« 「第百四十一話」 | トップページ | 「第百四十三話」 »

2009年3月 4日 (水)

「第百四十二話」

「お父さん?」
「ん?」
「明日、お母さんのお墓参りだね。」
「うん。」
「晴れるといいね。」
「うん。」
「お父さん?」
「ん?」
「何でパンダの着ぐるみ着て夕ごはん食べてるの?」
「うん。」
「うん。じゃなくて。」
「うん。」
「だから、うん。じゃなっくって。」
「うん。」
「おい!」
「母さんが凶悪な連続殺人鬼に惨殺されて、もう10年か。10thアニバーサリーか。と、思ってな。」
「病死だし。」
「うん。」
「アニバーサリーの使い方間違っちゃってし。」
「うん。」
「事実を共有してる人間に嘘付いてどうすんの?てか、何でパンダの着ぐるみ?」
「10年か。お前も春から医学生だもんな。あの頃を思い出すよ。お前は、母さんの病気をアタシが治すんだい!わんわん!って言ってたもんな。きっと母さん、お前の今の姿を見たら涙流して喜ぶぞ。そして、立派な医者になった姿を見た時なんて、母さん泣き崩れてバラバラだ。にゃんにゃん!」
「もうツッコミ所が多過ぎて何がなんだかよ。」
「うん。」
「うん。じゃなくて!何か途中で犬が出て来たし。」
「わん。」
「最後に猫が出て来たし。」
「にゃん。」
「パンダでしょ?」
「うん。」
「無理矢理鳴き声とかいらなくない?」
「うん。」
「てか、何でパンダ?」
「うん。」
「それと盛り上がってるとこ申し訳ないんですけど、アタシが春から行く大学は、普通の一般的な大学だから!勝手にストーリー膨らませないでよね!言葉のチョイスもちょくちょく間違ってるしさ!」
「パンダー!!」
「パンダ、パンダー!!なんて鳴かねぇよ!小学校低学年でも、もっと気の利いた鳴き声言うよ!」
「パンダの尻尾はな。白いんだよ。うん。黒だと思われがちだけどな。うん。白いんだよ。」
「・・・・・・・・・。」
「うんうん。」
「・・・・・・・・・。」
「そうなんだよ。」
「・・・・・・・・・。」
「そうそう。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「お前を食べてやろうかっ!!」
「子供の夢、ぶち壊しか!いや、だから何なの?パンダの尻尾が白いから何な訳?てか、知ってたから!その事実、知ってたから!」
「うん。」
「もういんじゃない?もうそろそろ何でパンダの着ぐるみなのか話してもいんじゃない?」
「ゴリラー!!」
「ぜってぇ違げぇよ!パンダ、ゴリラー!!ぜってぇ違げぇよ!」
「おい!」
「何?」
「お前、女子なんだか、もっと綺麗な言葉遣いをしなさい!おぜってぇ違げぇよ!とか。」
「お、付ければ何でもいいと思うなよ!」
「うん。」
「だいたいパンダの着ぐるみ着た父親に、言葉遣いがどうとか言われたくないわよ!てか、何なのって!パンダ、何なのって!」
「これは、今までお前に話してなかった事なんだけどな。この着ぐるみはな。実は、父さんと母さんが初めて出会った時の大切な思い出の着ぐるみなんだよ。」
「思い出の着ぐるみ?」
「父さんがパンダだった頃、母さんはウサギだったんだよ。」
「へぇ~。遊園地か何かのショーに出てたんだ。そこで、2人の恋が芽生えちゃったって訳だ。」
「父さんと母さんは、遊園地か何かのショーにはな。出てなかったんだよ。」
「えっ?じゃあ、何かお店の街頭宣伝とか?」
「趣味だ。」
「趣味!?」
「あの日は、とても暑い夏の、もっとも暑い日で、脱水症状寸前のパンダの父さんは、調べなきゃならない調べ事があってな。図書館に行ったんだよ。」
「よく入れたわね。てか、脱ぎゃいいじゃん!てか、着なきゃいいじゃん!いやいや、そもそも何で?どうしてパンダの着ぐるみ?」
「でな。パンダの生態を調べようと思って、パンダコーナーを探してたんだよ。」
「んなコーナーないって!何?この話、無駄に長くなる話?聞いてて損する話じゃない?」
「でもな。館内をパンダのくせに隈無く探したんだけど、その図書館にはパンダコーナーがもれなく無かったんだよ。」
「どの図書館にもねぇよ!これ、絶対もれなく無駄に長くなるパターンだ。ダジャレ出ちゃったもん。」
「で、父さん耐え兼ねて館内の人に聞いたら、動物コーナーならあるって、洋服を着た館内の人が言ったんだよ。」
「着ぐるみ目線で館内の人を語るなって!」
「でな。動物コーナーに行って、まあ動物コーナーと言っても、実際には植物や魚類や鳥類や食べられるキノコや食べられる野草やら諸々の複合コーナーだったんだけどな。」
「ある?そこ詳しく話す必要ある?お母さん、まだ?」
「そこで、父さんは待望の動物図鑑を見付けたんだよ。でな、その動物図鑑を取ろうと手を伸ばした瞬間な。」
「へぇ~。そこで、同じく動物図鑑を探してたウサギの着ぐるみを着たお母さんの手と触れ合ったんだ。何か映画みたいな出会いだね。お互いに着ぐるみさえ着てなければ。」
「いや、母さんとは図書館を出た時に出会った。」
「予想通り全く無駄だった図書館内の話!なぜ話した?なぜ瞬間に的な思わせ振りな言い回しした?」
「いや、動物図鑑が思いの外、上の方にあってな。背伸びして取ろうとしたら、やたらと大きな音の屁が出ちゃったんだよ。面白エピソードだろ?稀にあるあるエピソードだろ?」
「ねぇよ!!稀とあるあるくっ付けちゃう事態が、まずねぇよ!」
「で、恥ずかしくなって走って図書館を出て来た時にぶつかったのが、ウサギの着ぐるみを着た母さんだったんだよ。そんな大切な思い出が詰まった物なんだよ。この動物図鑑はな。」
「持って来ちゃったよ!?どさくさ紛れに持って来ちゃったよ!?」
「持って来ちゃった。テヘッ。」
「いや、返しに行くチャンス何万回も合ったでしょ!てか、核心ついてもいい?」
「何だ?」
「変態じゃん!プライベートでパンダとウサギの着ぐるみって、2人とも変態じゃん!」
「変態じゃない!大変態だ!!」
「娘に何を堂々と宣言してんのよ!」
「だからな。そんな大変態同士から生まれたお前は、トリプル大変態で、大変態の中のサラブレッドなんだよ!!」
「いらねぇ!そんな称号いらねぇ!」
「はい。馬の着ぐるみ。」
「いらねぇ!ぜってぇいらねぇ!」
「明日の墓参りには、それを着て行きなさい。」
「馬の着ぐるみじゃねぇよ!サラブレッド=馬って安易な発想で用意しないでよ!行かねぇ!ぜってぇ墓参り行かねぇ!」
「ゴリラー!」
「ゴリラー!っじゃねぇよ!」
「カピバラー!」
「カピバラー!っじゃねぇよ!」
「チョモランマー!」
「もう動物でもねぇじゃん!」
「ご飯おかわりー!」
「自分でやれ!」
「暑いー!」
「脱げーっ!!」
「ゴリラー!」
「なら、ゴリラ着ろーっ!」

第百四十二話
「墓参りの前に図書館へ」

|

« 「第百四十一話」 | トップページ | 「第百四十三話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/28359910

この記事へのトラックバック一覧です: 「第百四十二話」:

« 「第百四十一話」 | トップページ | 「第百四十三話」 »