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2007年11月21日 (水)

「第七十五話」

 俺は、牢屋の床の下で発見した穴を掘って、刑務所からの脱獄を図った。
「ちょろいな。」
俺の計算でいくと、もうそろそろ刑務所の外の森に出られる頃だ。
「こんばんは。外はお月様が綺麗ですよ。」
「お前!?モグラか?」
「僕、モグラです。」
あと少しで脱獄成功って時に、俺の目の前に現れたのは、スコップを持った一匹のモグラだった。
「もしかして、この穴は元々お前が掘ったもんなのか?」
「そうです。この穴は、僕が掘りました。」
なるほど。これで穴の謎が解けた。ある日、もり上がった牢屋の床の下で発見した小さな穴。計算や実験を繰り返し、俺はその小さな穴が刑務所の外側に繋がっているはずだと推測した。どうやら俺の読みは、正解だったようだな。
「お前の掘った穴のお陰で、俺は外に出れる。礼を言うぞモグラ、ありがとう。」
「いえいえ。僕は、ただ好きで穴を掘っていただけですから。お礼だなんて、照れちゃいますよ。」
「この先は、森か?」
「はい。この先は、森です。あの小さな穴から光が漏れている場所が出口です。」
「そうか。やはり森だったか。」
俺の読みは、モグラの存在を抜かせば、100%的中していた。
「そのスプーン一本で、この穴を広くしながら掘り進んで来たんですか?」
「そうだ。食事の時に拝借した。」
「凄いですね。」
「俺は、元々スプーン選手だからな。」
「そうだったんですか!でも、スプーン一本でここまで来れるなんて、並のスプーン選手じゃありませんね?」
「分かるかモグラ?」
「分かりますよ。さぞ、名のある選手だったのでしょうね。」
「俺は、数々のスプーン大会で優勝してきた。家には、数え切れない程のメダルやトロフィーが置いてある。そして、金色のスプーンもな。」
「金色のスプーン!?無敵の選手の証じゃないですか!」
「刑務所に入る前までは、そう呼ばれていた。」
「うわぁー!握手してもらってもいいですか?」
「ああ、構わない。」
「ありがとうございます。でも、そんな無敵のスプーン選手が、どうして刑務所なんかに?」
「・・・・・・・・・。」
「あっ、あっ、余計な事を聞いてしまいましたね。すいません!ごめんなさい!!」
「いいんだ。穴のお礼に話そう。俺は・・・・・・・・・人を殺した。」
「えっ!?」
「スプーンで刺し殺したんだ。」
「スプーンで刺し・・・・・・・・・えぇー!!」
「あの日、いつものようにスプーン大会で優勝した俺は、特注で作ったスプーンカーで帰宅し、スプーンカーをガレージに入れ、大きなスプーントロフィーを抱えて玄関に向かうと、ドアの前に男が立っていたんだ。」



『こんばんは。今日は月が綺麗ですね。』
『誰だ?』
『私は、こう言う者です。』
『金色のフォーク!?』
『あなたは、無敵のスプーン選手ですよね。私は、無敵のフォーク選手です。よろしく。』
『無敵のフォーク選手がいったい俺に何の用なんだ?』
『いつも考える事があったんですよ。トイレに入ってる時もお風呂に入っている時もデートしてる時も車を運転してる時も夢の中でもです。』
『何を言ってるんだ?』
『でも、その考えが一番強く感じるのは、フォークを手にしてる時なんですよ。』
『何が言いたい。』
『果たして、フォークとスプーンでは、本当に強いのはどっちなのか?ってね。』
『下らない。』
『下らない?果たして本当にあなたは、心からそう思っているんでしょうか?』
『何だと?』
『この世界に身を置いている人間ならば、常に考えている事なのでは?』
『考えていたとしても、それはこの世界ではタブーだ。スプーンとフォークは絶対に交わってはならない物。それを理解していないとは、無敵のフォーク選手も青いもんだ。』
『はぁ~。あなたは本当に何にも分かっていない。』
『何だと?』
『駄目なんですよ。はっきりとスプーンとフォーク、どちらが本当に強いかを決めなければ!!』
『その考えが青いと言っているんだ。』
『分かりました。戦う気がないんですね。』
『当たり前だ。』
『だったら私は、帰るとしますよ!!』

『キーン!』

『何をする!』
『何を?スプーンを抜いたと言う事は、それが答えなのでは?』
『お前がフォークで攻撃をして来たから、俺はスプーンで防御したまでだ!』

『キンッ!キンッ!キーンッ!!』

『やめろ!!』
『いーや、やめませんよ!私は、ここに決着をつけに来たんです!世の中に無敵は二人もいらない!』
『分からないのか!我々が戦ってはならないと言う事を!』
『分かりませんね!』

『キンッ!』

『馬鹿め!』
『馬鹿で結構!あなたのような臆病者よりましです!!』

『キーンッ!』

『お前、死ぬぞ?』
『私が?果たして、本当にあなたのシナリオ通りになるんでしょうか?』
『シナリオ?そんなもんなどない!スプーンとフォークのどっちが本当に強いのか?それは、スプーンとフォークがこの世に作られた時から既に決まっていた事!』
『なら、話が早い!改めて行きますよ?』
『・・・・・・・・・来い!!』



「あなたは、勝ったのですね?」
「ああ、確かに俺は、あの戦いで勝った。スプーンは、フォークより強いと証明した。しかし、スプーンで人を殺してしまったと言う代償を伴った。」
「これは凄い!スプーンは、フォークより強い!凄い事実ですよ!」
「ありがとうモグラ。だが、この事は絶対に口外しないでくれ。この話は、穴を掘ってくれたお前へのスペシャルなプレゼントなんだからな。」
「分かりました!絶対に誰にも言いません!この事は、僕の胸の中にしまっておきます!」
「悪いな。じゃあ、俺はそろそろ行くとする。世話になったな。」
「ただ・・・・・・・・・。」
「ん?」
「ただ、果たしてスプーンがスコップよりも強いのでしょうか?」
「何だと!?」
「勝てますか?そんなボロボロのスプーンで僕のスコップに?いくら無敵でも、無理なんじゃないですか?」
「血迷ったかモグラ?お前の持つスコップなど、俺のスプーンよりも遥かに小さいんだぞ?このスプーンでも十分にお前を倒せる!無敵をなめるなよ?」
「なめてなんかいません。だから、これはただのスコップじゃないんですよ。」
「何!?」
「よーく見て下さい。」
「ん?・・・・・・・・・馬鹿な!?銃だと!?」
「脱獄は、極刑です。知らなかったとは言わせませんよ?無敵のスプーン選手さん。」
「俺をはめたのか!?モグラ!お前は、いったい何者なんだ!?」

第七十五話
「モグラデカ」

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