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2009年1月

2009年1月 7日 (水)

「第百三十四話」

「にんじんきらーい!ピーマンきらーい!」
「にんじんが嫌いだとかー!」
「ピーマンが嫌いだとかー!」
「言っているのはー!」
「誰ですかー!」
「野菜を好き嫌いするのはー!」
「誰ですかぁぁぁぁぁぁぁ!」
「何で二回目、高音でビブラート?てか、アンタ達こそ、誰だし!」
「我々はー!せーの!」
「ほう「れん草兄弟だ!!」」
「いや、せーの!の意味全くないし!むしろ、せーの!って言った方が出遅れちゃってるし!」
「俺が兄ほうれん草でー!」
「私が弟ほうれん草なんですー!」
「・・・・・・はあ・・・ども。」
「これはこれは、御丁寧に。」
「いやいや、もう頭を上げて下さい。」
「下げてないし!てか、何なの?人の家に勝手に上がり込んで来て、何の用だし!」
「お嬢ちゃん!」
「はい。」
「お嬢さん!」
「だから、はい!」
「話は横道に逸れますがー!」
「いきなり?」
「夕飯時だと言うのに、お母様はいないのですかー!」
「ああ、お母さんだったらいないよ。」
「隕石が頭に落ちて来てー!」
「死んだのですかー!」
「はあ?」
「もしくは、隕石が頭に落ちて来ないでー!」
「死んだのですかー!」
「何で隕石主体?死因のほぼは、後者だし!てか、生きてるし!勝手に殺さないでくれる?ママは今、パパの実家から送られて来た野菜を近所にお裾分けに行ってるとこだし。まあ、話し込んじゃってしばらくは帰って来ないと思うけど、何?誘拐?」
「はっぱっぱっぱっぱっ!!そうそう我々は、お嬢ちゃんの事をー!」
「誘拐しに来たのですー!」
「って、おいおい!何で誘拐なんだよ!お前はジャガイモかっ!」
「いやいや、むしろ大根です!」
「それを言うなら、ナスだろ!」
「かぼちゃ~!!」
「湯がいちゃうぞ!」
「どうも!「ありがとうございましたー!!」」
「もしもし、警察ですか?」
「警察にだけはー!」
「電話しないで下さいー!」
「弾劾裁判だけはー!」
「起こさないで下さいー!」
「起こせないし!」
「鳥葬だけはー!」
「勘弁して下さいー!」
「そんな権限ないし!国的に無理だし!」
「それは安心!安心したらー!」
「何だか小腹が空いて来ましたー!」
「冷蔵庫の残り物で構わないでのでー!」
「お寿司でも注文して下さいー!」
「ガッツリ出前だし!それさぁ、兄の文に対して弟合ってるの?てか、何なのって!アタシに何か用があったんじゃないの?」
「そうそう、お嬢ちゃん!お嬢ちゃんは、さっきにんじんとピーマンが嫌いだとかー!」
「言っていましたねー!」
「言ったし。」
「そんな事より我々はー!」
「ほうれん草兄弟ですー!」
「また自己紹介から始めるつもりなの?また無駄な時間が始まるの?」
「無駄な時間とかー!」
「言わないで下さいー!」
「人生、時には無駄な時間もー!」
「必要なんですー!」
「人生、時には嘘を付く事もー!」
「必要なんですー!」
「人生、時には」
「ちょっと!いつまで続けるつもりなの?その人生論だし!」
「必要なんですー!」
「何が?」
「我々が何の為にお嬢ちゃんの前に現れー!」
「そして、どこへ帰って行くのかを教えるんですー!」
「いや、後半の部分は省いてくれて結構です!」
「なぜ、にんじんとピーマンがー!」
「嫌いなんですかー!」
「普段、バラバラに行動してる時は、会話が成り立たないんじゃないかって思わざる得ないし。えっ?何?にんじんとピーマンが嫌いな理由?だって美味しくないし!それに、にんじんとピーマンを食べなくても特に死ぬ事もないし!」
「我々、兄弟もー!」
「その辺は、同意見ですー!」
「それっていいの?」
「でも、隕石が頭に落ちて来たらー!」
「死んでしまうんですー!」
「だから何で隕石主体だし!ほうれん草と隕石って何か関係がある訳?」
「るるるるーららー!」
「らららーるるるー!」
「はぐらかされてるし!?無意味な程、完全にはぐらかされてるし!」
「でも、お嬢ちゃん!例えばこの地球上にー!食べ物が、にんじんとピーマンだけになってしまったらー!」
「一体全体、どうするんですかー!」
「そしたら食べるし。」
「ナイスファイッ!」
「ナイスファイィィィィィィィッ!」
「たから、何で高音でビブラート?てか、ここまで来てもアナタ達の目的が分かんないし!」
「簡単に言えばー!」
「アレですー!」
「分かりやすく言えばー!」
「アレですー!」
「我々、兄弟が伝えたい事はー!」
「アレだけなんですー!」
「肝心な部分がアレ!?何?アタシに、にんじんとピーマンを好き嫌いせず食べろって事?片寄った食生活じゃダメだって事?美味しい不味いの問題以前に、野菜からもちゃんと栄養を摂取しろって事?でないと健康を維持出来ないって事?」
「ちょっと違うけどー!」
「大体ソレなんですー!」
「じゃあ、100点満点の回答を言えだし!」
「睡眠もー!」
「大事なんですー!」
「それ言っちゃったらアナタ達の存在は、何?って事になっちゃうし!」
「我々はー!せーの!」
「ほう「れん草兄弟だ!!」」
「俺が兄ほうれん草でー!」
「私が弟ほうれん草なんですー!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「怒った顔もー!」
「素敵なんですー!」
「野菜を食べてる顔はー!」
「もっと素敵なんですー!」
「でも一番素敵な顔はー!」
「お金を貰った時なんですー!」
「もう、誉めてるとか何でもないし!むしろ悪口だし!」
「申し訳ないと思いつつー!」
「謝らないんですー!」
「何でだっ!」
「移り行く季節の中でー!」
「君の笑顔だけは何一つ変わらないんですー!」
「何でここで哀愁持って来た?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「まさかの沈黙だし!?」
「言葉だけがー!」
「全てじゃないんですーぅぅぅぅぅぅぅ!」
「裏声使って、小学生に何言ってんの?」
「とにかく野菜を好き嫌いせずにー!」
「食べて欲しいんですー!」
「とにかく野菜を好き嫌いせずにー!」
「食べて欲しいんですー!」
「とにかく野菜を好き嫌いせずにー!」
「食べて欲しいんですー!」
「ああーっ!もう分かったし!これからは、好き嫌いせずに食べるようにするし!目障りな変な踊りするの止めてだし!」
「そして、時々、我々の事を思い出してはー!」
「枕を濡らして欲しいんですー!」
「何一つ!何一つ濡らす理由が見当たらねぇや!」
「それじゃあ、そろそろ我々はー!」
「帰国しますー!」
「外国産!?外国産だったの!?」
「グッバイ!」
「グッバイィィィィィィィ!」
「・・・・・・・・・行っちゃったし。ああ、何か無駄に疲れちゃったし、面倒臭い感たっぷりだったし・・・・・・・・・でも、でもでも、でもでもでも!あの都市伝説はやっぱり本当だったし!野菜を嫌うと現れるって言う、ほうれん草兄弟の話!・・・・・・・・・よーし!さっそく明日、学校でみんなに話さなきゃだし!」

第百三十四話
「妹もいるんです」

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2009年1月14日 (水)

「第百三十五話」

 それは、私が髪の毛を洗い終えて、狭いバスルームの狭い浴槽を見た時だったわ。
「やあ、お嬢さん!」
親指を立てて、ウインクが微妙に出来てないおじさんが、気持ち良さそうに湯舟に浸かっていた。
「・・・・・・・・・。」
えっ?はっ?えっ?なに?なになに??どう言う事?なんなの!?誰?なんで?どうして?どうしておじさんが?どうして知らないおじさんが?どうして知らないおじさんが湯舟に?どうして知らないおじさんが湯船に浸かってるの?
「なんだなんだ?そんなに無言で凝視して、そうかいそうかい!そんなに俺がダンディーかい!」
いや、全然。全くその単語からは、掛け離れてると思いますよ?てか、なに?いまいち現状が飲み込めないわ!えっ?なに?まさか?まさかこれって?幽霊?心霊体験?
「・・・・・・・・・。」
「まあ、自分ではそれほどダンディーだとは思ってないんだけどな!」
私も思ってないわよ。でも待って、幽霊にしてはなんか違う。なんかこう、上手く言い表せないけど、生命力を感じるって言うの?確かに、このおじさんはなんかの生命体で、ここに存在してるって感じがプンプンする。えっ?なに?なんなの?妖怪な訳がないし、お風呂の神様って感じでもない。なに?なになに??考えるのよ私!早く答えを導き出して、この非現実を現実に引き戻すのよ私!
「ドワーフ!」
「なんだ?ドワーフって?若者言葉で、ダンディーの上を行くダンディーの事か?そうかそうか!そんなに俺は、ドワーフかっ!参ったなぁ!くわっはっはっはっはっ!」
違う!ドワーフじゃない!考えてみればドワーフは、妖精だから小さいわ!それに、ドワーフは人間嫌いなはず!のこのこ地上に出て来て、森林浴気分が味わえる入浴剤が入ってる湯舟に、気持ち良さそうに浸かったりする訳がないわ!ますますよ!ますますなんなの?それに、面倒臭い程ダンディーにこだわる理由も変な笑い方も、まるで意味不明がいっぱいだわ!バスルームに意味不明が溢れかえってるわ!
「ところでお嬢さん?」
「はい?」
「すっぽんぽんだぞ?」
「えっ?」
なるほどね。そうだったんだ。知らなかった。この状況下に置かれて初めて分かったわ!人間、真剣にパニックになると、キャー!なんて悲鳴を上げないんだわ!むしろ、どうだっていい!今は、すっぽんぽんの自分の体を存在理由不明なおじさんにジロジロ見られたって、どうだっていい!そこを頭で考えるよりもなによりも、早くこのおじさんを理解しないと!非現実に溺れてしまうわ!後でいい!悲鳴を上げたり、すっぽんぽんをタオルで隠すのは、その後でいい!
「気にしないで!」
「気にしないでって言われてもなぁ?こっちが気になるんだよ。まあ、お嬢さんが露出狂なら、それはそれでしょうがないんだけどな!くわっはっはっはっはっ!」
屈辱的なレッテルを貼られようが!私は、挫けない!今は、むしろそれで好都合よ!お風呂なんだから!とか、お互い様でしょ!とかって、ツッコミを入れてる場合でもないの!レッテルもツッコミも後でどうにでもなる!肝心なのは、今よ!今現在よ!冷静さを装ってるけど、フルスロットルでパニックに陥ってる脳ミソをどうにかしないと!どう?聞く?聞いちゃう?ここはもう、ストレートに聞いてみちゃう?
「・・・・・・・・・おじさん?」
「なんだい?」
だから、ウインク微妙だから!
「おじさんは、誰?」
「おじさんは、おじさんだよ。ただ、他のおじさん達と違って、ちょっとダンディーなおじさんだよ。くわっはっはっはっはっ!」
「いや、そう言うダンディー主体な話じゃなくって、おじさんは生命体として、なんなの?」
「なんか話が難しくなってきたな。くわっはっはっはっはっ!」
どこがよ!なんで生命体って単語ぐらいで話が難しくなっちゃうのよ!よく、おじさんになるまで生きて来られたわね!
「まさか・・・人間?」
「まあ、アウストラロピテクスの進化の成れの果てと言ってしまえば、そうだろうな。くわっはっはっはっはっ!」
よっぽどよ!よっぽど、そっちの方が話を難しくしてるじゃない!いや、むしろややこしくしてるだけじゃない!えっ?ちょっと待って?人間なの?このおじさんって人間な訳?どう言う事?ある意味それって、覆されたわよ?私の頭の中で革命が起こっちゃってるわよ?世界がひっくり返っちゃうわよ?
「本当に?本当に、おじさんは人間なの?」
「そうだよ。まあ、他の人間より、ちょびっとダンディーだけどな!くわっはっはっはっはっ!」
もう、ダンディーも微妙なウインクも変な笑い方も2、3本出てる鼻毛も、どうだっていい!これって、なに?単なる変態の覗きにしては、覗いてないわ!こっそり感ゼロよ!突然現れて、それが幽霊でも妖怪でも宇宙人でもドワーフでもダンディーでもない単なる人間だった?有り得ない!有り得ないわよ!ダメ!そんなのダメよ!ダメに決まってるじゃない!これじゃあ、どんどん私の頭が非現実に引き込まれて行くわ!早く!早く現実に引き戻さないと!どうする?どうするどうする??えーと?えーっと??
「タイムトラベラー!」
「また若者言葉のダンディーより上を行くドワーフより更に上を行くダンディーって意味の言葉か?」
「違うわよ!ダンディーな訳ないじゃない!」
「まあまあ、お嬢さん。ちょっと、落ち着きなさい。ねっ?」
「落ち着ける訳ないじゃない!どう落ち着けって言うの!この状況で落ち着ける人間がいるなら連れて来て欲しいもんだわ!とにかくもう、パニックの最高潮もいいとこよ!」
「ほら、深呼吸して落ち着きなさい。リラーックス、リラーックス。」
「ふざけないでよ!!」
「お嬢さん!!」
「!?」
「・・・・・・・・・落ち着きなさい。いいかい?ちゃんと、俺の目を見て聞くんだ。分かるな?目を見て俺の話をよーく聞くんだ。」
「なによ?」
「おじさんはな。本当はな。」
「・・・・・・・・・。」
分かる!分かるわ!これで全ての謎が解明される!これでやっと、おもいっきり悲鳴を上げられる!なに?なんなの?おじさんは、なに者なの?
「ダンディーじゃないんだ!!」
「知ってた!」
「知られてた!?」
もうヤダー!!なんでこんな目に私が遭わなきゃならないのよー!!
「お嬢さん!」
ああーっ!!
「お嬢さんって!」
どうなってるのよ!もうーっ!!
「髪の毛をグシャグシャやってるお嬢さんって!」
「うるさいわね!なんなのよ!!」
「ところで、お嬢さんは何者なんだ?」
「はい?」
「いやほら、俺が湯舟で鼻歌混じりに鼻ほじがてらに、気持ち良く気分良く浸かってたら、突然髪の毛を洗いながら現れたお嬢さんは、いったい誰なんだ?」
「えっ?」

第百三十五話
「私の方がなの???」

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2009年1月21日 (水)

「第百三十六話」

「ガムは、死神かっ!!!」
青年は、激怒していた。博士のような男が立ち去ったあと、間も無くして激怒していた。人間は、そう簡単に激怒する生き物ではない。余程の理由があったからこそ、青年は激怒しているのだ。青年と博士のような男は、特に博士と助手と言う間柄ではない。赤の他人である。ではなぜ、赤の他人である博士のような男が立ち去ったあと、青年は激怒しているのか?さて、少しだけ物語を巻き戻してみる事にしよう。

第百三十六話
「ガムが噛みたくなる話」

「・・・・・・・・・。」
青年は、いつものように日曜日の朝を、陽の光を浴びながら公園のベンチに座り、読書を満喫していた。
「・・・・・・・・・。」
それが青年の楽しみであり、現実世界で青年の身に巻き起こって染み込んだ一週間をデトックスし、リセットする貴重な時間であった。
「・・・・・・・・・。」
なので、特に天候に影響されて中止される事はなかった。むしろ、晴天の日よりも暴風雨の日の方が、読書に集中出来て、青年は好きであった。
「・・・・・・・・・プッ!」
「そんなに面白いのか?その小説は?どれどれ?」
気付くと青年が座るベンチの隣には、壁が押し迫って来るパントマイムをする博士のような男が真横に座っていた。
「貴方の方がよっぽど面白いですよ。顔だけ押し潰されそうって、どんな状況ですか。上下左右って、有り得ないでしょ。ところで、誰ですか?」
「おいおいおい。会っていきなり質問責めとは、私は来日スターか?」
「来日スターなんですか?」
「来日スターか来日スターじゃないかで言えば、2:8で来日スターではないな。」
「2、何ですか?」
「それは、己への甘やかしだ!」
と、まあ青年と博士のような男は、こうして不思議な出会いをした。青年が激怒するに至るまでは、もう少しだけ時間が掛かる。
「すいませんけど、僕は今、読書中なんです。」
「のようだな。」
「真横にいるのは構わないですが、読書の邪魔だけはしないで下さい。」
「なら、邪魔をしなければ、こんな距離で、こんな事さえも許されるのか?」
「別に、読書の邪魔さえしなければ、世間の目が気にならなければ、それで貴方が安らげるのであれば、膝枕も有りでしょう。」
「私は、こうして目をつぶっていると、いつも思うのだよ。なぜ、太もも枕と言わずに、膝枕と言うのだろうか?とな。或いは、百歩譲ってどうしても膝と言う言葉を使いたいのだとしたら、なぜ膝に近い上の部分枕と言わないのだろうか?とな。だってそうではないか。この体勢での膝枕は不可能に等しい。本当に膝枕がしたいのならば、体育座りの時ではないのか?それが正しい膝枕ではないのか?だが、それではあまりにも枕が高過ぎる!高過ぎて高過ぎて、本来体を休める役割を果たすはずの枕である枕が!枕としての機能をまるで発揮出来ないではないか!そしたらむしろ、こうすべきだ!寝たい側が体育座りする者の正面に回り背もたれとする!しかしそれでは、もはや膝枕ではなく膝背もたれ!そうなるとこれは、膝部分を枕代わりとした足座椅子ではないのか?膝枕は何処へ行ってしまったのだ!そもそもだ!そもそもだよ!体の中でも一位二位を争う程の硬い部分が、枕になる訳がないっ!!青年よ!私は何か間違った事を言っているか?答えてくれ青年よ!」
「間違った事は言ってないと思います。」
「それは良かった。」
「ただ。」
「ただ、何だ?どうしたと言うのだ?」
「読書の邪魔です。そんなにいっぱい語り掛けられたら、いっぱい相づちをして、いっぱい返事をしないとなりませんし、そんなにいっぱい体を動かされて説明されたら、同じ行を何度も何度も読んでしまいます。まるで読書に集中出来ません。」
「そうか。それは悪い事をした。すまなかったな、青年。」
「分かってもらえたんならいいです。」
「これ以上、青年の読書の邪魔をする訳にはいかないからな。私は、帰るとするよ。」
「何か、すいません。」
「なに、青年が謝る事ではないさ。」
そう言うと博士のような男は、紐で引っ張られるパントマイムで立ち上がると、読書に集中する青年の方に背を向けながら、
「最後に一つだけいいかい?」
再び語り出した。
「何ですか?」
「私のパントマイムは、100点満点で言ったら、何点だね?」
「27点、です。」
青年のそれは、即答であった。もし、即答に解答があるのならば、青年のそれは満点である。
「なるほど、1000点満点で言ったら、270点と言う事か。」
「いえ、1000点満点だろうが、10000点満点だろうが、そこは27点です。」
「そうか。27点か。」
「・・・・・・・・・。」
「27、けして嫌いではない数字の一つだ!!」
「・・・・・・・・・。」
「ありがとう、青年!」
「いえ。」
「そして、さよなら。」
「さよなら・・・・・・・・・。」
青年は、再び読書に集中し、博士のような男は、パントマイムでエスカレーターを上り下りしながら去って行った。こうして、青年と博士のような男の不思議な出会いは幕を閉じた。
「・・・・・・・・・。」
そして、青年が読んでいる小説のあとがきには、こう書されていた。

『人間は、死ぬ一分前にガムが噛みたくなると言う話がある。それは、医学的にも行動学的にも心理学的にも何の確証も立証も実証もない話だ。
しかし、なぜだか人間は、死ぬ一分前にガムが噛みたくなると言われている。古くは、地球誕生前から、新しくは、読者がこれを読んでいる時代まで、と言われている。人間とガム、或いは、ガムと人間、そこにどのような深い因果関係があるのかは、いまだに謎に包まれたまま、何一つ解明されていないまま、時間だけが静かに、緩やかに流れている。
だが、作者の私はこう考える。もしかしたら人間は、噛み続けても永遠に無くなる事のないガムと言う存在に対し、死を目前とした自己を投影し、出来ることならガムになりたいと、無意識に意識しているのではないだろうか?そこに潜む不死への欲望をガムに投射しているのではないだろうか?最後まで生きたいと願う人間の欲深き果てしない欲望。つまりガムは、生の象徴。
しかし或いは、こうも考えられる。ガムの味が、死ぬ一分前のガムを噛んでいる人間の残りの寿命。ガムの味が無くなるにつれ、死に誘われて行く。であるのならば、私はあえてガムが無性に噛みたくなった時には、ガムを噛まずに舐めていようと、考えている。
しかしそれは、あまりにも無謀とも言える挑戦だろう。なぜなら、ガムを口に入れた状態で、果たして私はガムを噛まずにいられるのだろうか?迫り来る死の恐怖の中であっても、ガムが噛めないと言う無限地獄に私は、耐えられる自信を持ち合わせてはいない。
この、生の象徴とも死の象徴とも捉える事の出来るガムだが、一つだけ確かな事がある。言うまでもなくそれは、既に人間がガムを噛もうと思いガムを口に入れた瞬間から、確定されているのは、死のみ、だと言う現実。
果たして我々人間の意志により、ガムを手に取り口の中へと運び込んでいるのか?いや、むしろ我々人間の方がガムに選ばれているのだと考えた方がいいのかもしれない。何れにせよ私にも遅かれ早かれガムを噛む時が必ず訪れる。その時、何かしらの答えが得られる事を信じ、今回はペンを置く事にする。』

「ガムは、死神かっ!!!」

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2009年1月28日 (水)

「第百三十七話」

 俺の名前は、ミスター定規。そして、俺の横で酒場に来たってのに、酒も飲まず、さっきからずっと眼鏡を拭いてるのは、ミスター眼鏡。俺達2人は、ミスターパパ率いるミスター海賊団の一員だ。ミスターパパと言えば知らない者はいないだろう。だから、あえて面倒臭い説明は、省かせてもらう。だが、俺達2人が海賊だってのにどうして陸の上の酒場にいるのかは、説明させてもらおう。伝説の宝と言えば、誰もが知っているだろう。そう、俺達ミスター海賊団は、世界に散らばる伝説の7秘宝の1つを発見しちまったんだ。7秘宝と言えば、いままでに『豪華な小銭』『筋肉質なサボテン』『あまりにも巨大過ぎるアンモナイトの化石』『冒険野郎の冒険日記』の4秘宝が発見されてたのは、あまりにも有名な話だ。で、今回俺達ミスター海賊団が発見した『逆さ天秤』で5秘宝になった訳だ。ちょっと話が横道に逸れたが、7秘宝を取り扱う機関がこの王国にあって、今は港に船を停泊させてるって訳だ。そして、俺とミスター眼鏡は、船長達が秘宝を持ってその機関に鑑定換金しに行ってる間の暇潰しで、城下町の酒場に来てるって訳だ。どうも俺は苦手なんだよ。ああ言った堅苦しい場所に行くのはな。
「ミスター眼鏡!いったいお前は、いつまで眼鏡を拭いてりゃあ、気が済むんだ?」
「ピカピカになるまでに決まってるじゃないか。ミスター定規は、定規の手入れとかしないで平気なの?」
「平気も何も、おい?ここは酒場だぞ?酒飲む以外に、いったい何をするってんだ?」
全く、こいつの用心深さには、ほとほと呆れる。だいたいミスター海賊団にケンカ売るような自殺行為、しようってヤツは、こっちの海にはいる訳がねぇ。まあ、いるとすりゃあ、よっぽどのアホか命知らずのルーキーぐらいなもんだ。そもそも狙撃手が酒場で眼鏡拭いてるなんて、全くナンセンスにも程がある。
「コンタクトにしたらどうだ?」
「えっ?ヤダよ。だって、ゴロゴロするし、だって、目に何か入れるのって、やっぱ、凄く怖いもん。」
「慣れだろ?んなもん。」
「じゃあ、ミスター定規は、三角定規を目の中に入れられる?」
「無理に決まってんだろ!」
「でしょ?」
「あのなぁ?俺は、コンタクトレンズの話をしてるんだよ。目に何だったら入れられるか?って話なんかしてないんだよ!」
「でもあれだよ?」
「何だよ!」
「僕がコンタクトにして、仲間を援護してる時に、コンタクトがズレたら大変な事になるよ?」
「お前、この前の超獣との戦いの時に、眼鏡ズレて大変な事になったろ!弾が当たったのが船長じゃなきゃ、あれ死んでたからな!」
「だから拭いてるんじゃないか。」
「何だ?拭けばズレないのか?」
「ズレないっ!!」
「サラッと断言しちゃったよ?根拠もない事をサラッと断言しちゃったよ?」
「イエイ!」
「イエイ!じゃねぇよ!秘宝を発見して、徒歩海賊団と一戦交えた時もそうだ!眼鏡がズレたじゃねぇか!弾が当たったのが船長じゃなきゃ、あれ死んでたからな!それだけじゃねぇぞ?まだまだお前の眼鏡がズレた話はあるんだぞ!」
「イエイ!」
「どの辺がだ!どの辺がイエイだ!船長は、大笑いして許してたけど、何で毎回毎回眼鏡がズレる度に、船長を撃っちまうんだ?何だ?あれか?お前は、密かに船長の座を狙ってんのか?」
「僕が狙ってんのは、仲間に襲い掛かって来る敵だけだよ。」
「説得力っ!説得力が微塵もねぇ!」
「あははっ!」
「どのタイミングで、あははっ!なんだよ!お前、次やったら、ミスター傘に殺されるからな。」
「それだけはご勘弁!」
「だったら、コンタクトにしろ!」
「それだけはご勘弁!」
「どれだけだ!俺は、どれだけお前をご勘弁すりゃ、いいんだ!」
「イエイ!」
「馬鹿にしてんのか?測るぞコノヤロウ!」
まあ、いつも通りに馬鹿やってる俺達の元に、このあとよっぽどのアホがやって来た。案の定、それは命知らずのルーキーだった。ミスター海賊団の一員の首を獲れば、一気に名を上げられるとでも考えたんだろう。まあ、考え方は間違っちゃいない。ただ、それを本気で実行しちまうのは、大間違いだ。もちろん、ほんの数秒でカタは着いた。あっという間に、ルーキー海賊団の山の出来上がりだ。
「そ、そんな馬鹿な!?」
「やれやれ、俺に勝てると本気で思ってた事の方がよっぽど、そんな馬鹿な!?だ。まあ、次に大海原で会った時ぐらいは、もうちょっと強くなってて欲しいってもんだな。」
もちろん、俺が定規で戦ってる最中も、ミスター眼鏡は相変わらず酒も飲まず、眼鏡を拭いてた訳だ。まあ、そこは全然気にする事じゃなかった。ただ、ほぼ全壊状態の酒場は気になったがな。
「どうすんの?ミスター定規。これって、マズイんじゃない?」
「マズイって、言われてもなぁ。こいつらが売ってきたケンカだぞ?」
そして、間も無くして船長達が秘宝を換金した大金を持って、俺達がいる元酒場へやって来た。
「がっはっはっはっはっ!!」
大金の半分以上を酒場の店主に弁償代として渡した船長は、大笑いだったが、一緒にいたミスター経理は、そうもいかなかった。俺とミスター眼鏡は、残りの2秘宝、『空のクレヨン』と『究極なる肉球』を探す為、再び大海原へ出たミスター海賊団の船の中で、ミスター経理に長々と説教される羽目になっちまった。

第百三十七話
「ミスター経理は、女」

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