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2008年12月

2008年12月 3日 (水)

「第百二十九話」

―おじさん?
『傍観者諸君!』
―おじさん?
『この世界の傍観者諸君よ!』
―おじさんってば!
―ん?
―もう!また考え事?
―すまないすまない。
―ねぇ?
―何だい?
―おじさんは、誰?
『傍観者諸君よ!』
―私かい?
『この地球の傍観者諸君よ!』
―私は、傍観者さ。
―傍観者?
―そう、私は単なる傍観者。

第百二十九話
「蝿の傍観者」

―傍観者って?
―少年、キミはこの星が好きかい?この青い地球が好きかい?
―うん!大好きだよ!
―そうか。
―僕ね。この丘の上にあるこの大きな木が大好きなんだ!あとね。ここから見える空や雲や太陽や月や星も大好き!
―……………。
『傍観者諸君!何が見える!君達の瞳には、いったい何が見えているのだ!傍観者諸君よ!』
―空。
『空か!』
―雲。
『雲か!』
―星。
『星か!』
―大地。
『大地か!』
―海。
『海か!』
―太陽と月。
『太陽か!或いは、月か!』
―おじさん?おじさんってば!大丈夫?
―ん?
―何かブツブツ言ってたよ?
―大丈夫だ。心配してくれてありがとう、少年。大した事じゃない。気にしないでくれ。
―ねぇ?
―そうは言ったものの気になるか?
―ううん、大丈夫。でも、傍観者って方は気になるよ?
―ああ、そうだったな。傍観者か。そうだな。簡単に言ってしまえば、何もしないで見ているだけの存在だ。
―何もしないって?働かないって事?
―違う。その逆だ。この場合の何もしないは、この地球の為に、何かをすると言う事だ。
―えっ?何か、おじさんの言ってる事、難し過ぎるよ!
―ハハハ。
―ああーっ!子供だからって馬鹿にして笑ったー!
―違う違う。私も傍観者の意味がよく分からないのだよ。
―うそだーっ!僕に説明するのが面倒臭いだけなんでしょ!
―そんな事はない。
―じゃあ、何でおじさんは、傍観者なの?
―………。
―おじさん?
―………傍観者?
―どうしたの?
―なぜだ?
―おじさん?
―私は、なぜ傍観者なのだ?
―おじさん!
『傍観者諸君よ!この地球を破壊しようとしている傍観者諸君よ!君達は、今日から蝿だ!』
『待ってくれ!』
『ん?何か意見があるのかな?傍観者よ!』
『これはいったい何なのだ!私達は、なぜこんな場所に集められ、こんな演説を聞かなければならないのだ!』
『愚問だよ!傍観者君!それは、君達傍観者諸君が、傍観者諸君だからだ!』
『その傍観者って言う意味が分からないのだ!』
『そこから説明せねばならぬのか!傍観者よ!愚かな傍観者諸君よ!』
―おじさん!大丈夫!おじさん!おじさんってば!
―ん?ああ、大丈夫だ。
―ごめんね。
―どうしてキミが謝るのだ?
―だって、僕が変な事を聞いちゃったから、おじさんを困らしちゃったんだもん。
―それは違うぞ少年!それは、違う・・・・・・・・・違うのだ。
―おじさん?
―少年は、地球が大好きだと言った。この大きな木が、空が、雲が、星が、太陽が、月が、大好きだと言った。
―うん。言った。
―ならば、なぜ!なぜ、美しき地球を維持していく活動や研究を行う者達が、素晴らしき自然を守ろうとする活動家や研究者が、傍観者なのだ!
『その何も理解していない事こそが!まさに傍観者の烙印を押されるに値する証拠!』
―地球を地球のままにしとく事の何が悪い!
『神にでもなったつもりか!傍観者君!』
―神になろうなどと思った事などない!私は、ただ・・・・・・・・・。
―おじさん?
―この少年のような子供達の為に!未来に美しい地球を残したいだけだ!
『その考えが神の領域なのだよ!その身勝手な発想が愚かな傍観者だと言っているのだよ!その作られた未来が、本当の未来ではないと、なぜ気付かぬ!傍観者諸君よ!人間が存在して地球が存在しているのではない!地球が存在するからこそ、人間は存在出来ているに過ぎないのだ!人間風情が地球をどうこうしようなどと考えてはいけないのだ!傍観者諸君!傍観者諸君よ!我々人間が生き延びる為だけに、地球延命活動を行ってはならぬ!例え、我々人間が地球を傷付け、その寿命を短くしたのだとしてもだ!分かるか?解るか?傍観者諸君よ!それは、地球の運命!それが、地球の宿命!さあ、傍観者諸君よ!君達は、今日から蝿だ!蝿となって、ただただ、この地球を傍観していたまえ!』
―おじさん!おじさんっ!蝿のおじさんってば!
―だ、大丈夫だ。大丈夫・・・・・・・・・。
―本当?
―ああ、もう大丈夫だ。心配掛けてすまなかった。
―ううん。
―本当にすまない。少年、本当にすまない・・・・・・・・・。
―おじさん、何でそんなに謝るの?謝らないでよ、おじさん。
『待て!蝿になるとはどう言う意味だ!』
『蝿になるとは、蝿になると言う意味だ!この施設内は、既に巨大な蝿化装置になっている!』
『馬鹿な!?』
『名だたる研究者や活動家の傍観者諸君ならば!私のこのマスクの下の顔を知っているのではないか?傍観者諸君よ!』
『き、君は!?遺伝子工学の権威!?』
『傍観者諸君よ!』
『なぜだ!』
『地球の傍観者諸君よ!』
『ま、待て!そんな事をしたら、君も蝿になるのだぞ!』
『だからどうした?』
『なっ!?』
『傍観者諸君よ!今日から我々は蝿だ!蝿の傍観者だ!』
―少年。
―なに?
―明日もまた、この木の下へ来るかい?
―うん!
―明日もまた、私とお喋りをしてくれるかい?
―うん!
―そうか・・・・・・・・・。
―当たり前だよ!
―それは、楽しみだ。
―僕もだよ!蝿のおじさん!
―ありがとう。・・・・・・・・・少年よ。
―ん?
―自己再生理論に興味はあるか?
―おじさん、それってまた難しい話?
―少しばかりな。

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2008年12月10日 (水)

「第百三十話」

 ギターを持った少女には、3人のお供がいた。3人のお供はそれぞれ、漫画家、音楽家、小説家、の違う職業の男達であった。
「ジャカジャーン!」

第百三十話
「少女的冒険活劇」

「口で言うのかよ!何の為にギター貸したんだよ!ったく!返せ!」
と、音楽家がつっこみを入れると、少女からギターを取り上げた。
「にしてもあれよね。今回は、ヤバかったわよね。ホント、ヤバかった。Fコードぐらいヤバかったわね。」
そう嘆きながら、モンスターに突き刺さった6本の刀を抜き取り、少女は一気に鞘へと収めた。
「ねぇ?知ってた?このモンスターって、超レアなのよ?別名、ダイヤモンドモンスターって言うの。」
と、少女が着物に付いた砂ぼこりを叩きながら言った。
「別名も何も、私達3人はこのモンスターの本当の名前すら知りません。」
と、漫画を描きながら漫画家が。
「いやいや、私に6本も刀を使わせたんだもん。その辺、評価してあげてよ。」
と、少女が。
「で?何が超レアなんだ?ダイヤモンドって言うぐらいならダイヤモンドと同じぐらいの価値があんのか?それとも、ダイヤモンドぐらい硬度がある皮膚してんのか?」
と、音楽家が。
「しかし、皮膚がダイヤモンドの硬さであるなら、彼女の刀があんなにも簡単に通るはずもないでしょう。」
と、漫画家が。
「なら!やっぱりダイヤモンドぐらいの価値があるモンスターって事か!おいおいおい、だったら早いとこギルドに戻って売っぱらっちまおうぜ!それとも、何か闇ルートでもあんのか?」
と、音楽家が。
「はい、どっちもハズレー!ブッブッー!だいたい、ダイヤモンドぐらい価値があったり、ダイヤモンドぐらい硬度があったら、わざわざ別名にダイヤモンドなんて付ける必要なんてないでしょ?」
少女は、モンスターの巨体の上で、ニヤニヤしながら2人に向かって言った。
「はあ?」
と、音楽家が。
「なるほど。なら、いったい何がそんなに超レアなんです?」
と、漫画家が。
「このモンスターはねぇ!私の父の知り合いのハンターのダ・イヤモンドさんが発見したモンスターなの!どうどう?凄い?凄くない?ダ・イヤモンドさん凄くない?」
「超レアって・・・・・・・・・。」
と、漫画家が。
「個人的にかよ!」
と、音楽家が。
「個人的によ?」
モンスターの巨体から、ポーンっと、降りて来て少女が。
「まあ、よく考えてみれば、手配書の金額とレア度が釣り合いませんからね。」
と、漫画家が。
「だったら、最初っからそう言えよな!」
と、音楽家が。
「言ったじゃん。」
と、少女が。
「いや、お前、最初ダ・イヤモンドじゃなくてダイヤモンドって言ってたじゃねぇか!てか、イヤモンドでいいじゃねぇか!」
と、音楽家が。
「にしてもあれよね。つくづく巨体よね。」
少女は、モンスターの巨体を眺めながら、頷きながら、ニヤニヤしていた。
「聞け!」
と、音楽家が。
「あれ?そう言えば、物書きさんは?」
少女は、キョロキョロ辺りを見渡しながら、音楽家と漫画家に尋ねた。
「ん?そう言えば姿見ねぇな?」
と、音楽家が。
「戦闘が始まる前までは、確かいたはずですよ。そこら辺で物語の続きを書いてましたからね。」
と、漫画家が漫画を描いていない方の手で、モンスターの巨体を指差した。
「お、おい!?まさか・・・・・・・・・。」
と、音楽家が。
「うそっ!?ヤバくない?それってヤバくない?」
と、少女が。
「ヤバすぎんだろ!」
と、音楽家が。
「まあ、高い確率でモンスターの下にいるでしょうね。」
と、漫画家が。
「いや、冷静に言ってる場合かよ!」
と、音楽家が。
「そうよ!暢気に漫画なんて書かないでよ!後でちゃんと見せてよね!」
と、少女が。
「お前もだ!」
と、音楽家が少女につっこみを入れていると。
「ぶはぁっ!死ぬかと思った!いや、もしかしたら死んでるかもしんない!」
と、モンスターの巨体の下から、小説家が現れた。
「でででで、出たー!幽霊ー!」
と、少女が驚くと。
「どどどど、どこー!幽霊ー!」
と、小説家も驚いた。
「そそそそ、そこー!幽霊ー!」
と、少女が小説家を指差しながら驚き答えると。
「ぼぼぼぼ、僕がー!幽霊ー!」
と、小説家が自分を指差しながら、驚き答えた。
「その面倒臭い掛け合いもういいよ!」
と、音楽家がつっこみを入れると。
「ふっ。」
と、漫画家が漫画を描きながら笑った。
「しっかし、よく無事だったわね。」
と、少女が。
「怪我もないみたいだし、まあ一安心だな。」
と、音楽家が。
「自分でもビックリなぐらいだよ。何だったら下敷きになる前より元気なぐらいだよ。」
と、小説家が準備体操的に体を動かしてアピールした。
「どんな構造だ!」
と、音楽家が小説家につっこみを入れていると。
「もう!戦闘中は、気を付けてって言ってるでしょ!」
と、少女がその横から小説家に向かって言った。
「ごめんごめん。って、ゴラー!!」
と、小説家は激怒した。
「どうした?」
と、音楽家が。
「な、なに!?」
と、少女が。
「ん?」
と、漫画家が漫画を描く手を止め、3人の方へ目をやった。
「僕が適当に短編小説を書いてたら君が、最後の一撃ー!!うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!とか言って、適当に短編小説を書いてる適当な僕の方へモンスターを蹴り飛ばしたんだろうが!」
と、小説家が激怒を越えた激怒で激怒した。
「適当に書くなって!って原因、お前じゃねぇかよ!」
と、音楽家が少女に向かって言った。
「ふぅ。」
と、漫画家が目をつぶり首を横に振っていると。
「・・・・・・・・・嘘っぱちのとばっちりよ!」
と、少女が。
「嘘っぱちもとばっちりもちりっちりっもないだろうが!こんにゃろ!」
と、小説家が。
「こんにゃろ!ですって~!そんな侮辱的な事言われたの、約248回目だわ!この嘘っぱち物書き!」
と、少女が。
「約の意味は?」
と、音楽家が。
「何だとー!だいたい小説家ってのは、フィクションばっか書いてっから、嘘っぱちなんだよ!適当なんだよ!」
と、小説家が。
「おいおいおい、訳分かんないベクトルへ話が向かってっぞ?てか、適当はお前だけだ!」
と、音楽家が。
「なに?私とやろうっての?」
と、少女が刀を手にした。
「上等だよ!」
と、小説家が拳を構えた。
「いや、何でだよ!せめてペンを握れよ!てか、待て待て待て!そこの面倒臭い2人組!」
と、音楽家が2人をなだめた。
「止めても無駄よ!そんな事より、ギター貸してくれる?」
と、少女が。
「何でだよ!何の為の刀だ!」
と、音楽家が。
「そうだ!止めないでくれ!僕にもギターを!」
と、小説家が。
「だから、何でだよ!これ、何の戦いなんだよ!そもそも、俺をこの茶番劇に巻き込むなよ!」
と、音楽家が痛快につっこみを入れると。
「やれやれ。」
と、漫画家が再び漫画を描きながら、笑みを浮かべて呟いた。
「明日のお天道様は、拝めないと思ってよね!」
と、少女が右手に3本、左手に2本の刀を持ち、構えた。
「そもそも、明日の天気予報は、雨だ!!」
と、小説家が拳を構えた。
「待てゴラー!!!」
と、音楽家が大声を上げた。
「!?」
と、少女が。
「!?」
と、小説家が。
「そろそろ終わりですか?」
と、漫画家が漫画を描きながら呟いた。
「いいかお前ら?下らねぇ面倒臭い事、いつまでちんたらやってんだ?おい!!だいたい、お前がゴメンって一言謝れば済む話だろうが!!こんなとこで無駄な時間使ってねぇで、さっさとギルドに戻って次の仕事に行くぞ!!それがイヤならずーっとやってろ!!」
と、音楽家が2人に喝を入れて歩き出した。
「・・・・・・・・・。」
と、少女が。
「・・・・・・・・・。」
と、小説家が。
「一件落着。」
と、漫画家が漫画を描きながら呟いた。
「・・・・・・・・・ゴメン。」
と、少女が手を差し出した。
「・・・・・・・・・今度から気を付けてくれよな。」
と、小説家が少女の差し出した手を握ろうとした瞬間、少女はその手を上へ。
「へっへ~ん!ダーマされたー!」
と、少女が笑って走り出すと。
「こんにゃろ!」
と、小説家が笑って走り出したのを見て。
「さてと。」
と、漫画家が漫画を描く手を止め、立ち上がり笑って歩き出した。
「ベロベロバー!だっ!」
と、家系の都合上、やむ無くハンター稼業を継ぐ事となった少女。少女が本当はなりたかった職業のお供を連れたこの冒険活劇は、まだまだ始まったばかり。
「ねぇ?ギター貸してよ!そんでそんで、後で短編小説と漫画読ませてねー!」

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2008年12月17日 (水)

「第百三十一話」

時々、愛を
愛について僕は
何気無く真剣に
それとなく考え

愛しています。
と、僕は言っています。

そんな戯言
を、僕は言っています。

誰に?
なんて知りません。
何で?
とかは解りません。

きっと心の
心の何処かが
淋しくって
淋しくって
言っているのだと
思います。

愛しています。
と、僕は言っています。

愛したいのだ。
と、僕は思っています。

誰を?
ではなく、誰かを
何で?
ではなく、何でも

たぶん理由
は、後付け
面倒臭くって
面倒臭くって
最後に回すのだと
思います。

愛されたい。
と、僕は考えています。

無性に無償
を、求めています。

おそらく愛
愛とかって
そんなもんだと
そんな感じだと
曖昧で不便だと
知ったかぶるのです。

そこに
何が芽生えて
そして
何が咲き誇り
それで
何が枯れ果て

愛は何処へ行った?

そして
いつも僕は
最終的に愛
を、見失うのです。

時々、愛を
愛について僕は
何気無く本気で
それとな
あっ
それはそう
と、ジェリービーンズ
を、食べながら僕
は、愛について
時々、夜空
を、眺めながら
現実世界
も、見ています。

第百三十一話
「きっと今夜も誰かが死ぬ」

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2008年12月24日 (水)

「第百三十二話」

「メリークリスマース!!」
死神?
「お嬢さん?今、俺の事を見て、死神だと思ったんじゃーないかい?」
違うの?
「違う違う!俺様は、死神じゃーない!」
じゃあ、誰?
「俺様は、サンタさんだ!サンタクロースさんだ!」
嘘っ!
「嘘じゃーない!」
なに!?なんでさっきから?どう言う事なの?
「どう言う事って、どう言う事なんだい?」
心が読めるの!?
「ん?ああ、まあな。サンタクロースだからな。それぐらいは朝飯前だ。だから、お嬢さん。お嬢さんは、ベッドで横になってるだけでいい。俺様が心を読んでやるからな。」
殺すの?
「おっとっと、随分と単刀直入に質問をぶつけて来るじゃーないかい?」
殺すのね!
「なぜ?」
なぜって、あなたが死神だからよ!
「お嬢さん!何度言ったら分かるんだい?俺様は、死神じゃーなくって、サンタクロースだ!大きな鎌だって持ってないし、ほら!見るからにサンタクロースって、格好じゃーないかい?」
格好はね。
「おいおいおい。何がそんなに不満なんだ?最後まで残しといた大好きなおかずを食べられた訳じゃーないんだ。もっとこう、スマーイル!スマーイル!」
あたしには、どっからどう見ても死神がふざけてサンタクロースの衣装を着て、命を奪いに来たとしか思えないわ。
「なぜ?」
なぜって、黒いからよ!黒いからに決まってるでしょ!
「ん?クールでいいじゃーないか!」
あたしのイメージでは、サンタクロースは赤と白なの!トナカイのソリに乗ってるの!でっぷりお腹の立派な白髭が生えた白髪のおじいさんなのよ!
「うんまあ、分からないでもないってもんだ。お嬢さんが言ってるサンタクロースは、稀にいるからな。」
稀?稀じゃなくって、それがサンタクロースの王道でしょ!
「お嬢さん。お嬢さんにだけ、特別にサンタクロースの秘密を教えて上げようじゃーないか!」
秘密?
「そう。」
何よ、秘密って!
「サンタクロースは、短命なんだ。」
はあ?
「よーく考えてみりゃ分かるんじゃーないかい?こーんな重労働あるかい?年に1日と言えども、その1日で世界中の人々にクリスマスプレゼントを配るんだ。そりゃもう、サンタクロースサイドからしてみりゃ、命を削る作業さ。じじぃになるまでサンタクロースを続けられるなんて、サンタクロース界から言わせてもらえば、奇跡だ!」
じゃあ、あたしが・・・いえ、あたし達がイメージしてるサンタクロースは、何なの?
「サンタクロースだろ?」
はあ?言ってる意味が分からないわ?だって、おじいさんになる前に、あなた達は、死ぬんでしょ?
「おいおいおい。だから、稀にいるって言ったじゃーないか。まあ、稀にと言っても、今までにそんなサンタクロースは、1人しかいなかったけどな。」
1人!?そんなの本当に奇跡じゃない!
「だーから!奇跡だって言っただろ?そのじじぃは、サンタクロース達の中でも、こう呼ばれてる。伝説のサンタクロースってな。」
伝説のサンタクロース?
「まあ何だ、こっちの世界の事は、詳しく分からないけど、きっとサンタクロースがじじぃである方が、何かと都合が良かったんじゃーないかい?水着の女や鼻たれ小僧や犬がサンタクロースじゃーあれだろ?なっ、あれだよ。」
まあ、確かにあれだけど、ねぇ?
「ん?」
その伝説のサンタクロースって、もう死んじゃったの?
「そりゃお嬢さん!死んじゃったから伝説って言うんじゃーないか!」
そう・・・・・・・・・。
「んん??ん?何かと残念そうだな?チョコレートの詰め合わせで、最後に食べようと楽しみに取っといたヤツに、お酒がドリュッと入ってた感じかい?」
・・・・・・・・・まあ、そんな感じよ。
「なるほどなるほど。そりゃー大変残念だな。」
あたしね。
「ん?」
小さい頃、そのサンタさんにプレゼントを貰った事があるの。
「おお!そりゃお嬢さん!ラッキーメリークリスマスだな!」
ねぇ?
「ん?」
どうして?どうして、あたしには、そのサンタさんの記憶があるの?
「記憶があるって、そりゃお嬢さん、記憶があるからじゃーないかい?」
そう。でも、今までずーっと忘れてた。死神と話してて思い出したのよ!
「サンタクロースさんだ!」
サンタクロースには、寝ている人間を起こさない為、金縛りと睡眠術の力があって、その力を使ってプレゼントを寝ている間に靴下に入れるんだって、今日はサンタクロースの世界で1番忙しい日だって、サンタクロース達が宇宙中にプレゼントを配り届けてるって、あの日あのサンタさんが言ってたわ!
「て事はあれだ。」
あたし、あの日、プレゼントなんていらない!サンタクロースに会いたい!そう願った。
「それだ!」
そしたら、本当にサンタクロースに会えた!
「良かったじゃーないか!うんうん。」
でも、誰も信じてくれなかった。あたし、サンタさんに会って、話までしたのに、一緒に笑って話までしたのに、誰も・・・・・・・・・。
「そりゃお嬢さん。あれだな?ゆで卵か生卵かは、割ってみなけりゃ分からないってヤツだな!」
ちょっと違うわ!
「ズコッ!」
あの日からずっと、ずっとあたしは・・・・・・・・・。
「サンタクロースはいないか?」
そう。サンタクロースを信じなくなった。
「そして、いつの間にか忘れた。」
・・・・・・・・・・・・・・・。
「まあ、あれだ。あれあれ、サンタクロースなんて、いたっていなくたって死にゃーしないんだ。それはそれでお嬢さん。いいんじゃーないかい?」
でも、やっぱりサンタクロースは、いたのね!
「そりゃーいるさ!だいたい、目の前に疑いようのないぐらい存在してるじゃーないか!」
死神だけどね。
「おいおいおい。いい加減にサンタクロースさんだって怒るぞ?俺様は、死神みたいなサンタクロースさんなんだーよ!」
ふ~ん。
「何なんだ?そのリアクションの薄さは?ここもっとこう、あれじゃーないかい?」
はいはい。
「はいはいってお嬢さん!そりゃないんじゃーないかい?」
ありがとう!
「ん?」
約束、守ってくれたんでしょ?ブラックサンタさんは?
「・・・・・・・・・。」
あの時あのサンタさんも同じ事を言ってた。サンタクロースがいてもいなくても、あたしの人生になんの支障もないって、でも嫌だった。サンタクロースを信じなくなっちゃう自分がすっごく嫌だったの。
「んで、泣きまくるお嬢さんに、じじぃは約束した。10年後のクリスマスにまた会おう。」
そう。読んだんでしょ?
「お嬢さんがその時、じじぃに書いた約束の手紙をか?どっかのお人好しな死神サンタクロースさんが見付けて読んだ?ないない。そりゃないってもんじゃーないかい?お嬢さん。」
今日なんでしょ?
「ん?」
伝説のサンタクロースが死んじゃったのって、だからあなたは、黒い服を着てるんでしょ?
「さあな?俺様は、この服装が気に入ってるだけさ。」
・・・・・・・・・・・・・・・。
「おいおいおい。何なんだ?サンタクロースが目の前にいるってのに、そんな悲しい顔はないんじゃーないかい?」
・・・・・・・・・・・・・・・。
「今日は、楽しいクリスマスじゃーないか!スマーイル!スマーイル!」
・・・・・・・・・・・・・・・。
「メリークリスマース!!」
・・・・・・メリークリスマス。
「メリークリスマース!!」
・・・・・・メリークリスマース!!
「そうそうそう!メリークリスマース!!」
メリークリスマース!!!
「その笑顔!その笑顔!その笑顔!クリスマスってのは、そうじゃーないと!メリークリスマース!!」
メリークリスマース!!
「いいじゃーないか!やれば出来るじゃーないか!」
当たり前でしょ!
「おおっと!そうくるかい!ははっ!じゃっ、俺様はそろそろ帰らしてもらおうじゃーないか!」
ありがとう。
「こちらこそ。ってヤツだな!じゃっ!」
死神さん?
「おいおいおい!最後の最後にまたそれかい?」
また、会えるよね?
「当たり前じゃーないか!俺様は、伝説の血を受け継ぐサンタクロースさんだからな!」
・・・・・・・・・メリークリスマス・・・サンタさん。
「・・・・・・・・・メリークリスマス・・・お嬢さん。」

第百三十二話
「サンタクロースは
 忘れた頃にやって来る」

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2008年12月31日 (水)

「第百三十三話」

 知ってるかい?翔ぶって感覚を?
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
こうして大空を、こうして大地に足を着けて、こうして自由に羽ばたいている鳥達を見ていると、なぜだろう?不思議と僕はいつも、こうして翔ぶって感覚がどんなものなのかが気になって気になって、しょうがない。なぜだろう?
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
知ってるかい?翔ぶって感覚を?
「チュンチュン!」
スズメだ。
「チュンチュン!」
僕の右肩にとまったスズメだ。
「チュン!」
それは、そんなある日の、これは、いつも通りの、こんな日常の中で、僕がスズメと大地で出会って気付いた事だった。
「やあ!」
「やあ!」
どうやら僕は、鳥と話が出来るみたいだ。いい機会だから、聞いてみようと思った。翔ぶって感覚を・・・・・・・・・。
「翔ぶって、楽しいかい?」
「楽しくなんてないさ。」
意外な答えだった。
「どうして?」
「キミは、おかしな質問をするね。翔ぶのが当たり前の世界で、翔ぶ事が楽しいと思って翔んでるヤツなんていないさ。キミは、呼吸をしている事が楽しいと思った事があるかい?」
「ない。」
「それと同じ事さ。」
それは、何だか呆気ない結論だった。言われてみれば納得な事なんだろうけど、僕の中で何か引っ掛かる物があった。でもそれは、きっと僕自身の勝手な価値観であって、鳥にはあるはずのない価値観なんだと思った。でも・・・・・・・・・。
「ん?何か納得しきってないみたいだね。」
「えっ?」
スズメに心を見透かされていた僕は、相当慌てていたに違いない。その証拠に、スズメが僕の顔をジロジロ見て笑っていた。そして、こんな奇妙な事を言い出した。
「だったら、キミも翔んでみたらいいじゃないか。」
「僕が?」
「そう、キミが。」
「気球にでも乗れって事かい?」
「違うさ。キミ自身の力で翔ぶって事さ。そうすれば、さっき言った言葉の意味が納得出来るんじゃないのかい?」
確かに空想論だけで言うなら、スズメの言う通りだと思う。けど・・・・・・・・・。
「僕は人間だよ?人間の僕が、どうやって大空を翔べって言うんだい?」
僕は、何一つ間違いのない質問をスズメに投げ掛けた。
「人間が翔べないって、誰が決めたのさ。」
そしたら、予想もしなかった答えが返された。
「誰って・・・・・・・・・。」
「神様かい?」
「僕をからかってるのかい?」
「からかっていたら、こんな事は言わないさ。」
「分かってるだろ?人間は、翔べない生き物なんだ。それはもう、考える余地のない考えなんだ。」
「だから、それは人間が勝手にそう思い込んでいるだけじゃないか。最初から自分達は翔ぶ事が出来ない。最初?最初っていったい何なんだい?」
「えっ?」
最初?最初って、人間が地球上に誕生した瞬間って事じゃないの?確かに、スズメの言う通り、僕は生まれてから一度だって自力で翔ぼうだなんて実行した事も考えた事すらない。でも、でもだよ?それは、人間が本能で理解してる事なんだし、これだけ人間の歴史が続いてる中で、自力で翔んだ人間の話を聞いた事がないって事は、やっぱりそれは、人間が翔べないからなんだよ。人体の構造的に無理だからなんだよ。
「ごちゃごちゃ何か考えてるみたいだけどさ。」
「えっ?」
「とりあえず翔んでみればいいんじゃないのかい?それで翔べなかったら、翔べないって事で、そこで初めてやっぱり人間は翔べない生き物なんだなって、思えばいいじゃないか。翔ぼうとしないのに、やっぱり翔べないと思うのは、やっぱりおかしな話なんじゃないのかい?」
「・・・・・・・・・。」
「ほら!どうしたのさ!」
どうしたって言われても・・・・・・・・・。
「翼もないし・・・・・・・・・。」
「またそれかい?」
「また?」
「そうさ。何かがないからとか、人間だからとか、それって今、そんなに重要な事なのかい?」
「えっ?」
「キミは、翔ぶって事を拒否している。翔べてしまったら恐いと思っている。自分の概念と価値観が壊される事をね。」
「僕が?恐怖してるって?」
「違うのかい?じゃあ、どうして翔ぼうとしないんだい?」
「それは・・・・・・・・・。」
僕が恐怖?どうして僕が恐怖する必要があるんだ?翔ぶって感覚がどんなもんなのかを知りたい僕が、恐怖?でも、どうして僕は、翔ぼうとしないんだ?やっぱり人間だから?翼がないから?分からない。分からないよ。
「まあでも、キミが翔ぼうとしないなら、無理に翔ぼうとしなくてもいいんだけどさ。」
何か見放された。僕は、スズメに呆れ果てられて、見放されている。
「じゃあ、そろそろ当たり前のように翔んで帰るとするよ。」
そう言ってスズメは、雲一つない青空の中へ、僕を見放して、僕を見捨てて、当たり前のように翔び去って行った。
「・・・・・・・・・。」
その後ろ姿を見ながら、何だかこのままじゃダメな気がした。このまま今日一日が終わってしまったら、何か大きな後悔を残したまま、残りの人生を終わらしてしまうんじゃないのか?今、翔ぶ事を試みないで、どうするんだ!身体中の全ての細胞が、僕にそう訴え掛けてきているような気がした。
「よし!」
僕は、両腕を目一杯伸ばして、大空を見上げた。そして、大きく深呼吸を一回した。
「3・・・・・・2・・・・・・1・・・・・・えいっ!」

第百三十三話
「やっぱり無理だって!」

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