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2008年4月23日 (水)

「第九十七話」

(さて、始めるとするか。)
(了解です。肝さん。)
(いいか?カルボナーラ。何をするにも下調べってのは重要だ。下調べを制する者が犯罪を制する。って、言うぐらいだからな。)
(はい。)
(我々の銀行強盗が成功するか否かは、この下調べにかかっているんだ!」
(ちょっ!?こ、声が大きいですよ。肝さん。)
(すまんすまん。つい興奮しちまった。それと、一つだけ絶対に守らなければならない事がある。)
(何ですか?)
(いいか?何があっても、俺の合図があるまでは、絶対に振り向くな。我々は、あくまで他人でなければならない。)
(了解です。)
(だが、万が一ハプニングによって、振り向かざるをえない状況に陥ったなら。)
(陥ったなら?)
(他人のフリをしろ。)
(他人のフリですね。)
(そうだ。ひたすらに果てしなく、どこまでも他人のフリをするんだ。)
(ひたすら・・・・・・果てしなく・・・・・・どこまでも・・・・・・他人のフリをする・・・・・・・・・と。)
(おい。カルボナーラ?)
(はい。)
(お前さん。もしかして、メモとってないか?)
(はい。忘れないように、と。)
(馬鹿者!)
(えっ?でも。)
(下調べの現場でメモをとる奴があるか!誰かに見られでもしたらどうするんだ!いいか?カルボナーラ!頭だ!全ては頭に叩き込め!)
(頭に・・・・・・・・・と。)
(コラッ!)
(はい?)
(言ってるそばから、またメモとっただろ!)
(いいえ。)
(あっそ。)
男が二人、背中合わせにして座っていた。一人は新聞を読む60代半ばの男。もう一人は雑誌を読む20代後半の男。そして、二人は何やらこそこそと小さな声で犯罪計画を打ち合わせしているようであった。
(まず、入口の自動ドアを入ると向かって左側に、ひい、ふう、みい・・・・・・・・・ATMが五台置いてあるスペース。・・・・・・カメラはどうだ?)
(各ATM用に小型が五台。それと、入口付近に一台と、こことの境に一台です。)
(そこを抜けると、今我々がいる窓口になるわけだ。)
(はい。)
(ここのカメラの数は?)
(はい。僕から分かる範囲では、三台確認出来ます。肝さんの方は?)
(んん?ありゃ偽物だな。お前さんの方にある奴がどうかは分からないが、俺の方にある奴は、全て偽物だ。)
(見ただけで分かるんですか?)
(当たり前だ。光り方が微妙に違うんだよ。輝きがまるで偽物だ。)
(言われてみれば、何となく僕の方も輝きがないような気もします。でも・・・・・・肝さん?はたして銀行で偽物を使うでしょうか?)
(じゃあ、全部造花だな。)
(えっ!?)
(振り向くな!)
(すいません。)
(カメラは、お前さんの方に三台。俺の方にも三台。だが、まだ確認出来ていないカメラがあるかもしれないから、絶対に注意は怠るな。)
(了解です。)
(おい!)
(どうしたんですか?)
(俺の方から行員が歩いて近付いて来る。いいか?ここは、我々が知り合いだと気付かれたらまずい。他人のフリを強調する。)
(強調ですか?)
(今から俺がペンを落とすから、お前さんがそれを拾うんだ。いいな?)
(了解です。)
(来たぞ!準備はいいか?)
(いつでも。)
「ポトッ!」
「あっ!ペンが落ちましたよ。どーぞ。」
「こりゃ、どーも。」
「いいえ。」
(よし、行ったぞ。)
(バレてませんかね?)
(バッチリだ。それにしても、今の奴はモテなそうな面構えだったな。)
(そうでしたね。でも、胸のバッチのとこに、支店長って書いてましたよ?)
(あの面構えで支店長とは、世も末だな。それにしても、モテなさそうだったなぁ。ありゃ、絶対に彼女なんていないな。)
(分かりませんよ?案外って可能性が。)
(ないない。だって、メガネだもん。)
(肝さん?)
(どうした?)
(僕もなんですけど。)
(・・・・・・・・・・・・・・・。)
(・・・・・・・・・・・・・・・。)
「ポトッ!」
「あっ!ペンが落ちましたよ。どーぞ。」
「こりゃ、どーも。」
「いいえ。」
(よし!)
(よし!じゃないですよ!気まずいからって、いちいちペンを使わないで下さいよ!)
(今、見たか?)
(えっ!?)
(窓口に座ってる男。)
(もしかして、僕らの関係に気付いたんですか?)
(違う。ヅラだ。)
(はい?)
(完璧にヅラだ。しかも180度ヅレてる。)
(180度は、有り得ないですよ。)
(だったらこっそり見てみろ。180度ヅレてるから。)
(まさか、180・・・・・・・・・!?プッ!)
(笑うな!堪えろ!)
(プップッ!プハッ!)
(おい!二つの意味で気付かれるだろ!)
(ででででも、ヅレヅレヅレヅレヅレてヅレてヅレてヅレてるから!プッ!)
(おい!)
(ダメだ!もうもうもう限界ですハハハハハハハハッ!!」
「ぬうぉいっ!!静かにしろ!気付かれるだろ!」
(・・・・・・・・・・・・・・・。)
(・・・・・・・・・・・・・・・。)
(す、すいません。でも、肝さんがヅラだなんて言うからですよ。)
(そんなにヅラがツボだなんて、思わなかったんだよ。)
(肝さん?)
(ヅラが落ちたのか?)
(じゃなくって、何か物凄く僕ら、注目されてるみたいなんですが?)
(何!?そりゃ、まずいぞ。まずいまずい。)
(まずいです。)
「ポトッ!」
「あっ!ペンが落ちましたよ。どーぞ。」
「こりゃ、どーも。」
「いいえ。」
(よし!何とか誤魔化せたな。)
(肝さん・・・・・・我を忘れて笑ってしまってすいませんでした。)
(カルボナーラだけを責める訳にはいかない。俺にも非があったんだ。悪かったな。)
(いえ、そんな。)
(さて、気を取り直して下調べに戻るとするか。)
(了解です。)
(問題は、警備員の数だ。いいか?警備員を制する者が犯罪を制する。って言うぐらいだからな。)
(あれ?下調べじゃないんですか?)
(下調べですよ?)
(下調べですよね?)
(そうですよ?)
(いいんですよね?)
(当たり前ですよ?)
(・・・・・・・・・了解です。)
(確か、入口のATMの所に一人いたな。)
(窓口の僕の方に一人います。)
(俺の方にも一人だ。計三人か。)
(あれ?入口の所の警備員。あれは警備員と言うより、行員がATMの使い方を説明する為に立っているだけみたいですよ。見て下さい。)
(ん?・・・・・・のようだな。すると、警備員は二人か。)
(でも、警備員は警備員って言うだけあって、デカイですね。肝さん。そっちはどうです?)
(確かに、デカイ。)
(やっぱり。しかも、凄く強そうですよ。肝さん。)
(あんなのは、ただの木偶の坊だ。)
(肝さんって、柔道か何かやってたんですか?)
(昔ちょっとな。まあでも、そんなもんやってなくても、あんなの五秒だ五秒!お前さんの方の奴だって、五秒だ五・・・ゴリラ!?)
(はい?何か言いました?)
(な、何も・・・・・・・・・。)
(やっぱり凄いな。肝さんって。)
(いや、そんなに凄かないですよ。)
(あんなのを五秒で投げ飛ばしちゃうんだもんな。さすがです。)
(そこまでしたら可哀想ですよ。)
(ああ、なるほど。お金だけ貰って誰も傷付けないって訳ですね。)
(まあ、そんな感じ・・・・・・ハックション!!」
(汚なっ!何かたくさんのお汁が降ってきましたよ?って、何で肝さんこっち向いて!?あっ!?」
「ん?あっ!?ああっ!?」
「肝さん・・・・・・・・・。」
「ポトッ!」
「あっ!ペンが落ちましたよ。どーぞ。」
「こりゃ、どーも。」
「いいえ。」
(・・・・・・・・・・・・・・・。)
(・・・・・・・・・・・・・・・。)
(・・・・・・・・・・・・・・・。)
(まあ、確かに肝さんの方の警備員なら、五秒ですよ。)
(何で、お前さんの方はゴリラなんだよ。)
(似てますけど。)
(何でゴリラが制服着て、警備してんだよ。)
(ぽいですけど。)
(何でウホッ!何だよ。)
(それはちょっと分かりませんけど。)
(俺は、ゴリラなんかと闘った事ない。)
(ゴリラもういいでしょ!別にゴリラと闘いに来る訳じゃないですし!いざとなったら銃で何とかなりますって、肝さん。)
(それもそうだな。全くカルボナーラの言う通りだな。良いこと言うよ。お前さんは。)
(そんな事ないですよ。)
(よし!これで下調べも完璧だ!)
(そうですね。)
「さて、次は本物の銀行に行って下調べだ!行くぞ!カルボナーラ!」
「了解です。肝さん。」
二人がそれぞれ、60代半ばの男は右から、20代後半の男は左から、スーッと遊具から滑り降りると、何やら話しながら公園の出口の方へと去って行った。

第九十七話
「下調べの下準備」

「肝さん?」
「何だ?」
「二人の呼び方なんですけど?」
「砂肝とカルボナーラか?」
「やめません?」
「食べ合わせの問題か?」
「いや、そうじゃなくって、普通の方がよくないですか?」
「何で?好物の方がいいだろ?」
「いや、砂肝もカルボナーラも肝さんの好物ですけど?」
「だったらお前さんは、何が好物なんだ?」
「好物ですか?アスパラです。」
「じゃあ、お前さんはカルボナーラ改め、アスパラだ!」
「えっ!?」
「アスパラガスだ!」
「ちょっと肝さん。」
「ホワイトアスパラガスだ!!」
「・・・・・・・・・了解です。」

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