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2008年3月 5日 (水)

「第九十話」

 AM5:55、決まって奴は、505号室の俺の部屋のドアをノックする。決まってだ。
「コンコンコンコン・・・・・・・・・」
4回、いや
「コン!」
ほらな、5回だ。俺は、もちろんドアを開けるなんて、そんな馬鹿な事はしない。なぜなら、ドアの向こう側にいるのは、殺人鬼だからだ。なぜ殺人鬼だって俺が分かるのかだって?そりゃ、一番最初に奴がドアを5回ノックして、やって来た時に
「はい。」
「殺人鬼です。」
「はい?」
「殺人鬼です。」
「どなたですか?」
「殺人鬼です。」
「えっ?」
「殺人鬼です。」
「本当ですか?」
「本当です。」
「殺人鬼?」
「殺人鬼。」
ドアごしに、こんな感じの会話のやり取りがあったからだ。なぜ殺人鬼が俺の所に来たのか?当然、殺人鬼なんだから、俺を殺しに来たんだろうけど、だったらなぜ俺が殺されなければならないのか?物凄く疑問だらけだった。だが、俺は殺人鬼なんかと必要以上に会話などしたくなかったから、特に詳しい話を聞きもしなかった。それに、5:55に来た殺人鬼は、5:56になればどこかに行ってしまう。だから俺は、殺人鬼をほったらかしにしといた。今では、ちょっとした目覚まし代わりにしている。今日も特に何の変哲もない1日の始まりといった具合だ。5:55に目覚めた俺は、早朝マラソンを堪能し、熱いシャワーを浴び、味気無いニュース番組をBGMに、優雅に珈琲を味わい、余裕を持って準備をし、仕事に行き、職場で他愛ない会話で盛り上がり、帰りに同僚と酒を酌み交わし、世知辛い世の中の愚痴を言い、家に帰って寝る。そしてまた、5:55になると殺人鬼がやって来る。

「ピーンポーン!」
チャイム?今日の俺は、チャイムで目が覚めた。
「ん?」
時計に目をやると、5:55ではなく、8:17だった。
「っつ!」
頭が痛い。酷い頭痛と吐き気だ。完全な二日酔いだった。今日が休みだったってのもあって、昨日は飲み過ぎたようだ。おそらく、5:55の殺人鬼のノックでも目が覚めなかったんだろう。俺は、痛む頭を擦りながら、ドアチェーンを外し、鍵を開け、ドアノブに手を掛けた。

「ガチャッ!」

そして、ドアを開けた。だってそうだろ?いつもと時間が違うんだ。殺人鬼な訳がない。逆に宅配便や、大事な訪問者や、運命を左右するほどの人物だったら、どうするんだ?
「グッモーニーン!」
俺は、その女に心臓を突き刺された。ひどく血が吹き出したもんだ。女の姿を見れば一目瞭然だ。そして、その場に倒れ込んで死ぬ間際の俺の霞む意識の耳の穴の奥深くに、女のセリフが入り込んで来た。
「さようなら、5:55の殺人鬼さん。」
俺?・・・・・・俺が殺人鬼?5:55の?俺が?殺人・・・鬼?・・・・・・俺が?誰かを・・・殺した?・・・誰を?・・・こいつは誰なんだ?・・・・・・・・・ああ・・・そうか・・・こいつは・・・・・・確か・・・・・・・・・
「お姉ちゃんの仇よ!」

第九十話
「7:77の殺人鬼」

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