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2007年10月

2007年10月 3日 (水)

「第六十八話」

「お姉ちゃん!」
「なーに?」
「起きてよ!僕達の部屋に何か変なのがいるんだってば!」
「虫?」
「虫じゃないよ!宇宙人がいるんだってば!」
「変な夢でも見たんじゃないの?」
「夢じゃないよ!本当にいるんだってば!」
「宇宙人なんかいる訳ないでしょ!もし、いたとしても私達の部屋にいる訳ないでしょ!」
「いるんだってば!」
「あんた、同じ小学校通ってんだから、学校でそんな変な事言わないでよ!」
「いいから起きてよ!お姉ちゃんも宇宙人を見てよ!」
「もう!うるさいな!宇宙人なんかどこにいるのよ!」
「ドモ。」
「どうも。」
「ねっ!僕の言ってる事、本当だったでしょ?」
「これは夢よ!こんなのありえない!」
「二人で同じ夢見る方がありえないんじゃない?」
「何でいるのよ!」
「分からないよ。」
「いつからいるのよ。」
「僕が起きた時には、お姉ちゃんの服を着て立ってた。」
「どーりで見た事ある服だと思ったら、何やってんのよ宇宙人!!」
「ピッタリカナト思イマシテ。」
「ピッチピチじゃない!脱ぎなさいよ!」
「あっ、お姉ちゃん!」
「何よ。」
「脱いだら裸だよ?」
「裸!なに宇宙人、あんた裸で来たの?」
「申シ訳ナイデス。今スグ脱ギマス。」
「いいわよ!裸は困るわよ!てか、そのよりによってチョイスしたお気に入りのコーディネートは、全部あげるわよ!」
「ソレハ悪イデスヨ。」
「考えてみたら、宇宙人が着たもんなんか、もう着れないわよ!」
「アリガトウゴザイマス。御礼ニコレヲドウゾ。」
「うわー!よかったねお姉ちゃん!」
「よかったねって、これってただの石ころじゃない。」
「きっと特別な石なんだよ!すっごくレアな石なんだよ!」
「弟サンノ言ウ通リデス。ソレハタダノ石デハアリマセン。」
「やったねお姉ちゃん!きっと持ってると空を飛べるとか!危険から身を守ってくれるとか!進化するとかなんだよ!」
「進化って何よ!現実的に言ったら物凄く価値のある石ってとこかしら?で、いったいこの石ころは何なの?」
「ココニ来ル途中ノ川原デ拾ッタ石デ」
「コツーン!」
「イテ。」
「単なる石じゃない!普通の石ころじゃない!」
「違イマス。私ニトッテハ、コノ星ニヤッテ来テ初メテ触レタ物ナノデス。」
「あのね宇宙人?私達にしてみれば、いっつも学校の登下校中に見てる単なる石ころなのよ!そんなの簡単に手に入るのよ!珍しくもなんともないわよ!」
「ソウデシタカ。」
「そうよ!ちょっと考えれば分かるでしょ?どうせならあんたの星の物を頂戴よ!」
「そうだよ宇宙人!何か持ってないの?星のお金とか?星のゲームとか?星のお土産とか?」
「家に遊びに来てんじゃないんだから、そんな物持ってないでしょ!あっ、でも宇宙人の星のお金は、持ってるかもね。宇宙人!お金頂戴よ!」
「強盗デスカ?」
「何でよ!全部、巻き上げるつもりなんかないわよ!1番小さなお金でいいし、どちらかと言えば、状況からして強盗はあんたの方でしょ!」
「スミマセン。裸ナモンデ何モ持ッテイナイノデス。デハ、私ノ鼻糞デモ。」
「いらないわよ!それをもらって喜ぶと思ったその考え方に驚きよ!それよりも宇宙人?」
「何デショウ?」
「あんた、もし1番最初にお爺さんとかに触れてたらどうするつもりだったのよ。」
「モチロン、オ持チ帰リシマスヨ。」
「笑顔で言わないでよ!それって誘拐じゃない!」
「人体実験だね。」
「あんたも笑顔で恐い事言わないの!」
「人体実験ナドシマセン。オ持チ帰リシテ、オ爺サンヲハク製ニシテ飾ッテオクダケデス。」
「やってる事、人体実験並みじゃない!それに、お爺さんのはく製なんか部屋に置いたら気持ち悪いわよ!」
「それはやめた方がいいね。でもさぁ。何で宇宙人は、僕達の部屋に来たの?」
「そうよ!何で来たのよ!まさか?誘拐しに来たんじゃないでしょうね?」
「えっ!?僕達もはく製にされちゃうの?」
「ちょっと!もしそれが目的だったら、ぶっ飛ばすわよ!!」
「チチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチ違イマスヨ!」
「多いわよ!『ち』が!小学生の女子のぶっ飛ばすに、どんだけ動揺してんのよ!てか、その『ち』の多さは、わざとの域よね。」
「じゃあ、宇宙人は何をしに来たの?」
「特ニ何モ。」
「はあ?特に何もしに来てないんだったら私のお気に入りのコーディネート着てないで、とっとと帰んなさいよ!」
「裸ダッタノデツイ。」
「ついじゃないわよ!」
「本当に僕達の部屋に来た理由はないの?」
「ハイ。アッ、デモ・・・・・・・・・。」
「でも何よ?」
「トイレヲオ借リシテ、オ風呂ヲ頂戴シテ、冷蔵庫ノ残リ物ヲ御馳走ニナッテ、食後ノデザートヲ食ベナガラテレビヲ見テ、ソノ後シバラクコノ部屋デ仮眠ヲトラセテモライマシタ。」
「何を勝手に一通り持て成されちゃってんのよ!」
「やりたい放題だね。」
「やりたい放題もいいとこよ!あんた、入った家が家だったら、今頃あんたの方がはく製にされてるわよ?」
「ヒェ~!ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル。恐ロシイ・・・・・・・・・。」
「あんたがやろうとしてた事じゃない!特に目的がないのは分かったわよ。で?いつ帰るの?私達、これから学校なのよ。」
「イヤ、オ二人ガ目ヲ覚マサナイウチニ帰ロウト思ッタノデスガ、ツイ寝過ゴシテシマッテ。」
「そうだったんだ!」
「そうだったんだ!じゃないわよ!よかったわよ気が付いて!でなきゃ今頃、家中大騒ぎよ!」
「スミマセン。」
「じゃあ、帰っちゃうんだね。」
「ハイ。キット宇宙船ノ窓カラ身ヲ乗リ出シテイテ、ウッカリ放リ出サレタ私ノ事ヲ皆デ捜シテイルトカ?イナイトカ?ナノデ、帰リマス。」
「家でくつろいでる場合じゃないじゃない!てか、あんた単なるおっちょこちょいじゃない!」
「きっと皆で心配して捜してるから、早く帰ってあげなきゃだね。」
「ダトイイノデスガ?」
「あんたどんだけネガティブなのよ!さっさと帰りなさいよ!」
「ハイ。デハ、帰リマス。サヨウナラ。」
「はいはい。もう窓から落ちないようにね。」
「バイバイ。あっ!そうだ!」
「どうしたのよ。」
「ねぇ?宇宙人は、いったいどこの星からやって来たの?」
「そうね。それぐらいは教えてもらってもいいかもね。何て星から来たの?」
「ハイ。私ハ地球ト言ウ星カラヤッテ来マシタ。」
「地球?ふ~ん。聞いた事ないわね。じゃあ、気を付けて帰るのよ。」
「バイバイ宇宙人!」
「アリガトウゴザイマス。デハ、サヨウナラ。」

第六十八話
「地球人」

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2007年10月10日 (水)

「第六十九話」

 俺の横にあるリモコンは、俺が目一杯手を伸ばしてもギリギリ取れない距離にある。
「くそっ・・・・・・・・・!」
どう頑張っても取れない。立ち上がって取れば簡単な話だ。だが、俺は負けず嫌いだ。特技の欄には、必ず負けず嫌いと書いてしまうほどの負けず嫌いだ。だから、この状態のままリモコンをどうにかして取らなければならない。それが俺の使命であり、運命である。そうしなければ俺は、リモコンに負けた事になる。なぜそこまでするのかって?それは俺が負けず嫌いだからだ。
「・・・・・・・・・ダメかっ!」
もはや、腕をありったけ伸ばしたぐらいじゃリモコンを手に取る事は不可能だ。それは、2時間も前から分かっていた事だが、俺は微かに奇跡ってやつを信じていた。いや、信じてみたかった。もしかしたら、急に腕が伸びてリモコンを掴むんじゃないのか?ってな。だが、奇跡はそんな甘いもんじゃなかった。
「さてと、どうしたもんか?」
そうだ!もしかしたら、俺の髪の毛を全部むしり取って、それを結んで一本の長いロープ状にして投げ縄の要領でリモコンを取れるかもしれない。
「プチンッ!」
「いったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
痛い!痛すぎる!何だこの痛さ!何なんだこの痛さ!一本抜いただけでこの痛みだ。もし髪の毛を全部抜き取ったとしたら、俺は抜き終える前に痛みでショック死してしまう。死んだら負けだ。例え根性でリモコンを手にしたとしても、数秒後に事切れてしまったら俺の負けだ。このプランは白紙だ。白紙同然だ!
「くそっ!」
俺は、俺の横でそんな俺の事を嘲り笑うリモコンを睨み付けた。
「ん?」
痛みの涙でリモコンが歪んで見える。涙?
「そうだ!」
涙だ!涙をリモコンが置いてあるテーブルの高さまで流す。するとどうだ?リモコンが涙に浮かんで俺の手元にやって来るじゃないか!名案だ!これはかなりの名案だ!
「ん?まてよ?」
簡単に涙と言うが、いったいどうやって流せばいいんだ?髪の毛を抜くか?いやいやいや、それはダメだ。痛みでショック死してしまう。さっきも言ったが、死んだら負けだ。例え根性でリモコンを手にしたとしても、数秒後に事切れてしまったら俺の負けだ。なら、目を殴るか?
「・・・・・・・・・くっ!」
そんな勇気が俺に兼ね備えられている訳がない!もし兼ね備えられていたとしたら、とっくに髪の毛を全部抜き取っている!
「そうか!なるほどな!」
俺は痛みに弱いんだ!これは大発見だ!今日の日記のメインテーマにしよう!久しぶりに2行以上の日記が書けそうだ!
「さてと・・・・・・・・・。」
日記のメインテーマは決まったとして、問題はリモコンだな。痛みを伴わずに涙を出す方法は・・・・・・・・・?
「悲しみだ!」
人は悲しみを感じた時と目にゴミが入った時に涙を流す。と、偉人さんが言っていた気がする。目にゴミを入れるには、痛みが伴うから白紙同然だとして、残すは悲しみの涙を流すだ!
「よし!」
そうと決まれば悲しい出来事を考えよう。例えば、誰か親しい人間が死んだとしたらどうだ?その人は、俺に限りなく親しく、そして何よりも親しい存在。そんな人間が死んだとしたら・・・・・・・・・。死んだとしたら・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
ダメだ!涙が出てこない!悲しみすら感じない。なぜなら、人間にとって死は絶対。けして逃れる事の出来ない現実。死ぬから人間であり、この世の生物である。死なない人間など人間ではない!
「死を受け入れずして何が人間だ!」
ダメだ。怒ってしまった。悲しみどころか憤怒してしまった。考えろ!考えるんだ俺!
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
そうだ!どう頑張っても、このリモコンが取れなかったらどうだ?それこそ俺が老人になっても、このリモコンと格闘し続けていて、遂に俺は負けを認めて立ち上がりリモコンを手に取る。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
どうだ?これは、あまりにも惨めで悲惨な人生じゃないか?しかも負けを認めてリモコンを手に取ったと同時に俺の寿命が尽きてしまう。
「・・・・・・・・・・・・。」
きっと俺の遺影は、リモコンと一緒に写っているに違いない。何ならリモコンの方が俺より大きく写っているに違いない。そして、焼香に来てくれた人々からは「リモコンじいさん!リモコンじいさん!わっしょい!わっしょい!」と、言われてしまうに違いない。
「・・・・・・・・・・・・。」
リモコン型の棺の中には、ぎっしりリモコンが敷き詰められ、焼かれる時には、リモコン型の棺の電源ボタンを押して俺の人生をOFFにされてしまうんだろうな。
「って、泣けるかっ!」
葬儀に来た誰一人として泣く奴なんかいるもんかっ!逆に笑われるだろ!
「くそっ!」
涙プランもダメだ。白紙だ。どうする?どうすればリモコンを手に取る事が出来るんだ?あっ!?
「超能力!」
そうだ超能力だ!何で気付かなかったんだ!あれだ!物体を動かすって言うサイコキネシスが使えればいいんじゃないか!それだ!それしかない!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
やはりな。俺には、そんな能力ないみたいだ。フィフティーフィフティーの賭けだったんだが、どうやら賭けに負けたみたいだ。いや、俺は負けず嫌いだ。負けてなどいない。きっと超能力に頼らずリモコンを手に取れ!と、言う無意識の気持ちが俺の中で働いたに違いない。ある意味、超能力なんてもんは、反則に近い行為だからな。きっと、それでリモコンを手に取ったとこで、俺が心から喜べない事を俺は知っていたに違いない。
「ありがとう俺!」
危うく卑怯者の十字架を背負わされて、この先の人生を歩んで行かないといけなくなりそうだった。
「だったら・・・・・・・・・。」
背後霊に取ってもらうってのはどうだ?
「お願いします。・・・・・・・・・・・・・・・。」
いないのか?俺には、背後霊がいないのか?それとも、俺が霊の存在を信じていないからなのか?いや、きっとそれ自体は関係ないはずだ。俺が霊の存在を信じていようが、信じていまいが、いるもんはいる!なのにリモコンを取ってくれないって事は、やはり俺には背後霊が憑いていないと言う事なのか?
「・・・・・・・・・まさか!?」
誰かにリモコンを取ってもらうのではなく!己の力でリモコンを手にしろ!と言う、これはご先祖様からのありがたい教えではないのか?確かに、自分の力以外でリモコンを手に取ってしまったら、俺の負けだ。例えそれが背後霊だろうが関係ない。負けは負けだ。負けるとは、実にシビアでシンプルなもんだ。それを改めて俺に諭してくれたと言うのか!?
「ありがとうございますご先祖様!」
相変わらず、相変わらずリモコンは、涼しい顔して俺を見ている。勝利の風はリモコンに吹いていると言うのか!そうだ!もしかしたら、もしかしたら!
「んっっっっっっっ。」
ダメだ。リモコンどころか、鼻の穴までも届かない舌の長さだった。微かな望みに託した俺の考えが浅はかすぎた。
「もはやこれまでか・・・・・・・・・。」
俺の万策尽きた顔を勝ち誇った顔で見ているリモコンを、俺はほくそ笑んで返してやった。
「馬鹿め!」
もはやこれまでか・・・・・・・・・。普通に聞いたら万策尽きた感じに聞こえるだろう。だが、もはやこれまでか・・・・・・・・・。と、言った俺の真意は違う!いよいよ最終プランを実行しようと言う意気込みの、もはやこれまでか・・・・・・・・・。だったのだ!確実に成功するプランを最後の最後まで隠していたのだ!今までは、成功率の低い可能性のプランを試していたまでだ!そう、この勝負は最初から俺の勝ちと決まっていたんだよ!
「リモコンよ!もはやこれまでだぁぁぁぁぁ!!」

第六十九話
「爪を伸ばしはじめた俺」

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2007年10月17日 (水)

「第七十話」

「キャプテン!!」
「何だ!」
「巨大イカです!!」
「嘘だぁ~!」
「本当ですって!」
「何!?」
「巨大イカが甲板に現れました!」
「現れましたって、ロールプレイングゲームじゃねぇんだから、巨大イカなんかそう簡単に現れねぇだろ。」
「簡単に現れました!」
「現れちゃったの?てか、巨大イカなんかよりも宝の島はまだ見えねぇのか?」
「えっ?巨大イカ、ほっといていいんですか?」
「いんだよ!どーせいねぇんだからよ!」
「いるのに・・・・・・・・・宝の島ですか?そろそろ見えてきてもいいんですけど・・・・・・・・・見えませんね。」
「見えませんじゃねぇだろ!ちゃんと航路は合ってんだろうな!何なの?巨大イカって、本当に甲板のとこにいんの?」
「います。巨大イカが巨大にいます。でもキャプテン?航路は、キャプテンの指示通りですよ?」
「何だと?俺様が悪いって言いてぇのか?」
「悪いだなんて、これっぽっちも思ってなんかいませんよ。」
「巨大イカ、今どうしてる?」
「えっ?キャプテンが直接見たらどうですか?」
「直接って、だって本当はいねぇんだろ?」
「いますって!」
「甲板に?」
「甲板にです!」
「その巨大イカは、どんぐらい巨大なの?」
「とても巨大な巨大イカです!とても巨大な巨大イカが甲板にいるんです。」
「ふ~ん。宝の島見えた?」
「まだ見えません。」
「ところでさぁ?」
「はい。」
「何で巨大タコっていねぇんだろうな。ほら、巨大イカがいるぐらいなんだから、巨大タコもいていいだろ。」
「いるんじゃないですか?巨大タコ。」
「お前は直ぐに憶測だけで物事を言うよな。いねぇだろ?巨大タコ。」
「きっといますって、巨大タコ。」
「巨大で、しかもタコなんだぞ?いねぇいねぇ。巨大タコ。」
「あっ!」
「どうした!?財宝が眠る宝の島が見えたのか!?よーし!速度を上げるぞ!全速ぜ」
「いえ、巨大タコです!やっぱりいたんですよ!巨大タコ!」
「あまりにも都合よすぎねぇか?巨大タコの話をした途端に来るか?巨大タコ。」
「でも、来ましたよ?巨大タコ。」
「嘘付くなって!」
「嘘かどうか自分の目で確かめて下さいよ。甲板にいますから。」
「やだ!」
「やだって、操舵室からちょっと甲板を覗き込むだけじゃないですか。見て下さいよ。巨大イカと巨大タコ。」
「そうやって俺様の背が低い事を馬鹿にしてるんだろ。」
「してませんよ。ほら、甲板のとこにいますから、見て下さいよ。」
「いや、見れるよ?俺様だって頑張って覗き込めば甲板なんか直ぐに見えちゃうよ?」
「だったら」
「でも見ねぇ!俺様は絶対に甲板を覗き込まねぇ!なぜなら、そこには巨大イカも巨大タコもいねぇからだ!」
「すっごく巨大なんですよ?」
「興味ねぇんだよ!巨大イカも巨大タコも!」
「そうですかぁ。」
「参考になんだけどさぁ。巨大イカと巨大タコって、どっちの方がより巨大なの?」
「う~ん?見た感じでは、同じくらいの巨大さですね。」
「それさぁ。巨大タコの方は、赤い巨大イカって可能性は?」
「ないですね。」
「何でそんな事、言い切れるんだよ!」
「だって、足の数が十本と八本ですもん。あれは間違いなく巨大イカと巨大タコですよ。」
「なるほどな。だったら、赤い巨大イカじゃなくて、巨大イカと巨大タコだな。」
「見ればいいじゃないですか。」
「見ねぇよ!俺様は、そんな巨大生物なんかよりも、お宝の事で頭がいっぺぇなんだよ!」
「そうですかぁ。」
「何やってんの?」
「何がですか?」
「何がですか?じゃねぇよ!巨大イカと巨大タコが何やってんのかって事に決まってんだろ!」
「だから、キャプテンが自分の目で確かめて下さいって!それが一番早いんですから!」
「確かめるのは容易いよ?」
「だったら、巨大イカと巨大タコが何をしてるのか見て下さいよ。」
「でもさぁ。本当はいねぇなんて事になったら、このワクワク感いっぺぇの気持ちはどうなっちまうんだ?暗い海底に一人お宝を抱えて沈んで行くみてぇな孤独感と絶望感を味わうはめになっちまうんだぞ?だったら最初っから巨大イカと巨大タコなんて見ねぇ方がいいんだよ!!」
「どうして頑なに巨大イカと巨大タコの存在を認めないんですか!」
「映画じゃねぇんだよ!んなもん簡単に認められっかよ!!そんな事よりも、よっぽどこの宝の地図の方が信憑性があんだよ!!」
「ちょっと待って下さいキャプテン?」
「何だよ。」
「逆に言うと、その宝の地図は、あんまり信憑性がないって事ですか?」
「違げぇよ!物の例えだよ!たまたま宝の地図が手元にあったから例えに使っちまっただけだよ!別に、この舵だって、その羅針盤だって、あの帆だって、例えは何だってよかったんだよ!たーまーたーまー!」
「キャプテン!だったら、僕が見ている巨大イカと巨大タコの社交ダンスはいったい何なんですか!」
「社交ダンスしてんの!?巨大イカと巨大タコが?で、どっちがリードしてんの?」
「巨大イカです。」
「あそう。何だか吸盤邪魔そうだよね。」
「お互いに邪魔がってます。」
「やっぱり。そうだと思ったよ。」
「でも、社交ダンスしてます。」
「どれぐらい社交なんだよ。」
「とても巨大に社交です。見たくなりました?」
「本当だったらな。」
「本当ですって!」
「お前さぁ。どこの海域で社交ダンスする巨大イカと巨大タコがいると思ってんだよ。」
「ここです!この海域です!」
「そんな話、誰が簡単に信じるんだよ!信じてたまるかよ!」
「社交ダンスですよ?」
「作り話もほどほどにしとけよ!」
「作り話じゃないんですって!本当に巨大イカが巨大タコをリードして社交ダンスしてるんですって!」
「巨大イカが巨大タコをリードするかよ!バカバカしい。」
「あっ!キャプテン!」
「何だ?今度は巨大クラゲが来てタップダンスでもしてんのか?もう真面目に宝の島を目指そうよ。財宝手に入れようよ。」
「巨大クラゲのコサックダンスです!」
「難易度高っ!」
「かなり上手いです!」
「いや、冷静に考えれば考えるほど、嘘だろ?」
「本当なんですって!見て下さいよ!」
「見ねぇよ!俺様は、絶対に見ねぇ!そんなアニメーションのような光景がある訳がねぇ!巨大イカと巨大タコの社交ダンスと巨大クラゲのコサックダンスなんて、俺は認めねぇえ!」
「巨大イカと巨大タコと巨大クラゲですよ?三巨大をいっぺんに見れるなんて、このチャンスを逃したら一生見れませんよ?後悔しても知りませんよ?いいんですか?」
「いくねぇよ!いい訳ねぇだろ!見てぇよ!物凄く見てぇよ!ただなぁ、どうせ嘘なんだろ?巨大イカと巨大タコの社交ダンスも巨大クラゲのコサックダンスも、嘘なんだろ?嫌なんだよ。もう航海日誌を涙で綴りたくねぇんだよ!」
「キャプテン!」
「巨大サザエか?」
「巨大ウミウシです!」
「いやそりゃ嘘だって分かってても見ちゃうだろ!ついつい見ちゃうだろ!騙されたって後悔はしねぇだろ!」

第七十話
「一寸パイレーツ」

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2007年10月24日 (水)

「第七十一話」

 思いの外、思い通りにいかない事がある。
「どいてくれないか?」
「モゾモゾ。」
それは、お邪魔虫だった。この際、わしがどこで何をどんな感じで、どんな具合に思い通りにしようとしているのか?そんな事は、どうだっていい。どうでもいい事だ。説明しているほど、わしは暇ではない。目の前にある真実は一つだ。わしが今、お邪魔虫によって思いの外、思い通りにいっていないと言う真実のみだ。こんなにも思いの外、思い通りにいかないのは、生まれて初めての事だ。
「ところでお前は、やっぱり虫?なのか?」
「モソリ。」
やっぱりか。見た感じからして虫だとは分かっていたが、少しだけ気になったものだから、確認の為に一応聞いて確かめておいてよかった。もしも虫じゃなかった時があれだからな。あれと言うのは、所謂世間一般的に言う、あれの事だ。あれはあれで、あれについて語っているほど、わしは暇ではない。あれは、それ以上でもこれ以下でもない。あれだ。ん?だがこのお邪魔虫、まさかとは思うが!?
「お前、人間の言葉が分かるのか?」
「モソリ。」
また頷いた。やはりそうだったのか。どうりであまりにも思いの外、思い通りに会話が出来ていると思った。だが、なんて事だ。お邪魔虫の存在だけで十分に驚いていると言うのに、さらに人間の言葉が分かるとは・・・・・・・・・これは、何かの根底を覆す衝撃の事実だ。まあ、その何かが示す何かが何かと言う事を事細かに説明しているほど、わしは暇ではない。事実、今この瞬間、おそらくどこかで何かが覆っているに違いない。
「どかないつもりか?」
「モソリ。」
「何故だ?」
「モソ、モソモソモソ!モッソ、モソモソ!モーソ、モーソ。」
「分からん!」
分かる訳がない。『モ』と『ソ』と『ッ』の組み合わせだけで、いったい何が分かると言うのだ。そして、いったい何を分かれと言うのだ。しかも、それが分かったとこで、わしは自分の考えを何一つ変えるつもりなどない。思い通りにするまでだ。この思いの外、思い通りにいかない現状を打破するまでだ。この際、お邪魔虫の意思など関係ない。お邪魔虫が、何故わしの邪魔をしているのかなど興味すらない。
「モゾモゾモゾ。モゾモゾモゾモゾモゾ。モゾ、モソモソモソ。モソリ。」
「気持ち悪い!」
喋るならまだしも、そんなに体をくねくねもぞもぞ動かしながら何かを訴えかけてきたとこで、気持ち悪いの一言だ。訴えかけてきた何かが何かなど知りたくもない。例え思いの外、思い通りに何かが何かだと分かったとこで、この日の為にわしがずっと計画していた事は、思い通りに実行するまでだ。それだけが揺るぎない事実だ。
「おい!」
「モソ?」
「どうしても、そこをどかないと言うのか?」
「モソリ。」
「分かった。ならば、わしはこの場を去るまでだ。じゃあな。」
まだ十分に時間に余裕があったわしは、お邪魔虫に別れを告げ、再び自分の計画を思い通りに実行する事にした。
「モソ!」
掴んだ!?わしの服を何本目の足だか手だか分からない体の部分で掴んだ。
「ん?何だ?わしに行くなと言うのか?」
「モソリ。」
「何故だ?」
「モソソソ!モソン、モーゾモゾ!モソ!モモモモ、ソソソモソ!」
「だから分からんし、気持ち悪い!いいか?わしには、思い通りにやらなければならない事があるのだ。それは、わし個人だけの大事な事かもしない。他の人間からしてみれば、実に下らない事かもしれない。だが、お邪魔虫であるお前に、それを邪魔する権利もないはずだ。」
「モソリ。」
「分かってくれたようだな。なら、わしはそろそろ行かねばならないから、その何本目の足だか手だか分からない体の部分で掴んでいる服を放してくれ。」
「モソリ。」
全く、本当に思いの外、思い通りにいかなすぎる。だが、それもここまでだ。この先は、思い通りにいってみせる。そう、あと数分で・・・・・・・・・ん?
「ちょっと待て!?」
「モソ?」
わしがお邪魔虫と遭遇してから、数分しか経っていないはず。なのに何故だ?何故もう数時間も経ってしまっているのだ?わしの時計が狂っていたのか?いや、それは有り得ない事だ。家を出る時に正確に合わしたはず。それに、この腕時計が狂うはずがない。だとすると、思いの外、思い通りにいかない原因を作った張本人は一匹だけだ。
「おい!」
「モゾ?」
「お前、いったいわしに何をした!」
「モゾゾ。」
「嘘つけ!お前が何かをしたのは分かっている!お前と出会ってから!思いの外、思い通りにいかな過ぎる!」
「モゾモゾ。」
「これはいったい、どう言う事なんだ!説明をしろ!何がどうなっているのかを説明しろ!事細かに説明するのだ!!」
「モ、モゾ。」
「いいか!お前にとっては、どうでもいい事かもしれない!だが!わしにとっては、大事な事なのだ!」
「モ、ソソソ。」
「ちゃんと説明しろ!・・・・・・・・・いや、説明などしなくてもいい。そんな事どうだっていい!返せ!返すのだ!」
「モソモソ。」
「今すぐ!わしの時間を返すのだ!!」
「モ、モモソ。」
「さあ!返すのだ!わしの時間を返せ!」
「モモモソソ。」
「わしから奪った時間を返せ!!」
「モモモモモ。」
「これでは・・・・・・・・・。」
「モソ?」
「これでは・・・・・・・・・。」
「モソソ?」
「これでは、もう間に合わん・・・・・・・・・。」
「モソソソ?」
「わしの計画が・・・この日の為に綿密に練られたわしの計画が・・・・・・。」
「モソモソソ。」
「お前のお陰で・・・お邪魔虫の邪魔のお陰で・・・・・・。」
「モ、モッソ。」
「あいつを殺す事が出来なくなってしまったではないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

第七十一話
「時には何も起こらない」

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2007年10月31日 (水)

「第七十二話」

「ガチャッ!」
「ふぅ~。今日も疲れちゃったわ。」
「バタンッ!」
「パチッ!」
「お帰りなさい。」
「えっ!?」
「お仕事、お疲れさま。」
「誰?!誰なの?」
「ボク?」
「そうよ!あなたよ!誰なの!?」
「知りたいですか?」
「大声出すわ・・・!・・・・・・・・・?・・・・・・・・・!?・・・・・・・・・・・・・・・!!」
「それは困ります。まあ、名乗るほどの者ではありませんが、知りたいのならお教えしましょう。」
「・・・・・・・・・・・・・・・!・・・・・・・・・!?・・・・・・・・・!!」
「ボクはね。」
「・・・・・・・・・!・・・・・・・・・!」
「こう呼ばれているんですよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」

第七十ニ話
「声泥棒」

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