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2007年11月

2007年11月 7日 (水)

「第七十三話」

「何ですか?こんな公園に呼び出したりして、私は大物なのですよ?私は忙しい身なのですよ?大事なお話があるのなら、早くして下さい。」
「大物、あっしの方を振り向かずに、そのままベンチに座って聞いて下さい。」
「・・・・・・・・・分かりました。」
「しかし大物、失礼ですが意外と近くで見ると小さいんですね。」
「よく言われます。大物の背が小さいと何かいけない事でもあるのですか?」
「いえ、とんでもない・・・・・・・・・しかし大物、あなたは小物です。」
「あはははは!何を言い出すのかと思えば、そんな根も葉も無い事を。あはははは!確かに身長で言ったら、間違いなく私は小物です。面白い事を言う人ですね。あはははは!」
「大物、これは笑い事じゃないんです。あっしは、身長の事を言ってるんじゃないんです。あっしの情報だと、大物は世界一の大物ではなく、世界一の小物。」
「大物委員会からは、そんな報告は入ってきていませんよ?何が情報ですか。あなたの勝手な個人的な推測だけで私を小物呼ばわりしないでいただきたい!場所が場所なら重罪ですよ?どうやら下らないお話だったようですね。私は、この辺で失礼させていただきます。」
「小物委員会をご存知ですか?」
「小物委員会?聞いた事もないですね。そもそも大物委員会で決定した大物以外は、皆小物なのだから小物委員会など必要のない機関じゃありませんか?」
「存在するんですよ!小物委員会って機関は!」
「ご冗談を。」
「冗談なんかじゃないんです。いや、存在していたと言った方が正しいかもしれません。」
「存在していた?」
「大物委員会が設立された当時から、実は同時に小物委員会も設立されていたんです。」
「信じられませんね。そんな根も葉も無いお話。」
「表立った公表はされてませんし、どうやら当時は名ばかりで、誰一人として実行委員は存在していなかったんです。極秘に入手した資料です。どーぞ。」
「どーも。ふむふむふ~むふむ。確かに小物委員会と言う機関は、存在していたようですね。ですが今は活動していないのですよね?なら、何の為にこんな機関を設立したのです?」
「ここからが肝心なとこなんです。小物委員会と言う機関は、大物委員会が設立した機関なんです。」
「まさか!?」
「大物委員会とは、世の中の大物を決定する機関。大物、あなたもその中の一人ですよね。そして、あなたは大物の中でも世界一の大物。つまり、現時点であなた以上の大物は、この世の中に存在しない。」
「そうです。私は大物です。ですから、今までのお話は、私には一切無関係なお話です。」
「ところが無関係じゃないんですよ。分かりませんか?大物。」
「はて?さっぱり?」
「なぜ今になって凍結状態だった埃まみれの小物委員会が動き出したのか?」
「動き出したっていいじゃありませんか。やはり私には、無関係なのですからね。」
「小物委員会は恐ろしい機関なんです。」
「恐ろしい?」
「これは、大物委員会が小物委員会を使って仕掛けた罠なんです。」
「罠?」
「この世に大物は存在するが、小物はまだ存在しない。」
「何ですと!?」
「大物以外が小物と言う発想自体が間違いだったんです。大物委員会が世の中の大物を決定する。そして、ある時期が来たら小物委員会が動き出し、世の中の小物を決定する。」
「なるほど。しかし、それはそれで勝手に決定すればいいじゃありませんか。小物でも何でも。」
「小物は、一般人の中からは選ばれません。小物は、大物の中からのみ選ばれるんです。」
「何ですと!?」
「言わば!これは戒めの儀式!大物=正義、小物=悪。長い年月をかけて、既にこの図式は無意識レベルで世の中の人々の心の中に植え付けられています。」
「まさか!?」
「大物になってからのあなたの行動は、大物な部分も確かに多々ありました。がしかし、同時に小物な部分も多々ありました。完璧な大物な人間なんている訳がない!委員会の狙いは、そこだったんです!」
「私が・・・・・・小物?」
「いえ!誰にだって、正義と悪の部分は存在する。そもそもが大々的に人間を大物とそうでない人間とに分別する事自体がおかしな話だったんです。大物!あなたは、はめられたんです!」
「私がはめられた!?」
「大物、小物になったあなたは、世の中から迫害されて行きます。小物になったあなたをあらゆるメディアが叩いてくるでしょう!民衆もそれに乗っかるようにして、あなたを叩くでしょう。悪を懲らしめる正義のヒーローのように。」
「そうですか・・・・・・・・・。」
「でも大物!助かる道が一つだけあります!」
「それはいったい?」
「今すぐ大物を辞めて下さい!」
「大物を辞める?」
「そうです。小物は大物の中からしか選ばれない。そこを逆に利用するんです。あっしの情報だと、明日にも小物委員会が全世界に向けて小物を決定します。」
「しかし・・・・・・・・・。」
「大物!迷う必要がどこにあるんですか!」
「無理です。」
「大物!何を言ってるんですか!言わば小物は、世の中の悪の象徴なんです!そんな中をこれから先ずっと、普通の生活をして生きて行けると思ってるんですか?あなたは、そのギャップに耐え切れずに・・・・・・・・・きっと死を選ぶ。委員会の筋書き通りにね。「悪い事をすればこうなるんだ」と言う方程式なんですよ!裁きを具現化しなければ、人々は悪を理解出来ないし、認識出来ない!そんな世の中なんですよ!今の世の中は!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「一般人に戻るだけなんですよ?簡単な話しじゃないですか!」
「その選択肢は私にはありません。確かに私は、大物でありながらその大物をいい事に小物な事も多々してきました。そのツケがいつか返って来るだろうとも思っていました。」
「大物?」
「あはははは!よーく出来たシステムじゃありませんか。戒めの儀式!大物は小物!全くその通りですよ。あなたのお心遣いには、本当に感謝していますよ。ですが、大物は最後まで大物なのです。途中で逃げ出す訳にはいきません。」
「いいんですか?明日からは小物なんですよ?」
「制裁は受けます。」
「厳しいですよ?」
「あなたは一つだけ勘違いをしています。」
「勘違い?」
「これが委員会の仕掛けた世界を巻き込む大プロジェクトならば、私はそれを大物として、実行するまでです。小物プロジェクトをね。」
「そう、小物プロジェ・・・!?知っていたんですか!全てを知っていながら・・・・・・・・・。」
「私を誰だと思っているのですか?」
「あなたって人は・・・・・・・・・。」
「私は大物ですよ?」
「・・・・・・・・・あなたは間違いなく大物です!」

第七十三話
「フィクション」

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2007年11月14日 (水)

「第七十四話」

 僕は、洗面所の鏡の前に立っていた。なぜ、洗面所の鏡の前に僕が立っているのかと言うと、ついさっき右鼻の穴に奇妙な違和感を覚えたからで、その奇妙な違和感の正体を突き止める為だった。
「やっぱりな。」
鏡の中の僕の右鼻の穴からは鼻毛が一本、やたらと長く飛び出していた。僕は、予め想定していたこの展開用に準備していたピンセットで、やたらと長く飛び出した鼻毛を抜こうとした。
「ちょっと待って下さい!」
「えっ!?誰?」
僕は、自分でも信じられないくらいの速度でキョロキョロしていた。
「ボクです!あなたの右鼻の穴からやたらと長く飛び出してる鼻毛です!」
正直、かなり驚いた。だってあんな速度で自分の首が動くだなんて思いもよらなかったからさ。
「本当に?」
「本当です!」
「僕の鼻毛が、僕に何の用なの?」
「どうか、ボクを抜かないで下さい!」
「抜かないで下さいって、それは無理だよ。」
「どうしてですか!」
「どうしてですかって、鼻毛がやたらと長く飛び出してたら、単純に格好悪いからさ。」
「そんな事、ボクは気にしません!」
「僕が気にするんだよ。だから抜くよ。」
「待って下さい!」
「まだ何か?」
「ボクは、いっつも鼻の穴の暗闇の中で生活してきました。でも、いつの日からか心に夢を抱くようになっ」

「ブッチーン!」



僕は、洗面所の鏡の前に立っていた。なぜ、洗面所の鏡の前に僕が立っているのかと言うと、ついさっき右鼻の穴に奇妙な違和感を覚えたからで、その奇妙な違和感の正体を突き止める為だった。
「やっぱりな。」
鏡の中の僕の右鼻の穴からは鼻毛が一本、やたらと長く飛び出していた。僕は、予め想定していたこの展開用に準備していたピンセットで、やたらと長く飛び出した鼻毛を抜こうとした。
「待って下さい!」
「えっ!?誰?」
僕は、自分でも信じられないくらいの速度でキョロキョロしていた。
「ボクです!あなたの右鼻の穴からやたらと長く飛び出してる鼻毛です!」
正直、かなり驚いた。だってあんな速度で自分の首が動くだなんて思いもよらなかったからさ。
「と言うか。これってまんまさっきじゃん。」
「そうです!まんまさっきです!」
「そうですって、簡単に言うけど何なのこれ?」
「信じられないかもしれませんが、ボクには少しだけ時間を戻す力があるんです!」
「いや、信じられないよ。夢?」
「夢ではありません。ボクには」

「ブッチーン!」



僕は、洗面所の鏡の前に立っていた。なぜ、洗面所の鏡の前に僕が立っているのかと言うと、ついさっき右鼻の穴に奇妙な違和感を覚えたからで、その奇妙な違和感の正体を突き止める為だった。
「やっぱりな。」
鏡の中の僕の右鼻の穴からは鼻毛が一本、やたらと長く飛び出していた。僕は、予め想定していたこの展開用に準備していたピンセットで、やたらと長く飛び出した鼻毛を抜こうとした。
「話を聞いて下さい!」
「えっ!?誰?」
僕は、自分でも信じられないくらいの速度でキョロキョロしていた。
「ですから!あなたの右鼻の穴からやたらと長く飛び出してる鼻毛です!」
正直、かなり驚いた。だってあんなスローな速度で自分の首が動くだなんて思いもよらなかったからさ。
「本当に時間が少しだけ戻ってるよ。」
「信じてもらえましたか?」
「信じてはいないけど、信じようかな?とは、思ってる。」
「そこを何とか信じて下さい!」
「で?話って何?」
「そうでした!ボクを抜いて欲しくない説明の途中でした!ボクは、いっつも鼻の穴の暗闇の中で生活してきました!でも、いつの日からか夢を心に抱くようになったのです!青空が見たい!と言う夢です!」
「迷惑だって、その夢。」
「だから、頑張ってここまで成長したんです!」
「迷惑だって、その努力。」
「このまま、あなたがボクを抜かなければ、夢が叶うんです!だから、お願いです!ボクを抜かないで下さい!」
「迷惑だって、その願望。」
「頼めるのは、あなたしかいないのです!」
「そりゃあ、僕の鼻毛だから頼めるのは僕しかいないだろうけど、いくらお願いされたって無理なもんは無理なんだってば。いい?抜くよ?」
「嫌です!抜かれたくありません!別にいいじゃないですか!鼻毛が一本、やたらと長く飛び出していたって!」
「迷惑だって、その理論。」
「別にあなたがやたらと長く飛び出している訳ではないのですよ?ボクがやたらと長く飛び出してい」

「ブッチーン!」



「無駄です!何度ボクを抜いても、ボクは何度でも少しだけ時間を戻します!」
「何度でも?それって回数無限って事?」
「回数無限です!ボクを抜いたと同時に、少しだけ時間を戻す力が発動します!」
「それって、させない事は出来ないの?」
「出来ません!」
「でも、時間が少しだけ戻っても会話が繋がってるのは何で?」
「なぜか、記憶は持ち越す事が出来るようです!」
「そっか分かったよ。抜かないよ。」
「本当ですか!」
「うん。だって何度抜いても時間が少しだけ戻るなら、僕は永遠にこの空間から出られないって事でしょ?だったら諦めるよ。」
「ありがとうござ」

「ブッチーン!」



「本当だ。本当に記憶は、持ち越されてる。」
「いちいち確かめなくてもいいではないですか!」
「知らなかったよ。鼻毛にこんな不思議な力があるだなんてさ。」
「鼻毛もここまでやたらと長く伸びると、不思議な力を得るのです。」
「化け猫みたいな感じか。」
「方向性は、何となくあっているような気もしないでもないです!」
「化け鼻毛だ。」
「だからって、変な通称で呼ばないで下さ」

「ブッチーン!」



「遊ばないで下さい!」
「で?僕にどうしろって言うの?」
「ですから!ボクの夢の実現の為に、協力して下さい!お願いします!」
「夢って何だっけ?」
「ですから!青ぞ」

「ブッチーン!」



「ちょっと!悪ふざけは、やめて下さい!」
「青空を見たあとはどうすんの?」
「満足します!」
「満足したあとは?」
「ちょっとだけ伸びます!」
「もうこれ以上伸びなくてよくない?」
「そしてまた、新たな夢を目指します!」
「いいよ。別に目指さなくってもさ。」
「鼻毛の高みです!」
「迷惑だって、その高み。だったら、いつ抜けばいい訳?」
「いつ?何を言ってるのですか!」
「へ?」
「ボクを抜く事は、許されませんよ!あなたは、これからボクの夢の実現の為だけに、己の一生を費やす事になるのです!時を支配している以上!主導権は、あなたにではなく!ボクにあるのです!ですからボ」
「なら切る。」
「えっ!?」
僕は、予め想定していたこの展開用に準備していた鼻毛切りバサミで、やたらと長く飛び出した迷惑な鼻毛を調度いい長さに切った。

「チョッキン!」

第七十四話
「馬鹿な鋏の使いよう」

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2007年11月21日 (水)

「第七十五話」

 俺は、牢屋の床の下で発見した穴を掘って、刑務所からの脱獄を図った。
「ちょろいな。」
俺の計算でいくと、もうそろそろ刑務所の外の森に出られる頃だ。
「こんばんは。外はお月様が綺麗ですよ。」
「お前!?モグラか?」
「僕、モグラです。」
あと少しで脱獄成功って時に、俺の目の前に現れたのは、スコップを持った一匹のモグラだった。
「もしかして、この穴は元々お前が掘ったもんなのか?」
「そうです。この穴は、僕が掘りました。」
なるほど。これで穴の謎が解けた。ある日、もり上がった牢屋の床の下で発見した小さな穴。計算や実験を繰り返し、俺はその小さな穴が刑務所の外側に繋がっているはずだと推測した。どうやら俺の読みは、正解だったようだな。
「お前の掘った穴のお陰で、俺は外に出れる。礼を言うぞモグラ、ありがとう。」
「いえいえ。僕は、ただ好きで穴を掘っていただけですから。お礼だなんて、照れちゃいますよ。」
「この先は、森か?」
「はい。この先は、森です。あの小さな穴から光が漏れている場所が出口です。」
「そうか。やはり森だったか。」
俺の読みは、モグラの存在を抜かせば、100%的中していた。
「そのスプーン一本で、この穴を広くしながら掘り進んで来たんですか?」
「そうだ。食事の時に拝借した。」
「凄いですね。」
「俺は、元々スプーン選手だからな。」
「そうだったんですか!でも、スプーン一本でここまで来れるなんて、並のスプーン選手じゃありませんね?」
「分かるかモグラ?」
「分かりますよ。さぞ、名のある選手だったのでしょうね。」
「俺は、数々のスプーン大会で優勝してきた。家には、数え切れない程のメダルやトロフィーが置いてある。そして、金色のスプーンもな。」
「金色のスプーン!?無敵の選手の証じゃないですか!」
「刑務所に入る前までは、そう呼ばれていた。」
「うわぁー!握手してもらってもいいですか?」
「ああ、構わない。」
「ありがとうございます。でも、そんな無敵のスプーン選手が、どうして刑務所なんかに?」
「・・・・・・・・・。」
「あっ、あっ、余計な事を聞いてしまいましたね。すいません!ごめんなさい!!」
「いいんだ。穴のお礼に話そう。俺は・・・・・・・・・人を殺した。」
「えっ!?」
「スプーンで刺し殺したんだ。」
「スプーンで刺し・・・・・・・・・えぇー!!」
「あの日、いつものようにスプーン大会で優勝した俺は、特注で作ったスプーンカーで帰宅し、スプーンカーをガレージに入れ、大きなスプーントロフィーを抱えて玄関に向かうと、ドアの前に男が立っていたんだ。」



『こんばんは。今日は月が綺麗ですね。』
『誰だ?』
『私は、こう言う者です。』
『金色のフォーク!?』
『あなたは、無敵のスプーン選手ですよね。私は、無敵のフォーク選手です。よろしく。』
『無敵のフォーク選手がいったい俺に何の用なんだ?』
『いつも考える事があったんですよ。トイレに入ってる時もお風呂に入っている時もデートしてる時も車を運転してる時も夢の中でもです。』
『何を言ってるんだ?』
『でも、その考えが一番強く感じるのは、フォークを手にしてる時なんですよ。』
『何が言いたい。』
『果たして、フォークとスプーンでは、本当に強いのはどっちなのか?ってね。』
『下らない。』
『下らない?果たして本当にあなたは、心からそう思っているんでしょうか?』
『何だと?』
『この世界に身を置いている人間ならば、常に考えている事なのでは?』
『考えていたとしても、それはこの世界ではタブーだ。スプーンとフォークは絶対に交わってはならない物。それを理解していないとは、無敵のフォーク選手も青いもんだ。』
『はぁ~。あなたは本当に何にも分かっていない。』
『何だと?』
『駄目なんですよ。はっきりとスプーンとフォーク、どちらが本当に強いかを決めなければ!!』
『その考えが青いと言っているんだ。』
『分かりました。戦う気がないんですね。』
『当たり前だ。』
『だったら私は、帰るとしますよ!!』

『キーン!』

『何をする!』
『何を?スプーンを抜いたと言う事は、それが答えなのでは?』
『お前がフォークで攻撃をして来たから、俺はスプーンで防御したまでだ!』

『キンッ!キンッ!キーンッ!!』

『やめろ!!』
『いーや、やめませんよ!私は、ここに決着をつけに来たんです!世の中に無敵は二人もいらない!』
『分からないのか!我々が戦ってはならないと言う事を!』
『分かりませんね!』

『キンッ!』

『馬鹿め!』
『馬鹿で結構!あなたのような臆病者よりましです!!』

『キーンッ!』

『お前、死ぬぞ?』
『私が?果たして、本当にあなたのシナリオ通りになるんでしょうか?』
『シナリオ?そんなもんなどない!スプーンとフォークのどっちが本当に強いのか?それは、スプーンとフォークがこの世に作られた時から既に決まっていた事!』
『なら、話が早い!改めて行きますよ?』
『・・・・・・・・・来い!!』



「あなたは、勝ったのですね?」
「ああ、確かに俺は、あの戦いで勝った。スプーンは、フォークより強いと証明した。しかし、スプーンで人を殺してしまったと言う代償を伴った。」
「これは凄い!スプーンは、フォークより強い!凄い事実ですよ!」
「ありがとうモグラ。だが、この事は絶対に口外しないでくれ。この話は、穴を掘ってくれたお前へのスペシャルなプレゼントなんだからな。」
「分かりました!絶対に誰にも言いません!この事は、僕の胸の中にしまっておきます!」
「悪いな。じゃあ、俺はそろそろ行くとする。世話になったな。」
「ただ・・・・・・・・・。」
「ん?」
「ただ、果たしてスプーンがスコップよりも強いのでしょうか?」
「何だと!?」
「勝てますか?そんなボロボロのスプーンで僕のスコップに?いくら無敵でも、無理なんじゃないですか?」
「血迷ったかモグラ?お前の持つスコップなど、俺のスプーンよりも遥かに小さいんだぞ?このスプーンでも十分にお前を倒せる!無敵をなめるなよ?」
「なめてなんかいません。だから、これはただのスコップじゃないんですよ。」
「何!?」
「よーく見て下さい。」
「ん?・・・・・・・・・馬鹿な!?銃だと!?」
「脱獄は、極刑です。知らなかったとは言わせませんよ?無敵のスプーン選手さん。」
「俺をはめたのか!?モグラ!お前は、いったい何者なんだ!?」

第七十五話
「モグラデカ」

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2007年11月28日 (水)

「第七十六話」

 気が付くと私は、無人島にいた。この島が無人島だと、どうして私が分かったのかと言うとだ。それは、この島が無人で、しかも島だからだ。何よりも、雰囲気がそんな感じだったからだ。
「ザバーン!」
波打ち際の砂浜で、体育座りをしながら地平線を眺めていると、私がこの無人島にやって来た時の事を思い出す。
「ザバーン!」
家を出て、最初の十字路を見方によっては右方向に曲がった次の瞬間、なぜだか私は気を失った。そして、目を覚ますと私はこの無人島にいた。
「ザバーン!」
ついさっきの事だ。懐かしくもなんともない。私には、この無人島がどこにあるのかも、なんて名前なのかも、なぜここにいるのかも、分からない。何もかもがミステリアスだ。だだ、一つだけ解明されている謎があった。それは、ここが無人島だって事だ。
「ザバーン!」
誰かに恨まれているのか?私に恨みを持つ者の手による仕業なのか?とも考えた時期があった。しかし、私は人に恨まれるような性格ではない。と、自身で思い込んでいる節がある。だから、絶対に恨みによるものではない。例え、この意味不明な後頭部への激痛があったとしてもだ。例え、首筋を伝う生暖かい何かがあったとしてもだ。否定出来る事は、とりあえず片っ端から否定する。それが私の哲学であり、幼い時からの長所でもある。
「ザバーン!」
無人島は、暇だ。やる事がない。しかし、私のような人間にとっては、逆にこの環境が心地よかったりもする。騒がしくゴミゴミとした環境では思い付かない考えが、思い付いたりするからだ。
「ザバーン!」
まあ、私は普段から何かを深く考えるような人間ではないので、無人島にいても普段と違うような事は思い付かない。普段も特に思い付かないのだから、普段よりももっと思い付かない。
「ザバーン!」
だが、そんな私にも頬を伝う何かがあった。思えば、目が覚めたら突然こんな無人島にいたのだから、無理もない。現実から非現実に突き落とされてしまった現実。どうにか戻るため、だぐりよせようにも、どこにあるのかさえ分からない現実へと繋がる糸。何の前触れもなく、こんな環境を目の前に叩き付けられたら、誰だって頬を伝う何かが自然と流れ出て来てしまうだろう。それは、感情で制御出来ないぐらいの感情。
「ザバーン!」
私は、頬を伝う汗を右手で拭った。なんて暑いんだ無人島は!この状態で汗の出ない人間などいるはずもない!いるのなら、どうかお目に掛かりたいもんだ!
「ザバーン!」
まあ、無人島だからそんなチャンスはないと分かっている。だが、せめて雲があの太陽を覆い隠すとか言う千載一隅のチャンスが訪れても、罰は当たらないだろう。とは思う。仮に罰が当たったとしても、小石に躓く程度だろう。とも思った。
「ザバーン!」
ん?小石に躓く?そうか!私はあの時、家を出て最初の十字路を見方によっては、左方向に曲がった時、足元の小石に躓いた!
「ザバーン!」
な訳ない。あの十字路のどこをどう歩こうが、小石に躓く事など不可能だ。なぜなら、あの時あの十字路に小石がなかったからだ。そして、あの十字路で小石なんて代物は、今まで一度もお目に掛かった事がないからだ。考えれば考えるほど、どうして私が無人島にいるのかが分からなくなる。一度、何か別の事を考えよう。
「ザバーン!」
さっきから私の目の前に打ち寄せてくる波。いや、私がこの世に生まれるもっと前から、それこそ遥か大昔の地球が誕生したその日から、波は打ち寄せているのかもしれない。
「ザバーン!」
もしかしたら、向こう側からおっきな人が海を押していて、それで波が発生しているのかもしれない。
「ザバーン!」
仮にそのおっきな人を波師としよう。
「ザバーン!」
長生きだ。波師は、地球とだいたい同じ歳って事になる。
「ザバーン!」
そして、何よりも物凄く退屈な作業だ。海を押しているだけなんだからな。つまらないだろうし、やり甲斐など全くない仕事かもしれない。
「ザバーン!」
いや待てよ?波師自身は、これを仕事だと思っていないのでは?
「ザバーン!」
現代人の私の価値観と物差しで考えてはいけない問題なのかもしれない。純粋に、ただ純粋に波師は波を愛し、波を発生させているだけなのかもしれない。ある意味で波師にとっての波とは、アート!
「ザバーン!」
一度として同じ波を作る事など出来ない!
「ザバーン!」
波師は芸術家!地球と言うキャンパスに海と言う絵の具を使って、波を描いているんだ!世の中で言われている超一流の芸術家達が束になって何かを創作したとこで、まるで相手にはならない程の!
「ザバーン!」
波師の作り出す波と言う作品を知らない者などこの地球上に、果たして存在するのだろうか?
「ザバーン!」
知名度が違いすぎる!影響力が違いすぎる!波は、波師が描く究極の風景画と言えるのではないだろうか?誰も辿り着く事の出来ない自然との一体化。
「ザバーン!」
それを成し遂げた唯一の芸術家。それが波師だ!ん?まてよ?
「ザバーン!」
だが、これまでいったいどれだけの人間が波に飲まれて命を落としていったのだろう?海に飲まれたと言ってしまえばそうかもしれない。しかし、そこに波が存在しなかったら助かる命もあったはずだ。
「ザバーン!」
ならば、波師は究極の芸術家であり、同時に究極の犯罪者でもある。と言う事なのか?正直、クリエイティブでない私にとって、この境地は分からない事だ。しかし、アートを突き詰めて突き詰めて、アートに魂を同化させて辿り着く境地に待つ運命と言うのは、そう言う事なのかもしれない。
「ザバーン!」
なんて悲しい運命を背負っているんだ!おっきな人!
「ザバーン!」
そして、なんて長生きなんだ!おっきな人!
「ザバーン!」
波師よ。あなたは、これから先も向こう側から海を押し続け、波と言う作品を作り出し、いったいどこに向かい、そしてどこに行こうとしている?
「ザバーン!」
そして、私はなぜ無人島にいて、いつになったら家に帰れる?
「ザバーン!」
知っているのなら教えてくれ!おっきな人!
「ザバーン!」
もしも、もしも私がこのままこの無人島を脱出する事が出来なかったら。
「ザバーン!」
私も波師を志して、こっち側から押してみようかな?
「ザバーン!」
びっくりするだろうな。向こう側のおっきな人。えっ!?何で?とか思うだろうな。自分以外にも波師が?とか思って、何かコンタクトをとってくるかもしれないな。
「ザバーン!」
物凄いおっきな波を作ってくるかもしれないな。
「ザバーン!」
死んでしまう!!そんなおっきな波をこの無人島にぶつけられたら、無人島ごと波に飲み込まれて、私は死んでしまう!!
「ザバーン!」
諦めよう。私は、波師になる事を志し半ばにして諦めた。私には、もっと大きな夢があるんだ!
「ザバーン!」
それは、この無人島から脱出して、家に帰る事だ!
「ザバーン!」
そして、十字路を見方によっては、やっぱり右方向に曲がり、研究施設に辿り着き、いつも通りに兵器実験のスイッチを押す係に戻らなければ!
「ザバーン!」
それにしてもここは、本当に無人島すぎるほど無人島だ。

第七十六話
「正座島」

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