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2009年7月

2009年7月 1日 (水)

「第百五十九話」

「・・・・・・・・・!?・・・・・・!?」
ここは?どこだ?声が、出ない。
「・・・・・・・・・。」
いや違う。出ないのではなく、出せないのだ。この真っ暗な場所には、空気が存在していない!
「・・・・・・・・・。」
ああ、やはりそうだ。私の考えは間違ってはいない。ここには、空気が存在しない。だから、声が出せない。これは、夢?夢なのか?私は今、奇妙な夢を見ていると言うのか?
「・・・・・・・・・。・・・・・・。」
空気が存在しない真っ暗な場所で、声の出せない夢を。いや、もしもこれが例え夢だとしても、私が空気の存在しない場所に居る、或いはその状況下に置かれている事には変わりない。夢とは、現実の影響を大いに受けやすい。それに、夢と考えて、考えを進めて行かない方が賢明だ。では、ここが現実だとして、やはり私が思う事は、ここはどこで、なぜ私は真っ暗な空気の存在しない場所に居るのだろうか?と言う事だ。
「・・・・・・・・・!!」
何度も確認する用心深い癖を妻には何度も注意されるが、叫んだとこで、やはり声は出ない。ん?妻?そうだ。私には、家族が存在する。家もあれば、会社にだって勤めている。いや、記憶を辿るのは、今はまだ早い。それは、賢明ではない。とにかく私が今すべき事は、現実を注意深く観察し理解し分析する事だ。
「・・・・・・・・・。」
声は出ない。それは空気の存在しない場所だからだ。それは、理解した。では次に私が考えなければならない事は、ここがどこだとか、なぜここに居るのだとかと言う問題ではない。そう、どうして私は生きているのだ?と言う事だ。常識的に考えて、人間が空気の存在しない場所で生きている事は、非常識だ。だが、現実はどうだ?私は、その非常識の真っ只中に居る。そして私は、次にこう考える。私は、死んだのか?と。しかし、私が仮に死んだとして、この状況は私の理念に反する。死後の世界などない、と言う私の理念に・・・・・・・・・。
「?」
待て、待つのだ!考えを考え直せ!この摩訶不思議な状況下で、己の理念に身を委ねるのは危険だ!死後の世界の有無を生きている人間が証明する事は、絶対的に不可能だ。だとすると、これが死後の世界?ならば、私はなぜ死んでしまったのだ?いや違う。そうではない。私が、どうやって死んだのかなど、今考える必要性は、ない!過去ではなく未来を考えるのだ。そう、仮にここが死後の世界だとして、私はこれからどう行動すればいいのだ?神?神に出会えばいいのか?この真っ暗な場所のどこかに存在する神に会えばいいと言うのか?神に会ってどうする?生まれ変わりの儀式でもしてもらうのか?いや、違う。話が飛躍し過ぎている。神に出会ってからの事ではなく、私はそもそも、ただただ真っ暗な広さも何も分からないこの場所で、神を見付ける事が可能なのだろうか?
「・・・・・・・・・!!」
神になら或いは、声にならないこの叫びが届くとでも言うのか?神々しい輝きを放ちながら、私の目の前に現れてくれるとでも言うのか?
「・・・・・・・・・!!」
いや、神が存在するならおそらく、この真っ暗な世界など、そもそも存在しない。この場所は、あまりにも意味不明で理解不能過ぎている。死後の世界が例え存在していたとして、こんなに説明不足ではないはず。だから私は、ここで改めて問う。いったいここはどこで、なぜ私はここに居るのだ?と。

第百五十九話
「ば、馬鹿な!?」

「プシュー!」
間も無くして私を覆っていたモノが開き、横になっていた私は起き上がり、このカプセル状の入れモノから外に出た。すると目の前には、防護服を着た女が立っていた。
「ここは?」
声が出る。それに、空気も光も存在する。カプセル状の入れモノからは、大量の水が溢れ出ている。足から伝わるその水の感覚で、初めて自分が裸だと言う事に気付いた。だが、それは問題ではない。裸であろうがなかろうが、辿り着く疑問は決まっている。そう、実験室のようなこの広い場所は、いったいどこで、私はなぜカプセル状の機械の中に居たのか?と言う事だ。そして、現時点で私が分かっている事は一つ。目の前の防護服の女が、神ではないと言う事だ。
「ここは、死後の世界です。」
「ば、馬鹿な!?」

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2009年7月 8日 (水)

「第百六十話」

 私は、地球の悲鳴をイチ早くキャッチした。それはもう、誰よりも先にだ。
「これでよし!」
だから私は、この地球を救う為、それを実行した。

第百六十話
「緑化計画」

全身を緑化した私は、緑茶を片手に緑道を歩いていた。小腹が空けば、雑草をむしっては食べ、むしっては食べと、道草を食っていた。更に、捕まえては食べ、捕まえては食べと、芋虫も食っていた。それが不味いとか気持ち悪いとかは関係無い。これは緑化であり、そして地球にしてやれるこれが私の精一杯の緑化なのだから、余計な事を考えている余地などない。そして、改めて良かったと思う。なぜならもし、仮に地球の悲鳴をイチ早くキャッチした私が、誰よりも先にキャッチした私が、緑化恐怖症だったとしたら?と考えただけでも背筋が凍り付いてしまう。
「ん?」
それは、いったい私がどれくらい緑道を往復した頃だっただろうか?もはや、緑道を緑道だと、呼べない程になっていた頃だ。そう、私が丁度、ただの道と化してしまったこの緑道を後にして、他の緑道へ行こうとバッタを口に放り込み、緑茶で一気に流し込んだ時だった。私の方へ向かって真っ直ぐと、あからさまに歩いて来る人影が見えた。元々真っ直ぐな緑道なのだから、真っ直ぐ私の方へと向かって歩いて来るのは、何ら不思議な事はないのだが、遠くから見てもあからさまな人影が、あからさまに近付いてくるにつれ、それがあからさまに女だと分かった私は、赤裸々な女の赤面を見るなり、身構えた。
「君は?」
「アタシ?見て分からない?アタシは今、赤化計画を実行中なの。」
そう言うと女は、トマトジュースを一気に飲み干し、話を続けた。
「これは地球の為なの。アナタには分からないかもしれないけど、地球は今、物凄い悲鳴を上げているの。」
そして、話し終わると女は、持っていたイチゴの種を取り、赤い部分だけを食べ、ヘタがついていると言うのに、地面へ投げ捨てた。私は、それを拾うと、ヘタの部分を食べ、残りを地面へ投げ捨てた。
「アナタこそ何者?用がないなら邪魔だからどいてくれる?アナタがそこに立ってると、アタシが赤道を歩けないでしょ?」
そう言って女はスイカを割ると、種を取り中身を食べ、残りを地面へ投げ捨てた。私は、それを拾うと、緑の部分だけを食べ、残りを地面へ投げ捨てた。
「いいか?よく聞くんだ。私は、緑化計画を実行している者だ。」
「緑化計画?何それ?」
「地球は悲鳴を上げている。」
「知ってるわ。」
「なら、今すぐに赤化計画などとふざけた計画は、中止するんだ!」
「はあ???アナタ、頭どうかしちゃってるんじゃない?アタシが赤化計画を中止しちゃったら、いったい誰が赤化計画を実行するって言うの?」
「そんな計画を実行しても地球が救えないのが、まだ分からないのか!」
「その言葉、そのまま赤いリボン付けてアナタに返すわよ。」
「そこは緑のリボンにしておけ!」
「うるさいわね。アタシは、誰が何と言っても、赤化計画を中止するつもりはないわ。だってそれが、地球の為なんだもの。いちいち、アナタにカビ臭い事を言われる筋合いなんてないわ。」
「違う!地球は、赤化計画など求めていない!地球が求めているのは、地球が望んでいるのは、緑化計画だ!」
「いいえ、違うわ。赤化計画よ。」
「どっちもハズレだ。」
「誰だ!?」
「誰なの?」
「俺かい?俺は、ご覧の通り、黒化計画を実行中の男さ。」
そう言うと男は、地面に落ちているスイカの黒い種と黒い部分を食べると、残りを投げ捨て、それらを墨汁で一気に流し込んだ。男が国道を歩いている事と背中に担いでいる黒板には、少し疑問が湧いたが、とにかく私の目の前には、赤化計画の女がいて、赤道上の緑道の横の国道には、黒化計画の男がいる。
「黒化計画だ!」
「赤化計画よ!」
赤化計画の女と黒化計画の男が言い争っている様子を目にして私は、思った。いったい地球上で今、どれ程の化が同時に実行されていると言うのだ?と。その時だった。快晴だと言うのに、急に我々の回りだけが曇りだしたのだ。
「ヤレヤレ、若イモンガ集マッテ何ヲ言イ争ットルノカト思エバ、実ニ下ラン事ヲ。」
「!?」
「!?」
「!?」
老人は、驚く我々を見て嘲笑いながら空中で体操をしていた。
「地球ヲ救ウノハ、緑デモ赤デモ黒デモ、ドノ計画デモナイ。地球ヲ救ウノハ、ワシノ機械化計画ダケジャヨ。」
私は、何か地球に良からぬ事態が巻き起ころうとしているのでは?と、妙な胸騒ぎに襲われた。

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2009年7月15日 (水)

「第百六十一話」

 展開の始まりは確かそう、少し涼しくなった夏の日の夕方、俺が散髪に出掛ける路線を辿ってた途中の道で、急な雷雨に襲われた俺が、シャッターの閉まった店先で雨宿りをしてた時だった。
「パッ!!バリバリバリ!!」
それまでにない稲光と轟音だって思ったと同時に、目の前に雷が落ち、俺は思わず目をつぶった。
「18時ジャスト。」
その声に反応して目を開けた俺の隣には、黄色いツナギ姿の中年の男が腕時計を見ながら立ってた。
「ほら、見て下さいよ!18時ジャスト!ねっ?」
「はあ・・・・・・・・・。」
何て満面の笑みを浮かべながら、わざわざ見ず知らずの人に18時を告げる男なんだ。
「はあ、って何かこう、もっと喜んで下さいよ!」
「えっ?」
「成功したんですよ!」
男は、俺の両肩を両手でガッチリ掴むと、激しく俺を揺すり、抱き付いて来た。
「ちょ、ちょっと!」
俺は、訳が分からなかった。が、このまま男に抱き付かれたままじゃいけないって事だけは、分かった。
「せ、成功って、いったい何の事ですか!」
だから、男を突き放した。男は、ビックリした表情で俺を見ていた。
「どこかで会った事、ありましたっけ?」
「何を言っているんですか、博士!」
「博士!?」
「一緒に数々の危険を潜り抜けて来た仲じゃありませんか!そんな私の事を、博士は忘れてしまったと言うんですか!」
「いや、すいません。恐ろしく言ってる意味が分からないんですけど?もしかして、人違いをしてるんじゃないですか?」
「博士!私が博士を見間違えるはずが、あるでしょうか!」
「いやぁ・・・・・・。」
ヤバイ、これはかなり関わっちゃいけない人に関わってしまった。ん?もしかしてこの人、今の落雷が直撃しちゃったのか?でも、特に直撃の様子も見当たらないしな。だが、この場合は落雷しててくれた方が、どれ程ありがたい事か!
「すいませんでした。」
なぜか男は突然、頭を下げて謝った。
「博士が私の事を分からないのも無理ありません。私達はまだ、出会っていないのですからね。」
謝られて現状がより訳が分からなくなる事ってあるんだ!と思った。そして、行こう!そうだ!行こう!この男とここで訳の分からない会話をする事に比べたら、ずぶ濡れになるなんて、なんて事ないじゃないか!もう、行っちゃおう!
「それじゃあ。」
「待って下さい!」
誰が待つかよ。
「博士!」
だいたい面と向かって言わなかったけどな!何で陶芸家の俺が博士なんだよ!
「アナタは、今から5時間後に死にます!」
「何だって!?」
「すいません、博士。ついついアナタとの再会を喜び、当初の目的を忘れていました。」
この男との会話、一向に訳が分からなくなる一方だ。だが、自分の死を鬼気迫る顔の男に告げられ、果たして立ち止まらないヤツがいるだろうか?
「俺が死ぬって、どう言う事ですか?」
「落ち着いて聞いて下さい。」
そう言った男の方が、深く深呼吸を一度した。
「私は、今から5時間後の少しだけ未来から、タイムマシーンでやって来ました。」
いやほら、信じろって方が無理でしょ。それならそれで、何と無く話の辻褄が合うけども!でも、こんな馬鹿な話をいきなり信じちゃう方がどうかしてる!よし!だったらここは、証拠の一つでも見せてもらおうじゃないか!
「タイムマシーン?なら、タイムマシーンを見せて下さいよ!」
「博士、何を言っているんです。タイムマシーンなら、一番最初に見せたじゃありませんか。ほら!」
「そんな馬鹿な!?それがタイムマシーンだって言うのかよ!?」
「そうです。この腕時計がタイムマシーンなんです。博士、何もそんなに驚く事はないでしょう。」
いや、驚くだろ!これが事実だろうが嘘だろうが、そりゃ、驚くだろ!何か乗り物的な物を想像しちゃうだろう!
「全く、自分で発明しといて自分で驚く人がいますかね。」
男は、さも当たり前のような事を、さも当たり前のような顔で、さも当たり前のように言ってるけど、俺にとっては何一つとして当たり前じゃない。って、なに!?俺!?俺が?俺がタイムマシーンを作ったって?どんな展開だよ!
「タイムマシーンなんて作れる訳ないだろ?俺は、陶芸家で、科学とは全く縁のない世界の人間なんだから。」
「今はね。」
今はね。か、未来から来たヤツが言い放つには、打って付けの言葉だな。未来?ちょっと待て!男は、5時間後の未来からやって来たって言ったよな?て事はだ!仮に男の話が事実の路線で行ったとしてだ!おいおい!こりゃとんでもない展開だぞ!?
「俺は、5時間でタイムマシーンを作ったって事か!?しかも、そんな腕時計タイプのタイムマシーンを!?」
「正確には、3時間と30分ですね。ほら、博士これから散髪行くでしょ?」
いや待てって、どう考えても無理だろ!タイムマシーンのノウハウを知らないヤツが、何で3時間半で作れちゃうんだよ!って、えっ?散髪?確かに男は、散髪って言ったぞ?何でそれを知ってるんだ?誰にも散髪屋に行く事を言ってないのは勿論だし、散髪屋はここからまだまだ先で、視界にも入ってない!おいおいおい、まさか本当に男は5時間後の未来からやって来たって言うのか?いよいよヤバイ展開だぞ?ってそれ以前に、死ぬって分かってんのに散髪屋行くか?
「どうして、散髪屋の事を?」
「どうしてって、私に話してくれたし、それにほら、この写真の博士と今の博士の髪型が違いますしね。」
「こ、これは!?」
男がポケットから取り出した写真には、無惨に殺された俺が写ってた。
「あっ!?すいません!博士の気持ちも考えずに、いきなりこんな写真を見せてしまって!これは万が一、私の言っている事を信用してもらえなかった時に出すつもりだったんです。でも博士?これで、私の言っている事が本当だと、信じてもらえましたよね?」
「・・・・・・・・・。」
信じざるを得なかった。目の前の自分の死体の写真を見てるって言う何とも言えない不思議な感覚に捕らわれながらも、これが事実と分かった以上、俺は頷くしかなかった。そんな事よりも何よりも、俺にはこれからやらなきゃならない事が山程あった。
「俺は、どうして殺されたんです?」
「タイムマシーンを作ったからです。そのせいで、タイムマシーンを狙う組織に殺されたんです。博士は!博士は、最後まで奴等にタイムマシーンの設計図を渡しませんでした!そして自分の身を犠牲にしてくれたからこそ!私は、5時間前へ来る事が出来たんです!でも、それも賭でした!実験も何もしていませんでしたから!しかし、博士!博士は、成功したんですよ!タイムマシーンは、完成したんですよ!」
男は、俺の手を両手で握り締め、泣いていた。それを振り払う程、俺も野暮じゃない。ただ、やらなきゃならない事は、ある!だから俺は、ゆっくりと男の手を放した。
「一つだけ聞いてもいいですか?」
「何でしょう?」
「どうして5時間前なんてす?どうして5時間前の俺に、この事を伝えに?」
「タイムマシーンの遡れるこれが、今の限界だからです。」
成る程ね。これで、謎が解けたよ。どうして、未来から助けに来るには、5時間前なんだろう?って謎が。
「現状は理解しました。さあ、行きましょうか。」
「行ってらっしゃい。」
「はあ?」
「散髪屋ですよね?」
いや、だから!だから、この状況で散髪はおかしいでしょうが!もはや散髪の事なんて忘れてたよ!
「違いますよ。その組織から逃げるんですよ!だってアンタは、俺を助けに来たんでしょ?さあ、その組織の詳細を教えて下さい!」
「博士?アナタは、勘違いをしている。」
「はい?」
「私は、アナタを助けに来た訳ではありません。」
「何だって!?じゃあ、いったいアンタは、何をしに来たんです!」
「私は、生きてる博士に一目会って、助けて下さったお礼を言いに来たんです!」
「えっ!?」
「博士!本当にありがとうございました!」
深くお辞儀をする男の腕時計が、いつの間にか止んでた雨の後、いつの間にか顔を出していた夕日に照らされて、妙に輝いてた。なのに滴り落ちる地面を濡らす物。男が俺を助けないんじゃなく、男は俺を助けられないんだ。いやそうじゃない。俺が俺を助けさせないんだ。腕時計、写真、そして5時間後の未来から来た男の存在と流した涙が、何よりも変わらない未来を証明していた。まあだから俺は、これからの5時間がいったいどんな風に無茶苦茶な展開を巻き起こすのかって路線で、人生を楽しむ事にした訳だ。

第百六十一話
「変えなかった未来」

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2009年7月22日 (水)

「第百六十二話」

 ワシは、目が覚めると不思議な程、不思議すぎる不思議な国におった。始めは、ワシも考えたさ。どうして、ワシがこの不思議な程、不思議すぎる不思議な国におるのかと、だが、不思議な程、不思議すぎる不思議なこの国は、不思議とそんなワシの思考すらも忘れさせてしまうぐらいに、不思議だった。
「さてと。」
ワシは、とにかく何かをせんと始まらんと思い、遠くに見えるあの不思議な城を目指そうと、この上下逆さまのエリアから出る事にした。
「お爺さん?お爺さん?お爺さんって?ちょいと、お爺さん?いや、ちょっと!お爺さんって!お爺さん!!待ってって!!」
「ワシは、お婆さんだっ!!」
失礼にも程がある不思議な樹に巻き付いとる不思議な蛇に、ワシは激怒した。
「ほうら、やっぱり、おばあさん、だった、じゃ、ないか。」
不思議な樹が、不思議な蛇に、不思議な語り口調で、話し掛けとった。
「ちぇっ!!ワチキの負けじゃい!!」
「じゅっじゅっじゅっ!!」
不思議な蛇が物凄く身体をくねらせ悔しがり、それを見て不思議な樹が不思議な枝を揺らしながら笑うと、不思議な葉が不思議な音を立てておった。しばらく不思議な蛇と不思議な樹の会話を聞いとると、どうやらワシが、お婆さんなのか、お爺さんなのかで、賭け事をしとったらしい。そして、不思議な蛇がポケットから、不思議な形のコインを不思議な樹に、渋々渡す光景を見ながらワシは、何とも言えん不思議な怒りが込み上げてきて、近くに浮いとった不思議な斧で、もろとも木こりの刑にしてやった。
「ちょいと、いきなり伐採かい?」
「いたたたた、せぼね、が、おれた、かも?」
「あんたらが失礼極まりないからだ!当然だ!」
「やれやれ、短気は特をしないってね。」
「いたたたた、はっぱ、が、ぬけた、かも?」
不思議な蛇は、ポケットから不思議な道具箱を取り出し、その中からホッチキスを取り出しおった。
「ギャア!!ギャア!!ギャア!!ギャアァァァァ!!」
何をするのかと見とったら、不思議な音を轟かせながら、不思議な切り株と不思議な樹をホッチキスしおった。
「とこでお爺さんみたいなお婆さんは、何処から来たんだい?」
「皮、剥いでやろうか?」
「それは困りものだよ。これ、この夏の新作なんだからね。剥ぐなら来年にしとくれよ。」
「なんか、ぐら、ぐら、する。」
「それがな。目が覚めたら、この不思議な国におったのさ。」
「国?ここは、森だよ?まあ、と言っても樹はコイツだけだけどね。」
「ほれ、あそこにある不思議な城。て事は、全体的には不思議な国だろ?」
「城?アレは、城と言うのかい?」
「違うのか?」
「違うのかい?」
「ワシが、聞いとるんだ!」
「なんか、なんか、みし、みし、いって、る。」
「ワチキ、この森から出た事ないからさ。アレが城だかキリンだか、キリンだか、城だか、さっぱり分かったもんじゃないんだよ。」
不思議な蛇が不思議な二択を展開しとる最中。
「にょろぽーん!!」
不思議な樹が不思議な悲鳴を上げて倒れおった。
「お大事に。ワシは、もう行く。」
「ちょいと、お婆さん。」
「ん?」
「あのキリンに行くんなら、コレを持って行くといいよ。きっと、役に立つからさ。」
そう言うと不思議な蛇は、不思議な道具箱からロケットランチャーを取り出し、ワシにくれおった。戦争でもおっ始める気か?と、思うたが、まあ、不思議な国でまともを思考したとこで、通用するはずもなかろうと思い、ワシは、ロケットランチャーを背中に担いで不思議な蛇と不思議な樹に別れを告げ、不思議な森を出た。森を抜け、上下が元に戻ると、今度は妙にフカフカしとる不思議な町に辿り着いた。
「婆さん!!」
妙にフカフカな不思議な町の妙にフカフカな不思議な道を歩いとったワシの前に、妙にトゥルトゥルな男が、妙にトゥルトゥルな犬を連れて現れおった。
「何か用か?」
「婆さん!!アンタまさか、爺さんじゃないよな!!」
「ブッ飛ばされたいのかい?」
「いやいや、無礼な質問をして悪かった。婆さんが婆さんならいいんだ。俺の勝ちなんだからな。」
「ガッデーム!!」
トゥルトゥルな男が連れたトゥルトゥルな犬は、不思議な形のサングラスを妙にフカフカな不思議な道に投げ捨て、悔しさをあらわにしとった。やっぱりブッ飛ばそうかとも思うたが、トゥルトゥルしとるトゥルトゥルな男とトゥルトゥルしとるトゥルトゥルな犬に打撃的な効果があるとは思えんかったから、ワシは無視して不思議な城へ向かう事にした。
「ヘイ!グランマッ!ウェイッ!」
すると、トゥルトゥルな犬がワシを呼び止めおった。
「城に行くプログラムか?」
「ああ、そうだ。」
「なら、やめとくがグッチョイスだぜ?」
「どうしてだ?」
「どうしてだ?」
トゥルトゥルな犬との会話に、トゥルトゥルな男も、ワシ目線で参加してきおった。
「婆さんは、きっとあの城に行けば、この国から出られる方法が見付かるかもしれないって考えだぞ?それを、どうしてお前が止める!それ以前に、どうしてお前が、さも内情を知ってるかの口振りで話を進める!お前、何者だ!」
まあ、だいたいの言いたい事は、トゥルトゥルな男が代弁してくれおった。
「猫だ!」
「猫だと!?」
「ああ、猫だ。プログラムOKか?」
「プログラムNOだ!NOに決まってる!俺はな!ペットショップの店員さんに、キリンだと言われたから、だからお前を購入に踏みきったんだ!」
「今まで黙っていて、ソーリーだマスター。」
「今更、謝られてもだぞ!けど、けど何と無く、何と無く違和感はあった!キリンじゃないかもって違和感は、そこかしこにあった!でもまさか、その嫌な予感がそこかしこ的中してるとは・・・・・・・・・。」
「本当にソーリーだ。でも、本当の本当は、猫でもない、ドラゴンだ!プログラムOK?」
「なら、OK!ドラゴンなら、OK!」
「そいつは、ハッピーだ!ん?グランマ、まだ居たのか?グズグズしてないで、早く城に行くプログラムを実行したらどうだ?」
とんだトゥルトゥルな茶番に付き合わされたワシの右手は怒りに震えたが、トゥルトゥルしとるトゥルトゥルな男とトゥルトゥルしとるトゥルトゥルな犬に打撃的な効果がない事をプログラムしとる以上、この不思議な国の妙にフカフカな不思議な町では、妙に何事も無かったと自分に言い聞かせ、改めて不思議な城に向かう事にした。
「婆さん!!待つんだ!!コレを持っていけ、必ず役に立つはずだ!!」
そう言うとトゥルトゥルな男は、トゥルトゥルな犬のランドセルの中からロケットランチャーを取り出すと、それをワシに手渡しおった。いや本気で戦争でもおっ始める気か?と、本気で考えたが、まあここは、やっぱり不思議な国でまともを思考したとこで、通用するはずもなかろうと思い、ワシは、二つ目のロケットランチャーも背中に担ぎ、トゥルトゥルな男とトゥルトゥルな犬に別れを告げ、妙にフカフカな不思議な町の妙にフカフカな不思議な道を真っ直ぐ突き進み、やたら不思議な城のやたら不思議な入り口に辿り着き、エレベーターに乗り込み、ワシは王の間へのボタンを押した。
「カチーン!」
特にエレベーターの中で何かやらかした訳でもないが、何と無く怒らせた感が否めない感じで、エレベーターのドアが開くと、目の前に不思議な国の不思議な王様がおって、ワシに一言こう激怒しおった。

第百六十二話
「戦争でも始める気か!」

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2009年7月29日 (水)

「第百六十三話」

「お前が、ヤったんだな!」
「ああ、俺が、ヤったよ。」

第百六十三話
「もぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「早いっ!!」
「何だと?」
「まだ、私がこの取り調べ室へ来て、1分も経ってないじゃないか!いやまあ、1分は経ってるかもしれないが、にしてもだ!早すぎるっ!」
「・・・・・・何を言ってるのか、さっぱりなんだが?」
「だから!ヤったヤってないの取り調べ室、特有の刑事と重要参考人との駆け引きじゃないか!」
「駆け引き?」
「そうだよ!取り調べの醍醐味と言えば、駆け引きと決まってるだろ!取り調べ室と言ったら、他に何も浮かばないだろ?それを何だ!ヤったんだな!ヤったよ。じゃないよ!ったく!」
「おいおいおいおい、刑事さん。頭、どうかしちまったのか?」
「どうかしちまったのかは、こっちの台詞だ!いとも簡単にヤったなんて言っちゃいやがって!それでも連続殺人鬼か!連続殺人鬼の端くれかっ!お前は!」
「・・・・・・・・・。」
「それはさぁ。私だってさぁ。あれだよ?実際に、ヤってないって言われたらさぁ。ああ、この人、4000%ヤってないんだとは思わないよ。でもさぁ。でも、こんなにもヤってるだなんて事は、予想もしてなかったよ!」
「ヤった事をヤったと言って、まさかこんなに怒られるとはな。」
「逆に怒られずに済むと思ってた、お前の神経を疑うよ!私はね。いい?私は、今日のこの日の為に、どれだけシュミレーションをした事か。こう言うであろう、ああ言うであろう、それはもう、ありとあらゆるパターンを頭に叩き込んで、何度も何度も、毎日、毎日、妻に小言を言われながらも、妻と愛犬7匹を相手に頑張って来たんだよ!えっ?それを何だ?何て言ったんだっけか?お前が、ヤったんだな!俺が、ヤったよ。だと!ふざけすぎるな!こんな陳腐なパターン!誰かが認めても、私は認めないからな!分かったかっ!」
「・・・・・・つまり、駆け引きをすればいいんだな。」
「当たり前だ!」
「やれやれ。」
「ヤったんだな!ヤってない。だぞ?」
「ああ。」
「ヤってない。だからな!」
「ああ。」
「行くぞ?」
「ああ。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「始めないのか?」
「だって何か、何か凄くやる気ない感が漂ってるじゃないか!何だよそれ、何なんだよ!何か?手抜きか?私みたいな老いぼれ刑事には、本気で駆け引きする必要ないってか?私みたいな老いぼれ刑事にする駆け引きは、持ち合わせてないってか?老いぼれ刑事なめんなよ!」
「別に俺は、なめちゃいないさ。」
「いやもう、その態度がなめてんだって!この取り調べ室に流れてるこの感じが私は、嫌っ!」
「・・・・・・・・・。」
「じゃあさぁ。私がバッターでさぁ。お前がピッチャーでさぁ。一打逆転の時だったらさぁ。どうすんの?お前、どうすんの?投げるだろ?本気で投げるだろ?」
「まあな。」
「だったら、頑張ろうぜ!頑張って行こうぜ!だって、今!それと同じ事が今!この空間で巻き起こってるんだぞ馬鹿野郎!」
「おいおいおいおい、とんでもない刑事が来ちまったもんだな。」
「行くぞ!」
「・・・・・・オーケー。」
「入って来るとこから行くぞ?」
「何だと!?」
「だってそうだろ?こんな緊張感のないような雰囲気だったら無理に決まってるだろ!一旦、リセットだよ!」
「リセット?」
「当たり前だ!」
「やれやれ、もう好きなようにしてくれ。」
「よし!じゃあ、取り調べ室に入って来ました。」
「やんないのかよ!」
「やりませんよ?何で?いけませんか?」
「いやだって、今の感じだったら実際にドアから入って来ると思うだろ!」
「私はなぁ。取り調べ室に一度入ったらなぁ。次、あのドアから出る時は、犯行を自供させた時と決めているんだ!」
「・・・・・・そりゃあ、ご立派な信念だ。」
「で、椅子に座りました。相手の顔を見ました。」
「いちいち言うのか?」
「臨場感だろ!」
「何がしたいんだよ。」
「だから!」
「分かった分かった。駆け引きだったな。」
「そりゃそうだろ!」
「続けてくれ。」
「顔を見ました。睨み付けました。相手も睨み付け返しました。・・・・・・・・・返しました!私も負けじと睨み付け返し返しました。」
「ちょっと待ってくれ。」
「何だ!」
「いったいいつ始まるだ?さっきそんな事してないだろ?のオンパレードだぞ?」
「アドリブだ!」
「アドリブってなんだよ。」
「緊迫感だ!盛り上げて盛り上げて盛り上げて、盛り上げる。」
「盛り上げっぱなしか?」
「私はなぁ。前半、盛り上げて、半ば以降、盛り下がるストーリーが、大っ嫌いなんだ!」
「盛り下がるって?」
「こうだよ!」
「そんな直角に落ちるストーリーないだろ!」
「うるさい!」
「やれやれ、もはや、掛ける言葉も浮かんできやしない。とっとと、盛り上がって終わりにしよう。」
「よし!」
「・・・・・・・・・。」
「返し返しました。お前も睨み付け返し返し返しました。私も負けじと睨み付け返し返し返し返しました。しばらく睨み付け合いました。」
「・・・・・・・・・。」
「緊張感走る中、私はいよいよ駆け引きの引き金となる一言を発する事を決意しました。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「お前が、ヤったんだな!」
「ああ、俺が、ヤったよ。」

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