« 「第七十八話」 | トップページ | 「第八十話」 »

2007年12月19日 (水)

「第七十九話」

「あのう?旦那さん?わしも別に悪気があって来た訳じゃないんですよ。」
「はぁ?あんたねぇ!自分のした事が分かってんの?これ立派な犯罪だよ?犯罪!!」
「お父さん?あまり大きな声を出すと、ご近所さんにご迷惑ですよ?」
「母さんは黙っていて欲しいな!」
「奥さんの言う通りですよ旦那さん。落ち着きましょうよ。」
「あんたには、もっと黙っていて欲しいな!だいたいこれねぇ!人の家に勝手に入って来るなんて泥棒だよ?分かる?泥棒!その袋に家のもんをいろいろ入れようとしたんだろ!!」
「とんでもない!違いますよ。これは」
「うわぁー!サンタさんだぁー!!」
「ほら、お父さんが大きな声を出すから、この子が起きちゃったじゃありませんか。」
「パパー!サンタさんがいるよー!」
「いいか?こいつはなぁ!サンタクロースなんかじゃないだぞ!単なる泥棒なんだ!」
「旦那さん。お嬢さんの言う通りなんです。何度も言ってますが、わしはサンタクロースなんですよ。」
「嘘をつけー!!」
「信じられないのも無理はありません。いきなり現れてサンタクロースだと言われても、信じられませんよね?」
「当たり前だー!!」
「しかし、わしはサンタクロースなんです。」
「嘘つけー!!」
「サンタクロースの存在を否定される気持ちは分かります。でも旦那さん?これだけは分かって欲しいんです。サンタクロースは、本当にいるんです。実在するんです。そして、わしがそのサンタクロースなんです。」
「お父さん?この人もこう言っている事ですし、ロープをほどいて帰してあげたらどうです?」
「駄目だー!!」
「サンタさーん!プレゼントちょーだい!」
「こいつはなぁ。プレゼントなんか持ってないんだよ。」
「えぇー!サンタさんなのにプレゼントくれないのー!」
「なぜなら!袋は空で!そして!その袋に家の物をありったけ入れて持ち帰ろうとした泥棒だからだ!」
「旦那さん。これも何度も言ってますが、袋が空なのはここのお宅に来る途中で中身を全て落としてしまったからなんです。」
「嘘つけー!!」
「本当です。お嬢さんに差し上げるはずだったプレゼントも、ちゃんと持って来ていたんです。信じて下さい。」
「いや、信じない!母さん!警察を呼びなさい!」
「お父さん?」
「旦那さん!?警察は勘弁して下さい。」
「そうですよお父さん。何も警察を呼ばなくてもいいじゃありませんか。」
「悪いサンタさんだったの?」
「悪いサンタクロースじゃなくって、単なる悪い人なんだよ。いいか?母さん。悪い奴は警察に突き出した方が世の中の為だし、本人の為でもあるんだよ!」
「ですけど、何もそんな大事にしなくてもいいじゃありませんか。」
「いいか?こいつは、サンタクロースを語って悪さをしてきたんだぞ?子供の敵なんだ!こんな奴は!」
「でも、反省もしているみたいですし、許してあげてもいいじゃありませんか。」
「反省?どこが反省してるんだ?こいつは、いまだに自分の事をサンタクロースだって、言い張ってるんだぞ?居直り強盗だろ!」
「ちょっと待って下さい!旦那さんも奥さんも!わしがサンタクロースではないと言う前提で、さっきからお話をしているようですが?」
「はい。」
「当たり前だー!!」
「わしは、本物のサンタクロースです!!」
「そうだよ。この人はサンタさんだよ。パパもママも信じてあげてよ。」
「お嬢さん・・・・・・・・・。」
「どうして、この人がサンタクロースだと思うの?」
「だって、テレビとか絵本で見たサンタさんと同じだもん。」
「そう。」
「そら見た事か!お前のような奴がいるから!こうやって子供に悪影響を与えてしまうんだ!」
「サンタクロースをロープで縛っている姿を見せてしまう旦那さんの方が、よっぽど悪影響だと思いますよ?あなた達のような大人こそ!わしらにしてみたら、子供達に悪影響じゃ!!」
「コノヤロー!一丁前にサンタクロースみたいな口聞きやがって!」
「お父さん!駄目ですよお父さん!!暴力はやめて下さい!!」
「放せ!!このヒゲ面に一発お見舞いしないと、俺の気が済まないんだ!」
「やめて下さい!お父さん!!」
「殴って気が済むなら、殴ればいい!!」
「何だとコノヤロー!ふざけやがってコノヤロー!上等だよコノヤロー!!」
「お父さん!!子供が見てますよ!!」
「・・・・・・・・・。くそっ!」
「くそ、じゃありませんよ。あなたもあなたで、お父さんを挑発しないで下さい。あと、お願いですからこれ以上、娘に変な事を言わないで下さい。」
「しかし、奥さん。わしは」
「あんた、もう帰っていいよ。」
「旦那さん?」
「お父さん。」
「よかったねー!サンタさん!」
「帰れません!」
「何だと!?」
「いいですか?このまま、わしが帰ってしまったら、わしはサンタクロースではなく、泥棒と言う事になってしまいます。」
「しょうがないだろ?泥棒なんだから。」
「あたしは、サンタさんだと思ってるよ!」
「まあまあ、サンタクロースでも泥棒でもいいじゃありませんか。」
「よくないだろ!こいつは泥棒だ!」
「お父さん!」
「奥さん。どっちでもいいって訳じゃないんですよ。わしは、サンタクロース。泥棒とは、掛け離れた存在なんです。」
「分かった分かった。サンタクロースでいいから、本当にもう帰ってくれ。あんたと話してると妙に疲れるんだよ。」
「どうしてあなた達は、頑なにサンタクロースの存在を信じようとしないんですか!」
「あたし信じてるー!」
「ありがとう。お嬢さん。」
「何が、ありがとう。お嬢さん。だよ。」
「ほら、いつまでも起きてないで寝なさい。」
「こうして子供達が心の底から信じている事を、あなた達大人が頭ごなしに否定する権利などない!」
「はいはい。」
「旦那さん!真面目に聞いて下さい!」
「うるさいよ。ちゃんと聞いてるから、早く帰ってくれよ。母さん、この自称サンタクロースに金でも渡して、とっとと帰ってもらってくれないか?」
「旦那さん!」
「ごめんなさいね。今日のところはこれで。」
「奥さん!わしは、お金で問題を解決したいんじゃないんです!これは受け取れません!!」
「いいから、それ受け取って帰れよ!」
「どうしてなんですか!なぜ、あなた達はわしが本物のサンタクロースだと信じてくれないんです!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「パパ?ママ?」
「幼い頃の気持ちを忘れてしまったんですか!サンタクロースの存在を否定する理由が、いったいどこにあるんですか!」
「あのさぁ。いいか?」
「お父さん。もういいじゃありませんか。」
「母さんは、黙っていなさい。あんたさぁ。さっきっから聞いてると言いたい事を言ってくれちゃってるけどさぁ。」
「それが何か?」
「どこの世界に!サンタクロースの家にやって来る!サンタクロースがいんだよ!!」
「えっ!?」
「パパもママもあたしもサンタクロースなの。」

第七十九話
「サンタクロース家」

|

« 「第七十八話」 | トップページ | 「第八十話」 »

コメント

そりゃ娘サンも信じるョ(笑)ところで泥棒サンは無事に?

投稿: 愛莉No.38 | 2008年1月 1日 (火) 20時13分

さあ?でも、サンタクロースですからね。
手荒な事は、しないと思いますけど・・・。
コメントありがとうございました。

投稿: PYN | 2008年1月 1日 (火) 23時30分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/9235363

この記事へのトラックバック一覧です: 「第七十九話」:

« 「第七十八話」 | トップページ | 「第八十話」 »