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2009年9月23日 (水)

「第百七十一話」

「遂に!遂にやったぞーっ!!!」
早朝、隣の部屋に住むマッドな博士が、今日もまた、大声で歓喜の雄叫びを上げていた。

第百七十一話
「隣人注意報」

「やれやれ。」
僕は、力無く呟き、虚ろな目で測定器に目をやると、画面には、赤く0%と表示されていた。
「いったい何がそんなに、遂にやったんだか。」
このマンションの角部屋に入居して1年が経つけど、隣人に会ったのは、数回ほどだった。博士な出で立ちの老人。それが僕の隣人だ。
「わしの勝利じゃーっ!!!」
「・・・・・・・・・。」
実際、本当に博士なのかもマッドなのかも何を研究してるのかも何を発明してるのかも、何もかも何一つ知らない。本当は、ただ単に普通のスポーツ観戦好きの賭け事好きの老人なのかもしれない。分かっている事は、僕の部屋に取り付けてある、隣人注意測定器の数字がいつも0%を示しているって事だけだ。つまりそれは、マッドな博士な隣人が僕に危害を加える確率が0%って事だ。初めは不安で、もしかしたらと思ってメーカーの人に何度か測定器を見に来てもらったけど、測定器は正常に稼働していて、故障なんてしていないって答えがいつも返ってくるだけだった。
「・・・・・・おめでとうございます。」
目をつぶりながら僕は、マッドな博士にお祝いのメッセージを贈った。もちろん、マッドな博士の事は気になった。いったい、いつもいつも、部屋で何をしているんだろう?いったい、どんな人生を歩んで来た人なんだろう?家族構成は?友人関係は?収入源は?って、本心では気になって気になって、しょうがなかった。でも、気にしてもしょうがない。だって、僕がマッドな博士の部屋を訪ねて行く事なんて、100%有り得ないからだ。別にそれは、マッドな博士に限った事じゃない。隣に誰が住んでようと、僕は隣人と関わる気なんてまったくないからだ。どうせ仲良くしたって、どうせ親しくなったって、結局最後には下らないトラブルに巻き込まれるのオチだ。なら、初めから関わらないのが賢明な判断ってもんだ。
「・・・・・・寝るか。」
午前5時を刻む時計を虚ろな目で見ながら僕は、再び夢の世界へと旅立つ事にした。

第百七十一話
「隣人注意報」

「遂に!遂にやったぞーっ!!!」
この1年間、日々、研究と発明を積み重ね、明け暮れて繰り返し、やっと、やっと遂に今日!今日この時!待ちわびていたこの瞬間を迎える事が出来た!
「わしの勝利じゃーっ!!!」
鉄壁のカラクリ要塞と化した部屋を見渡しワシは、堂々と勇ましく勝利宣言をした。
「さあ、来るならいつもでも来てみぃ・・・・・・・・・。」
そして、1年間ずっと100%を叩き出している角部屋側の測定器を睨み付けながらワシは、呟いた。

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