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2008年10月 1日 (水)

「第百二十話」

「さあ、わしを笑わしてみなさい!」
目の前にいる大富豪的な老紳士が、長い沈黙を破って口走った言葉は、やっぱり意味不明だった。
「ほら、わしを笑わしてくれ!」
顔、近付け過ぎだ老紳士!その御自慢っぽい奇抜な髭を引っ張ってやろうか?
「どうした?」
どうした?それは、俺のセリフだ!どうした老紳士!果てしなく長いネクタイをチョン切ってやろうか?
「コメディアンなのだろ?」
コメディアンじゃねぇよ!物書きだよ!
「わしは、生まれてから一度も笑った事が無いのだ。」
病院行け!とっとと、やたら爪先部分が尖っちゃってるその靴で、走って病院行け!
「だから今日は、コメディアン!キミに笑わして貰おうとわざわざ足を運んでもらった訳なのだ。」
そう。俺は、部屋に突然現れた黒服の黒男達に黒無理矢理、黒車に黒乗せられ、黒車の黒車内で黒音楽を黒聴きながら、黒信号の黒道路を黒走り、黒車を黒降りたかと黒思えば、黒ボートで黒海を黒渡り、黒ボートを黒降りたかと黒思えば、黒小型黒自家用黒ジェットに黒乗せられ、黒空を黒ワインと黒フルーツの黒盛り合わせで黒持てなされながら、黒映画の黒クライマックスに黒差し掛かった時、黒島に黒着き、黒馬車に黒揺られながら黒森や黒湖を黒抜け、この白い大豪邸に連れて来られた。「なぜに?」これが黒島での俺の黒最初の黒一言だった。
「さあ、笑わしてくれたまえ!」
「あのう?」
「何だ?コメディアン!何か小道具が必要か?だったら、別の部屋にこの世界の小道具全てが揃っているぞ!」
何てコントに最適で、快適で無敵な環境の島なんだ!
「いえ、小道具とかではなくてですね。」
「なら、衣装か?だったら、以下同文だぞ!」
つくづく、つくづく以下同文。
「いえ、衣装とかでもなくてですね。」
「なら、金か?金ならやらんぞ!絶対にやらんぞ!なぜなら、わしはケチだからだ!」
くれよ!たんまりあんだろ?ちょこっとくれよ!って、いやいや、違う違う!金の話じゃない!金の問題じゃない!早くコメディアンじゃないって事を打ち明けて、家に帰してもらわねば!
「あのですね。実は私は、コメディアンではないんですよ。」
「ふむふむ。」
何だふむふむって!日常会話で聞いた事ないぞ?ふむふむ言う人を!このままだと、ギャフンも言っちゃうノリだぞ?この老紳士!
「私は、物書きなんですよ。」
「知っとるよ。」
「ギャフン!」
知っとる?確かに老紳士は、知っとると言っとる!?俺の事をコメディアンだと言っとるのに、物書きだと知っとる!?これはいったいどうなっとる!?
「キミがコメディアンではなく物書きだと言う事は、百も千も万も億も兆も黒も承知だ。」
ところで、黒って何?何で、黒?
「だったらなぜ、私をコメディアンと?」
「いいか?」
よくねぇよ!すんげぇよくねぇよ!このヘンテコダテメガネ!
「わしにしてみれば、わし以外の人間など、全てわしを笑わす為に生まれて来たコメディアンなのだ。」
おいおいおい。何か、いよいよ死んで欲しいと心から思って来ちゃったぞ?
「だから、物書きのキミでさえも、わしにしてみればコメディアンなのだ。さあ、わしを笑わしてくれ!物書きコメディアン!」
だから、何かと意味が分かんない説明されたって、何かと意味が分かんないだけなんだよ!そのメガアフロをストレートにしてやろうか!あっそうだ!そうそう!何で俺なのかを無駄だろうけど一応、聞いてみようかな?
「なぜ、キミを選んだのか気になるかね?」
絶妙だなおい!
「はい。」
「キミの書く短編小説が黒面白いと言う黒噂を黒聞いたからだよ。」
なぜ、家は白?
「それは、光栄な事なのですが・・・・・・だったらこう言う事ですか?私に、ここで貴方を笑わせる短編小説を書けと?」
「かいつまんで聞くなら、そうだな。」
聞く方がかいつまむなよ!だいたいどの部分を、どうかかいつまんで、黒チョイスした?
「どうだね?事情が分かったのなら、そろそろ始めてもらえるか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ん?どうした?そうか!わしを笑わせたあかつきの話だな?」
ちげーよ!
「安心しなさい。わしを笑わせたあかつきは、ちゃんと用意してある!」
だから、ちげーよ!
「そのあかつきとは、わしを笑わしたと言う勲章を与えるあかつきだ!金は、びた一文やらんぞ!絶対にやらんからな!如何にもわしは、大が付くほどの黒ケチだからな!」
黒じゃん!黒なんじゃん!大、付いてないじゃん!てか、報酬とか自慢しがいのない勲章とかの話じゃねんだよ!
「だったら何の話だ?」
何、この人?心で会話出来ちゃう方の人?だから、顔近いって!
「考えているのです。」
「何をだ?」
馬鹿かお前は!この場合の考えてるって言ったら一つしかないだろ!すんげぇ面倒臭いけど、お前を笑わす為の話を考えているに決まってんだろ!これでも物書きの端くれだからな!
「話を考えているのです。貴方を笑わす為の短編小説をね!!」
「な、何!?わしを笑わすだと!?ば、馬鹿な!?」
はい意味分かんないー!こっちが馬鹿な!?だよ!そこ驚くとこか?じゃあ、何で呼んだ?本当に黒面倒臭いな!顔近いしっ!
「では、短編小説を書くので、しばらく一人にしてもらってもいいですか?」
「それは無理だ!」
何でだよ!何でなんだよ!ここ一番の融通きかせ所だろ!
「お願いします。」
回りにいられると気が散るんだよ!特にあんたはこの世界で黒一番黒気が散るんだよ!七色耳毛!
「キミが怪盗だとも限らんからな!一人にする訳にはいかん!」
いけ馬鹿!ばーか!
「そう、黒怪盗だとも限らんからな!」
白怪盗ならいいのかよ!そもそも、何も盗むもんが無い部屋で何を怪盗すりゃいんだよ!
「怪盗しようにも怪盗する物など、ないではないですか。」
「わしの心だ!」
なら、なおさら出て行けよ!最初からモニターか何かで監視してりゃーいいじゃん!顔近っ!
「何も怪盗しませんから、一人にして下さい。」
「ダメ!」
じゃあ、いいよ!
「分かりました。では、書き始めます!」
「うむ。楽しみにしているぞ!」
ああ、楽しみにしてろ!お望み通り笑わしてやるよ!黒笑い黒転げて、黒笑い黒死ぬんじゃねぇぞ!この半袖半ズボン野郎!

第百二十話
「胸に輝く黒勲章」

やれやれ、てめぇでてめぇの事を笑ってるようじゃ、黒救えねぇ。

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