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2008年7月23日 (水)

「第百十話」

「がおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
私の父は、恐竜だ。

第百十話
「ディノサウルスじいさん」

と、本人は思っているみたいですが、いやいや、ところがどっこい。どっからどう見ても普通のおじいさんですし、何なら恐竜と言うよりもむしろ、草食動物の部類なんですよ。さらに悪く言うんであれえば、小虫ですよ。小虫。
「がおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ご察しの通り、歯なんて総入れ歯ですし、実際見てもらえば分かると思うんですが、強風ですっ飛ばされるような体型なんですよ。背も低いし、一見すると、じいさんなんだか、ばあさんなんだか分からないし、ヨボヨボしてますし、プルプルしてるんです。
「がおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
しかもそれは、尋常じゃないくらいに・・・・・・・・・言い過ぎかもしれませんが、常に地震かな?って思うくらいなんです。どんな微震をも逃さない、超高性能じいさん型地震測定器なんだ!って、父がこの国の、いや、この地球上で発生する全ての地震を測定しているのかな?って、地震測定危機管理局地球防衛軍最前線部隊総司令官かな?って、だったら偉大だなって、だったらある意味で正義のヒーロー!

第百十.二五話
「地震測定危機管理局
 地球防衛軍最前線部隊
   総司令官じいさん」

だなって、自分の子供達に胸を張って誇れるなって、思った事もあるぐらいです。
「がおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
でも、父は

第百十.五話
「やっぱりディノサウルスじいさん」

何よりも、ガリガリ王者な父は、自分の声で倒れるんじゃないかってくらいなんです。そんな人が地震測定危機管理局地球防衛軍最前線部隊総司令官な訳がない。もし、仮に父が地震測定危機管理局地球防衛軍最前線部隊総司令官だったとしても、私は父を地震測定危機管理局地球防衛軍最前線部隊総司令官として認める訳にはいかない!ましてや、正義のヒーローだなんて!正義のヒーローが己の雄叫びで、ヨロヨロして倒れそうになるでしょうか?そして、その勢いで入れ歯をすっ飛ばすでしょうか?父のその姿は、何回も見た事があります。例えばそれが、正義のヒーローである父の最終兵器だとしたら?地球を地震から防衛する為の地震測定危機管理局地球防衛軍最前線部隊総司令官としての最重要命令の発動合図だとしたら?まだ、恐竜であった方がましです。
「がおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
なぜか父は、雨が降っていない日には、必ずと言っていいほど意気揚々と町を徘徊します。いや、別に頭の中がジュラシックな訳ではありません。頭髪は、見事にジュラシックですがね。そんな父に、私は尋ねた事があるんですよ。
「父さん、いったい町に何をしに行っているんですか?」
「散歩。」
ええ、父は普通に会話が出来ます。当たり前です。恐竜ではなく人間ですからね。散歩と言いますが、尋常じゃないくらいヨボヨボでプルプルの父は、10分で行ける距離を2~3時間掛けて行くんですよ。朝、タバコを買いに意気揚々と家を出たとしたら、帰って来るのは、時計の針が午前0時を回っているのが当たり前です。そんな父の事です。きっと、散歩と言っても、玄関を出て「がおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」と叫んで、新聞を取ってから玄関に入って来るぐらいの事なんでしょう。毎度お馴染みの恐竜の形態模写で歩いたとしても、五軒先の家の前まで行って帰って来るぐらいが関の山。余談ですが、雪の日に父がタバコを買いに行った時、家の玄関の前で雪だるまになった父を救出した事があります。
「父さん?父さんは、どうしてそんなに恐竜が好きなんですか?いったい恐竜のどこがそんなに好きなんですか?」
確か、私が物心をついた時でしたかね。この質問を父に投げ掛けたのは?
「むしろ嫌い!!」
むしろが指すものとは?嫌いなのに、なぜ恐竜だと言い張るのか?嫌いだとして、果たして見た事もない恐竜を、なぜそこまで頑なに嫌う事が出来るのか?そんなに首を振ったらもげますよ?そう、全てが謎のままで過ぎ去って来た60年間。思い出しただけでも、私の人生は数々の困難続きでした。そんな父も、もう90を越えてしまった。
「がおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
昔ほど迫力がないにせよ。病気もせず、今も元気に生きている。そう考えると、歯も頭髪もジュラシックですが、もしかしたら自分を恐竜だと思う事は、長生きの秘訣なんじゃないかとすら思ってしまいます。
「がおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そして、昔から父の鳴き声を聞く度に思うんです。そもそも恐竜の鳴き声が「がおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」で正解なのだろうか?、と。
「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
むしろ、母の鳴き声の方が、恐竜に近いのではないだろうか?、と。しかし、母は恐竜ではなく、怪獣だ。

第百十.七五話
「モンスターばあさん」

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