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2009年8月26日 (水)

「第百六十七話」

 私が今いる場所。メガネだらけの場所。通常、こう言った場所をメガネ販売店とでも言うべきだろうか?だが、ここは、あまりにもメガネだらけだ。床にも天井にも
「いらっしゃいませメガネ~!」
そして、店員にも、とにかく通常のメガネ販売店と言うには、メガネ過ぎる。
「メガネをお探しでしょうか?メガネ~?」
「ああ。」
世にも不思議で、奇妙な出来事と言うのは、連鎖するのだろうか?ならば、世にも不思議で、奇妙な出来事に取り込まれてしまったら最後、人はその呪縛から脱け出す事は不可能なのだろうか?
「でしたら、お客様!とっておきのメガネがございますメガネ~!」
「頼む。」
「かしこまりましたメガネ~!」
実は、なぜ私がこんなにもアンバランスなメガネを掛け、こんなにもメガネだらけのメガネ販売店に来たのかには理由がある。それは、メガネだらけのメガネ販売店に立ち寄る羽目になった世にも不思議で、奇妙な出来事が起きたからだ。家を出た時には、もちろん私のメガネは、最高にバランスが保たれていた。しかし、本屋に行く途中で、世にも不思議で、奇妙な出来事に遭遇してしまった。私は、道に落ちていたバナナの皮を避けようと出したその足で、別のバナナの皮を踏んで転びそうになり、踏ん張ろうと前へ出した反対側のその足で、また別のバナナの皮を踏んでしまった。そして、そのまま地面へ顔面を直撃し、メガネがこんな姿に成り果ててしまったと言う訳だ。因みに、両方の鼻の穴にバナナの皮が詰まっているのは、その時にバナナの皮が鼻の穴に入り込んだのではなく、鼻血を止める為の苦渋の決断によるものだ。とにかく、バナナの皮だらけの道の次に辿り着いた場所が、メガネだらけのメガネ販売店だったと言う訳だ。
「お待たせ致しました。こちらのメガネなど、いかがでしょうか?メガネ~?」
そして私は、こんな世にも不思議で、奇妙な出来事の連鎖など、もう懲り懲りだ。連鎖を早く断ち切る為にも、早いとこメガネを選んで、早いとこ立ち去ろう。そう固く決心した。
「少し派手じゃないか?」
「こちらのメガネ、大変スペシャルなメガネでして、メガネを掛けると、何と!空を飛ぶんですメガネ~!」
「馬鹿な!?メガネを掛けただけで、空を飛ぶって言うのか?」
「はい、メガネが!」
「メガネが?」
「こちらのデザインがお気に召さないのであれば、こちらのメガネは、いかがでしょうか?メガネ~?」
「メガネが・・・・・・?」
「こちらはですね。メガネを掛けると瞬間移動するんですメガネ~!」
「空間を自由に移動出来るってアレか!メガネを掛けるだけでか?」
「はい、メガネが!」
「メガネが?」
「そしてこちらのメガネはですね。何と!メガネを掛けると透明になるんですメガネ~!」
「メガネが、か?」
「はい、メガネが!」
「ちょっと、確認したい事がある。」
「はい、何でも聞いて下さいメガネ~。」
「キミの語尾のメガネのお陰で少し私の頭の中が混乱しているんだがな。はい、の後の、メガネが、って言うのは、飛んだり瞬間移動したり透明になるのは、メガネだけがって、事か?メガネだけが、そうなるって言う意味なのか?」
「そうです。」
「聞きたい事が、何個かあるんだが、いいか?」
「はい、どうぞ!メガネ~!」
「まず、その語尾のメガネ、メガネだらけのメガネ販売店のメガネだらけのメガネ販売員だから受け流していたが、付けるなら付けるで統一してくれないか?」
「大変申し訳ございませんでした。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・あっ!メガネ~!」
「いや無理矢理だったら、付ける方に統一しなくて結構だよ。いやね。私は、てっきり付ける方に統一しようとしているのだと思っていたからね。付けないのだね?付けない方向で、いいのだね?」
「付け・・・ないで!」
「分かった。まずは、解決だ。」
「良かったです。で、ですね。次にこちらのメガ」
「ちょっと待ちなさい。まずはと言ったはずだぞ?まだ言いたい事はあるんだ。」
「大変失礼致しましたメ・・・・・・。おっと!」
「さて、本題に入ろうか。キミが私にオススメしたメガネ、つまりあのメガネ達は、掛けるとメガネだけに起こる現象と言う訳だ。」
「そうでございますメガ・・・・・・。おっとっと!」
「そんなに付けたいのなら付けなさいよメガネって!おっとっと言うぐらいなんだから、うっかりって事なんだろ?つまりそれは、普段はメガネって、語尾に付けているって事なんだろ?私はね。語尾にメガネが付こうが付くまいが、どうだっていいのだよ!そんな事よりもだ!メガネを掛けて、メガネだけが、空を飛んだり瞬間移動したり透明になったりしたら、私はメガネを見失う一方ではないか!ん?いや待てよ?メガネが透明になるなら、それはそれでメガネを掛けているにも関わらずメガネを掛けていないように相手からは、見えると言う訳か。」
「そうでございますメガネ~!」
「よし!だったら、その透明になるメガネを買おう!」
「ありがとうございます。それでは、お客様、左右どちらが透明になるメガネに致しましょう?メガネ~?」
「なるほどね。語尾の時には伸ばすのかって、そんな発見はどうでもいい!左右って何だ?左右って!」
「ですから、掛けると左半分が透明になるメガネと、掛けると右半分が透明になるメガネでございますメガネ~。」
「ちょっと待ってくれ、確かキミは、こう答えたはずだ。そうでございますメガネ~!とね。」
「ですから、掛けると左半分が透明になるメガネを掛ければ左側の人から、掛けると右半分が透明になるメガネを掛ければ右側の人から、と言う意味でございますメガネ~。」
「変な人か!キミは、私に変な人になれと言うのか!どうして、左側と右側が透明になるメガネが作れて、両方が透明になるメガネが作れないのだ!」
「すぐにメーカーに問い合わせてみますので、少々お待ち下さいメガネ~!」
「いやいいよ。」
「ですが、お客様!もしかしたら、お客様が待ち望んでらっしゃる左右透明メガネが製造されているかもしれませんメガネ~!」
「いや、待ち望んでらっしゃいませんよ。あったらいいなってだけの話であって、別に普通のメガネで十分なんだよ。」
「そうでございましたかメガネ~。」
「で?普通のメガネは、どの辺にあるのかな?」
「普通のメガネでございますね?メガネ~?」
「ん?あの特売品の棚辺りかな?」
「あちらは、掛けると爆発するメガネとなっておりますメガネ~!」
「爆発!?」
「はい、メガネが!」
「いや、そりゃメガネが!じゃ済まないだろ!」
「またまた、ハハハハハ~!メガネ~!」
「笑い事じゃないだろ!笑い事じゃ!だから、特売品かって気にもならないよ!普通のメガネだよ!私は、普通のメガネでいいのだから、早いとこ普通のメガネが置いてある場所を教えてくれれば、後は自分で選ぶから、キミはそれでメガネを作ってくれればいいのだよ!」
「お客様?メガネ~?」
「ん?ああ、レンズなら、今掛けてるアンバランスなメガネのヤツを使ってくれ、幸いレンズは無事だったものでな。それで?普通のメガネは、どこだ?天井か?床か?それとも、キミか?」
「普通のメガネは、ございませんメガネ~!」
「何でだっっっ!!!」

第百六十七話
「右側だけメガネを掛けている男を見ました」

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