて電球を買いに行く事になった。近くにコンビニやスーパーがあるけど、僕はちょっと離れてる電気屋さんに行く事にした。面倒臭くなんかないよ。だって僕は、電気屋さんのおじさんが大好きなんだもん。優しくって力持ちでかっこいいんだ。それに、電気の事で困った事があったら直ぐに駆け付けてくれるんだ。

電気屋さんまで700m

「コケコッコ~!」
家を出て直ぐに出会ったのは、ニワトリおじさんだった。
「こんにちは!」
「コケコッコ~!」
ニワトリおじさんは、コケコッコ~!としか喋らない。だからニワトリおじさんなんだ。特にニワトリっぽい格好はしてない。
「どうしておじさんは、いつもコケコッコ~!って言ってるの?」
「コケコッコ~!」
「楽しい時も?」
「コケコッコ~!」
「悲しい時も?」
「コケコッコ~!」
「怒ってる時も?」
「コケコッコ~!」
「コが言えない病気になった時も?」
「コケコッコ~!」
「うそだ~!」
「コケコッコ~!」
「さようなら!」
「コケコッコ~!」
ほらね。でも、僕はこの前ニワトリおじさんがスーパーでタマゴを選んでるとこを見ちゃったんだ。でね、その時こう言ったんだ。「うまそっ!」ってね。
「コケコッコ~!」

電気屋さんまで650m

「コケコッコ~!」
ニワトリおじさんの鳴き声がまだ聞こえる中、今度は大切マンに出会った。
「よう!」
「やあ、大切マン!」
「遊びに行くのかい?」
「違うよ。お母さんに頼まれて買い物に行くんだ!」
「なんと!偉いじゃないか少年!」
「えへへ。」
大切マンに褒められて、僕はちょっぴり嬉し恥ずかしで頭をかいた。
「夕御飯の材料かい?」
「違うよ。電球が切れちゃったから、電気屋さんまで買いに行くんだ!」
「なるほど・・・・・・・・・しかし少年!その電球は、本当に切れてしまったのかい?」
「うん!お母さんがよ~く見て、もうダメだって言ってたから本当だよ!」
「そうか。少年の母上が言うのならば本当なのだろうな。」
「うん!ところで大切マン!両手に何を持ってるの?」
「よくぞ聞いてくれた少年!これはな。先ほどゴミ置き場から拾って来たまだ使える物達なのだよ。最近は、やたらと物を大切にせず!直ぐに捨ててしまう連中が増えてしまったからな。こうやって、まだ使える物達を救って上げているのだよ。」
「さすが大切マン!」
「じゃあ少年!車や妖怪などに気を付けて電気屋さんに行くのだぞ!」
「うん!」
「いい返事だ!さらばだ少年!」
そう言って大切マンは、走って自分の家に帰っていった。因みに大切マンの家は、近所の人達からはゴミ屋敷って言われてるんだよ。

電気屋さんまで580m

「あっ!?」
こんなとこに苦しそうに倒れてる人の形が書いてある。落書きしちゃいけないんだ。そうそう。この辺で最近、女の人が殺されたんだ。ストーカーって外人の人に殺されたらしいよ。道路の至る所にまだ血の痕があるや。まだ犯人は捕まってないんだってさ。夜は絶対に通りたくない道ランキング4位には入るよね。

電気屋さんまで510m

「あっ!?」
先生だ!やばい!隠れなきゃ!僕はちょっとした壁と壁の間に挟まるようにして隠れた。
「見つかりませんように!」
違うよ。僕が小学校で何か悪い事をしたって訳じゃないよ。先生の方が小学校で悪い事をしたんだよ。あっ、だから今は、先生じゃないんだった。でも、なんか会ったら気まずいでしょ?そうそう、元先生ってね。テレビにも出たんだよ!凄いよね!まあ、名前だけだけどね。でも河童の校長先生は、本当にテレビに出たんだよ!凄いよね!でね、何回も河童のお皿の部分を見せてたんだよ。

電気屋さんまで460m

「コケコッコ~!」
相変わらずニワトリおじさんの鳴き声がはっきりと聞こえるよ。

電気屋さんまで420m

公園まで来た。この公園の中を通って行くと電気屋さんまでの近道になるんだよね。
「やめよ!」
でも僕は行かない。だってこの公園って妖怪が出るんだもん。しかもね。昼間でもお構いなしに出て来ちゃうんだよ。実はね。僕も見た事があるんだ。だから友達もみんな別の公園で遊んでるんだ。もう!迷惑な話だよね!ここの公園すっごく気に入ってたのにさ!
「あっ!?」
ほら!ダンボールの中から出て来る妖怪達!そうそう、大切マンと妖怪達って、すっごく仲が悪いんだよ。大切マン、やっつけてくれないかなぁ~。

電気屋さんまで370m

「ブーン!」
ここはね。車の通りがいっぱいの道なんだ。道が狭いのに運転手さん達は、ずっごいスピード出して歩いてる人の横を通って行くんだよ。
「あれ?」
おかしいなぁ?この前、お母さんとここを通った時には、こんな所にたくさんのお花なんか置いてなかったのになぁ?
「何だろう?」

電気屋さんまで300m

「コケコッコ~!」
まだ聞こえるよ。着いて来てるんじゃないかと思って、振り向いちゃったよ。ここまでくると逆に尊敬しちゃうよね。

電気屋さんまで270m

この辺は特に何もない。

電気屋さんまで260m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで250m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで240m

「あっ!?」
このマンション知ってる!テレビでやってたもん!でもこわ~いマンションなんだよ。隣の部屋から騒音がするってだけでその部屋の人を殺しちゃったり、逆に騒音がするって注意しに来た隣の部屋の人の事を殺しちゃったり、各階でありとあらゆる自殺があったりしたんだよ。なんか、あと少ししたら壊しちゃうってお母さんが言ってた。よく分からないけど、このままだと地震が来たら壊れちゃうかもしれないからなんだってさ。じゃあ僕の家も?って聞いたら、僕の家は何とか強度がちゃんとしてるから大丈夫なんだってさ。何か難しすぎてよく分かんないや。でも、このマンションがなくなっちゃうと本当にこの辺は特に何もなくなっちゃうよ。

電気屋さんまで230m

この辺は特に何もない。

電気屋さんまで220m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで210m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで200m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで190m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで180m

この辺も特に何もない。

電気屋さんまで170m

とにかくこの辺は特に何もない。

電気屋さんまで160m

やった!商店街に着いた!ここまで来れば僕の勝ちだ!ちょっぴり疲れたけど、電気屋さんまでもう少しだ!って思うと疲れなんて、なんのそのだね。
「頑張るぞ~!」

電気屋さんまで120m

「コケコッコ~!」
これってもう僕の耳の中にちっちゃなニワトリおじさんを飼ってるとしか考えられないよ。この力を何かに使ったら、きっと何か凄い何かが出来ちゃうよ。

電気屋さんまで80m

「おう!」
「食堂のおじさん!」
「ボウズ一人か?」
「うん!お母さんに頼まれて電球買いに来たの!」
「偉いぞボウズ!」
どちらかと言えば、食堂のおじさんの頭の方がボウズだ。とにかくこのおじさんは怒りっぽい。やたらと人に怒ってる。そう言う仕事なのかなって思うぐらい怒ってる。この人に怒られてない人なんかいないんじゃないかってほど怒ってる。きっと人じゃなくても壁とか床とか蟻とか雲とかうんちとかにも怒ってるんだ。どうせなら、コケコッコ~!って怒ればいいんだよ。
「電気屋に行くのか!」
「そうだよ!」
怒られないうちに僕は、走って電気屋さんに向かう事にした。
「おい!ボウズ!」
だから、おじさんの頭の方がボウズだってば!
「おい!!」
ほら怒った!すぐ怒るからみんなから嫌がられるんだよ。何で怒るんだろう?怒らないと死んじゃうのかな?とにかく帰りは、別の道にしよっと!
「さようなら~!」
「ちょっと待て!」

電気屋さんまで40m

よし!あの角を曲がればもう電気屋さんは直ぐそこだ!このまま走って行っちゃおう!

電気屋さんまで15m

あっ!電気屋さんが見えた!
「よーし!」
運動会のリレーのアンカーの僕の力を見せてやるぞ!このまま一気にラストスパートだ!!

電気屋さんまで30cm

第六十三話
「臨時休業」

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コメント

ニワトリおじさんが、美味しそうですね。
また、次の次の話にでも登場させてくれたら幸いです。
大切マンがニワトリおじさんを食べないか心配です。

投稿: 文学幼年 | 2007年8月29日 (水) 22時44分

ニワトリおじさんが再び登場してくるかは今のとこ分かりませんが、
大切マンが食べてしまう事はないので安心して下さい。
コメントありがとうございました。

投稿: PYN | 2007年8月31日 (金) 23時55分

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