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2009年7月 1日 (水)

「第百五十九話」

「・・・・・・・・・!?・・・・・・!?」
ここは?どこだ?声が、出ない。
「・・・・・・・・・。」
いや違う。出ないのではなく、出せないのだ。この真っ暗な場所には、空気が存在していない!
「・・・・・・・・・。」
ああ、やはりそうだ。私の考えは間違ってはいない。ここには、空気が存在しない。だから、声が出せない。これは、夢?夢なのか?私は今、奇妙な夢を見ていると言うのか?
「・・・・・・・・・。・・・・・・。」
空気が存在しない真っ暗な場所で、声の出せない夢を。いや、もしもこれが例え夢だとしても、私が空気の存在しない場所に居る、或いはその状況下に置かれている事には変わりない。夢とは、現実の影響を大いに受けやすい。それに、夢と考えて、考えを進めて行かない方が賢明だ。では、ここが現実だとして、やはり私が思う事は、ここはどこで、なぜ私は真っ暗な空気の存在しない場所に居るのだろうか?と言う事だ。
「・・・・・・・・・!!」
何度も確認する用心深い癖を妻には何度も注意されるが、叫んだとこで、やはり声は出ない。ん?妻?そうだ。私には、家族が存在する。家もあれば、会社にだって勤めている。いや、記憶を辿るのは、今はまだ早い。それは、賢明ではない。とにかく私が今すべき事は、現実を注意深く観察し理解し分析する事だ。
「・・・・・・・・・。」
声は出ない。それは空気の存在しない場所だからだ。それは、理解した。では次に私が考えなければならない事は、ここがどこだとか、なぜここに居るのだとかと言う問題ではない。そう、どうして私は生きているのだ?と言う事だ。常識的に考えて、人間が空気の存在しない場所で生きている事は、非常識だ。だが、現実はどうだ?私は、その非常識の真っ只中に居る。そして私は、次にこう考える。私は、死んだのか?と。しかし、私が仮に死んだとして、この状況は私の理念に反する。死後の世界などない、と言う私の理念に・・・・・・・・・。
「?」
待て、待つのだ!考えを考え直せ!この摩訶不思議な状況下で、己の理念に身を委ねるのは危険だ!死後の世界の有無を生きている人間が証明する事は、絶対的に不可能だ。だとすると、これが死後の世界?ならば、私はなぜ死んでしまったのだ?いや違う。そうではない。私が、どうやって死んだのかなど、今考える必要性は、ない!過去ではなく未来を考えるのだ。そう、仮にここが死後の世界だとして、私はこれからどう行動すればいいのだ?神?神に出会えばいいのか?この真っ暗な場所のどこかに存在する神に会えばいいと言うのか?神に会ってどうする?生まれ変わりの儀式でもしてもらうのか?いや、違う。話が飛躍し過ぎている。神に出会ってからの事ではなく、私はそもそも、ただただ真っ暗な広さも何も分からないこの場所で、神を見付ける事が可能なのだろうか?
「・・・・・・・・・!!」
神になら或いは、声にならないこの叫びが届くとでも言うのか?神々しい輝きを放ちながら、私の目の前に現れてくれるとでも言うのか?
「・・・・・・・・・!!」
いや、神が存在するならおそらく、この真っ暗な世界など、そもそも存在しない。この場所は、あまりにも意味不明で理解不能過ぎている。死後の世界が例え存在していたとして、こんなに説明不足ではないはず。だから私は、ここで改めて問う。いったいここはどこで、なぜ私はここに居るのだ?と。

第百五十九話
「ば、馬鹿な!?」

「プシュー!」
間も無くして私を覆っていたモノが開き、横になっていた私は起き上がり、このカプセル状の入れモノから外に出た。すると目の前には、防護服を着た女が立っていた。
「ここは?」
声が出る。それに、空気も光も存在する。カプセル状の入れモノからは、大量の水が溢れ出ている。足から伝わるその水の感覚で、初めて自分が裸だと言う事に気付いた。だが、それは問題ではない。裸であろうがなかろうが、辿り着く疑問は決まっている。そう、実験室のようなこの広い場所は、いったいどこで、私はなぜカプセル状の機械の中に居たのか?と言う事だ。そして、現時点で私が分かっている事は一つ。目の前の防護服の女が、神ではないと言う事だ。
「ここは、死後の世界です。」
「ば、馬鹿な!?」

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