« 「第七十二話」 | トップページ | 「第七十四話」 »

2007年11月 7日 (水)

「第七十三話」

「何ですか?こんな公園に呼び出したりして、私は大物なのですよ?私は忙しい身なのですよ?大事なお話があるのなら、早くして下さい。」
「大物、あっしの方を振り向かずに、そのままベンチに座って聞いて下さい。」
「・・・・・・・・・分かりました。」
「しかし大物、失礼ですが意外と近くで見ると小さいんですね。」
「よく言われます。大物の背が小さいと何かいけない事でもあるのですか?」
「いえ、とんでもない・・・・・・・・・しかし大物、あなたは小物です。」
「あはははは!何を言い出すのかと思えば、そんな根も葉も無い事を。あはははは!確かに身長で言ったら、間違いなく私は小物です。面白い事を言う人ですね。あはははは!」
「大物、これは笑い事じゃないんです。あっしは、身長の事を言ってるんじゃないんです。あっしの情報だと、大物は世界一の大物ではなく、世界一の小物。」
「大物委員会からは、そんな報告は入ってきていませんよ?何が情報ですか。あなたの勝手な個人的な推測だけで私を小物呼ばわりしないでいただきたい!場所が場所なら重罪ですよ?どうやら下らないお話だったようですね。私は、この辺で失礼させていただきます。」
「小物委員会をご存知ですか?」
「小物委員会?聞いた事もないですね。そもそも大物委員会で決定した大物以外は、皆小物なのだから小物委員会など必要のない機関じゃありませんか?」
「存在するんですよ!小物委員会って機関は!」
「ご冗談を。」
「冗談なんかじゃないんです。いや、存在していたと言った方が正しいかもしれません。」
「存在していた?」
「大物委員会が設立された当時から、実は同時に小物委員会も設立されていたんです。」
「信じられませんね。そんな根も葉も無いお話。」
「表立った公表はされてませんし、どうやら当時は名ばかりで、誰一人として実行委員は存在していなかったんです。極秘に入手した資料です。どーぞ。」
「どーも。ふむふむふ~むふむ。確かに小物委員会と言う機関は、存在していたようですね。ですが今は活動していないのですよね?なら、何の為にこんな機関を設立したのです?」
「ここからが肝心なとこなんです。小物委員会と言う機関は、大物委員会が設立した機関なんです。」
「まさか!?」
「大物委員会とは、世の中の大物を決定する機関。大物、あなたもその中の一人ですよね。そして、あなたは大物の中でも世界一の大物。つまり、現時点であなた以上の大物は、この世の中に存在しない。」
「そうです。私は大物です。ですから、今までのお話は、私には一切無関係なお話です。」
「ところが無関係じゃないんですよ。分かりませんか?大物。」
「はて?さっぱり?」
「なぜ今になって凍結状態だった埃まみれの小物委員会が動き出したのか?」
「動き出したっていいじゃありませんか。やはり私には、無関係なのですからね。」
「小物委員会は恐ろしい機関なんです。」
「恐ろしい?」
「これは、大物委員会が小物委員会を使って仕掛けた罠なんです。」
「罠?」
「この世に大物は存在するが、小物はまだ存在しない。」
「何ですと!?」
「大物以外が小物と言う発想自体が間違いだったんです。大物委員会が世の中の大物を決定する。そして、ある時期が来たら小物委員会が動き出し、世の中の小物を決定する。」
「なるほど。しかし、それはそれで勝手に決定すればいいじゃありませんか。小物でも何でも。」
「小物は、一般人の中からは選ばれません。小物は、大物の中からのみ選ばれるんです。」
「何ですと!?」
「言わば!これは戒めの儀式!大物=正義、小物=悪。長い年月をかけて、既にこの図式は無意識レベルで世の中の人々の心の中に植え付けられています。」
「まさか!?」
「大物になってからのあなたの行動は、大物な部分も確かに多々ありました。がしかし、同時に小物な部分も多々ありました。完璧な大物な人間なんている訳がない!委員会の狙いは、そこだったんです!」
「私が・・・・・・小物?」
「いえ!誰にだって、正義と悪の部分は存在する。そもそもが大々的に人間を大物とそうでない人間とに分別する事自体がおかしな話だったんです。大物!あなたは、はめられたんです!」
「私がはめられた!?」
「大物、小物になったあなたは、世の中から迫害されて行きます。小物になったあなたをあらゆるメディアが叩いてくるでしょう!民衆もそれに乗っかるようにして、あなたを叩くでしょう。悪を懲らしめる正義のヒーローのように。」
「そうですか・・・・・・・・・。」
「でも大物!助かる道が一つだけあります!」
「それはいったい?」
「今すぐ大物を辞めて下さい!」
「大物を辞める?」
「そうです。小物は大物の中からしか選ばれない。そこを逆に利用するんです。あっしの情報だと、明日にも小物委員会が全世界に向けて小物を決定します。」
「しかし・・・・・・・・・。」
「大物!迷う必要がどこにあるんですか!」
「無理です。」
「大物!何を言ってるんですか!言わば小物は、世の中の悪の象徴なんです!そんな中をこれから先ずっと、普通の生活をして生きて行けると思ってるんですか?あなたは、そのギャップに耐え切れずに・・・・・・・・・きっと死を選ぶ。委員会の筋書き通りにね。「悪い事をすればこうなるんだ」と言う方程式なんですよ!裁きを具現化しなければ、人々は悪を理解出来ないし、認識出来ない!そんな世の中なんですよ!今の世の中は!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「一般人に戻るだけなんですよ?簡単な話しじゃないですか!」
「その選択肢は私にはありません。確かに私は、大物でありながらその大物をいい事に小物な事も多々してきました。そのツケがいつか返って来るだろうとも思っていました。」
「大物?」
「あはははは!よーく出来たシステムじゃありませんか。戒めの儀式!大物は小物!全くその通りですよ。あなたのお心遣いには、本当に感謝していますよ。ですが、大物は最後まで大物なのです。途中で逃げ出す訳にはいきません。」
「いいんですか?明日からは小物なんですよ?」
「制裁は受けます。」
「厳しいですよ?」
「あなたは一つだけ勘違いをしています。」
「勘違い?」
「これが委員会の仕掛けた世界を巻き込む大プロジェクトならば、私はそれを大物として、実行するまでです。小物プロジェクトをね。」
「そう、小物プロジェ・・・!?知っていたんですか!全てを知っていながら・・・・・・・・・。」
「私を誰だと思っているのですか?」
「あなたって人は・・・・・・・・・。」
「私は大物ですよ?」
「・・・・・・・・・あなたは間違いなく大物です!」

第七十三話
「フィクション」

|

« 「第七十二話」 | トップページ | 「第七十四話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/8794421

この記事へのトラックバック一覧です: 「第七十三話」:

« 「第七十二話」 | トップページ | 「第七十四話」 »