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2008年2月 6日 (水)

「第八十六話」

「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「ねぇ?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「それ何?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「ちょっと!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「聞いてんの!」
「何だよ。」
「さっきから、それこそ朝からずーっと同じ言葉を繰り返し言ってるけど、何なの?」
「気にしないでいいから。」
「いや気にしないでって言われても。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「気になるでしょ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「気になるでしょっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「気っ!にっ!なっ!るっ!でっ!しょっ!!!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「凄い無視ね。された事ないわよ。そこまでの無視。逆に貴重な経験をありがとう。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「何?楽しいの?その言葉を言ってると、楽しい気分になれる訳?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「ちょっと!ちゃんと会話してよ!」
「何だよ!」
「やだ、怒らないでよ。むしろ怒りたいのは、あたしの方なんだから。」
「なら、怒ってればいいじゃないか。」
「えっ?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「おかしいでしょ!変な言葉を言ってる人の横で怒ってるけど相手にされてない人。虚しいでしょ!虚しいだけでしょ!だったら、まだ壁に向かって怒ってる方が増しよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「ちょっとっ!」
「だから何だよ。」
「聞いてんの?」
「聞いてるよ。」
「聞いてたの!?ひとまず、そこに驚きを感じながら、次に聞いてたのに会話が成立していない、広い宇宙の中のこの狭い空間に驚くわよっ!」
「部屋にたくさん壁があるんだから、好きな壁を選んで、そこに向かって怒ってればいいだろ。」
「それ違う!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「理論おかしい!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「例え話だもん!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「壁に向かって怒る話は、例え話だもん!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「だいたいさぁ。あたしが本当に壁に向かって怒ってたら、引くでしょ?変な奴だなって思うでしょ?」
「別に。」
「別にときたーっ!別にときちゃったよ!思いもよらない展開だーっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「分かったわよ!だったら壁に向かって怒ってるわよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「まったく!何なのよっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「冗談じゃないわよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「せっかくの休みだってのに、どれぐらいぶりよ。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「二人揃って休みなの。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「どっか行く訳でもないしさ。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「いや、いいの。せっかく二人の休みの日が重なったからって、別にどっかに行く事が目的じゃないの。家で二人っきりで、まったりするのも素敵だと思うの。それは分かってるわ。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「でも、でもでもでも!これはまったくまったりじゃなーいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「朝からずーっと訳の分からない言葉を繰り返し言ってる恋人と一緒にいる事がまったりなら!あたしは、それを絶対に認めなーいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「こんなまったり!全然まったりじゃなーいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「って、いい加減止めてよね。半ば壁に愚痴っちゃったじゃない。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「分かった!だったら、あたしもその言葉を言うわ!」
「ダメだっ!」
「な、何でよ。いいじゃない。減るもんじゃないんだし。」
「減るからダメだっ!」
「減るの!?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「減るんだ!?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「減っちゃうんだ!?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「減っ・・・・・・あのう?より詳しい説明を促すリアクションなんですけど?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「減るの嘘かいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「逆に増えるんかいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「やっぱ減るんかいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「やっぱ増えるんかいっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「虚しい・・・・・・この漫才、虚し過ぎる。こんなに虚しい漫才がこの世に存在して、いいのでしょうか?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「減っとるがなっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「もしもーし!この漫才のオチを知りませんかーっ!もしもーし!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「もうええわっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「・・・・・・・・・生まれて初めてだわ。虚無感。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「初めまして、虚無感。ようこそあたしの心の中へ。なるべくなら、早く帰ってね。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「そう。もう少し、ここにいたいの。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「そんなに、あたしの心の中が気に入ったの?」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「居心地が良いのね。でもね、虚無感。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「あたしは、そんなにあなたと長い時間を共有していられないの。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「えっ?なぜって?ごめんなさい、虚無感。それは、あたしの心の中には、もうこの訳の分からない言葉を朝から繰り返しずーっと言ってる愛しい人がいるからよ。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「あっ、泣かないで、虚無感。涙は、別れを辛いものにしてしまうわ。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「きっと、広い地球の何処かで、あなたを必要としている人がいるわ。だからほら、涙を拭いて。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「さあ、もう行くのよ、虚無感!大丈夫!あなただったら、やれるわ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「ううん。こちらこそ、ありがとう。そして、さようなら。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「・・・・・・・・・虚無感。元気でね。」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「泣いてる場合じゃないわ!・・・・・・ちょっと!それ、いい加減にやめなさいよっ!」
「ヤダっ!」
「ヤダじゃないわよ!子供かよっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「こっちはねっ!虚無感の誘いまで断って、あなたを選んだのよ!分かってんのっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「まあ、別に分からなくったっていいわよ。そこはね。でも、せっかくの二人揃っての休みなんだから、二人で楽しく過ごしましょうよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「えっ?もしかしてあたし、あたしもしかして、知らぬ間にこの国の言語ではない言葉で話し掛けていたの?だとしたら」
「俺は今、凄く忙しいんだよ。」
「これから一人芝居が盛り上がっていくってのに!あなた、とんだ演出家ねっ!って、何が忙しいのよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「朝から同じ言葉を繰り返しずーっと言ってる事の、それのどこが凄く忙しい事なのよっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「何なの!いったい何なのよ!その言葉を繰り返し言ったからって、いったいぜんたい何になるってのよっ!」
「気にするなって。」
「気になるわよっ!ずーっと朝からあたしに向かって言ってるんだから!気になるのが普通でしょっ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「あれ!あたし、何か間違った事を言ったかしら!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「もう!本当にやめてよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「いい加減にしてよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「何なのよ!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「何なのよっ!!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」
「なっ!んっ!なっ!のっ!よっ!!!」
「どでかーん!ぼっふぼふっ!」

第八十六話
「呪いの呪文」

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