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2007年9月

2007年9月 5日 (水)

「第六十四話」

 大学も休みに入り、無性に暇だったあたしは、ぶらぶらと優雅にお散歩を楽しんでました。
「ぶらぶら~♪ぶらぶら~♪散歩をしているよ~♪」
陽気に歌なんか歌っちゃったりしながら、のんびりとお散歩を堪能していました。
「なんだかんだ~♪どんなもんだ~♪散歩をしているよ~♪あたしの~♪ん?あれ?」
それは調度、歌がサビに差し掛かった時で、ついでに公園の前を通り掛かった時でした。
「あれってもしかして・・・・・・・・・。」
あたしは、公園のベンチに何だかやる気なく座るスーツ姿で髪の毛が七三にセットされたヒーローを発見したんです。
「電撃メガネだ!!」
あたしは、迷う事なくそのヒーローのところに駆け寄って行き、ちょっと緊張したけど、それを悟られないようにベンチの隣に座っちゃいました。
「電撃メガネ!」
「ん?」
「やっぱり電撃メガネだった!」
「何ですか?」
「こんなところで何やってるんですか?」
「あなたには、関係のない事です。」
「分かった!公園で遊ぶチビッ子達に危険がおよばないように監視してるんだ!さすが電撃メガネ!」
「違います。」
「だったら!公園で遊ぶチビッ子達に危険がおよばないように監視してるんだ!」
「さっきと同じじゃないですか。私は、監視などしていません。」
「してよ~。公園で遊ぶチビッ子達に危険がおよばないように監視してよ~。それがヒーローだよ!」
「ヒーローか・・・・・・・・・。」
「そっ!電撃メガネは、チビッ子達のヒーロー!そして、ひそかにあたしのヒーロー!!あっ!でも大丈夫大丈夫!チビッ子達の安全を優先して下さいね!あたしは、自分の事はなるべく自分でなんとかします!でも、それでも駄目な時には、このカリカリ梅を食べます!だから、カリカリって音が聞こえて来たら助けに来て下さいね!」
「ヒーローを辞めようと思っているのです。」
「カリカリ!」
「聞いてます?」
「ふぁい。」
「カリカリ!」
「ひぃいふぇふぁふ。」
「カリカリ!」
「明らかに片手間ではないですか。完全にカリカリ梅の方に全神経が集中しているではないですか。」
「ゴックン!すいません。もう大丈夫ですよ。で?」
「ほら、やっぱり聞いていなかった!・・・・・・・・・私、ヒーローを辞めようと思っているのです。」
「そうなんですか。えぇぇぇ!!なななな何を言い出すんですか!電撃メガネがヒーロー辞めちゃったら!いったい誰がこの町の平和を守るんですか!!辞めないでよ~!辞めちゃ駄目だよ~!絶対駄目だよ~!せっかく電撃メガネの歌を作ったのに~!」
「頼んでいませんけど?」
「聞いて下さい!『お散歩マーチ』。」
「それって、私関係あるのですか?」
「ぶらぶら~♪ぶらぶら~♪散歩をしているよ~♪なんだかんだ~♪どんなもんだ~♪散歩をしてるよ~♪あたしの~♪」
「その歌は、先ほどお嬢さんが公園の前で大きな声で歌っていた歌ではないですか。」
「右足~♪」
「最近気付いたのですが、平和なのですよ。私がいなくてもこの町は、十分すぎるほど平和そのものなのですよ。」
「そんな事ない!!」
「えっ?」
「そんな事ないよ電撃メガネ!この町は平和じゃないよ!空気は汚れてるし!政治も汚れてるし!物価だって高くなるし!温暖化も進んでるし!人間がどう進化してきたのかだって、いまだにちゃんとは解明されてないんです!!」
「そ、それはこの町に限った事ではないのでは?そもそもお嬢さんが今言った事は、ヒーローの管轄を大きく外れていますよ。特に最後の進化については、人類の謎になっています。」
「うぅぅぅぅぅ!!まだまだあります!あのすべり台知ってます?」
「あのすべり台で何かあったのですか!?」
「あまり滑らないんです!」
「はい?」
「それと!あたしの目覚まし時計、朝になっても鳴らない時があるんですよ!それにあの鉄棒!逆上がりが出来なくって小学生の時、クラスのみんなに励まされて練習したっけ・・・・・・・・・懐かしいなぁ。みんな元気にしてるかなぁ?そうだ!同窓会やろ!特別ゲストとして電撃メガネも来て下さい!!」
「何の話をしているのですか?」
「えっ?あっ、すいません。とにかく!目覚まし時計が鳴らないんです!」
「電池を交換すればいいではないですか!」
「しました!したけど駄目だったんですよ!」
「なら修理してもらうか新しい目覚まし時計を買えばいいではないですか!」
「買いました!!」
「なっ!?・・・・・・・・・とにかく私がヒーローである必要などないのです。所詮、ヒーローなど漫画やアニメ、映画や小説のような、絵空事の世界の中だけの存在だったのですよ。現実に存在してはいけなかったのです。私が思っていた以上に、世の中の人々はヒーローを必要としていなかっ」
「フボッ!!」
「種!?なぜこのタイミングで種をゴミ箱に吐き捨てるのですか!?今まで口の中にあったと言うのですか!?いや、正直気にはなっていたのですよ。なぜカリカリ梅を食べたのに種を吐き出さないのか?って、私の話を聞いていませんでしたね。」
「聞いてました。電撃メガネは、わがままで身勝手です!!」
「お嬢さんに言われたくないセリフですね。」
「ヒーローは、悪い事が起きてから活躍してはいけないんです!!悪い事が起きないように活躍するのがヒーローなんです!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「そんなに悪い事が起きて欲しいなら!今日からあたしがこの町で悪い事をしまくります!!」
「えっ!?」
「日記にいっぱい知らない人の悪口書いたり!曲がらない方向に指を曲げてみたり!ご飯を噛まないで飲み込んでみたり!近所の人に挨拶されても無視しちゃいます!それからそれから・・・・・・・・・本気で世界征服を企んじゃいます!独裁ですよ!我が物顔ですよ!いいんですか?暗黒の世界にしますよ!電気なしですからね!!」
「・・・・・・・・・それは困ります。」
「この町が平和なのは、電撃メガネがいるからなんです!!平和でなにがいけないんですか!平和のどこが退屈なんですか!」
「・・・・・・・・・お嬢さん。それを私に言う為に、だから私が話をしている最中にもかかわらずカリカリ梅の種を吐き捨てたのですね。」
「電撃メガネは間違ってます!!」
「確かに私の考えは間違っていたのかもしれません。」
「あれは味が無くなったから吐き捨てたんです!」
「間違っていたのはそっちの解釈の方でしたか!」
「そうです!あたしは味が無くなるまでカリカリ梅を堪能するんです!でなきゃカリカリ梅に申し訳ないじゃないですか!そして、そうじゃなきゃカリカリ梅を作った人に足を向けて寝れないじゃないですか!」
「確かにどこにいるのか分かりませんからね。・・・・・・・・・しかし、お嬢さんにヒーローとは何たるかを学びましたよ。」
「じゃあ!」
「はい。お嬢さんを悪者にする訳にはいかないですからね。これからもヒーロー電撃メガネとして、この町の平和を維持していきたいと思います!」
「やったぁ!」
「ありがとう!お嬢さん!」
「あたしは、何もしてませんよ。あっそうだ!カリカリ梅食べます?」
「是非!」
「どーぞ。」
「ありがとうございます。」
「パクリ。」
「カリカリ。」
「カリカリ梅、美味しいですね。」
「パクリ。」
「カリカリ。」
「はい!」
「カリカリ。」
「カリカリ。」
「カリカリ。」
「カリカリ。」
「カリガリッ!!いったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「電撃メガネ!大丈夫?電撃メガネの電撃メガネメガネが落ちちゃったよ?」
「ただのメガネです。それに今は、そっちの方はあまり重要ではなく・・・・・・・・・それよりも・・・・・・・・・。」
「はい。電撃メガネメガネ。」
「歯が折れたんだってばぁぁぁぁぁ!!!」

第六十四話
「電撃メガネ」

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2007年9月12日 (水)

「第六十五話」

ぶらぶら ぶらぶら
散歩をしているよ

なんだかんだ
どんなもんだ
散歩をしているよ

一日一歩で
三日で三歩

百日歩いたら
九十歩なんです

それぐらいは
休みたいんです

それぐらいが
調度いいんです

今日も

ぶらぶら ぶらぶら
散歩をしているよ

なんだかんだ
どんなもんだ
散歩をしているよ

あたしの右足
あたしの左足
イッチニ イッチニ って
動いているんです
イッチニ イッチニ って
歩いているんです



ぶらぶら ぶらぶら
散歩をしているよ

あいつも こいつも
散歩をしているよ

気付かない事に
気付けるかもね

気付いた時には
気付かないフリ

こんな時ぐらい
気付きたくないんです

こんな時だから
気付きたくないんです

今日も

ぶらぶら ぶらぶら
散歩をしているよ

あんな感じで
こんな感じで
散歩をしているよ

あたしの右手
あたしの左手
イッチニ イッチニ って
動いているんです
イッチニ イッチニ って
歩いているんです



真っ直ぐな道を
くねくねな道を

坂道を
上って 下って

商店街を 遊歩道を
野原を 公園を 地図にない場所を

大通りを 細道を
砂浜を 川原を 猫の散歩道を

とにもかくにも

ぶらぶら ぶらぶら
散歩をしているよ

なんだかんだ
どんなもんだ
散歩をしているよ

あたしの気分
夢見心地です
イッチニ イッチニ って
笑っているんです
イッチニ イッチニ って
歩いているんです

嬉しい出会いが
待っているんです

第六十五話
「お散歩マーチ」

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2007年9月19日 (水)

「第六十六話」

「はじめまして。」
「あんたが出版社の人かい?」
「はい。お電話でもお話した通り、あなたのお作りになるチーズは最高とのお噂を聞き付けまして、今回うちから出す本の取材にやって来ました。今日は、宜しくお願いします。」
「ああ、こちらこそ。ところで?」
「はい。」
「チーズ作りの現場は初めてかい?」
「はい。初めてです。」
「なら、昨日の夜は緊張して眠れなかっただろ。」
「えっ?いえ、特に緊張して眠れなかったと言う事はありませんでした。」
「俺は眠れなかった。」
「はい?」
「本の取材なんて生まれて初めての事だったから緊張して緊張して。」
「そうでしたか。でも、心配しないで下さい。僕のする簡単な質問に答えてもらった後に、いつも通りにチーズを作ってもらえればいいだけですから、安心して下さい。」
「それと、眠いのに朝まで牛の出産に立ち会って立ち会って。」
「緊張したのと眠れなかったは、それぞれ違う理由があったようですね。」
「さて!」
「さて?」
「チーズ作りに1番大切な事は何だか分かるかい?」
「チーズ作りに1番大切な事ですか・・・・・・・・・あのすいません。僕から質問しても宜しいですか?」
「宜しいです。」
「助かります。それでは、最初の質問なんですが、チーズを作ろうと思ったきっかけは?」
「チーズ作りに1番大切な事かい?それは」
「すいません。」
「何だい?」
「チーズ作りに1番大切な事ではなくて、チーズを作ろうと思ったきっかけです。」
「すまんすまん。緊張してつい。」
「大丈夫ですよ。ちょっと深呼吸しましょうか?」
「いやそれはお断りだ!」
「えっ!?そ、そうですか。ま、まあ、では改めてお聞きします。チーズを作ろうと思ったきっかけは?」
「チーズ作りに1番大切な事かい?だったら」
「わざとやってません?その質問は後でちゃんとしますから、今はチーズを作ろうと思ったきっかけをお答え下さい。」
「そうなの?」
「はい。それでは改めてお聞きします。チーズを作ろうと思ったきっかけを教えて下さい。チーズを作ろうと思ったきっかけですよ!」
「俺がチーズを作るきっかけになったのは、ある日いつものように牧場に足を運ぶと、そこにはUFOが」
「すいません。」
「何だい?」
「嘘やめてもらっていいですか?」
「面白いかなと思ったからさ。」
「読者は面白さを求めている訳ではないんです。それに、今の話だと出版する本の方向性が大きく変わってしまいますから、真実のみでお願いします。」
「宇宙人が」
「すいません!」
「きっかけは・・・・・・・・・挑戦さ。」
「挑戦?と言いますと?」
「俺ならもっと最高のチーズを作れると思ったからだよ。」
「なるほど!チーズ界に革命を起こそうと思った訳ですね!」
「そこまでの軍事力は兼ね備えてないよ。せいぜい牛と馬と山羊だぞ?」
「はい?」
「あと羊。」
「あのう?」
「ただなぁ。奴らをなめるなよ!奴らが本気になったらな!地球なんてあっという間だ!」
「どうあっという間なのかよく分かりませんが、僕が悪かったようですね。何だか難しい例えをしてしまったようで、反省してます。」
「それでもチーズ界に革命を起こせと言うなら、俺はやるよ!」
「・・・・・・・・・それでは、次の質問をしたいと思います。」
「おう!」
「チーズ作りに1番大切な事とは?」
「お主は何だと思う?」
「急に何時代の人ですか?そうですね?例えば牛に食べさせる餌が他とは違うとかですか?」
「気に入った!分からない事は分からないと素直に言えるお前さんを俺さんは気に入ったよ!」
「えっ?ま、まあ確かに分かりませんが・・・・・・・・・。」
「確かにお前さんは、まだチーズ作りをした事がないからな。分からないのは当たり前だ!当然だ!恥じる事などない!」
「何か口調がセリフっぽいですけど?もしや、昨晩考えられたんですか?」
「なら教えてやろう。チーズ作りに1番大切な事をな!」
「会話が噛み合ってないようですけど、まあ教えてもらえるなら是非お願いします。」
「あのな。チーズ作りに1番大切な事はな。気合いだ。」
「気合いですか?」
「最高のチーズを作りたい!そう言った気合いが大切なんだよ!」
「なるほど!意気込みってやつですね!」
「えっ?」
「えっ?」
「いや気合いだよ。何かそっちの方がいい表現っぽいけど、せっかく出産中に気合いって思い付いたんだから、そっちでいこうよ。」
「まあ、何となく出産中に思い付いたのには、納得できますよ。気合いが1番大切な事なんですね?」
「そうだ!なかなか覚えが早いじゃないか。これなら今すぐにでも立派なチーズが作れるぞ!って、そりゃ無理か!ばっはっはっはっはっ!!」
「・・・・・・・・・あのう。僕は作りませんよ?いったい昨晩、どんなシナリオを考えついたんですか?」
「ばっはっはっはっはっ!!ちっちゃな『つ』がいっぱい。もうあれだな。チーズじゃなくって、この際チッズにしちゃおうか?」
「どの際ですか!困りますよ。それで、具体的に気合いと言うのは?」
「なぜ俺がお前さんをわざわざこんな汚い牧場に、って汚い牧場ってどう言う事だよ!」
「言ってませんよ。」
「なぜ、こんなにも美しい牧場に呼んだのか分かるかい?」
「いえ、分かりません。」
「気に入った!分からない事は分からないと素直さんに言えるさんお前さんを俺さんは気に入ったさん!」
「さん付けすぎですよ。そのセリフお気に入りなんですか?」
「牛達を見てみろ。」
「牛ですか?」
「分かるかい?」
「いえ。」
「気に入った!分からない事は分からないと素直に言える貴様を俺様は気に入ったよ!」
「絶対気に入ってるでしょ!そのセリフ絶対気に入ってるでしょ!」
「数十頭いる牛の中から一頭選ぶんだ!」
「選ぶ?」
「そして、選んだ牛をよーく見る!」
「なるほど!そこから既に最高のチーズ作りが始まっているんですね!」
「そうだ!」
「その牛の一挙手一投足を見て!最高のチーズ作りに適したミルクを出す牛なのかを見定めているんですね!」
「あれだ!あれは最高のチーズを作る!」
「あの大きな牛ですか!そう言われると段々そう見えて来るのが不思議です。さあ、あの牛の所まで行きましょうか!」
「まだだ!」
「行かないんですか?」
「行かない!」
「あの牛ではないんですか?最高のチーズを作る牛がまだ他にいると?」
「おそらくあの牛で間違いない!」
「では、乳搾りをはじめましょう。ここで見ていても時間が過ぎて行くばかりです。」
「見るんだ!」
「はい?」
「牛を見るんだ!」
「どう言う事ですか?」
「じっと見るんだ!」
「あのう?」
「気合いだ!」
「気合い?」
「あの牛は最高のチーズを作るんだと、気合いを入れて見るんだ!」
「なるほど!作り手のボルテージを上げるって訳ですね!」
「横文字はよく分からないが、そんな感じだと思う!とにかく気合いを入れて牛を見るんだ!」
「しかし、いったいどのくらい見ていればいいんですか?」
「チーズが出来るまでに決まってるだろ!!」
「えっ!?」
「こうして気合いを入れて牛を見続けていれば最高のチーズが自然と出来上がる!」
「出来上がらないですよ!」
「出来る!ニョロっと、お尻の穴から出て来る!」
「そんなとこからチーズ出て来ないですよ!」
「だからチーズはちょっと臭う!」
「意味が違うでしょ!」
「だが、俺は何度も牛のお尻の穴からニョロっと、時にはドバドバっと、さらにはバフっと、チーズが出て来る所を何度も見ているんだぞ!」
「な、何度も!?」
「そうだ!何度もだ!俺の牛は、そんじょそこらの牛とは訳が違うんだよ!」
「ま、まさか!?」
「ほら出て来たぞ!!」
「そんな馬鹿な!?って、案の定あれうんこだ!!」
「で?俺の最高のチーズは、いつ本に載るんだい?」
「載せれるか!!」

第六十六話
「香る本」

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2007年9月26日 (水)

「第六十七話」

 ホテルで殺人事件が起きた。だが、その殺人事件は今も継続中であった。たまたまホテルに居合わせた探偵とその助手が事件解決の為にホテルの一室で「あーだこーだ」と犯人を推理していた。
「あーだこーだ。」
彼が探偵である。
「真面目にやりなさいよね!」
彼女がその助手である。
「犯人はお前だ!!って、言ってみたいなぁ。」
「言えばいいじゃない。犯人見つけて、そいつの前で言ってやればいいのよ!だから、さっさと犯人見つけちゃいましょ!じゃあ、事件のおさらいするわよ?」
「お願いします。」
「まず最初の殺人。宿泊客の新聞記者29歳男性。部屋で刺殺。そして、窓やドアは全て内側から鍵が掛けられていた。まあ、典型的な密室殺人ね。」
「う~ん?」
「どうしたの?」
「どーも引っ掛かるんだよね。」
「確かに、あたし達が部屋に入った時に充満していたあの臭い!」
「違うよ。」
「えっ!?なに?何が違うの?」
「ほら、警察の人が言ってたじゃないか。死亡推定時刻は午後10時から午前1時の間だってさ。」
「確かに言ってたわよ?それのどこに引っ掛かってるの?」
「仮にだよ?仮にこの男性が午前0時過ぎに殺されたとしたら?」
「したら?」
「彼は30歳なんだよ。」
「どこ引っ掛かってんのよ!そんなの関係ないでしょ!」
「関係あるさ。男だって、29歳と30歳とじゃ全く違うよ?何が違うって、まず響きが違うよね。29、30。ねっ?年齢を気にしてるのって、意外と女の人だけじゃないんだよ。日々、老いてい」
「熱弁やめてもらえる?死んでんだからどっちだっていいでしょ!」
「死んでんだからどっちだっていい。君が言いそうなセリフだね。」
「そのあたしが言ったのよ!!」
「オナラ。」
「はっ!?突然、何を言い出してんのよ!こんなとこでしないでよ?」
「部屋に入った時に充満してた臭いって言ったでしょ?」
「オナラの臭いだって言うの?なにそれ!犯人がわざわざ人を殺した後でオナラをしたって言うの?何時間充満し続けちゃってんのよ!しかも、何食べればあんな臭いオナラが出るのよ!」
「朝から調子が悪くてね。ごめん。」
「あんたか!何まぎらわしい事してくれちゃってんのよ!犯人に繋がる手掛かりだと思って、おもいっきり嗅いじゃったじゃない!」
「だから悪いなと思ってたんだよ。と同時に凄いなとも思ってたんだよ。」
「止めなさいよ!だからあの時、ニヤニヤしてたのね!」
「止まらなかったんだよね。」
「普通は止め・・・・・・止まらなかった?いったい何発連発してんのよ!」
「部屋に入ってから部屋を出るまでずっとだよ。どうも密室殺人を見るとオナラが出ちゃうんだよね。」
「どんな異常体質だ!あ~気分悪くなってきた。」
「なら寝てていいよ?ああ、でも僕が先に寝るから、君はその後で寝ちゃってよ。」
「推理しろ!で、何であんたから睡眠に突入しちゃうのよ!最悪あたしが寝ちゃっても、あんたは朝まで推理してろ!」
「僕は夢の中で推理する夢探偵なんだよ。」
「初めて知ったわよ!衝撃の事実よ!いい?あのヒゲ刑事にあんだけボロクソに言われたのよ?悔しくないの?見返してやりましょうよ!」
「それは、僕も同感だね。」
「じゃあ、第2の殺人にいくわよ?」
「でも、あのヒゲの刑事さんもあんな風に言わなくたっていいよね。」
「言っていい事と悪い事があるのよ!あたし達を邪魔者扱いしちゃってさ!ああ!思い出しただけでもムカツク!!」
「君に向かって言う事じゃないよね。」
「あんたにだよ!!全部あんたに向けて発信された言葉だよ!」
「えっ?そうなの?そうだったの?あのヒゲの刑事さんめ~!」
「ずーっとヘボ探偵って言ってたじゃない!」
「そんな事を言ってたの?あのヒゲの刑事さんめ~!」
「何を聞いてたのよ!」
「天井のシミが気になっちゃって気になっちゃって、あれ夜見たら絶対に人の顔に見えるなぁ。とか考えてたんだよね。」
「注意力散漫か!って、それこの部屋じゃん!だから、自分が先に寝たかったのね!単に怖がりなだけじゃない!」
「明日は、違う部屋にしてもらおうよ。」
「明日も泊まる気か!」
「違うの?」
「当たり前でしょ!今晩中に推理して朝には、全員を集めてその前で犯人を暴いてやるのよ!犯人は、お前だ!!ってね。」
「僕じゃないよ。」
「そんなの分かってるわよ!全員の前でこうやるって事よ!」
「僕は人差し指を突き刺すより、親指立てたいかなぁ。」
「イエーイじゃない!」
「ダメなの?」
「当たり前でしょ!ふざけてるとしか思われないわよ!」
「じゃあ、狐とか犬とかでやるってのは?」
「影絵か!犯人の顔のとこがチラッチラしちゃうわよ!」
「じゃあ、胸の辺りでやるよ。」
「場所の問題じゃないわよ!」
「あっ!」
「どうしたの?」
「皆さんに白い服を着て集合してもらわないと!」
「やる気満々じゃない!」
「そうだ!今から緊急連絡しなくっちゃ!」
「緊急って何が?」
「だって黒い服を着てたら出来ないじゃないか。」
「やらなくていいのよ!そんな事!」
「本当は見たいくせに~。」
「見たくない!」
「またまた~。」
「見たくないって言ってるでしょ!」
「意地っ張りだなぁ。」
「意地なんか張ってないわよ!」
「わん!」
「やらんでいい!」
「思うんだけどさ。」
「急にシリアスな感じにならないでよ。」
「この連続殺人って、何か裏があるような気がしてならないんだよね。」
「裏?そうね。この事件は何か臭うわね。」
「してないよ?」
「分かってるわよ!事件には、きっとあたし達の知らない何かが、まだあるのよ。」
「そう、僕達の知らない何か。たぶん・・・・・・・・・。」
「たぶん?」
「ドッキリなんじゃない?」
「あんた前代未聞の形で事件を終わらせようとしてるわね。」
「僕達は、まんまとはめられたんだよ。ドッキリにさ。」
「誰が何の目的でどうしてあたし達にドッキリを仕掛ける必要があるのよ!」
「誰かが何かの目的でどうしても僕達にドッキリを仕掛ける必要があったからさ。」
「答えになってない!本当に人を殺しちゃうって、どんなドッキリよ!」
「そこだよ。それが狙いなんだよ。」
「はっ?」
「これがドッキリだとしたら、物凄くドッキリするよね?」
「するわよ。」
「ほら。」
「ほらの意味が分からないわよ!ドッキリだろうが何だろうが殺人事件じゃない!」
「なっ。」
「なっ。じゃないわよ!第2の殺人にいくわよ?」
「お願いします。」
「はあ・・・・・・・・・このホテルの女性従業員。年齢・・・・・・・・・確実に24歳。厨房の業務用冷凍庫の中で吊された状態での発見。体には無数の刃物が刺さっていた。どう?」
「パス!」
「パスなし!」
「犯人は、どうやって吊るしたんだろう?」
「肉を吊るす用のフックに首の付け根を刺してでしょ。」
「こうやって、こう?」
「こうやって、こうでしょ。」
「こう?」
「そう。」
「で、こう?」
「違うわよ!こう!」
「こう?」
「そう。」
「で、こう?」
「カカシか!」
「こう?」
「どこ吊るしちゃってんのよ!」
「こう?」
「だからどこ吊るしちゃってんのよ!」
「こう?」
「何でちょっとセクシーな演出が必要なのよ!」
「こう?」
「フックどこいっちゃったのよ!」
「で、こう?」
「体操選手か!」
「さらに、こう?」
「なぜにしこをふむ必要性が?不知火型関係ないでしょ!こうだって言ってるでしょ!」
「こう?」
「チンパンジーか!」
「こう?」
「チンパンジーか!」
「こう?」
「何よそれ?」
「チン・パンジー。」
「誰?」
「こうかな?」
「それ友達かと思って声掛けたら違う人で、その恥ずかしい思いをしてる人の事をオープンカフェから優雅にカフェ・ラテを飲んで見ている人の横で、サンドイッチ食べようとして距離感誤って一回空噛みしてる人じゃない!」
「こう?」
「もういいわよ!フックの吊し方なんてどうだって・・・・・・・・・待って!あの人の手!そうよ!最初の殺人の時には無かったわ!」
「うん。きっとその時にできた軽い凍傷の痕だと思うよ。」
「まさか!?」
「だからドッキリだって言ったじゃないか。」
「ドッキリすぎよ!」
「そう、犯人は・・・・・・・・・。」
「信じられないわ。」

第六十七話
「ヒゲの刑事さん」

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