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2008年1月 2日 (水)

「第八十一話」

 俺は、満月を見ていた。

第八十一話
「満月とサムライ」

 あの満月は、俺の刀で半分に斬る事が可能なんだろうか?いや、果たしてそれ以前に今の俺の刀で、ここから満月までとどくんだろうか?
「おサムライさん!」
「終わったよ。」
「すいません!すいません!すいません!」
「あんたが謝る事はないだろ。か弱い娘を助けてやるってのが、侍ってもんさ。」
「でも、おサムライさん!」
「なあ?どう思うよ?俺の刀であの満月を半分に斬れると思うか?」
「えっ!?」
「子供の頃から考えてたんだよ。どうして、みんな満月を斬りたがらないのか?ってな。」
「おサムライ・・・さん?」
「それはなぜか?誰もが不可能だと思って、最初から勝負を諦めてるからさ・・・・・・・・・。」
「おサムライさ」
「どいつもこいつもふざけやがって!」
「!?」
「だがよう。いったい誰が決めたんだ?いったい誰が確かめたんだ?・・・・・・満月が斬れないってよ。」
「・・・・・・・・・。」
「なあ、娘?」
「はい。」
「月は、いつも満月とは限らない。なぜだ?もしかしたら、もしかしたら其の内いくつかの月は、俺の知らない何処かで、それこそ地球の反対側で、誰かが満月を斬っているのかもしれない。そう、思わないか?」
「わっちは・・・・・・・・・。」
「何だ娘。あんた、もしかして遊女だったのか?・・・・・・・・・まあ、そんな事はどうだっていいか。あんたの過去や未来に興味はない。俺は俺の意志であんたを助けたんだからな。」
「難しい事は、よく分かりません。けど、次の満月は必ず・・・必ずおサムライさんが刀で半分に斬ってくれると思います。だから・・・・・・・・・。」
「今日じゃなくて、次の満月か。言ってくれるな、娘。まあ、今日は満月を斬るには、ちょっと暴れ過ぎて疲れたからな。娘、しばらくあんたの膝枕を借りるぞ?」
「・・・・・・・・・どうぞ。」
「満月を見上げながら、膝枕って言うのも・・・・・・乙なもんだな・・・・・・・・・。」
「次の満月の日には、その時には、わっちもお側に」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「おサムライさん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「おサムライ・・・さん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「おサムライさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「死なないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」





最後に娘が何を叫んだのか?俺の耳には届かなかった。ただ、無謀にも折れた刀で満月を斬ろうなどと考えていた俺に、温もりを与えてくれた娘。俺は、そんな娘に心の底から感謝した。

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コメント

いやはや何とも…こんな風に人生に幕を下ろすのも乙と言えましょうr(μ_μ*)お侍サンの生き様に、拍手です

投稿: 愛莉No.38 | 2008年1月 6日 (日) 17時42分

娘のその後を想像するのも乙なもんかと。
コメントありがとうございました。

投稿: PYN | 2008年1月 7日 (月) 19時44分

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