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2008年2月

2008年2月 6日 (水)

「第八十六話」

「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「ねぇ?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「それ何?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「ちょっと!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「聞いてんの!」
「何だよ。」
「さっきから、それこそ朝からずーっと同じ言葉を繰り返し言ってるけど、何なの?」
「気にしないでいいから。」
「いや気にしないでって言われても。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「気になるでしょ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「気になるでしょっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「気っ!にっ!なっ!るっ!でっ!しょっ!!!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「凄い無視ね。された事ないわよ。そこまでの無視。逆に貴重な経験をありがとう。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「何?楽しいの?その言葉を言ってると、楽しい気分になれる訳?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「ちょっと!ちゃんと会話してよ!」
「何だよ!」
「やだ、怒らないでよ。むしろ怒りたいのは、あたしの方なんだから。」
「なら、怒ってればいいじゃないか。」
「えっ?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「おかしいでしょ!変な言葉を言ってる人の横で怒ってるけど相手にされてない人。虚しいでしょ!虚しいだけでしょ!だったら、まだ壁に向かって怒ってる方が増しよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「ちょっとっ!」
「だから何だよ。」
「聞いてんの?」
「聞いてるよ。」
「聞いてたの!?ひとまず、そこに驚きを感じながら、次に聞いてたのに会話が成立していない、広い宇宙の中のこの狭い空間に驚くわよっ!」
「部屋にたくさん壁があるんだから、好きな壁を選んで、そこに向かって怒ってればいいだろ。」
「それ違う!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「理論おかしい!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「例え話だもん!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「壁に向かって怒る話は、例え話だもん!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「だいたいさぁ。あたしが本当に壁に向かって怒ってたら、引くでしょ?変な奴だなって思うでしょ?」
「別に。」
「別にときたーっ!別にときちゃったよ!思いもよらない展開だーっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「分かったわよ!だったら壁に向かって怒ってるわよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「まったく!何なのよっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「冗談じゃないわよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「せっかくの休みだってのに、どれぐらいぶりよ。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「二人揃って休みなの。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「どっか行く訳でもないしさ。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「いや、いいの。せっかく二人の休みの日が重なったからって、別にどっかに行く事が目的じゃないの。家で二人っきりで、まったりするのも素敵だと思うの。それは分かってるわ。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「でも、でもでもでも!これはまったくまったりじゃなーいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「朝からずーっと訳の分からない言葉を繰り返し言ってる恋人と一緒にいる事がまったりなら!あたしは、それを絶対に認めなーいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「こんなまったり!全然まったりじゃなーいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「って、いい加減止めてよね。半ば壁に愚痴っちゃったじゃない。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「分かった!だったら、あたしもその言葉を言うわ!」
「ダメだっ!」
「な、何でよ。いいじゃない。減るもんじゃないんだし。」
「減るからダメだっ!」
「減るの!?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「減るんだ!?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「減っちゃうんだ!?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「減っ・・・・・・あのう?より詳しい説明を促すリアクションなんですけど?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「減るの嘘かいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「逆に増えるんかいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「やっぱ減るんかいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「やっぱ増えるんかいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「虚しい・・・・・・この漫才、虚し過ぎる。こんなに虚しい漫才がこの世に存在して、いいのでしょうか?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「減っとるがなっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「もしもーし!この漫才のオチを知りませんかーっ!もしもーし!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「もうええわっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「・・・・・・・・・生まれて初めてだわ。虚無感。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「初めまして、虚無感。ようこそあたしの心の中へ。なるべくなら、早く帰ってね。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「そう。もう少し、ここにいたいの。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「そんなに、あたしの心の中が気に入ったの?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「居心地が良いのね。でもね、虚無感。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「あたしは、そんなにあなたと長い時間を共有していられないの。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「えっ?なぜって?ごめんなさい、虚無感。それは、あたしの心の中には、もうこの訳の分からない言葉を朝から繰り返しずーっと言ってる愛しい人がいるからよ。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「あっ、泣かないで、虚無感。涙は、別れを辛いものにしてしまうわ。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「きっと、広い地球の何処かで、あなたを必要としている人がいるわ。だからほら、涙を拭いて。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「さあ、もう行くのよ、虚無感!大丈夫!あなただったら、やれるわ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「ううん。こちらこそ、ありがとう。そして、さようなら。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「・・・・・・・・・虚無感。元気でね。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「泣いてる場合じゃないわ!・・・・・・ちょっと!それ、いい加減にやめなさいよっ!」
「ヤダっ!」
「ヤダじゃないわよ!子供かよっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「こっちはねっ!虚無感の誘いまで断って、あなたを選んだのよ!分かってんのっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「まあ、別に分からなくったっていいわよ。そこはね。でも、せっかくの二人揃っての休みなんだから、二人で楽しく過ごしましょうよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「えっ?もしかしてあたし、あたしもしかして、知らぬ間にこの国の言語ではない言葉で話し掛けていたの?だとしたら」
「俺は今、凄く忙しいんだよ。」
「これから一人芝居が盛り上がっていくってのに!あなた、とんだ演出家ねっ!って、何が忙しいのよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「朝から同じ言葉を繰り返しずーっと言ってる事の、それのどこが凄く忙しい事なのよっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「何なの!いったい何なのよ!その言葉を繰り返し言ったからって、いったいぜんたい何になるってのよっ!」
「気にするなって。」
「気になるわよっ!ずーっと朝からあたしに向かって言ってるんだから!気になるのが普通でしょっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「あれ!あたし、何か間違った事を言ったかしら!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「もう!本当にやめてよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「いい加減にしてよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「何なのよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「何なのよっ!!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「なっ!んっ!なっ!のっ!よっ!!!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」

第八十六話
「呪いの呪文」

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2008年2月13日 (水)

「第八十七話」

「あちゃー!お客さん、渋滞に巻き込まれちゃいましたよ。」
僕は、タクシーに乗っていた。普段なら電車に乗って会社へ向かうはずが、今日みたいな日に限って、車両トラブルで電車が止まっていた。だから、僕はタクシーに乗っていた。
「参ったな。」
「何、お客さん。ばれたの?」
「ばれたって、何がですか?何もばれてませんよ?」
「すいません。てっきりお客さんのお茶目なヅラが、ばれちゃったのかと思って。」
「お茶目なヅラってどんなヅラですか!ヅラじゃないですよ!ほら、引っ張っても大丈夫ですよ。ちゃんとした地毛です!地・毛!」
「あっ!ずれた!?」
「ずれませんよ!よしんば僕がお茶目なヅラだったとしても、いみじくもズレたとしても、とどのつまりそれは言っちゃダメですよ。」
「じゃあ、何をそんなに参っちゃったんですか?」
「今日、大事な会議があるんですよ。」
そう、こんな日に限って僕の将来を左右する大事な会議があった。
「なくなったってよ。その会議。」
「な訳ないでしょ!何で運転手さんが知ってるんですか!知ってる訳ないでしょ!」
「お客さんの事なら、何でも知ってますよ。」
「いったい何者なんですか!」
ついてない。電車は止まるし、会議には間に合いそうもないし、変なタクシーに乗っちゃうし、まったくついてない。
「で?その会議は、いつ始まるんですか?」
「30分後なんですけど、間に合いそうですか?」
「ムリー!!」
「やっぱり・・・・・・・・・。」
「でも、お客さん!安心されたし!」
「もしかして運転手さん!裏道とか知ってるんですか?」
「裏道かぁ~。ほわぁん、ほわぁん、ほわぁん。」
「何で回想シーンに入ろうとしてるんですか!」
「ないね。」
「ないなら普通に言えばいいじゃないですか!何でわざわざ回想経由で遠回りするんですか!」
「お客さんが上手い事言いました!どーぞ。」
「わざわざ無線で報告しなくってもいいですよ!別に上手い事言ってないですから!むしろ、タクシーで遠回りはダメでしょ!」
「さすがに30分は、無理ですよ。」
「そうですか・・・・・・・・・。」
僕の人生も終わりだな。
「5分で行けるよ!」
「えっ!?5分!?本当ですか?」
「わたくし、軽く嘘をつきました。」
「何で、この状況で嘘をつくんですか!」
「ごめんなさい。どーぞ。」
「いったい誰に謝ってるんですか!僕に謝って下さいよ!無線聞いた人もびっくりですよ!」
「でも、お客さん。男ってのは、でっかい夢を持った方がいい!」
「白目で言う事ですか!いや、それ以前に何の話ですか?」
「お客さん。私の運転さばきなら、5分は無理でもこれぐらいの渋滞なら、20分で行けますよ。」
「本当ですか!?」
「飛行モード!」
「えっ!?」
「オンっ!」
「まさか!?飛ぶんですか!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「飛びません。」
「また嘘ですか!」
「そうです。どーぞ。」
「無線好きか!えっ!?ちょっと待って下さい?いったいどっから嘘なんですか?まさか!20分ってのも嘘だったんですか?」
「20分は本当です。どーぞ。」
「だから、どーぞもういいって!でも、いったいどうやって20分で行くんですか?」
「裏道を使うのだす!」
「でも運転手さん、さっき知らないって、まさか嘘ついてたんですか?」
「嘘なんてついてませんよ。私はね。タクシーを運転している時以外、嘘などついた事ありません!」
「現状つきっぱなしなんじゃないですか!」
「お客さん、勘違いしちゃいけないぜ?」
「ちょくちょく人格が変わりますよね?」
「裏道を知っているのは本当です!」
「だったら、何で僕が聞いた時に言ってくれなかったんですか!」
「だって、タイミング的に私からお客さんに言った方が、場が盛り上がるだろうし、何よりも私のカッコイイ度数がアップするじゃないですか!」
「・・・・・・・・・そんな下らない理由で。」
「悪かったね、お客さん。そして、ありがとう。」
「ありがとう。の意味が分かりませんよ。それは無線を使っていいですよ。」
「お客さんの心にありがとう。」
「さらに意味不明になりましたよ。ウインク気持ち悪いし・・・・・・とにかく!裏道があるなら早く行って下さい!」
「分かったり、分からなかったり。」
「どっちですか!」
「じゃあ、分からないで。」
「分かったにして下さい!」
「はいはい。分かりましたよ。そうしますよ。そうすればいいんでしょ。」
「何ですか、その嫌そうな言い方と鼻をほじるくる態度は!」
「ふんっ!ヅラのくせに!」
「ヅラじゃねぇよ!」
「お茶目なくせに!」
「どんな文句だ!」
「さあ、お客さん!ここを曲がると、いよいよお待ちかねの裏道に突入だよ!わっくわくだね!」
「テーマパークかよ・・・・・・・・・。」
とにかく、面倒臭さ1000%のタクシーに乗ってしまった僕は、鬱陶しさ10000%の運転手を信じて、会社到着の淡い希望を胸に、そわそわイライラしながら、今か今かと待ち望んでいた。
「ところでお客さん。目的地に着くまで私の恐怖体験談でも聞きませんか?」
「幽霊話ですか?まあ、何もしないのも暇ですし、聞いてみようと思います。」
「では。」
「まあ、朝ですから恐さも半減してしまいますけどね。」
「あれは、そう確か5年ぐらい前かな。5年くらい前かな。5年ぐらい、5年くらい。5年ぐ」
「濁点のあるなしが、そんなに重要なんですか?僕は重要だと思わないなぁ!」
「5年前の話なんですけどね。ちょっと遠くの方まで乗せたお客さんがいたんですよ。ええ、山を越えるぐらいの場所まで。そう、山を越えたんですよ。」
「何も言ってませんけど?」
「帰る頃には、もう夜中の2時を過ぎてましてね。その帰り道の話なんですけどね。調度、トンネルに差し掛かった頃に思い出したんですよ。そこが有名な心霊スポットだって事に。嫌だなと思いながらもタクシーを運転していたんです。そして、トンネルの出口を出た瞬間!目の前に人が飛び出して来たんですよ!急ブレーキしたんですが、間に合うはずもなく、私はその人を轢いてしまったんですよ。」
「で、どうしたんですか?」
「急いでタクシーから降りて辺りを見渡しても、誰もいないんですよ。私、恐くなってしまって、そのまま急いで帰ってしまったんですよ。」
「ちょっと恐いですね。」
「それで後日。」
「続きがあるんですか?」
「新聞を見てびっくり!何の事はない。私が轢いたショックで、吹っ飛んで崖の下に落っこちていたらしいんですよ!はっはっはっ!」
「恐怖体験談でも何でもない!単なる轢き逃げした話じゃないですか!待てよ?その話もどうせ嘘なんでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「黙るな!」
「私ね。最近、体の調子が優れなくてね。」
「話を変えるな!」
「それでこの前、人間ドックに行って来たんですよ。」
「何か見つかったんですか?」
「もし、地球が大爆発したら、死ぬって言われました。」
「みんな死ぬよ!何だその医者!つまり、健康だったって事なんですね。」
「それはいつですか!って、聞いたんです。」
「いいよ聞かないで!」
「そしたら、その先生が言ったんです!」
「いいよ答えないで!」
「何て言ったと思います?」
「さあ?」
「3分後って言ったんですよ!私、恐くなってしまって、そのまま急いで帰ってしまったんですよ。」
「だったら逃げても無駄でしょ。それより運転手さん!あと10分ですけど、本当に間に合うんですか?」
「お客さん!心配御無用だはぁっ!ロケットエンジン点火!GOぉぉぉぉぉ!!」
「付いてるんですか!?」
「ブー!」
「おならかよ!普通にしろよ!てか、客乗せてる間は我慢しろよな!」
「あっ!」
「どうしたんですか?まさか、間に合わないとか!?」
「身が出た!」
「漏らしてんじゃん!」
「見る?」
「見る訳ないでしょ!何で見ると思ったんですか!」
「見ないそうです。どーぞ。」
「誰かに指令を受けてたのか!そんな事より運転手さん!間に合わなかったら、どうするんですか!」
「その時は大丈夫。」
「大丈夫じゃないですよ!」
「実は、わたくしタクシーの運転手さんこと、タクシーの運転手さんは、時間が戻せるのです。」
「もう何か嘘つく時の雰囲気、プンプンなんですけど?だったら、試しにやってみて下さいよ。」
「分かりました。えーっいっ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「あちゃー!お客さん、渋滞に巻き込まれちゃいましたよ。」
「セリフが最初に戻っただけだろ!」
「ちょっと失敗した。」
「圧倒的に失敗だよ!」
「体の調子が優れないからなぁ。」
「健康そのものだろ!って、運転手さん!そんなこんなで!もう5分しかありませんよ!」
「よーし!分かった!こうなったら奥の手だ!最終手段だ!ワープを使おうではないか!諸君!」
「使える訳ないし、1人だし、もし使えるんだったら最初から使えだし。」
「ワー!」
「ブリブリブリッ!!」
「プじゃなくって、ブリブリブリッて音がした!」
「失敗した!」
「どう考えても!容赦なくうんこしただけだろ!!」

第八十七話
「15年くらい前の社長と運転手さん」

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2008年2月20日 (水)

「第八十八話」

 俺は、空気が読める男。だから、自ら命を絶った。理由はただ1つ。80年後に俺が地球に与える致命的な影響・・・・・・・・・それは地球の消滅を意味するからだ。



「先生!」
「落ち着いて下さい。」
「私の!私の!」
「こんな事が・・・馬鹿な!?なぜだ・・・順調だったはずなのに・・・・・・何が起きたんだ・・・いったい何が・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・私の赤ちゃんが!赤ちゃんが!」
「いったい・・・お腹の中で何が起きと言うんだ!?なぜ臍の緒が首に・・・・・・。」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「しかし・・・この胎児の姿、見れば見るほど首吊り自殺のようだ。だがなぜ・・・なぜ母親のお腹の中で自殺など・・・・・・・・・いや、考え過ぎだ。自殺ではない。これは、事故・・・・・・予測不可能な理不尽な事故・・・・・・落ち着くんだ・・・・・・胎児が自殺などするはずがない。」

第八十八話
「空気を読みすぎた男」

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2008年2月27日 (水)

「第八十九話」

「ほにゃらら王国に行こうと思って!」
「何々王国だって?」
「ほにゃらら王国。」
「だから、ほにゃららの部分を隠さず教えてくれよ。何?クイズ?」
「クイズじゃないよ。ほにゃらら王国だよ。」
「だから!ほにゃららが何なのかを言えって!」
「ほにゃららは、ほにゃららだよ。それ以上でもそれ以下でもないよ。」
「ちょっと待ってくれるか?」
「ちょっと。」
「何だ?お前が言うには、この地球上にほにゃらら王国なる名前の王国があるってのか?」
「そう。」
「で、そのほにゃらら王国に、お前は行きたいってのか?」
「そうそう。」
「そうそう。って、ほにゃらら王国なんて聞いた事ないぞ?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「いや、お前の口からとかって意味じゃなくって、ほにゃらら王国の存在自体が生まれて初めて耳にするよ。」
「おめでとう!」
「ありがとう!なんて、素直には喜べないぞ?」
「でもとにかく僕は、ほにゃらら王国に行くから。じゃあ!あっ、そうだ!手紙は毎月0がつく日に出すからさ。じゃあ、元気で!」
「ちょちょちょちょちょっと待てよ!行くって、今から行くのかよ!」
「そうだけど?」
「手ぶらでか?」
「当たり前だろ?ほにゃらら王国に行くんだから。」
「その理論の仕組みが分からないんだよ!手ぶらって、喫茶店行くんじゃないんだぞ?」
「そんなもんだよ。」
「えっ?ほにゃらら王国って、喫茶店の名前だったのか?」
「王国だよ。」
「だろ?」
「だよ?」
「なら。」
「なら?」
「普通は、いろいろ準備が必要だろ?洋服とか、いろいろ持ってくだろ?」
「ほにゃらら王国はね。暑い王国なんだよ。」
「うん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・終わり!?」
「えっ?続くの?」
「続くだろ!」
「続くんだ!?」
「当たり前だろ!何だよ。暑い王国だからって、手ぶらで行く事の正当な理由にならないだろ!」
「とても暑い王国なんだよ。」
「終われないよ?そんな理由じゃ。」
「終わろうよ。こんな理由で。早く、ほにゃらら王国に行きたいんだよ。」
「そんな得体の知れない王国に、友を行かせられる訳ないだろ。」
「得体は知れてるよ。お前が知らないだけだと思うけど?その辺どう?」
「そうだよ。ごもっともだよ。たぶん俺以外にも知らない人が山ほどいるだろうとは思うけど、この際そんな事はどうだっていいよ。俺に、お前が知ってるほにゃらら王国についての知識を教えてくれよ。得体が知れたら俺だってお前を笑顔で見送ってやるし、毎月0がつく日に出される手紙を楽しみに待ってるよ。」
「おし!だったら何でも質問してよ!」
「そもそも、そもそもだぞ?何、ほにゃらら王国って?」
「ほにゃらら王国ってのは、ほにゃらら王がいる国の事だよ。」
「何となくそんなんだと思ったよ。」
「元々ほにゃらら王国は、なんだかんだ王国だったんだよ。でも、英雄ほにゃららがなんだかんだ王が支配する腐敗したなんだかんだ王国の政治に反旗を翻して戦争を始めたんだ。もちろん、ほにゃららは民衆の自由を勝ち取る為に!何と言っても英雄だからね!ほにゃららを慕う人間はたくさんいたんだ。隣のなんちゃら王国や、かんちゃら王国も快くほにゃららに力を貸してくれたんだ。なんだかんだ王国は、それほど腐りきってたって事だよね。いよいよ明日戦争が始まるって時に、ほにゃららが晩餐の席で同志達にこう言ったんだ。」
「ほにゃらら、か?」
「そう!!それそれ!!歴史的な名台詞だよね!それから」
「テンション上がってるとこ悪いんだけどさあ?」
「ん?」
「何なんだよ!その訳の分かんない歴史の文献は!国名は、一切の詳細が不明か!」
「むしろ鮮明だよ。鮮明過ぎるぐらいだよ。で、この戦争を語る上で絶対に外せないのが、英雄ほにゃららと、なんだかんだ王の娘。つまり、かくかくしかじか姫との悲しい恋の話なんだよ。ほにゃららがね。なんだったかな将軍との一騎討ちの時にね。」
「勝手に盛り上がって、勝手に話を続けんな!」
「えっ?まあ、とにかく戦争に勝ったほにゃららが作った王国って事なんだよ。ほにゃらら王国ってのはさ!9割ぐらい分かったでしょ?」
「分かるか!きっと、全て聞いたとしても、全てが謎のままだ!」
「でも、お前も今の話を聞いて、ほにゃらら王国のほにゃららストリートの先にある、ほにゃらら国立記念公園の英雄ほにゃららの英雄ほにゃらら像が見たくなったんじゃない?」
「でも、って何だよ!でも、って!いったい何に掛かってんだ!そのでもは!自分でもびっくりするほど気にならないね!」
「そう?因みに因みに、ほにゃらら王国の通貨は」
「ほにゃららだろ?」
「言語は」
「ほにゃらら語だろ?」
「料理は」
「ほにゃらら料理だろ?」
「建物は」
「ほにゃらら建築だろ?」
「トイレは」
「ほにゃらら式だろ?」
「そして、気候は」
「暑いだろ?って、はっきりしてんの気候だけだろ!!あと、ぜーんぶっほにゃららばっかだろ!何なんだ、そんな王国!」
「だって、ほにゃらら王国だから仕方ないよ。」
「・・・・・・・・・そうかそうか。仕方ないのか。何か、疲れた。お前の話を聞いてたら、物凄くどっぷり疲れた。」
「なら、ほにゃららマッサージがいいよ。あれは、効くよ?やってあげようか?」
「やらせてたまるか!分かったよ。いいよ。もう、ほにゃらら王国だろうが、あっちこっちそっちどっち王国だろうが、どこへでも好きな王国に行ってこい。俺は、お前を止めやしないよ。」
「ありがとう!」
「こちらこそ、おそらく生涯一度もお披露目しないだろう知識をありがとう。」
「僕がいなくなっても、元気で頑張ってくれよ!僕達、一生友達だからね!」
「ああ、そうだな。お前も、ほにゃらら王国とか言うほにゃららな王国で、元気にほにゃららに暮らせよ。」
「うん!手紙の返事、ちゃんとくれよな!」
「気が向いたらな。」
「あはは!お前らしいや。じゃあ、行くよ!」
「ああ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ん?どうしたんだ?早く、ほにゃらら王国行きのほにゃらら便のほにゃらら飛行機に乗らなきゃ、ほにゃららなんだろ?」
「・・・・・・・・・この国は、少し寒いからさ。風邪、引くなよ。」
「えっ?・・・・・・・・・まあ、あっちは暑い気候な事だけは鮮明だけど、お前も風邪なんか引くなよな。」
「うん・・・・・・・・・。」
「何だよ?まだ何か言い足りないのか?」
「・・・・・・・・・今までありがとう。」
「・・・・・・・・・ああ、こちらこそ。本当に今までありがとう。」
「うん。」
「・・・・・・・・・さあ!湿っぽいのは、もう終わりだ!・・・・・・頑張れよ。」
「うん!じゃあ、行くよ。」
「おう。」
「・・・・・・・・・じゃあね。」
「・・・・・・・・・じゃあな。」

第八十九話
「2人国改め1人国」

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