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2008年9月24日 (水)

「第百十九話」

―話題となった派手な宣伝活動についてはここまでとしまして、では次に、大会について振り返りたいと思います。
「ああ。」
―では、単刀直入に全世界が感じている疑問を代表してお伺いします。なぜ、この大会を開催しようと?
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
―主催者である貴方は、大会を開催するにあたり、その財力を生かして全世界で宣伝活動を行って来た。しかし、各メディアからのこの問いに関しては、一切答えようとしなかった。いつもジョークを飛ばしてはぐらかすばかりです。大会が終わった今なら、この問いにお答え出来るのでは?
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
―なぜ、この大会を開催しようと?
「愚問だね。愚問。なぜ?どうして?バカらしい。この大会の開催自体に疑問を持つ事がバカらしいんだよ。」
―なら、この大会の開催は必然だと?
「この世界で誰もが何かの10−9(テン・マイナス・ナイン)を、知りたいと思う止められない衝動。それは、まさに人間の本能。俺には、たまたまその衝動を実現出来るだけの財力があった。ただそれだけだ。俺が開催しなくても、きっと他の衝動に駆られた誰かが開催していたさ。」
―確かに、No.1を知りたいと言う衝動は、人々の心の中にあります。その衝動は、参加人数と視聴率が裏付けています。
「だろ?俺は、ただ衝動に駆られ、本能に従ったまでだって事だ。」
―では、ジャンル的にいったいこの大会は、スポーツ?格闘技?アート?それとも、超能力?
「ハハッ!スポーツに見えたか?格闘技に見えたか?アートに見えたか?超能力?言っとくが俺は、超能力や超常現象の類いを信じちゃいない。この大会にジャンルなんて存在しない。あえて言うなら人間だ。人間そのものさ。」
―人間ですか・・・・・・・・・。
「不満か?」
―いえ、なるほど、人間・・・・・・・・・。大会には、多くの参加者がいました。一般参加者と貴方が全世界からスカウトして来た参加者です。では次に、そのスカウトして来た参加者数人について少し振り返りたいのですが?
「断ったら勘弁してくれるのか?(笑)。」
―(笑)。
「これぞまさに財力だ。あんたらが想像も出来ないだろうあらゆる情報収集から始め、現地に赴き、自分の目で確かめ、そしてスカウトだ。」
―まず、教師ですが、彼は?
「実に運の無い男だ。教え子には恨まれ疎まれ、挙げ句の果てには、全校生徒やその親、同僚や先輩後輩、校長や副校長、まあ要するに全ての人間から嫌われちまう男だ。最終的には、いつも他の小学校に飛ばされる末路。全く哀れな男だよ。だからこそ、スカウトしたんだ。」
―彼女は?
「ああ、このじゃじゃ馬をスカウトするのには、苦労したよ。一番時間と労力を費やした。だってそうだろ?名誉な賞を授賞してる化学者を化学で解明出来ない大会にスカウトするんだぞ?」
―どうやってスカウトを?
「まあ、本物は金じゃ動いてはくれない。だから俺は、じゃじゃ馬に言ってやったんだよ。」
―何と?
「これも化学だ!ってな。」
―そんな事で?
「世の中なんて半分以上は、そんな事でって事で動いて成り立ってんだ。信用出来ないなら信用しないでもいい。だがどうだ?現にじゃじゃ馬は大会に出た。これが現実だ。」
―消防士の彼は?
「初めて奴の情報を入手した時には、ヒーローってのは現実に存在するんだって、飛び上がって喜んださ。」
―ヒーロー。
「だが、現実は上手い具合にヒーローを存在させちゃくれなかった。さっきあんたが聞いたよな?なぜ、大会を開催したのかって。」
―はい。
「大会の開催は必然であり意味は無い。だが、意図はある。」
―意図とは?
「おそらく大会に出場した参加者全てに当てはまる条件。それがイベント性だよ。」
―イベント性?
「子供なら遠足や運動会など。大人なら旅行やデートなど。楽しみなイベントと雨との関係性だ。少なからず身に覚えがあるだろ?そこで俺は、雨を引き出すならイベント性だと考えた訳だ。楽しみと雨の構図さ。」
―なるほど。
「さっきの消防士がいい例だ。雨男の消防士なんてヒーローその者。だが、実際は平凡な消防士だった。デートの日には必ず雨が降るが、火災が起きても雨は降らない。それはなぜか?奴の中で火災が楽しいイベントではないからだ。だから、雨男が発揮出来ない。ヒーローを失ったそんな時、俺はこの神の子を発見した。」
―優勝候補の女の子ですね?
「ガキの村では、毎日雨が降り続いてた。どしゃ降りじゃない。霧雨のような雨がずっとだ。村にしてみりゃ恵みの雨だ。ならその雨はいつからだ?いつから降り続いてる?そう、ガキが誕生した日からだ。」
―しかし、村人の話を聞くと女の子が生まれて来る前から村には、雨が降っていたと聞きましたが?
「俺が言ってるのは、母親の体からガキが出て来た誕生じゃない。ガキが母親のお腹の中で誕生した時からの話だ。遡って調べると、村に雨が降り始めた時期と一致する。」
―偶然では?
「かもな。だから、それを知る為のスカウトであり、大会なんだよ。」
―では、ズバリお聞きします。大会は成功?失敗?
「両方だ。」
―両方?失敗では?
「確かにそうかもな。だが、砂漠に大きな湖が出来ちまう程の雨を降らしたんだぞ?ある意味、成功だ。」
―しかし、優勝者はいなかった。
「ああ、そうだ。残念ながら今回の大会に優勝者は存在しない。」
―今回?では、第2回が?
「当たり前だ!まだ、誰が雨人間10−9なのか決まってないんだぞ?第2回が開催されんのは、必然中の必然だ!」
―それはいつ頃?
「まだ、決まってない。この世界に俺の知らない凄い雨人間が、まだまだ存在するかもしれないからな。スカウトからやり直しだ。そうそう。もし、あんたが雨男なら、参加してみるかい?(笑)。」
―遠慮しときます。あいにく晴男なもので(笑)。
「ハッハッハッハッ!なら、しょうがないな。」
―第2回の時も宜しくお願いします。
「今度は、ちゃんと優勝者が決定するように、入念なルールを考えとくよ。」
―本当に今日は、ありがとうございました。
「おう。」

第百十九話
「誰が雨を降らした?」

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