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2008年10月

2008年10月 1日 (水)

「第百二十話」

「さあ、わしを笑わしてみなさい!」
目の前にいる大富豪的な老紳士が、長い沈黙を破って口走った言葉は、やっぱり意味不明だった。
「ほら、わしを笑わしてくれ!」
顔、近付け過ぎだ老紳士!その御自慢っぽい奇抜な髭を引っ張ってやろうか?
「どうした?」
どうした?それは、俺のセリフだ!どうした老紳士!果てしなく長いネクタイをチョン切ってやろうか?
「コメディアンなのだろ?」
コメディアンじゃねぇよ!物書きだよ!
「わしは、生まれてから一度も笑った事が無いのだ。」
病院行け!とっとと、やたら爪先部分が尖っちゃってるその靴で、走って病院行け!
「だから今日は、コメディアン!キミに笑わして貰おうとわざわざ足を運んでもらった訳なのだ。」
そう。俺は、部屋に突然現れた黒服の黒男達に黒無理矢理、黒車に黒乗せられ、黒車の黒車内で黒音楽を黒聴きながら、黒信号の黒道路を黒走り、黒車を黒降りたかと黒思えば、黒ボートで黒海を黒渡り、黒ボートを黒降りたかと黒思えば、黒小型黒自家用黒ジェットに黒乗せられ、黒空を黒ワインと黒フルーツの黒盛り合わせで黒持てなされながら、黒映画の黒クライマックスに黒差し掛かった時、黒島に黒着き、黒馬車に黒揺られながら黒森や黒湖を黒抜け、この白い大豪邸に連れて来られた。「なぜに?」これが黒島での俺の黒最初の黒一言だった。
「さあ、笑わしてくれたまえ!」
「あのう?」
「何だ?コメディアン!何か小道具が必要か?だったら、別の部屋にこの世界の小道具全てが揃っているぞ!」
何てコントに最適で、快適で無敵な環境の島なんだ!
「いえ、小道具とかではなくてですね。」
「なら、衣装か?だったら、以下同文だぞ!」
つくづく、つくづく以下同文。
「いえ、衣装とかでもなくてですね。」
「なら、金か?金ならやらんぞ!絶対にやらんぞ!なぜなら、わしはケチだからだ!」
くれよ!たんまりあんだろ?ちょこっとくれよ!って、いやいや、違う違う!金の話じゃない!金の問題じゃない!早くコメディアンじゃないって事を打ち明けて、家に帰してもらわねば!
「あのですね。実は私は、コメディアンではないんですよ。」
「ふむふむ。」
何だふむふむって!日常会話で聞いた事ないぞ?ふむふむ言う人を!このままだと、ギャフンも言っちゃうノリだぞ?この老紳士!
「私は、物書きなんですよ。」
「知っとるよ。」
「ギャフン!」
知っとる?確かに老紳士は、知っとると言っとる!?俺の事をコメディアンだと言っとるのに、物書きだと知っとる!?これはいったいどうなっとる!?
「キミがコメディアンではなく物書きだと言う事は、百も千も万も億も兆も黒も承知だ。」
ところで、黒って何?何で、黒?
「だったらなぜ、私をコメディアンと?」
「いいか?」
よくねぇよ!すんげぇよくねぇよ!このヘンテコダテメガネ!
「わしにしてみれば、わし以外の人間など、全てわしを笑わす為に生まれて来たコメディアンなのだ。」
おいおいおい。何か、いよいよ死んで欲しいと心から思って来ちゃったぞ?
「だから、物書きのキミでさえも、わしにしてみればコメディアンなのだ。さあ、わしを笑わしてくれ!物書きコメディアン!」
だから、何かと意味が分かんない説明されたって、何かと意味が分かんないだけなんだよ!そのメガアフロをストレートにしてやろうか!あっそうだ!そうそう!何で俺なのかを無駄だろうけど一応、聞いてみようかな?
「なぜ、キミを選んだのか気になるかね?」
絶妙だなおい!
「はい。」
「キミの書く短編小説が黒面白いと言う黒噂を黒聞いたからだよ。」
なぜ、家は白?
「それは、光栄な事なのですが・・・・・・だったらこう言う事ですか?私に、ここで貴方を笑わせる短編小説を書けと?」
「かいつまんで聞くなら、そうだな。」
聞く方がかいつまむなよ!だいたいどの部分を、どうかかいつまんで、黒チョイスした?
「どうだね?事情が分かったのなら、そろそろ始めてもらえるか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ん?どうした?そうか!わしを笑わせたあかつきの話だな?」
ちげーよ!
「安心しなさい。わしを笑わせたあかつきは、ちゃんと用意してある!」
だから、ちげーよ!
「そのあかつきとは、わしを笑わしたと言う勲章を与えるあかつきだ!金は、びた一文やらんぞ!絶対にやらんからな!如何にもわしは、大が付くほどの黒ケチだからな!」
黒じゃん!黒なんじゃん!大、付いてないじゃん!てか、報酬とか自慢しがいのない勲章とかの話じゃねんだよ!
「だったら何の話だ?」
何、この人?心で会話出来ちゃう方の人?だから、顔近いって!
「考えているのです。」
「何をだ?」
馬鹿かお前は!この場合の考えてるって言ったら一つしかないだろ!すんげぇ面倒臭いけど、お前を笑わす為の話を考えているに決まってんだろ!これでも物書きの端くれだからな!
「話を考えているのです。貴方を笑わす為の短編小説をね!!」
「な、何!?わしを笑わすだと!?ば、馬鹿な!?」
はい意味分かんないー!こっちが馬鹿な!?だよ!そこ驚くとこか?じゃあ、何で呼んだ?本当に黒面倒臭いな!顔近いしっ!
「では、短編小説を書くので、しばらく一人にしてもらってもいいですか?」
「それは無理だ!」
何でだよ!何でなんだよ!ここ一番の融通きかせ所だろ!
「お願いします。」
回りにいられると気が散るんだよ!特にあんたはこの世界で黒一番黒気が散るんだよ!七色耳毛!
「キミが怪盗だとも限らんからな!一人にする訳にはいかん!」
いけ馬鹿!ばーか!
「そう、黒怪盗だとも限らんからな!」
白怪盗ならいいのかよ!そもそも、何も盗むもんが無い部屋で何を怪盗すりゃいんだよ!
「怪盗しようにも怪盗する物など、ないではないですか。」
「わしの心だ!」
なら、なおさら出て行けよ!最初からモニターか何かで監視してりゃーいいじゃん!顔近っ!
「何も怪盗しませんから、一人にして下さい。」
「ダメ!」
じゃあ、いいよ!
「分かりました。では、書き始めます!」
「うむ。楽しみにしているぞ!」
ああ、楽しみにしてろ!お望み通り笑わしてやるよ!黒笑い黒転げて、黒笑い黒死ぬんじゃねぇぞ!この半袖半ズボン野郎!

第百二十話
「胸に輝く黒勲章」

やれやれ、てめぇでてめぇの事を笑ってるようじゃ、黒救えねぇ。

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2008年10月 8日 (水)

「第百二十一話」

「ここは・・・・・・取調室ですね。」
「はい。」
「僕を取り調べするんですか?」
「最初に言っときますが、これは逮捕でも取り調べでもありません。」
「でしょうね。普通、取調室で刑事さんと一対一なんて聞きませんもんね。」
「貴方が帰りたいと言うのであれば、いつでも帰ってもらって構いません。」
「まあ、帰っても今日は、やる事がありません。とても暇な日です。なので、ここにいます。」
「ありがとうございます。」
「さて、いったい何が始まるんでしょうか?楽しい催しって感じでもありませんね。」
「最近、この街で起きている謎の連続殺人事件を御存知ですか?」
「もちろん知ってますよ。新聞やニュースを連日賑わしているあの謎の連続殺人鬼のあの謎の連続殺人事件ですよね。」
「ええ。実は、私はその謎の連続殺人鬼のその謎の連続殺人事件の捜査員の一人なんです。」
「だと思いました。」
「・・・・・・・・・単刀直入に言います。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・どうぞ?」
「あの謎の連続殺人事件のあの謎の連続殺人鬼は、貴方ですね?なぞおおきひと!」

第百二十一話
「なぞおおきひと」

「それは、面白い推理ですね。なぜ、僕が犯人だと思うんです?まさか、刑事の勘とかって言う代物じゃないでしょうね?それは、つまらないですよ?」
「違います。あの謎の連続殺人事件は、あまりにも謎だらけ過ぎるんですよ。」
「まあ、謎の連続殺人事件と銘打つぐらいですからね。謎過ぎるぐらい謎でないとね。」
「あの謎の連続殺人事件を捜査すればするほど、謎が謎になっていく。」
「それで僕が捜査線上に浮かび上がったと言う訳ですか?僕が、なぞおおきひと、だからですか?」
「ええ。しかし、これはあくまで私個人の考えです。実際の捜査では、捜査線上には誰も浮かび上がっていません。」
「なるほどね。でも、やっぱりそれを所謂、刑事の勘って言う代物なんじゃないんですか?」
「違います。」
「違いましたか。」
「あまりにも謎過ぎるんですよ。謎過ぎて謎に埋め尽くされて謎めいて謎だらけで、捜査員の中には、本当に殺人事件が起きているのかさえ分からなくなっている者もいる。」
「じゃあ、起きていないんじゃないですか?」
「だといいんですが、残念ながら謎の連続殺人事件は、謎だらけに現実に起きています。」
「そうですか。で、僕をどうするつもりなんですか?謎の連続殺人鬼=なぞおおきひと、だけで逮捕出来るんですか?」
「最初にも言いましたが、これは逮捕でも取り調べでもありません。あくまで私の単独行動です。」
「でしたら、今のこの空間は、何なんでしょう?話し合いの場ですか?推理ゲームですか?それとも、謎の空間ですか?」
「違います。ただ、貴方と安全にゆっくりと話が出来る場所が、ここしかなかっただけの事です。」
「にしては、随分と僕に分の悪い場所ですよね?刑事さん。」
「すいません。では、フェアに行きましょう。」
「フェアに?」
「ええ。私は、あの謎の連続殺人事件の謎の連続殺人鬼が、なぞおおきひと、貴方だと考えています。」
「それは、さっきも聞きましたよ?」
「なので、これから私は、貴方をこの拳銃で撃ち殺します。」
「なるほどね。それで、謎の連続殺人事件が解決って訳ですね。まあ、それはあくまで刑事さんの頭の中だけの事ですけどね。」
「そうかもしれません。ただ、謎の連続殺人事件が今日を境に起こらなくなるかもしれない。まあ、私の頭の中だけの話ですけどね。」
「僕を撃ち殺したりして、刑事さんは大丈夫なんですか?」
「貴方を撃ち殺したあと、私も死にます。だから、大丈夫です。」
「なるほどね。でも、それのどこがフェアなんですか?死の覚悟がある人間と、そうでない人間との差があり過ぎる。それに、僕は刑事さんの確実な死を目の当たりにする事が不可能ですよ?もしかしたら、刑事さんは僕が死んで謎の連続殺人事件が起きなくなるかどうかを確認するかもしれない。そう、もしかしたら刑事さんは、死なないかもしれない。」
「フェアの話は、まだ終わってません。」
「これは、失礼。」
「今の話を聞いてもなお、なぞおおきひと、貴方は自由な選択肢を選べる。」
「自由な?帰ってもいいんですか?」
「ええ。もちろん構いません。これは、逮捕でも取り調べでもないのですからね。何なら私は、この場に刑事と言う立場で存在している訳ではありません。」
「あくまで個人的に、なんですね?」
「ええ。」
「なるほどね。では、僕が席を立ち、背を向けた瞬間に後ろから撃ち殺される可能性は?」
「ありません。」
「ゼロ?」
「ええ。」
「その言葉を信じろと?」
「貴方が帰る事を選択した時点で、私は拳銃から全ての弾を貴方の目の前で抜き、その弾を貴方にプレゼントしましょう。」
「なるほどね。なら、刑事さんが他にも拳銃をどこかに隠し持っていないと言う証拠は?」
「拳銃は、これだけです。」
「確証は?」
「何なら、裸になってもいいですよ?」
「いやいや、その言葉だけで十分ですよ。座って下さい。」
「そろそろ、始めてもいいですか?なぞおおきひと。」
「謎過ぎる謎だけですよ?謎だらけの謎だけですよ?謎多き謎だけですよ?それだけの事で、僕を撃ち殺すまでに考えが及びますか。」
「それだけの事、ではありません。それほどな事、です。」
「刑事さん?」
「何です?」
「人はなぜ、謎を謎のままにしておかないんでしょう?」
「それはきっと、人だからですよ。」
「なるほどね。でも、刑事さん?」
「何ですか?」
「人である刑事さんが、今からしようとしている行為は、むしろ謎以上に謎だらけですよ?」
「なぞおおきひと、これが私の導き出した答えなんですよ。」
「答え?」
「謎には、謎で対抗しなければ解けない!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「そうだ!刑事さん。僕が刑事さんを撃ち殺してから、自殺すると言う名案はどうです?」
「貴方が確実に自殺すると言うのなら、私はそれでも構いません!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・やっぱり、刑事さんの案でいきましょうか。」
「では、始めても構いませね?なぞおおきひと。」
「構いませんよ。刑事さん。」
「私は今から貴方を撃ち殺します!」
「どうぞ。」

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2008年10月15日 (水)

「第百二十二話」

眠れない

どうして眠れないのだろう?

どうして眠れないのかを考えているうちに

いつの間にか眠っていた

それの繰り返しで

日々は過ぎて行く

それの繰り返しで

四季は移り変わる

そんな

夏の終わりの

秋の始まりの

眠れない夜長に

待つ朝を気長に

今宵もまた

いつの間にか眠っていた

第百二十二話
「こーゆーお話は、お嫌いか?」

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2008年10月22日 (水)

「第百二十三話」

「それでは、第123回主人公会議を始めます。皆さん、今回は短編小説のマンネリ化防止も兼ねての発案でお願いします。それでは、何か案のある方は?」
「マキュッと!」
「どーぞ。」
「マッキュリ思うのは、マキュッと女性の主人公が少ないと思うっキュ。」
「確かに、今まで女性を主人公にした作品は、数える程度です。」
「だから、だからよ。マッキュリ、マキュマキュっと女性が主人公でマヨイアイオイクラゲっキュ!」
「マヨイアイオイクラゲ?ですか?詳しく聞かせて下さい。」
「マキュっと!女性はマヨイアイオイクラゲ、マヨイアイオイクラゲは女性!」
「なるほど。メルヘンな感じの話ですね?」
「朝は、マヨイアイオイクラゲっキュ!」
「なるほどなるほど。時間帯によって人間の女性とマヨイアイオイクラゲとに、体が変化する訳ですね?」
「昼もマヨイアイオイクラゲっキュ!」
「夜に女性へと変身するんですね?なるほど!そこで何かが起こるんですね!何でしょう?ちょっとラブな匂いのする話ですね?いいですよ!今までにない話です!」
「夜もマヨイアイオイクラゲっキュ!」
「マヨイアイオイクラゲだ!そりゃ、もはや単なる深海生物そのものだ!女性は?女性は、どこに行っちゃったんですか!」
「まあまあ、落ち着くガネ。そんなマンネリ化を防止できんようなメルヘンより、いい話があるガネ!」
「マキュンぼりっキュ・・・・・・・・・。」
「どんな話ですか?」
「メルヘンじゃ駄目ガネ!ファンタジーで行くガネよ!」
「ファンタジー!?まさか、その顔からファンタジーと言う単語が聞けるとは思いませんでした。」
「ファンタジーに顔の善し悪しは関係ないガネ!」
「すいませんでした。聞かせてもらえますか?そのファンタジーの話を。」
「ファンタジーと言ったら、妖精さんだガネ!」
「オーソドックスですが、妖精が主人公と言うのは、この場合、斬新です。」
「しかも、その妖精さんは金の妖精さんだガネ!」
「お金?ですか?どんな感じの話ですか?詳しくお願いします。」
「金の妖精さんが、村人に出会うガネ!」
「なるほど。オーソドックスな展開ではありますが、何かがありそうな予感プンプンですね。」
「そこで村人が金の妖精さんに悩みを打ち明けるガネ!」
「なるほどなるほど。何か人助けをするって訳ですね。」
「村人の親友が借金をして、自分に金を貸してくれと相談を持ち掛けて来たガネよ!」
「何か急に現実味を帯びて来ましたね。」
「貸すか貸さないかで村人は、何日も何日も悩んでいたガネ!そこで金の妖精さんがバシッと、ひとこと言うガネ!」
「なるほどなるほどなるほど。何か教訓めいたオチがあるんですね?ファンタジーと言うより、やっぱりメルヘンでは?」
「細かい事は、気にしないガネ!」
「そうします。で、妖精は村人に何と言ったんですか?」
「金の貸し借りは、よーせ!って、ガネ!」
「ダジャレだ!そりゃ、もっぱら単なるダジャレだ!教訓でも何でもない!低レベルなダジャレだ!」
「駄目ガネか?」
「駄目に決まってるじゃないですか。」
「まったく、そんなんじゃハートがバーニングしないぜ!」
「何か案がありますか?」
「ファイヤー?そりゃ、俺に聞いてんのか?」
「ええ。」
「あるってもんじゃねぇ!8ビートも16ビートも止まんねぇ!」
「はあ・・・たくさんあるって解釈でいいんですか?」
「ファイヤー、聞いてビッグバン起こすんじゃねぇぞ!」
「お願いします。」
「ここは、バーニングに主人公2人のやり取りのみだ!」
「でも、主人公二人が会話形式で話が展開して行くと言うのは、この短編小説の定番中の定番ですよ?」
「おいおい、ファイヤー?あえてそこをぶっ壊してこそ、バーニングだろ?博士と助手、男刑事と女刑事、人間と動物、紳士とガキ、女と死神、小人と巨人、そんなもんホットじゃねぇ!まったく、ハートがビートを刻んでヒートしねぇ!」
「あるんですね?主人公二人の会話のやりとりのみでもマンネリ化ではないアイディアが!」
「ファイヤー、当たり前だろ?取って置きがな!」
「それは、どんな組み合わせなんですか?詳しくお願いします。」
「忍者と戦車!」
「にっ!?」
「どうだ?ビッグバンだろ!」
「斬新ですけど、どうやって話を展開させてくんですか!」
「ラブストーリーだぜ!ファイヤー!」
「ビッグクラッシュ!」
「おいおい、ファイヤー?そりゃないだろ。却下って事か?」
「誰がどう考えたって、そりゃ無理ジュピだわ!あんた頭の中がオーバーヒートしてんじゃジュピ?」
「はっ!こいつは、バーニングな事を言ってくれるぜ!じゃあなにか?テメーみたいなトロ火頭に、斬新なアイデアがあんのか?」
「ジュピ?あるわ!超斬新な取って置きがジュピね!」
「おい、ファイヤー。代わりに聞いてやってくれ。かったるくて付き合いきれないぜ!」
「取って置き、宜しくお願いします。」
「いいジュピ?これは、超斬新ジュピよ?あまりに超斬新過ぎて、だ―れも考えつかなかったぐらい超斬新ジュピ。」
「で、どんな主人公なんですか?」
「主人公なんていらないジュピのよ!」
「なっ!?」
「どうジュピ?超斬新ジュピじゃない?」
「いや、その、何て言ったらいいのか・・・・・・元も子もないだろ!ただ、その一言につきるだけです。」
「何でジュピ?どうしてジュピ?」
「主人公なしで、どうやって話を展開させるんですか!」
「展開させなきゃいいジュピじゃない。無理に展開させようとするからマンネリ化現象が起きるジュピのよ。」
「展開させたいんです!無理にでも!主人公がいないぐらいなら、いてマンネリ化の方がマシです!」
「頭がお堅いジュピね。」
「すいませんね!ちょっと皆さん、いいですか?もっと真面目に考えてもらわないと困ります。」
「わっかっかっ!こやつの言う通りじゃ。真剣に考えんといかん。なら、わしからアイデア一つ、ええかな?」
「はい。お願いします。」
「わっかっかっ!ええか?無理な設定や登場人物は、いかん。ここはあえて普通が一番じゃ。」
「なるほど。この短編小説には、普通がない。設定や登場人物が無茶苦茶で、話の展開は滅茶苦茶です。ある意味で普通は、盲点だったのかもしれません!」
「わっかっかっ!わしのアイデアだって、まだまだ若いもんには、負けんよ。わっかっかっ!」
「それで、主人公はどうするんです?」
「わっかっかっ!んなもん決まっとるだろ。普通に行くんだ。普通の人間でええじゃろ。普通の人間が普通に生活する。そこで織り成す普通の人間模様、どこか忘れちまった何か暖かなもんを伝えればええ。他には、何もいらんよ。」
「なるほど!感動のヒューマンドラマですね!斬新だ!これですよこれ!これが欲しかったんですよ!」
「わっかっかっ!そう興奮しなさんな。物語は、普通の人間が生まれて始まり、普通の人間が静かに死んで終わる。」
「なるほどなるほど。主人公は、生まれながらにして不治の病で、若くしてこの世を去ってしまうんですね?」
「わっかっかっ!主人公は、病でも何でもないわい。105歳で寿命を真っ当して死におる。」
「長っ!?超ド級の長編小説じゃないですか!」
「わっかっかっ!ええか?普通の人間が普通に人間模様を織り成すには、それなりの長さが必要なんじゃ。」
「これは、短編小説なんですよ!」
「わっかっかっ!えらく無茶苦茶を言いおる。」
「そりゃアンタだろ!」
「では、天に召される前に一言。」
「大丈夫ですよね?」
「天の声が聞こえます。ノンフィクション、と。」
「ノンフィクション?なるほど。これは今までのと違って、全く手を出した事のないジャンルです。まるでマンネリじゃない!それで、主人公は?」
「天に召されますか?」
「いや、召されませんよ。主人公を教えて下さい。そして、出来ればストーリーの方も!」
「その前に、貴方に天の声を伝えなければなりません。」
「何ですか?」
「ノンフィクションって、何?、と。」
「そこ!?」
「フィクションって、何?、と。」
「何で会議に参加してるんですか?」
「天に召される為です。」
「・・・・・・・・・他にある方?」
「ネプッ!」
「どーぞ。」
「ネップネプッ!」
「はい?」
「ネップ!ネプネプネップ!」
「えっ?」
「ネプネップ!ネップ!ネップ!ネプー、ネッッッッッッップ!!」
「ちょっと、通訳をーっ!って、そうか、いなくなっちゃったんでした。」
「ネプゥゥゥゥゥ!」
「参りましたね。」
「ガネ!そう言うお前さんは、何かアイディアがあるガネか?」
「私ですか?」
「そうマキュ!マッキュリある訳?」
「そこら辺、どうなんだ?ファイヤー?」
「ええ、一応ありますよ。」
「わっかっかっ!是非とも聞かせてくれんか?」
「どんな話ジュピなの?」
「えーと、ですね。」
「ネププ~!」
「天に召されるのですか?」
「召されませんよ。まず、私が提案する主人公はですね。」
「ガネ!やっぱり金の妖精さんガネ!」
「わっかっかっ!普通の人間じゃろ?」
「ちょっと!マッキュリマキュッと何を言ってんの?マヨイアイオイクラゲに決まってるっキュ!」
「いや、そうじゃなくって、私がですね。」
「みんなして何を馬鹿な事を言ってるジュピの?主人公なんて必要ないジュピのよ!」
「ネプネプネップ!ネプププーッ!」
「ちょっと、皆さん?」
「どいつもこいつも、ハートがビートを刻まねぇな!主人公は、忍者と戦車でバーニングだ!!」
「コメディーって、何?、と。」
「ちょっと、落ち着いて下さい。私の意見を」
「マヨイアイオイクラゲっキュ!」
「わっかっかっ!わっかっかっ!わーっかっかっ!」
「ネッッッッッッップップッ!!」
「忍者と戦車でエクスプロージョン!!」
「聞いて下さい。」
「ファンタジーガネ!金の妖精だガネ!」
「だーかーらー!!主人公なんてもんは不要ジュピなのよ!!」
「短編小説って、何?、と。」
「ああーっ、もうっ、うっさーいっ!!」

第百二十三話
「頭ん中」

「マキュッ!?」
「ガネ!?」
「フ、ファイヤー?」
「ジュピッ!?」
「わっかっかっ!」
「天に召されましょう。」
「ネッププ~?」
「・・・・・・・・・今日の会議は、これで終わりにします。」

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2008年10月29日 (水)

「第百二十四話」

「ガチャ!」

「こんばんは。」
「ども。」
「お仕事中、大変申し訳ありません。」
「はあ・・・・・・・・・あのう?ところで貴女は?」
「あっ!すいません!申し遅れました。アタシは、こう言った者です。はい。」
「国家出版?」
「はい。」
「国家出版って?」
「簡単に言えば、この国が運営している出版社、みたいなもんです。はい。」
「国が運営だって?そんな話、聞いた事もないぞ?」
「裏組織ですから。」
「裏組織?」
「今日、アタシが伺ったのは、これを先生にお届けする為です。はい。どぞ。」
「トウシ?」
「正確には、ヌスガミと読みます。はい。まあ、でも読み方はあんまり関係無いんで、お好きなように読んで下さって構いません。」
「で?俺は、この紙をもらって何だってんだ?」
「えっと、こちらの資料も、どぞ。」
「資料?いったい何なんだ?」
「ある方の書かれた1000本以上のショートショートの内の1作品です。はい。」
「俺にその作品を読めって言うのか?」
「ええ。」
「読んでどうする?いったいどうしろってんだ。」
「時間が無いので単刀直入に言います。はい。その作品を読み、盗んで下さい。」
「何だと!?」
「それが、ヌスガミを受け取った方の使命です。はい。」
「馬鹿な事を言うな!人の作品を盗める訳がないだろ!おい!国家出版だのヌスガミだのって何なんだ!帰ってくれ!」
「早口での説明でいいですか?なんせ、時間が無いもんで。」
「・・・・・・・・・説明?」
「我々、国家出版は、書物こそが国の宝、と言う国家の考えに基づき、活動を行っています。はい。書物とは主に、小説や漫画の類いを指します。はい。我々は、書物を守る組織なんです。はい。」
「書物を守る?」
「時代とともに良質の作品達は、社会に埋もれてしまいます。はい。それは、とても悲しい事です。はい。それは、国家財産を失うと言う事です。はい。その中でも、特に埋もれやすいのが短編小説と言われるショートショートです。はい。我々は、その埋もれた埋蔵金を掘り起こし、後世に伝えていかなければならないのです。はい。そこで白羽の矢が立ったのが、同じ書物の中でも比較的埋もれにくい漫画なのです。はい。」
「俺に、この作品をリメイクしろと?」
「リメイクではありません。作品の良い部分のアイディアを生かしつつ、先生のアイディアをプラスするんです。はい。」
「それじゃあ、本当に盗作じゃないか!」
「平たく言えば、そうかもしれません。ただ、国に宝を残す作業だとお考えいただけると、これ幸いです。はい。」
「ふざけんなよ!」
「ふざけてません。国は、真剣です。はい。その証拠にヌスガミを受け取った方には、国が全面的に援助を施します。はい。それも一生です。はい。将来の心配は無用です。はい。金銭面からメディアのバッシングまで、あらゆる事から国が全力で先生をお守り致します。はい。」
「断る!」
「なら、死にますよ?」
「何!?」
「ヌスガミを受け取ると言う事が、どれほど栄誉な事か。先生は、国に選ばれた人間なんです。はい。選ばれたくても選ばれる事ではないんです。はい。その申し出を断ると言うんであれば、もはやそれは、国家反逆罪。国反に残された道は、ただ1つ、国死です。はい。」
「おい!作者の人権や」
「人権とかプライドとか、そう言った精神論を語る余裕はありません。」
「精神論だと!?」
「そんな事を無条件で通過してしまうのが、このヌスガミなんです。はい。いいですか?先生、いいですか?盗むか、死ぬか、なんです。はい。」
「こんな事があっていいのか?こんな無茶苦茶な事があっていいのか!」
「あっていいのかではなく、なくてはならないんです!はい!先生、この作品を盗めるのは、貴方しかいないんです!はい!そう国が決断したんです!はい!先生!貴方は、国に選ばれた名誉ある方なんです!はい!英雄なんです!はい!」
「名誉?英雄?これがか?人の作品を盗むって事がか?」
「世間の目を気にしてらっしゃるんですか?」
「世間?そんな事は問題じゃない!俺は、俺自身の漫画家としての正義を守りたいだけだ!」
「正義だの悪だのと、全く下らない考えです。はい。」
「何だと!」
「カレーライス。」
「何?」
「料理と書物は、似ています。はい。カレーライスを作る料理人は、この世に1人ではありません。どのレストランに行っても存在する。はい。果たしてカレーライスと言う誰かが作り上げた基本となるレシピを元に、自分のオリジナリティをプラスして作り上げたカレーライスに、罪悪感を感じる料理人が存在するでしょうか?」
「料理人と漫画家は違う!」
「ええ、違います。はい。ただ、国家レベルでは、料理人も漫画家も同じです。はい。ただ、料理か書物かの違いなだけです。はい。」
「国家レベルか。」
「国が動いている事をお忘れなく。いいですか?ヌスガミを受け取ってから30分以内に結論が出ない場合、その時点で要請拒否として国反とみなされるんです。はい。先生は、死ぬんですよ?もう、好きな漫画が書けなくなるんですよ?それは、とても悲しい事でしょ?」
「随分と長い時間、考えさせてくれるんだな。」
「はい?」
「人の作品を堂々と盗むぐらいなら、俺の漫画家人生、ここまででいい。」
「正義ですか?」
「さあな?」
「では、それは死を受け入れたのだと、理解して宜しいのでしょうか?」
「こんな紙グズっ!!」
「残念です。はい。」
「クソ食らえだ!!」
「・・・・・・・・・国死を。」

「バン!」

第百二十四話
「オマージュ」

「実に、良く出来た作品だ。」
「じゃあ!出版してもらえますか!」
「出版?冗談だろ?」
「えっ?だって今、良い作品だって言ったじゃないですか!」
「俺が言ったのは、良く出来た盗作だって意味だよ。」
「盗作!?」
「ああ、少なくとも2つの作品の良い部分をパクって組み合わせ、構成された良質の盗作だって事だ。」
「何言ってんだ!僕は、盗作なんてしてない!」
「こんな小さな出版社なら、騙せるとでも思ったのか?それとも、巧妙なパクりなら、出版社は騙せないとしても世間の目なら欺けるとでも思ったのか?」
「僕は、本当にパクってなんていない!この作品は、僕のオリジナルだ!」
「おい、何処へ行く気だ?」
「もっと大きな出版社に行くんだ!こんな小さな出版社に来たのが、そもそもの間違いだったよ!」
「確かに、金儲け主義の大手出版社なら、或いは出版に漕ぎ着けるかもな。ただ、そこではお前は物書きではなく、道具に成り下がっちまうぞ?」
「うるさい!」
「行くなら勝手に行け。ただ、その原稿はドアの横にあるゴミ箱に破り捨てて行けよ。」
「何だって!?何で捨てなきゃならないんだ!」
「でなきゃ、お前はドアを1歩出た瞬間、死ぬからだよ。」
「僕が死ぬだって?」
「ああ、死ぬ。パクりは、重罪だからな。」
「何を言ってるんだ?」
「もしかしたら、お前は本当に作品をパクってないかもしれない。ただ、これは故意にパクったのか、無意識にパクったのか、ってのは問題じゃないんだ。」
「何を言ってんだ?」
「お前、小学校に入る時、頭に注射されたろ?予防接種とか言ってな。」
「それがどうしたんだ!」
「それなぁ、予防接種でもなんでもないんだわ。こんなちっちゃなチップを海馬に埋め込んだんだ。」
「馬鹿言うな!そんな有りもしない作り話を、信じろって言うのか!」
「お前、いくつだ?」
「23。」
「なら、ちょうど注射が始まった年のガキだな。その注射と同時期に始まったのが、出版社建設計画だ。不思議に思わないか?今では、この国にここみたいな小さな出版社が山ほど存在してるって事を。」
「それは!書物がこの国の文化だからだろ!財産だからだろ!」
「まあ、当たらずも遠からずだ。いいか?記憶ってのは、都合よく改ざんされちまうもんなんだよ。例えば『どっかで読んだ凄いアイディアの作品』と記憶する。だが、時が経つにつれそれは『凄いアイディアの作品』のように、あたかも自分が閃いたかのような錯覚をもたらす記憶に摩り替わっちまう。記憶の劣化が引き起こす現象だ。国は、自覚のないパクり現象の原因が、そこに有ると断定した。」
「僕の作品が、そうだって言うのか!」
「ああ、そうだ。お前は幼い頃に影響を受けた作品を自覚なくパクってる。」
「あんた、何者だよ。」
「俺?俺は、国家アイディア管理局の人間。通称、アイディア管理人、の1人だ。」
「アイディア管理人?」
「小さな出版社は、言わば振るいのようなもんだ。お前らみたいな仮国反者が来やすいようにな。まあ、中にはいきなり大手に行っちまって、逝っちまう奴もいるがな。あっちには、管理人がいないんだよ。」
「僕が国反者?」
「ああ、国は決断しちまったんだよ。アイディアを保護する事をな。いいか?海馬に埋め込んだチップは、お前が国反者だと断定した時点で、爆発する。するとどうなるか?お前の海馬が破壊され、お前は記憶を保てない人間になっちまう。物書きとしては、致命的だ。つまり、俺が言ってる死ってのは、物書きとしての死を意味してる。それが国死だ。」
「嘘だ!!」
「そのきっかけが、お前が原稿を手にしたままドアを出た瞬間って訳だ。」
「この作品は!この作品は僕の作品だ!!」
「まだ分かんねぇのか!この計画は、アイディアを保護するのと同時に、優秀な物書きを救済してやる計画でもあんだよ!」
「えっ!?」
「お前なら、オリジナルで勝負出来る!少なくとも俺はそう思ってる!だから、お前がその原稿を破り捨て、新たにオリジナル作品を持って来るなら!俺は、無条件でお前を全力でバックアップする!それは、お前のアイディアを国が守るって意味だ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「盗まないか、国死か、だ。」
「………出鱈目だ。そんな話、出鱈目だ!ドアを1歩出たら国死だって!パクったぐらいで国死だって!あんた頭がどうかしてるよ!」
「おい、そのままドアを出たら、国死が待ってるんだぞ?」
「国死?そんなの・・・そんなのクソ食らえだ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「ガチャ!」

第百二十四話
「オマージュ~星と紙~」

「・・・・・・・・・午後9時10分。国死確認。・・・・・・・・・ああ、やっぱりだ。こんな日に限って、矢鱈と星が輝いてやがる。まったく、鱈腹アイディア遺してアンタ逝っちまうもんだから、いっつもこれだ。アンタある意味、大罪人だよ。」

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