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2008年4月16日 (水)

「第九十六話」

「いったい、ここで何が起こったって言うんだ!」
「・・・・・・・・・。」
「これは、あまりにも残忍で、あまりにも冷酷な犯行だ!」
「・・・・・・・・・。」
「許せない!俺は刑事としてではなく!一人の人間として!こんな事を平気な顔で実行してしまう奴を絶対に許さない!」
「先輩・・・・・・・・・。」
「なぜ、こんな道端でバラバラに・・・・・・・・・しかも頭部だけを犯行現場に残しておいたのか・・・・・・・・・分かるか?」
「いえ。」
「事件ってのはなぁ。鮮度が命なんだよ。事件は生き物だ。犯行現場の鮮度が失われれば失われるほど、我々は手掛かりを見失っていく。」
「はあ。」
「まだ鮮度抜群のこの犯行現場を見てみろ!一見、この犯行は精神に異常をきたした奴のものだと思われるが、俺の目は誤魔化せない!これは、我々警察への挑戦だ!」
「挑戦?」
「捕まえられるもんなら捕まえてみろ!ってな。馬鹿にしやがって!」
「先輩、落ち着いて下さい。」
「俺の刑事の勘によるとな。近いうちに第二、第三の犯行が行われるはずだ!だが、そうはさせないぞ!絶対にさせない!その前に必ず俺達の手で取っ捕まえてやてやるんだ!待っていろ!!」
「熱血すぎません?だいたい、頭部、頭部って言ってますけど、人間の頭部じゃなくって、これって魚の頭部ですよね。」
「バラバラ殺魚だ!」
「いや、バラバラ殺人みたいに言われても・・・・・・犯人は、きっと近所の野良猫ですよ。」
「おっ!新米の得意のプロファイリングだな!」
「違いますよ!プロファイリングでも何でもないですよ。」
「だが、プロファイリングは、あくまでプロファイリング!プロファイリングに囚われていたら、プロファイリングに溺れてしまう!犯人は、近所の野良猫ではなく、この辺りを縄張りにしているカラスかもしれない!」
「どっちだっていいですよ!野良猫でもカラスでも!」
「いや、もしかしたら!?」
「いい加減にして下さいよ先輩!」
「うおっ!?」
「その驚き方もやめて下さい!」
「何だ。どうしたんだ新米。」
「どうしたもこうしたもないですよ!僕は、凶悪な犯罪者から街を守る為に刑事になったんです!犯罪をこの世から無くす為に刑事になったんです!殺人課や麻薬課や交通課とかは聞いた事ありますよ!でも、でも何なんですか!魚課って!」
「魚課は・・・・・・・・・・・・・・・魚課だろ?」
「当たり前に存在するような感じで言わないで下さいよ!」
「いやでも、当たり前に存在してるし。」
「僕、魚課に配属が決まった時に思いましたよ。ああ、僕はきっと警察にとって、既にお払い箱なんだな。ってね。」
「同感だ!」
「認めちゃった!そこは先輩が励ますとこなん」
「ちょっと待て!」
「何ですか?」
「ボスから連絡だ!」
「いや、ボスいないですから!魚課は、僕と先輩の二人だけですから!」
「ボ、ボス!?」
「何で僕なんですか!どっちかって言うとボスは、先輩の方でしょ!」
「えっ!?ボスが僕でいいの!?」
「逆、逆!だいたい先輩、自分の事をいつも俺って言ってるじゃないですか!」
「じゃあ、俺が僕!?」
「何一つ地位が変わっちゃいない!ボスどこいっちゃったんですか!」
「ボスはなぁ。二年前の大漁殺魚事件の時・・・・・・・・・くっ。」
「まさか、この魚課で殉職なんて有り得るんですか?」
「その事件の時に出会った犯猫と一緒に、今はセカンドライフを縁側で楽しんでいるさ。」
「それ、ただ単に野良猫を引き取って退職しただけじゃないですか!」
「ボス・・・・・・・・・くっ!」
「泣く要素どこにあるんですか!だいたい、魚課なんて課が本当に必要なんですか?」
「新米!」
「はい。」
「焼き魚好きか?」
「好きですけど。」
「煮魚は?」
「好きですよ。」
「刺身はどうだ?」
「好きです。」
「必要なんだよ。世の中にとって魚課ってのはな。」
「何一つ納得出来ませんけど?」
「俺は、寿司が大好きだ!」
「好きな魚料理の話になっちゃったよ!って、先輩!」
「何だ?」
「先輩は、悔しくないんですか!こんな何の役にも立たない魚課なんかに配属、いや追いやられて!」
「確かに何の焼くにも立たない。」
「ニュアンスが違うニュアンスが!ニュアンスが魚寄りになっちゃってる。」
「悔しいさ!悔しいに決まってるだろ!」
「先輩・・・・・・・・・。」
「俺は、まだ猫を一匹も捕まえた事がないんだ!」
「下手くそかっ!いや、猫を捕まえる捕まえないじゃなくて、上を見返してやろうとは、思わないんですか?」
「猫アレルギーなんだ。」
「辞めてしまえ!なら、今すぐにでも辞めてしまえ!むしろ、猫アレルギーの人を魚課に配属するって、いじめじゃないですか!」
「ああ、だからな。俺だってちゃんとその辺は、考えていたさ。上を見返してやる作戦をな!」
「本当ですか!」
「もちろんだ!次に誰か魚課に配属されて来たら一緒やろうと、天日干しな毎日を過ごしながら考えていたんだよ。」
「いったい、どんな方法で上を見返してやるんですか!」
「いいか?俺達二人で、いまだ解決されていない。そう!未解決事件って奴を解決するんだ!」
「なるほど!確かにそれなら上を見返してやれますね!」
「だろ?名案だろ?珍味だろ?」
「はい!でも、未解決事件って、いったいどんな未解決事件を解決するんですか?」
「いいか?幸い魚課には、たくさんの活き未解決事件ファイルがある!」
「それ魚課の未解決事件じゃないですか!てか、むしろ先輩が猫アレルギーだから未解決事件になっちゃってるだけの事件じゃないですか!」
「犯猫の目星はついてるんだよ。あとは新米!お前が逮捕するだけだ!」
「何でそれで上を見返せると思っちゃったんですか?」
「ぎょっ!?」
「その驚き方もやめて下さい。もう、いいです。もう、分かりました。先輩は、何だかんだで刑事の心を失ってしまったんですね!」
「俺は深海魚かい!」
「どんなツッコミですか!」
「間違いた!」
「たぶん絶対間違っちゃいけないとこだったと思いますよ?」
「いいか新米!魚の骨を喉に引っ掛からせながら、よーく聞け!」
「さっきからそうですけど、無理から魚を絡めてこないでもいいと思いますよ?」
「けして俺は、刑事の心を失った訳じゃない!例え今は、こんなんだが!絶対にいつか上を見返してやろう!そして、この街から、いや、この世界から犯罪を無くしてやろう!その気持ちは、今でも変わる事なく!干物になる事なく!くさやになる事なく!缶詰めになる事なく!新鮮にそれは俺の胸のど真ん中に鱗の如く輝きを失う事なく存在している!!」
「ちょっと後半、だいぶ表現が魚寄りになってましたが、やっぱり先輩は、立派な刑事の心を持った人だったんですね!」
「当たりま・・・・・・ハックション!ハックション!」
「大丈夫ですか?」
「ハックション!ハックション!これは!?ハックション!間違いない!ハックション!」
「どうしたんですか?」
「この目の痒みハックション!の感じハックション!このくしゃみのハックション!感覚!」
「もしかして?猫アレルギーですか?かなり酷いですね。」
「ハックション!奴が近くにハックション!いハックション!るックション!」
「くしゃみ出すぎでしょ!最後、るックションって!早く猫がいないとこへ移動しましょう!」
「行くぞ!ブワックション!!あの角の先だックション!」
「えっ?先輩?」
「さっきのックション!未解ックション!決ックション!事件ックション!の犯ックション!ハックション!ハックション!ハックション!ハックション!ハックション!ハックション!」
「待って下さい先輩!絶対逃げられちゃいますって!いや、それ以前にくしゃみで殉職しちゃいますって!先輩!先輩っ!」
「ニャンックションッ!!」
「いたんですね!!」

第九十六話
「魚デカ」

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