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2009年4月 8日 (水)

「第百四十七話」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」
この、机に向かって、黙々と勉強している彼女は、テストを明日に控えた高校2年生である。
「よし!歴史は、これでだいたいオーケー!うーーーんっ!」
そんな彼女が一段落して、両腕を天井に突き上げ、背もたれに寄り掛かり、上半身を伸ばし、何気無く目の前の窓の外の夜空に目を向けた時だった。
「キラーン!」
「あっ!流れ星!明日のテストでいい点が採れますように!明日のテストでいい点が採れますように!明日のテストでいい点が採れますように!」
夜空に一筋の流れ星が流れ、そして彼女は、星に願った。
「って、こんな事でいい点が採れたら苦労しないっつーの。てか、どうせならもっと別の願い事すればよかった。はあ、さて、次は数学でもやりますかね。」
溜め息混じりで彼女は机の引き出しから数学の教科書とノートを取り出し、それらを机の上に開くと、再びテスト勉強へと入り込もうとしたその時、彼女は窓に映る自分の背後に立つ異形の存在に気付き、恐怖心を抱くよりも先に、体が勝手に、反射的に振り向いてしまった。
「やあ!」
「真っ黄っ黄っ!?」
その、人のような形をした真っ黄っ黄っな物体は、満面の笑みを浮かべ、彼女に挨拶をしていた。
「だ、誰!?」
「流れ星です。」
「泥棒!?」
「流れ星です。」
「変態!?」
「流れ星です。」
「真っ黄っ黄っ!?」
「流れ星ですからね。」
「顔が星形!?」
「流れ星ですからね。」
「焦げ臭い!?」
「流れ星ですからね。」
「あのう?」
「何ですか?」
「気絶してもいいですか?」
「しないで下さい。せっかく流れて来たんですから、気絶はしないで下さい。」
「なら、あのう?」
「はい。」
「殺さないで下さい。」
「殺さないです!流れ星ですから。」
「食べないで下さい。」
「食べないです!流れ星ですから。すいません。そのモンスター目線、やめてもらってもいいでしょうか?流れ星なんで。」
「じゃあ、証拠は?」
「証拠?ですか?」
「そう!アナタが流れ星だって言う証拠を見せてよ!そしたら信じるから!」
「いやでも、この容姿が何よりもの証拠だと思うんですけどね。」
「体が人で顔が星で真っ黄っ黄っが!?」
「そうです。そろそろ、その手に持った十字架をしまってもらえませんか?」
「だってさぁ!こんな非現実的な状況をさぁ!高校生のアタシがさぁ!どうやって受け入れろって言うの?ねぇ?そこんとこどう考えてんの?逆の立場だったらアナタどうなの?やっぱり驚きまくるんじゃないの?パニクるんじゃないの?だいたいさぁ!そんな姿で急に現れてさぁ!冷静に何かを話し合おうって考えの方が間違ってんのよ!流れ星だか何だか知んないけど!流れ星なら、何してもいいわけ?ねぇ?流れ星だったらさぁ!ただただ流れてればいいじゃん!なに気持ち悪い容姿して、なに不気味な存在で、なにアタシの部屋に立ち寄っちゃってんのよ!」
「すいません。メンタル面、あまり強い方ではないので、その辺で勘弁してもらえませんか?しかし、お嬢さんのおっしゃる通り、確かに突然の訪問で、迷惑を掛けてしまったかもしれません。でも、それにはちゃんとした理由があるんです。って、そろそろ、文房具投げまくるのやめてもらっていいですか?」
「理由?理由って?」
「流れ星から連想される事と言えば?」
「気味が悪い。」
「それは、ボクの姿を見た率直な感想ですよね。そうではなく、一般的に連想される事です。」
「一般的?そうねぇ?まあ、流れ星って言ったら、願い事?」
「そうです!それですよ!」
「うっそ!なになに、願い事を叶えに来てくれちゃったりしちゃったりしちゃうわけ?なーんだ、だったらそれを先に言ってよ!もう!」
「いや、けして言わないようにしていたわけではないんですけどね。むしろ、言おう言おうとしていたんですけどね。」
「ほらほら、そんな所に突っ立ってないで、座って座って!今、何か飲み物とか夕飯の残り物とか持って来るから!」
「いや、お構い無く!」
「遠慮なんてしなくっていいって!流れ星が遠慮なんて聞いた事ないよ?」
「聞いた事がないと言うか、してるとこを見た事がないと言うか。いや、そんな事じゃなくって、時間が勿体無いんで、本当にお構い無く。」
「それって、さっそくアタシの願い事を叶えてくれるって事?」
「そうです。」
「うっそー!本当に?」
「本当です。」
「やったー!何か夢みたい!って、ちょっと待って!」
「どうしました?」
「これ、夢なんじゃない?」
「夢じゃないです。」
「現実世界では今頃、テスト勉強も半ばで、机の上で眠ってるアタシが居るんじゃないの?」
「すいません。非常に痛いんで、てっぺんのトンガリから手を放してもらってもいいですか?ミシって、ちょっと折れそうな勢いなんで、出来れば早急にお願いします。」
「痛いって事は、夢じゃないのよね?」
「まあ、普通は夢を見ている本人が痛がらないと意味の無い確認作業なんですけどね。まあでも、これは紛れも無い現実なんで、その辺は大丈夫です。」
「どうしよう?何を願って、叶えてもらおう?お金?恋?それとも何かしらの特別な能力?あーっ、どうしよう?迷うなぁ?これってあれよね!もちろん、時間制限とかないのよね?それにあれでしょ?叶えてもらう願い事を100個にしてもらうってズルもダメなんでしょ?大丈夫、大丈夫!そこら辺は、ちゃーんと分かってるって!」
「あのう?」
「ちょっと待ってね。どうしようかなぁ?やっぱりお金が有力かなぁ?そうだよね。お金があれば、大抵の事は何とかなっちゃうもんね。」
「お嬢さん?」
「超能力者ってのも魅力的だけど、やっぱしお金かなぁ?うん!お金だ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「では、改めてお願いします!流れ星さん!アタシを大金持ちにして下さい!」
「もう、いいですか?」
「はい?」
「先程も言いましたが、あまり時間がないんで、さっそく始めましょう。」
「いつでもいいわよ!あーっ!どうしよう?とりあえず欲しいもんを全部買うでしょ!それからそれから?」
「まず、この数式の解き方ですけど。」
「はい?」
「これはですね。」
「えっ?えっ?意味分かんないだけど?何してんの?」
「数学です。」
「いや、それは見れば分かるんだけど、そうじゃなくって、ほら!大金持ち!ねっ!ほら!」
「いつまでもふざけてないで、真面目にテスト勉強して下さい。」
「いや、するけどさぁ。その前に、ほら!」
「何を言ってるんですか!アナタが願ったのは、大金持ちじゃくて、テストでいい点が採れますように!でしょ!」
「へっ?」
「朝まであんまり時間が無いんです。少しスパルタにいくんで、覚悟して下さいよ。」
「ええーっ!!!」
こうしてこの日から、彼女と流れ星とのテストがある毎に行われるマンツーマンの日々が始まった。

第百四十七話
「流れ星先生」

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