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2008年12月 3日 (水)

「第百二十九話」

―おじさん?
『傍観者諸君!』
―おじさん?
『この世界の傍観者諸君よ!』
―おじさんってば!
―ん?
―もう!また考え事?
―すまないすまない。
―ねぇ?
―何だい?
―おじさんは、誰?
『傍観者諸君よ!』
―私かい?
『この地球の傍観者諸君よ!』
―私は、傍観者さ。
―傍観者?
―そう、私は単なる傍観者。

第百二十九話
「蝿の傍観者」

―傍観者って?
―少年、キミはこの星が好きかい?この青い地球が好きかい?
―うん!大好きだよ!
―そうか。
―僕ね。この丘の上にあるこの大きな木が大好きなんだ!あとね。ここから見える空や雲や太陽や月や星も大好き!
―……………。
『傍観者諸君!何が見える!君達の瞳には、いったい何が見えているのだ!傍観者諸君よ!』
―空。
『空か!』
―雲。
『雲か!』
―星。
『星か!』
―大地。
『大地か!』
―海。
『海か!』
―太陽と月。
『太陽か!或いは、月か!』
―おじさん?おじさんってば!大丈夫?
―ん?
―何かブツブツ言ってたよ?
―大丈夫だ。心配してくれてありがとう、少年。大した事じゃない。気にしないでくれ。
―ねぇ?
―そうは言ったものの気になるか?
―ううん、大丈夫。でも、傍観者って方は気になるよ?
―ああ、そうだったな。傍観者か。そうだな。簡単に言ってしまえば、何もしないで見ているだけの存在だ。
―何もしないって?働かないって事?
―違う。その逆だ。この場合の何もしないは、この地球の為に、何かをすると言う事だ。
―えっ?何か、おじさんの言ってる事、難し過ぎるよ!
―ハハハ。
―ああーっ!子供だからって馬鹿にして笑ったー!
―違う違う。私も傍観者の意味がよく分からないのだよ。
―うそだーっ!僕に説明するのが面倒臭いだけなんでしょ!
―そんな事はない。
―じゃあ、何でおじさんは、傍観者なの?
―………。
―おじさん?
―………傍観者?
―どうしたの?
―なぜだ?
―おじさん?
―私は、なぜ傍観者なのだ?
―おじさん!
『傍観者諸君よ!この地球を破壊しようとしている傍観者諸君よ!君達は、今日から蝿だ!』
『待ってくれ!』
『ん?何か意見があるのかな?傍観者よ!』
『これはいったい何なのだ!私達は、なぜこんな場所に集められ、こんな演説を聞かなければならないのだ!』
『愚問だよ!傍観者君!それは、君達傍観者諸君が、傍観者諸君だからだ!』
『その傍観者って言う意味が分からないのだ!』
『そこから説明せねばならぬのか!傍観者よ!愚かな傍観者諸君よ!』
―おじさん!大丈夫!おじさん!おじさんってば!
―ん?ああ、大丈夫だ。
―ごめんね。
―どうしてキミが謝るのだ?
―だって、僕が変な事を聞いちゃったから、おじさんを困らしちゃったんだもん。
―それは違うぞ少年!それは、違う・・・・・・・・・違うのだ。
―おじさん?
―少年は、地球が大好きだと言った。この大きな木が、空が、雲が、星が、太陽が、月が、大好きだと言った。
―うん。言った。
―ならば、なぜ!なぜ、美しき地球を維持していく活動や研究を行う者達が、素晴らしき自然を守ろうとする活動家や研究者が、傍観者なのだ!
『その何も理解していない事こそが!まさに傍観者の烙印を押されるに値する証拠!』
―地球を地球のままにしとく事の何が悪い!
『神にでもなったつもりか!傍観者君!』
―神になろうなどと思った事などない!私は、ただ・・・・・・・・・。
―おじさん?
―この少年のような子供達の為に!未来に美しい地球を残したいだけだ!
『その考えが神の領域なのだよ!その身勝手な発想が愚かな傍観者だと言っているのだよ!その作られた未来が、本当の未来ではないと、なぜ気付かぬ!傍観者諸君よ!人間が存在して地球が存在しているのではない!地球が存在するからこそ、人間は存在出来ているに過ぎないのだ!人間風情が地球をどうこうしようなどと考えてはいけないのだ!傍観者諸君!傍観者諸君よ!我々人間が生き延びる為だけに、地球延命活動を行ってはならぬ!例え、我々人間が地球を傷付け、その寿命を短くしたのだとしてもだ!分かるか?解るか?傍観者諸君よ!それは、地球の運命!それが、地球の宿命!さあ、傍観者諸君よ!君達は、今日から蝿だ!蝿となって、ただただ、この地球を傍観していたまえ!』
―おじさん!おじさんっ!蝿のおじさんってば!
―だ、大丈夫だ。大丈夫・・・・・・・・・。
―本当?
―ああ、もう大丈夫だ。心配掛けてすまなかった。
―ううん。
―本当にすまない。少年、本当にすまない・・・・・・・・・。
―おじさん、何でそんなに謝るの?謝らないでよ、おじさん。
『待て!蝿になるとはどう言う意味だ!』
『蝿になるとは、蝿になると言う意味だ!この施設内は、既に巨大な蝿化装置になっている!』
『馬鹿な!?』
『名だたる研究者や活動家の傍観者諸君ならば!私のこのマスクの下の顔を知っているのではないか?傍観者諸君よ!』
『き、君は!?遺伝子工学の権威!?』
『傍観者諸君よ!』
『なぜだ!』
『地球の傍観者諸君よ!』
『ま、待て!そんな事をしたら、君も蝿になるのだぞ!』
『だからどうした?』
『なっ!?』
『傍観者諸君よ!今日から我々は蝿だ!蝿の傍観者だ!』
―少年。
―なに?
―明日もまた、この木の下へ来るかい?
―うん!
―明日もまた、私とお喋りをしてくれるかい?
―うん!
―そうか・・・・・・・・・。
―当たり前だよ!
―それは、楽しみだ。
―僕もだよ!蝿のおじさん!
―ありがとう。・・・・・・・・・少年よ。
―ん?
―自己再生理論に興味はあるか?
―おじさん、それってまた難しい話?
―少しばかりな。

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