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2009年9月

2009年9月 2日 (水)

「第百六十八話」

 私は、あるあると言われ続けている割に、今まで誰もソノ実態を掴みきれていなかった村を、遂に発見した。私は、考古学者でもなければ、ましてや冒険野郎でもない。強いて言うなら、あるあると言われ続けているけどなかなかソノ実態が掴みきれてないモノが、嫌いな者だ。普段は、町で郵便を配達している手書きマニアな単なる郵便仕分けと郵便配達好きの郵便職員だ。
「ここが・・・・・・不老不死の村。」
そう、私が仕事の合間をぬっては長年探し続けていたのは、あるあると言われ続けている割に、今まで誰もソノ実態を掴みきれていなかった不老不死の村だった。
「なるほど、確かに不老不死の村だ。」
配達もそこそこに、この日も不老不死の村を探す事にした私だったが、まさか配達物をそこそこ残しつつ辿り着いた地図にも載ってない秘境で、念願のあるあると言われ続けている割に、今まで誰もソノ実態を掴みきれていなかった不老不死の村を発見する事が出来るなど、誰が予想出来ただろうか?私は、喜んだ。喜び上がった。あるあると言われ続けているけどなかなかソノ実態が掴みきれてないモノが、嫌いな者にとって、あるあると言われ続けているけどなかなかソノ実態が掴みきれてないモノを発見した時の幸せは、きっと誰にも予想出来ないぐらい予想以上の幸せだ。だが、喜びも束の間、一目見て不老不死の村だと分かった瞬間、私の頭の中では、多くの不思議が浮かんでは沈んでいった。
「22、23、24。」
村人の数を数えたが、24人しかいない。郵便の職務で鍛えられた私だ。まず数え間違いなど考えられない。仮に村人が何処かの物陰に隠れているとしてもだ。おそらく30人前後と言う数字には、変わりないだろう。不思議ではないか?不老不死の村の不老不死の村人の数が、なぜこんなにも少ないのか?村人が不老不死ならば、村人の数は増え続けなければ、おかしい。だがどうだ?どう数えても村人は、24人だ。では仮に、不老不死の村の不老不死の村人に、繁殖機能の著しい低下と言う仮説を企ててみようではないか。しかし、それでは逆に、今度はあまりにも24と言う数字が大きくなってしまう。だが、私の大胆な仮説は、不敵にも的を得ているに違いない。それとも或いは・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・いや、まさかな。」
もっともっとこの不老不死の村に留まり、不老不死の村人の実態を掴みきりたいと思ったが、私には鞄に入っている数週間前の郵便物を配達しなければならないと言う使命が残されていた。好奇心か使命感かと問われたら、間違いなく即座に使命感を選ぶ私にとって、これ以上、不老不死の村の謎へ深入りする理由はなかった。しかし、不老不死の村がいつに日か誰かの手によって発見され、不老不死の村人の人数の不思議についての実態には、きちんとした理由が、あるあると言われ続けている割に、誰もソノ実態を掴みきれていなかった時には、またこの不老不死の村を訪れ、不老不死の村人のソノ実態を掴もうと心に決め、私は自転車のペダルを漕ぎ不老不死の村人達に手を振り別を告げ、通常業務へと戻る事にした。
「不老不死の村と言うよりもアレだな。」
町へと向かう帰路のジャンルの中、私は思った。

第百六十八話
「赤ちゃんだらけの村」

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2009年9月 9日 (水)

「第百六十九話」

そりゃあ、泣きたい日だってあるさ。

第百六十九話
「beautiful day」

美しい空があり、美しい風が吹き、美しい風景が一望出来る丘の上の小さな公園。





本当に今日は、何て美しい日なんだろう。





そんな日のそんな小さな公園のすべり台の上でボクは一人、泣いていた。

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2009年9月16日 (水)

「第百七十話」

「結局、あほー、が吼えまくる。世の中、あほー、が吼えじゃくる。」
僕は、7人の追っ手に追われていた。
「吼えて、吼えて、吼えまくる。吼えて、吼えて、吼えじゃくる。」
長さの違う刀を左右の手に持った男は、何やら人生を悟ったような口調で、ジリジリと、丸腰の僕との間合いを詰めて来ていた。
「あほー、ってのは、僕の事ですか?」
「あほー、が、あほー、を自覚する。あほー、が、あほー、を認知する。その時、既にこの世に、あほー、の姿はない!」
男の双剣が僕の首と胴体を切り離そうとする前に、一瞬早く僕の鎌が男の首と胴体を切断した。
「・・・・・・・・・間に合いましたね。」
片膝を付き、屈み、片腕を伸ばして手にした鎌を見上げながら、僕は安堵と殺意に包まれていた。
「見事じゃな~い?ブーメランな感じってわけ~?フェイクだったわけ~?わざとなんだ~!わざと、大きな鎌を外して投げたんだ~!すんご~い!」
明らかに不利な体制で、戻って来た鎌をキャッチした僕の目の前に、ほぼ裸状態のカウガールが現れた。眉間に当てられたショットガンの銃口が、ひんやりと僕の体も心も冷ましてくれた。出来ればこのまま清涼感の中で、眠りたいと思ったけど、永遠の眠りに付く気は、なかった。
「どうする?ど~する?このまま、死んどく~?それともな」
カウガールは、ミスを犯してなどいない。口調とは裏腹に、その行動は冷静で正確だった。戦いにおいて気を付けなければならないのは、1つの戦いが終わった後に出る隙だ。カウガールのそれは、そんな僕の隙をツイての行動だった。間違いじゃない。そう、大正解だ。
「危なかったですよ。」
でも、戦いにおいて、隙を作った相手に対して2つ気を付けなければならない事がある。1つは、絶対的優位に立った時の余裕だ。だけど、話し終わる前にカウガールがショットガンの引き金を引いていたのは、明らかだった。カウガールは、それもクリアしていた。でも、カウガールには、自分が話し終わる前に、僕の鎌が槍に変形する事は、分からなかった。
「ドサッ!」
そう、もう1つは、相手の奥の手には気を付けろだ。真逆に言うなら、奥の手は、最後の最後まで見せてはならないって事だ。カウガールの心臓を貫いた槍を引き抜くと僕は、洞窟の出入口へと向かった。追っ手は、あと5人。
「やあ!」
メガネの彼は、右手を上げて僕に挨拶をしてきた。僕の嫌いな人間の行動の1つが先回りだ。騙された感、優越感に浸る相手の顔、劣勢を生み出すシステム、このどれもが僕の心を不愉快にさせる。僕が、おにぎりよりもサンドイッチの方が好きな理由は、そこにある。
「さあ!ゲームを始めようか!死神君!」
まるで安易なこのニックネームが気に食わない。大きな鎌を武器にしてるからって、死神?まるで頭が悪すぎる。あまりにも目で見た事実を事実として、真に受けすぎている。だから、そう言ったあとメガネを得意気にクイッと上げたメガネの彼は、死んだんだ。目の前の僕に気を取られすぎて、真後ろに立つ爆弾女に気付かなかったんだ。僕の追っ手が7人いるって言ったけど、7人が7人、別に仲間同士ってわけじゃない。そう考えると、僕よりも追っ手の方が命懸けって事なのかな?
「次は、貴方が吹き飛ぶ番ね。」
高級な衣装と装飾品に彩られたモデルのような女の出で立ちを見ていると、女が手にしている爆弾にも宝石が散りばめられているんじゃないかって錯覚してしまう。
「実際に会ったら、なかなかイイ男じゃないの。こんな形で出会っていなければ、恋人の1人として付き合って上げても良かったかもしれないわね。」
「それは、光栄な事です。」
この爆弾女の泣いた顔が見てみたいと思ったけど、おそらくそれは、叶わない。プライドが高い女が、人前で涙を見せるわけがないだろうし、ましてや泣いて僕に命乞いなんてするわけがない。時には、願望を願望のままにしておく事も必要だ。
「準備はいい?」
「まだです。って言ったら、待ってくれるんですか?」
「ええ、待つわ。お互い、準備万端で戦いたいですもの。当然よ。」
それが、背後からメガネの男を爆破した者の言う事かと思ったけど、メガネの男のメガネが爆発した事を考えると、それはそれで真正面からなのかもしれない。いや、それ以前に、既にメガネの男が爆弾女の手玉に捕られていたんだろう。
「でも待つのは、準備万端じゃない場合だけよ。貴方は、既に臨戦態勢だから、待って上げないわ。」
バレてた。まあ、バレるか。また、洞窟内に逃げようとも考えたけど、それは得策じゃない。洞窟内で爆弾女を始末出来たとしても、袋小路の洞窟内では、どうしてもまた連戦をせざるを得なくなる。いくらなんでも、それじゃあ、僕が死んでしまう。今、僕にとってもっとも最優先すべき事は、休息だ。
「さよなら。死神さん。」
死神に、さよならなんて、ジョークにしては、最高のジョークだ。と、同時に投げられた無数の爆弾の雨を掻い潜り、爆風の衝撃波を乗りこなし、僕は爆弾女との距離を一気に縮め、その透き通るような細い首へ鎌を突き付けた。
「どうやら、貴方の事をだいぶ甘く見ていたようだわ。」
「のようですね。」
「でもなぜ?なぜ、一思いに切らないの?わたくしに、惚れた?」
まさか?これは、笑えないジョークだ。僕だって、一気に切断するつもりだったさ。
「つくづく貴女は、策士ですね。」
「何が?」
「やれやれ、だって僕がもし、貴女の首を切断していたら、貴女も僕も木っ端微塵じゃありませんか。」
「ふふ。鋭いのね。私の方が惚れそうだわ。」
既に僕が惚れているみたいな言い回しは、気になったけど、もっと気になったのは、この非常にマズい状況だ。もちろん、爆弾女の首を切り落とせば、それがきっかけで爆弾女は爆発して、僕もろとも木っ端微塵になる。でも、僕が気になっているのは、そこじゃない。それなら僕が首以外を切り落とせば済む話だし、何よりも僕に主導権がある。気になっているのは、爆弾が爆発するって事は、爆弾を爆発させられるって事だ。
「気になる?」
「ええ、気になります。」
ここは時間をなんとか稼がないといけない。
「わたくしが、いつ自爆するかが?かしら?」
「ええ、そこんとこが妙に気になって気になって、しょうがないです。」
武器変形には、少しだけ時間が掛かる。チャージの時間を稼がないと、僕は確実に死ぬ。
「何に変形させるつもりなのかしら?」
「何でしょう?」
「槍?」
「いいえ。」
「大剣?」
「いいえ。」
「バズーカ砲?」
「いいえ。」
「火炎放射器?」
「違います。」
いったい爆弾女が、武器変形をどこまで知り尽くしているのか無性に気になって気になって、しょうがなかっ

「ボカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!」

女は、何の躊躇もなく、爆発した。
「正解は、盾です。」
けど、もちろん僕の方は生きている。全身に激痛が走る中、盾を鎌へ戻すと僕は、崩れ落ちる洞窟の出入口から、足を引き摺りながら出来るだけ遠くへと走った。外はあいにくの晴天と大草原、身を隠すには最悪の条件だった。
「いててて、これ確実に何本か骨、いっちゃいましたね。」
晴天と大草原と負傷、でもそれらは、ほんの些細な、気にしなければ気にならないぐらいの最悪だった。本当の最悪は、僕の目の前にあった。
「休息が必要なんですけどね。どうも、そう言うわけには、いかないみたいですね。」
そこには、細身で長身のおじいさん、の横に小型犬を2匹連れた少女、そして少女を挟んで太っちょで大柄な男が立っていた。

第百七十話
「あと3人」

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2009年9月23日 (水)

「第百七十一話」

「遂に!遂にやったぞーっ!!!」
早朝、隣の部屋に住むマッドな博士が、今日もまた、大声で歓喜の雄叫びを上げていた。

第百七十一話
「隣人注意報」

「やれやれ。」
僕は、力無く呟き、虚ろな目で測定器に目をやると、画面には、赤く0%と表示されていた。
「いったい何がそんなに、遂にやったんだか。」
このマンションの角部屋に入居して1年が経つけど、隣人に会ったのは、数回ほどだった。博士な出で立ちの老人。それが僕の隣人だ。
「わしの勝利じゃーっ!!!」
「・・・・・・・・・。」
実際、本当に博士なのかもマッドなのかも何を研究してるのかも何を発明してるのかも、何もかも何一つ知らない。本当は、ただ単に普通のスポーツ観戦好きの賭け事好きの老人なのかもしれない。分かっている事は、僕の部屋に取り付けてある、隣人注意測定器の数字がいつも0%を示しているって事だけだ。つまりそれは、マッドな博士な隣人が僕に危害を加える確率が0%って事だ。初めは不安で、もしかしたらと思ってメーカーの人に何度か測定器を見に来てもらったけど、測定器は正常に稼働していて、故障なんてしていないって答えがいつも返ってくるだけだった。
「・・・・・・おめでとうございます。」
目をつぶりながら僕は、マッドな博士にお祝いのメッセージを贈った。もちろん、マッドな博士の事は気になった。いったい、いつもいつも、部屋で何をしているんだろう?いったい、どんな人生を歩んで来た人なんだろう?家族構成は?友人関係は?収入源は?って、本心では気になって気になって、しょうがなかった。でも、気にしてもしょうがない。だって、僕がマッドな博士の部屋を訪ねて行く事なんて、100%有り得ないからだ。別にそれは、マッドな博士に限った事じゃない。隣に誰が住んでようと、僕は隣人と関わる気なんてまったくないからだ。どうせ仲良くしたって、どうせ親しくなったって、結局最後には下らないトラブルに巻き込まれるのオチだ。なら、初めから関わらないのが賢明な判断ってもんだ。
「・・・・・・寝るか。」
午前5時を刻む時計を虚ろな目で見ながら僕は、再び夢の世界へと旅立つ事にした。

第百七十一話
「隣人注意報」

「遂に!遂にやったぞーっ!!!」
この1年間、日々、研究と発明を積み重ね、明け暮れて繰り返し、やっと、やっと遂に今日!今日この時!待ちわびていたこの瞬間を迎える事が出来た!
「わしの勝利じゃーっ!!!」
鉄壁のカラクリ要塞と化した部屋を見渡しワシは、堂々と勇ましく勝利宣言をした。
「さあ、来るならいつもでも来てみぃ・・・・・・・・・。」
そして、1年間ずっと100%を叩き出している角部屋側の測定器を睨み付けながらワシは、呟いた。

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2009年9月30日 (水)

「第百七十二話」

 僕も暇だったし、彼もまた暇だったから、出会ったばかりの僕らは、沼の近くの横たわった大木の上に腰掛けて、少しだけ話をする事にした。
「現実に存在するとは、思いませんでした。」
「カパパパパ!」
僕がそう言うと、河童は笑ってた。
「そんなもんさ。」
えっ!?って、思ったけど、まあ、別に河童がタバコを吸わないなんて一度も聞いた事ないし、何と無くこの方が妙に現実的だなって、妙に納得した。
「吸うかい?」
「タバコは、吸わないんで、大丈夫です。」
「なら、消した方がいいかな?」
「いえ、吸ってて構いませんよ。ありがとうございます。」
僕は本当は、愛煙家だ。でもこの場合、妙に緑で、煙まで妙に緑な何だかとても妙にキュウリっぽいタバコを吸いたくなかっただけだった。
「人間がこんな森の奥深くの沼まで来るなんて、いったいどんな事情なんだ?」
「・・・・・・・・・。」
こんな機会、滅多にないだろうから、頭の上の皿を触ってみたいけど、触ったら怒られるかな?
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
割ったら死ぬのかな?
「・・・・・・・・・まあ、言いたくないなら、別に深くは追求しないさ。」
「えっ!?ああ、何で僕がこんな所に来たかですよね?自殺です。」
「自殺!?」
ジュッ!って、河童が持ってるタバコを取り上げて、お皿にジュッ!ってしたら、激怒かな?死ぬかな?死んでしまうのかな?
「疲れちゃったんです。僕を取り巻く何もかもに・・・・・・・・・。」
「そうかい。」
あっ!!そうか!そうだったのか!河童がキュウリを好きだって解釈、間違ってたんだよ!
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
河童は、手にヒレがあるから、人間みたいに指の間に挟んでタバコを吸うって事が出来ないんだよ!だから、ああしてタバコを握って吸ってるんだよ!それがあたかもキュウリを食べてるかのように見えたんだよ!初めて見た人の勘違いだったんだよ!いや、でも待てよ?その光景を見てキュウリが好きだって思うには、あのあまりにもモクモクと立ち上る妙に緑色の煙りは、無視出来ないぞ?
「でも、やめました。自殺するの。」
「ん?」
ならやっぱり、キュウリが好きなのかな?聞いてみようかな?キュウリは大好物なんですか?って、聞いた方が早いよな?でも、怒られたらどうしよう。カパパー!!って、怒られたらどうしよう。カパパパパー!!って、怒られちゃったらどうしよう。
「何か、自殺したって、何かが解決される訳じゃないし、死んだって死ななくたって、どうせ何も変わらずいつもと同じなら、生きてて何かをまた一からやり直してもいいかなって、ただ単に生きてるってだけでも、それはそれでいいかなって。」
「ああ、そうだな。」
「それに・・・・・・・・・。」
「ん?」
・・・・・・・・・・・・・・・よし!
「大好物のキュウリをお腹一杯食べるって言う、幼い頃の夢もまだ叶ってませんしね。」
どう?どうなわけ?本当のとこ、どうなわけよ?
「なるほどな。」
だけ?それだけ?だったら俺の家に来いよ的な、キュウリなら腹一杯食わしてやるよ的な、丁度、今朝、俺が丹精込めて育てた上等なキュウリを収穫したとこなんだよ的な、お前ツイてるな的な、うまいぞ?家の嫁のキュウリづくし料理は的な、何なら今日は家に泊まってくか?的な、水中だから無理か!カパパパパ!的な、そんな答えを期待してたのに、まあでも、そんな僕自身があんまりキュウリを好きでもないから、それはそれで困るか。
「生きてれば、そのうち良い事だってあるさ。まあ、在り来たりな言葉だけどな。カパパパパ!」
「キュウリ、お腹一杯食べれるとか?」
「かもな?カパパパパパパパパ!!」
好きじゃないにせよ嫌いじゃないにせよ。大好物じゃないんだって事は、これでよーく分かった。なら、定説が一つ崩されたんならだよ?ありかな?
「ん?どうしたんだ?急に立ち上がったりして?」
イケるかな?
「もう、帰るのか?」
かかと落とし、イケるかな?
「ん?どうしたんだ?俺の頭に何か付いてるのか?」
「・・・・・・・・・。」
やるなら今だ!今しかない!河童が油断してる今しか!
「・・・・・・・・・。」
「おい?大丈夫か?気分でも悪くなったか?」
「・・・・・・・・・。」
ダメだ!僕には、かかとを落とす事が出来ない!僕の身勝手な好奇心で、お皿を割って本当に河童が死んじゃったら、この思った以上に優しい河童が死んじゃったらって考えたら、無理だ!
「いえ、ちょっと深呼吸をしようと思って、スー、ハー!うん!これぞ生きてるって実感です!」
「だな!カパパパパ!」
「よっこいしょっと。」
「人間、お前なかなか面白いな!カパパパパ!」
いや、河童。貴方の方がよっぽどだよ。よっぽど面白いよ。いや、面白過ぎるよ!でもたぶんこれって、初めて会ったってのもあるし、この何とも言えない幻想的な風景も手伝っての事もあるんだろうし、仮にもし、都会のど真ん中で河童に出会ったら、イラっと来るかもしれないな。いや、確実にイラっ!だな。
「人間!」
「はい?」
あれ?そう言えば?
「生きるってのは、難しいな。」
「ええ、とても。」
あんまり臭くない。てか、全く臭くない。
「でも、生きるってのは、楽しいな。」
「はい、とても。」
何かもっと河童って、生臭さ満載なのかと思ってたけど、川魚的な感じだと思ってたけど、無臭だ!
「だってよ。もし、生きてなきゃ、こうして俺とお前が話をするなんて、なかったんだからな。」
「そうですね。」
甲羅?甲羅がもしかして?超脱臭?超脱臭素材なの?そんな素材で出来てるの?だったら大発見だよ?これって、悪臭界に大革命だよ?
「生きるってのは、何が起こるか分からないもんだ。良い事も、悪い事も、な。」
「はい。」
聞く?聞いちゃう?本当は、凄く臭いんですか?って、物凄く臭いんですか?って、鼻がポロッと取れちゃうくらいですか?って、聞いちゃう?
「だから、面白い!」
「ですね。」
いや、無理だな。普通の人間に対しても聞けないもんな。河童になんて、とてもじゃないけど、無理だよな。きっと無臭なんだよ。そだよ!河童は元来、無臭なんだよ!河童が悪臭だって文献、読んだ事ないし、こればっかりは、僕の単独な思い込みだったんだよ!
「・・・・・・・・・。」
「ん?どうした?」
それにもう、河童があーだとか、こーだとか、何もかもどうだっていいや!僕が居て、横に河童が居て、僕らは会話をしてる。そこに何か余計な詮索なんて必要ない。必要ないんだよ。今を満喫すべきなんだ!
「楽しいですね!」
「ああ、楽しいな!」
「カパパパパ!」
「アハハハハ!」
河童が笑って、僕が笑って、僕が笑って、河童が笑って、笑って笑って、楽しくって、おかしくって、気付けば数時間も経ってた。
「カパパパパ!」
「アハハハハ!」
でも、それでいいじゃん!!
「あのう?」
「ん?もう行くのか?」
「はい。」
「そうか。」
「凄く楽しかったです!ありがとうございました!」
「俺もこんなに笑ったのは、久し振りだ!ありがとう!」
「じゃあ、僕は行きます。」
「気を付けてな。」
「メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
僕は、河童に見送られ、来た道を戻り、気付けば見慣れた街並みの特別な日を彩る為のイルミネーションの風景を見ながら、人混みの日常の中、信号が変わるのをボーッと待ってた。

第百七十二話
「ところで河童って、卵で産まれてくんの?」

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