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2009年7月 8日 (水)

「第百六十話」

 私は、地球の悲鳴をイチ早くキャッチした。それはもう、誰よりも先にだ。
「これでよし!」
だから私は、この地球を救う為、それを実行した。

第百六十話
「緑化計画」

全身を緑化した私は、緑茶を片手に緑道を歩いていた。小腹が空けば、雑草をむしっては食べ、むしっては食べと、道草を食っていた。更に、捕まえては食べ、捕まえては食べと、芋虫も食っていた。それが不味いとか気持ち悪いとかは関係無い。これは緑化であり、そして地球にしてやれるこれが私の精一杯の緑化なのだから、余計な事を考えている余地などない。そして、改めて良かったと思う。なぜならもし、仮に地球の悲鳴をイチ早くキャッチした私が、誰よりも先にキャッチした私が、緑化恐怖症だったとしたら?と考えただけでも背筋が凍り付いてしまう。
「ん?」
それは、いったい私がどれくらい緑道を往復した頃だっただろうか?もはや、緑道を緑道だと、呼べない程になっていた頃だ。そう、私が丁度、ただの道と化してしまったこの緑道を後にして、他の緑道へ行こうとバッタを口に放り込み、緑茶で一気に流し込んだ時だった。私の方へ向かって真っ直ぐと、あからさまに歩いて来る人影が見えた。元々真っ直ぐな緑道なのだから、真っ直ぐ私の方へと向かって歩いて来るのは、何ら不思議な事はないのだが、遠くから見てもあからさまな人影が、あからさまに近付いてくるにつれ、それがあからさまに女だと分かった私は、赤裸々な女の赤面を見るなり、身構えた。
「君は?」
「アタシ?見て分からない?アタシは今、赤化計画を実行中なの。」
そう言うと女は、トマトジュースを一気に飲み干し、話を続けた。
「これは地球の為なの。アナタには分からないかもしれないけど、地球は今、物凄い悲鳴を上げているの。」
そして、話し終わると女は、持っていたイチゴの種を取り、赤い部分だけを食べ、ヘタがついていると言うのに、地面へ投げ捨てた。私は、それを拾うと、ヘタの部分を食べ、残りを地面へ投げ捨てた。
「アナタこそ何者?用がないなら邪魔だからどいてくれる?アナタがそこに立ってると、アタシが赤道を歩けないでしょ?」
そう言って女はスイカを割ると、種を取り中身を食べ、残りを地面へ投げ捨てた。私は、それを拾うと、緑の部分だけを食べ、残りを地面へ投げ捨てた。
「いいか?よく聞くんだ。私は、緑化計画を実行している者だ。」
「緑化計画?何それ?」
「地球は悲鳴を上げている。」
「知ってるわ。」
「なら、今すぐに赤化計画などとふざけた計画は、中止するんだ!」
「はあ???アナタ、頭どうかしちゃってるんじゃない?アタシが赤化計画を中止しちゃったら、いったい誰が赤化計画を実行するって言うの?」
「そんな計画を実行しても地球が救えないのが、まだ分からないのか!」
「その言葉、そのまま赤いリボン付けてアナタに返すわよ。」
「そこは緑のリボンにしておけ!」
「うるさいわね。アタシは、誰が何と言っても、赤化計画を中止するつもりはないわ。だってそれが、地球の為なんだもの。いちいち、アナタにカビ臭い事を言われる筋合いなんてないわ。」
「違う!地球は、赤化計画など求めていない!地球が求めているのは、地球が望んでいるのは、緑化計画だ!」
「いいえ、違うわ。赤化計画よ。」
「どっちもハズレだ。」
「誰だ!?」
「誰なの?」
「俺かい?俺は、ご覧の通り、黒化計画を実行中の男さ。」
そう言うと男は、地面に落ちているスイカの黒い種と黒い部分を食べると、残りを投げ捨て、それらを墨汁で一気に流し込んだ。男が国道を歩いている事と背中に担いでいる黒板には、少し疑問が湧いたが、とにかく私の目の前には、赤化計画の女がいて、赤道上の緑道の横の国道には、黒化計画の男がいる。
「黒化計画だ!」
「赤化計画よ!」
赤化計画の女と黒化計画の男が言い争っている様子を目にして私は、思った。いったい地球上で今、どれ程の化が同時に実行されていると言うのだ?と。その時だった。快晴だと言うのに、急に我々の回りだけが曇りだしたのだ。
「ヤレヤレ、若イモンガ集マッテ何ヲ言イ争ットルノカト思エバ、実ニ下ラン事ヲ。」
「!?」
「!?」
「!?」
老人は、驚く我々を見て嘲笑いながら空中で体操をしていた。
「地球ヲ救ウノハ、緑デモ赤デモ黒デモ、ドノ計画デモナイ。地球ヲ救ウノハ、ワシノ機械化計画ダケジャヨ。」
私は、何か地球に良からぬ事態が巻き起ころうとしているのでは?と、妙な胸騒ぎに襲われた。

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