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2009年10月

2009年10月 7日 (水)

「第百七十三話」

「ブーン!」
って、ハチが
「チクッ!」
って、ハチが
「イテッ!」
って、ボクが
「ブーン!」
って、ハチが
「バチン!」
って、ボクが
「ポトリ。」
って、ハチが
「プクッ!」
って、ハナが

第百七十三話
「ハチとボクとカミサマ」

 これはまだ、ボクが散歩を初めて三歩目の出来事だった。突然現れたハチが、ロックンロールな羽音で迫って来たかと思ったら、ボクの鼻先にロッケンロールな針をヒョッケンロールな勢いで突き刺した。当然の如く痛がり、驚いたボクだったが、そこはすかさず飛び立ったハチを両手で叩き殺そうとしたんだけど、クリーンヒットせず、何とか指先が軽く頭に触れたぐらいで、ハチはと言うと、脳震盪を起こした感じで、地面にユラユラユラリと落ちた。激痛走るぷっくり腫れた鼻先を触りながら、ボクは、にっくきハチを完膚なきまでに踏み潰そうと、両足で地面を蹴り上げてジャンプした。
「はい?」
その瞬間、なぜか時間が止まったらしく、ボクは空中に静止した。
「これこれ、何をするつもりじゃ。」
ここでボクの目の前にカミサマが現れた。それは、あまりにも、所謂、カミサマな出で立ちで、老人で長い白髭と白髪で、グルグル大きな渦巻いた長い杖で、白い衣を身にまとってた。
「まさか、そのままハチを踏み潰すつもりじゃなかろうな?」
いや、だいたいそのまさかだから時間まで止めて、わざわざボクの目の前に現れたんでしょ?てか、助けたいなら、さっさとハチをどけて、時間を動かせばいいじゃん!えっ?それとも?
「まさかの説教ですか?」
「そうじゃよ。」
でたー!でましたー!でちゃいましたー!説教!マニュアル通りなこの展開がご存知、面倒臭い!
「ちょっと待って下さい。お爺さん。」
「カミサマだ!」
「どうしてボクなんです?何でボクに説教なんです?お爺さん。」
「カミサマだ!何故かじゃと?それは、お主がハチを殺そうとしたからに決まっておろう。たわけ者!」
拙者が?拙者が、たわけ者?お前だよ!たわけ者は!時代錯誤な出で立ちのお前の方が、だろって!いつまでもそのイメージでカミサマが罷り通ると思うなよ!
「なら、ハチは?ハチには説教しないんですか?ハチの方が最初に攻撃して来たのに、説教なしですか?それは、弱いからですか?それは、小さいからですか?人間よりも。」
「よく分かっとるじゃないか。その通りじゃ。」
どの通りじゃ!これだからカミサマは嫌だよ。イヤイヤ!本当いや!人間にしか説教しない。人間だけにしか説教出来ない。殺人ウイルスとか地球温暖化とかは、まるでほったらかし、地震やら津波なんかは、完全無視。それはまあ、人間が造り出した人間の為のカミサマですから?人間が、今現在不可能な事は、カミサマにも不可能な事なのかもしれませんけど?きっと、今のボクが置かれた状況も、ボクが見ている白昼夢に違いない。おそらく本当のボクは、激痛走るぷっくり腫れた鼻先を触りながら、突っ立って気を失って、この面倒臭いまやかしを見てるんだよ。ボクがボクに見せてる虚像ってヤツ?生物を殺してはならないと言う良心が生み出した幻って言ったら、格好よい?
「ちょっと!」
「何じゃ?」
「だったら、ボクが両手でハチを叩き潰そうとした時に出て来て下さいよ!」
「それが、ハチへのバチじゃ。」
「無意味にボクを攻撃した事への罰ですか。」
「そうじゃ。」
はあ???なら、ボクに叩き潰されそうになった時も今と同じように、時間を止めてハチに説教して、脳震盪を起こす程度の場所に移動させたって?そう言う事なの?そんなの言ったもん勝ちみたいなとこあんじゃんか!てか、そのいちいち罪とか罰とかって発想が、面倒臭いな!なら、ハチがボクを攻撃する前に、やめさせればいいじゃん!攻撃を!事が終わってからわざわざ登場して来て、説教って、それってただの面倒臭いジイさんじゃん!自己顕示欲のド塊じゃん!ぜんっぜん!平和じゃないじゃん!後から出て来て、あーだこーだって、カミサマ的には役立たずも甚だしいじゃんかよ!!って、イライラするだけボクが疲れるだけだ。やめよ。やめます。
「・・・・・・説教、お願いします。」
「うむ。」
何が、うむ、だよ!バーカ!
「いいか?命と言うモノはのぅ。」
尊いかな?
「尊いモノなんじゃ。」
何の捻りもない。じゃあ、次は儚いかな?
「儚いモノなんじゃ。」
ああ、このクイズ番組、すぐに最高金額獲得可能だよ。だから、殺めるなんて愚かな行為をするんじゃない、かな?
「だから、殺めるなんて愚かな行為をしてはいかんのじゃ。」
だったら、サバンナの!ジャングルの!大海原の!食うか食われるかの弱肉強食!あれ全部やめさせろ!ならお前、飲食なしで永遠に生きられる身体システムにしとけよ!てか、あれだね。もう、面倒臭いね。やたらと、面倒臭いね。やめるって決意したのにね。いけないいけない。
「カミサマ!」
「何じゃ?」
「フィクションの世界でしか生きられない想像の救世主!カミサマ!」
「ワシが実在しとらん。そう言いたいのか?」
「そう言いたいんだ!」
「そう言いたかったのか!」
「当たり前だ!」
「カミサマじゃぞ!」
「だから何だ!」
「偉いんじゃぞ!」
「早く消えろ!」
「うるさい!」
「お前の方がうるさい!」
「バチが当たるぞ!」
「やれるもんならやってみろ!」
「知らんぞ!」
「お前は知っとけ!」
「赤鼻ー!」
「赤鼻だー!」
「触るぞ!」
「触るな!」
「デカ鼻ー!」
「うるさい!早く病院行きたいから、さっさとバチ当てろ!」
「コンニャロー!!!」

「ゴツン!」
って、ゲンコツが・・・・・・・・・。

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2009年10月14日 (水)

「第百七十四話」

 おそらく地球最期の日を眺めながらアタシは、泣いた・・・・・・・・・。
「すぅ~・・・・・・ふぅ~。」
そして、アタシは涙を拭き大きく深く呼吸をして、空を見上げながら、今日一日を思い出しながら・・・・・・・・・。そう、最初に紐を引っ張ったのは、目が覚めてから数秒後だった。天井から垂れ下がった紐を見付けて、アタシがベッドから上半身を起こして、その紐を引っ張ったら、金盥が頭に落ちて来た。
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
まずは、夢だって疑ってみた。だから、アタシはもう一度、紐を引っ張ってみた。
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
もう一度
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
もう一度
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
もう一度
「ガーン!!」
「夢じゃなーいっ!!」
夢じゃなかった。でも、天井はいつもの天井で、ただいつもと違うのは、謎の紐が垂れ下がってて、それを引っ張ると、金盥が落ちて来るって更なる謎なとこ。金盥が、どこから落ちて来て、どうして頭に直撃した直後に消滅しちゃうのかなんて、難しい事は考えなかった。
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
だって、バスルームの紐を引っ張っても
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
キッチンの紐を引っ張っても
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
トイレの紐を引っ張っても
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
そうなんだもん。
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
そうなんだもの。
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
家の至るところにある紐を引っ張ると金盥。
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
この構図が既にアタシの周辺で出来上がってるなら
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
それが現実なら、受け入れるしかないじゃん。そこからでしょ?謎を謎のまま追い求めるのと、謎を現実だって受け入れて追い求めるのとじゃ、辿り着く結果は全然違う。それはもう、恋愛と一緒!まあ、とにかく金盥が落ちて来る中、何とか仕事へ行く準備をしたアタシは
「ガーン!!」
「もうっ!!」
とりあえず玄関の紐を引っ張って、マンションの部屋を出たわけ。
「ガーン!!」
「やっぱり。」
で、エレベーターを待ってる時も
「ガーン!!」
「まあね。」
で、エレベーターの中でも当然、金盥。エレベーターを出て、管理人室の前を通った時に、管理人さんにマンション事態のこれからの方針なのか聞こうとしたけど、そんなわけないってのが、ちゃんと分かってたから、やめた。だいたいこんな事、誰かに話しても信じてもらえるはずがないしね。まあ、謎に巻き込まれた人特有の悲しい宿命ってやつ?そう、これは一人ぼっちの戦い。だってたぶん、紐からして、どうせアタシにしか見えてないんだろうしね。
「ガーン!!」
「はいはい。」
最後にマンションの出入口にある紐を引っ張って、アタシは駐車場へ向かった。車に乗り込んだアタシは、マンションでの出来事なんて、ほんの序章にしか過ぎなかったんだって思い知らされた。
「どう言う事!?あれは、マンションだけの話じゃなかったってわけ!?」
助手席の天井から垂れ下がってる紐を見てアタシは、思わず驚愕的な言葉を発した。でも、ここでアタシは思った。
「この距離で金盥?」
って、だって天井とアタシの頭との空間なんて、ほとんど無いに等しいわけだし、何なら頑張ればその空間すら埋める事が可能なわけだし、何?何が落ちて来るの?やっぱり金盥なわけ?アタシは、紐に手を伸ばし、引っ張った。
「ザバー!!」
「ちょおっとーっ!!」
水だった。
「ザバー!!」
「つめたーいっ!!」
しかも、冷水。
「ザバー!!」
「つめたーいっ!!」
冷水。
「ザバー!!」
「つめたーいっ!!」
何度やっても
「ザバー!!」
「つめたーいっ!!」
冷水。
「ザバー!!」
「つめ・・・あっつーいっ!!」
でもたまに、熱湯
「ザバー!!」
「何なのこれ?何かのバツゲームなわけ?」
でも、バツゲームを受けるような負け方、アタシには身に覚えがなかった。もちろん冷水や熱湯も、落ちた直後に消滅した。とにかくアタシは、車を走らせて駐車場を後にした。でもこの時、アタシはまだこの先に待ち受ける本当の恐怖を知るわけもなかった。そう、それはアタシの住むマンションから少し行った信号で、停車した時だった。バックミラーに映るマンションを見ながら、金盥づくしだったさっきの事を思い出しつつ、アタシは助手席の紐を引っ張った。
「ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!」
「えっ!?」
轟音と共にバックミラーに映るマンションが、みるみる倒壊してった。
「どうなってるの!?水じゃないの!?何!?何が起きたわけ!?」
震える手で、アタシがもう一度、紐を引っ張ると
「ズドォォォォォォォン!!」
今度は、後のバスに隕石が落ちて来た。隕石!そう、金盥と冷水熱湯の次は、隕石が落ちて来た!でもやっぱり隕石は、直撃の直後に消滅した。
「うそ・・・でしょ・・・?」
何回?いやもう、覚えてなかった。信号待ちの最中に、紐を引っ張った回数なんて・・・。何で水が落ちて来ないんだろうって、引っ張った紐の回数なんて・・・。カーラジオから流れて来る臨時ニュースは、世界中からの見えない謎の物体直撃のニュースだった。もう、アタシがターゲットなわけじゃない!もしかしたら、それ以前からアタシがターゲットだったわけじゃないのかもしれない。
「何がどうなってるのよ!!」
混乱して怖くなって、アタシは一心不乱に車を走らせた。どこへなんて分からない。頭の中は、どこかへだった。
「何で!!」
とにかく無我夢中で
「何でなの!!」
現実逃避で車を走らせた。
「何で引っ張っちゃうのよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
それでもアタシは、紐を引っ張る事をやめなかった。違う!頭の中では、分かってても、やめる事が出来なかった。
「ここは?」
気付くとアタシは、いつの間にか、どこかの峠に来てた。アタシは車から降りて、夕陽に照らされてるまるで地球最期の日のような光景を見下ろしてた。
「ペチ、ペチ。」
「えっ!?」
そしてアタシは、風に揺られて肩にぶつかる空から垂れ下がってる紐を見付けた。もう、アタシの意思なんて存在しない。当たり前のように紐を掴むアタシの手。
「どう・・・・・・なっちゃうわけ?」
震える声でいったい、誰に答えを求めてるんだろう?きっと、おそらく地球最期の日を眺めながらアタシは、泣いた。どれぐらい泣いたんだろう?
「すぅ~・・・・・・ふぅ~。」
そして、アタシは涙を拭き大きく深く呼吸をして、空を見上げながら、今日一日を思い出しながら・・・・・・・・・紐を引っ張った。

第百七十四話
「垂れ下がってる紐を引っ張らないというストレス」

「・・・・・・・・・えっ!?」
ゆっくりと瞼を開けたアタシの目に映ったのは、天井だった。
「夢?」
いつもの朝
「夢だったの?」
いつもの部屋
「まったく・・・・・・・・・。」
紐の垂れ下がってない天井
「良かったぁ・・・・・・ん?」
安堵感に包まれたアタシの目に飛び込んで来たのは
「ピアノ?」
ピアノだった。
「何で?」
昨日の夜まで存在しなかったのにって答えを頭の中で導き出すよりも先にアタシは、ピアノへ近付いてって、人差し指を鍵盤の上に置いて
「ドー!!」
弾いた。

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2009年10月21日 (水)

「第百七十五話」

 海中を散歩してると、いろんな生物達と出会う事が出来る。これは、かなり素敵な事で、だいぶ無敵な事だ。オッサン、色とりどりな小魚達、クラゲ、イルカ、サメ、クジラ、えっ?オッサン?
「って、何でオッサン!?何でオッサンがいる!?」
「それはねぇ、キミ。いるからいるんだよ。」
「ごもっともだけど!ごもっともなんですけども!違う!海、パジャマ姿のオッサン、違う!」
「何だキミ、急にカタコトになって、外国人観光客気取りか!」
「いや、地元で海のガイドをやってる者です。」
「こんな朝早くから、いったい誰をガイドしていると言うんだね?見たところキミ、一人ぼっちじゃないか!」
「淋しっ!何か淋しいその比喩表現!」
「比喩表現なんてしてないよ。」
「いや、朝早くの誰もいない海をガイドの下見がてらに、海中散歩ですよ。」
「なっ?」
「なっ?って、何が、なっ?」
「キミは、さっき、パジャマ姿のオッサンが、違うとか何だとか、若気の至り的ないちゃもん的なもんをつけて来たが、朝早いんだ!パジャマ姿、違う、違うだろ!」
「ああ、時間帯と服装面の話じゃなくって、場所柄と生息地の兼ね合いです。」
「はあ?????何を言っているんだ、キミは?」
「だから、オッサンが海中で、何の装備も無しにいる事が、違うんだってば!オッサンの生息地は、陸地だろって!」
「おい!ちゃんと装備しているだろ!」
「パジャマじゃん!何でパジャマだけで、結構深いとこ楽勝状態なんだよ!何でパジャマだけで、こうして普通に会話が出来ちゃうんだよって!」
「・・・・・・・・・知らん。」
「ままま、まあね。出来ちゃうんだから、しょうがないよね。出来ちゃう事、わざわざ難しく解明しようなんてしないよね。ってか、オッサンは、こんなとこで何してんの?」
「何を言い出すのかと思ったらキミ、ここで何してるかだって?暮らしているに決まっているだろ。」
「違う、オッサン、海の中で、暮らさない!」
「その時折、外国人観光客に成り済ますのは、何だ?巷で流行っているのか?」
「別に流行ってないですけどね。いやいやいや、暮らしちゃダメでしょ!」
「何で暮らしてはいけないんだ!そんなもん、キミが海中暮らし出来ないから、私を妬んでの意見だろ!」
「妬むかー!!オッサンが海中で暮らしてるんだとしたら、オレは生態系を気にしてるんだー!!」
「ほっほー!腐ってもダイバーか。」
「どの辺りでオレは、腐った?」
「生態系が崩れる事を心配しているのなら、安心しなさい。私は、たま~に海面に浮かび上がり、太陽の光を全身に浴びてさえいれば、生きていける!キミが心配するような、魚を補食など断固としてない!」
「・・・・・・・・・何者?」
「何だと?」
「すいません。オレ、今までオッサンが、オレと同じ人間だと思って、人間のオッサンだと思って、会話してました。」
「あそう。」
「何なの?オッサンは、植物なの?海藻の類なの?」
「相変わらず何を言っているんだね、キミって奴は!喋る植物なんて聞いた事もないだろ。私が植物だったらキミ、大発見もいいとこだ。仮に私が植物なら、とっくの昔に私は私を自ら研究して論文を発表して何か大きな賞をいただいているよ。」
「なるほどね。えっ?ちょっ、オッサンまさか!?幽霊じゃないよね!」
「バカも休み休みにしておきたまえよ、キミ。いいかい?それは逆に、キミにも同じ事が言えるんだぞ?私からしてみれば、キミだって幽霊かもしれないって話ではないか。でも我々は、幽霊ではない。そう、幽霊ではないんだよ。それはもう、出会った時からの暗黙の了解の上で成り立っていた今までの会話ではないのか?ん?」
「ごもっともです。非常にごもっともなんです。なんですけどね。やっぱり海を知り尽くした者の立場から言わせてもらうと、幽霊であって欲しい!てか、事を幽霊で片付けたい!」
「私はさ。キミのやっている仕事を侮辱するつもりなどないよ?きっと、立派な心掛けで、誇りを持ってダイバーをしているんだろうと思う。海と真っ直ぐに向き合っているんだろうと思う。だがね。キミが海を!いったいどれほど知り尽くしていると言うんだ!!私を見て驚いているキミが!易々と海を知り尽くしたなどと!口にするな!!」
「ええーっ!?そうなの?オレなの?オレの反応の方が責められちゃうの?」
「当たり前だ!これからまだまだ、海を学び、海に学び、海と学び、成長し続けなければならない若者が!ここで知り尽くしてどうする!海は、キミが思っているよりも遥かに広いし大きいし、しょっぱい!!」
「・・・・・・あのう、何かすいませんでした。いや、よく分からないけど、ごめんなさいでした。」
「まあ、今は私が言った言葉の意味が分からないかもしれないが、キミならきっと、分かる日が来る!それは、私が保証する!」
「・・・・・・ああ、はあ、ども、ありがとうございます。で?実際のとこ、オッサンは何なの?」
「クジラだ。」
「クジラ!?そんな馬鹿な!?」
「やれやれ、気付かなかったのか?」
「いや、気付きようもなかったです。」
「まったく、言わんこっちゃないなだな、キミは!よ~く、その目で見てみなさい。」
「何をです?」
「ほら、歯に!」
「歯に?」
「毛が生えているだろ?」
「ホ、ホントだ!?」

第百七十五話
「新種発見!!」

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2009年10月28日 (水)

「第百七十六話」

「銀行?」
「ええ、銀行へ直接流れるシステムになっているんですよ、これがね。」
そう言うと紹介所の男は、無機質に微笑んだ。
「システム?」
僕は、その斬新過ぎる程のシステムってヤツが、無性に気になった。
「両目に、簡単な手術を施すだけなんですよ、これがね。」
「手術!?」
簡単な手術だなんて、これまた随分と簡単に言ってくれるよ。
「この、超小型の謎のハイテクを埋め込むだけの、超簡単な手術なんですよ、これがね。」
そう言いながら出した紹介所の男の手のひらの上には、もう片方の手に持つ虫眼鏡がなければ小さ過ぎて見えない程の謎のハイテクらしき物があった。まあ、おそらく紹介所の男も、ハイテクについては、詳細を知らされてないんだろう。或いは知らされてたとしても、理解してないんだろう。
「保険は?」
「対象外なんですよ、これがね。」
「対象外!?仮に失敗したら、どうなるんです?」
「失明は、免れないでしょうね。」
「そんなにリスクが高いんですか?」
「そんなにリスクが高いもんなんですよ、これがね。」
やめよう。両目を犠牲にしてまで、お金が欲しい訳でもないし、僕はもっと、軽い感覚で、クラブ活動なノリで済むような事だって、甘く考えてた。うん、やめよう。そうしよう。
「ですが!」
そう固く心に誓った矢先、紹介所の男がグッと顔を近付けて来た。かなりビックリした僕は、思わず仰け反った。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
そして、よく分からない沈黙の時間が続いた。しかもよく見ると男の両目には、手術の痕がうっすらと確認出来た。
「で、ですが、何ですか?」
沈黙の時間に耐え切れなくなった僕が口を開くと、紹介所の男は、元の位置へと体を戻し、また無機質に微笑んだ。
「0%!なんですよ、これがね。」
「何が0%なんです?」
「手術の失敗する確率がなんですよ、これがね。」
鵜呑みにしろと?紹介所の人間が口にする逆に100%の成功率を誇る両目への謎のハイテク移植手術を鵜呑みにしろと?
「でもまあ、無理にオススメしません。ただ、このリストをご覧下さい。」
そう言って紹介所の男は、一枚の用紙を手渡して来た。
「こ、これは!?」
「ええ、手術を受けて巨万の富を得た人々なんですよ、これがね。」
そこには、名の知れた億万長者達の名前が、ズラリと載っていた。
「本当なんですか?」
「なら逆にお聞きしちゃいますが、貴方は巨万の富を得た彼等のアレを、ご覧になった事がありますか?無いんじゃないですか?」
確かに紹介所の男が言うように、僕は彼等のソレを、見た事がない。
「確かに見た事が無いですけど、それって単にタイミングとかって話になってくるんじゃないんですか?」
「単にタイミングとかって話になってこないんですよ、これがね。ほら、これご覧になっちゃって下さいよ。」
紹介所の男が次に手渡して来たのは、アルバムだった。中には、億万長者達の一連の謎のハイテク移植手術中の写真だった。
「ねっ?」
「・・・・・・・・・。」
「どうしました?ちょこっと写真が、グロ過ぎちゃいましたか?」
確かに写真は、グロくて、少し気分が悪くなった。でも僕は、考えたんだ。根本的な疑問を・・・・・・。
「なぜです?」
「なぜ?」
「だってそうでしょ?手術成功率100%!誰もが億万長者!ノーリスク!ハイリターン!こんなウマイ話があるなら、この国の人間全てが、いや、世界中の人間全てが億万長者だ!」
「いや、全てがそうなってしまうと銀行も機能しなくなってしまうんですけどね。」
まあ、そりゃそうだ。
「でも、貴方が言いたい事は、分かりますよ。どうして、こんなウマイ話が、こんな堂々と転がっているのに、多くの人々がそこに飛び付かないのか?って、とこですか?」
「はい。だいたい、そんなとこです。」
僕の答えを聞くと、紹介所の男は、得意の無機質な微笑みを見せた。
「答えは、簡単な事なんですよ、これがね。」
「簡単?」
「貴方が思っている以上の需要があり、それに対して、貴方が思っている以上の供給が無いだけなんですよ、これがね。」
「どう言う意味です?」
「つまり、大事なんですよ、これがね。」
「大事?」
「大切なんですよ、これがね。」
「大切?アレが?そんなまさか!?」
「そんなまさかは、ここに足を運んで来たマイノリティな貴方や紹介所の私の方なんですよ、これがね。」
「億万長者ですよ?」
「ええ。」
「涙と引き換えに、億万長者になれるんですよ?」
「それでも10割近くの人間が、涙を選ぶのが現実なんですよ、これがね。」
「それでも、アナタは!」
「もちろん私も、涙が出なくなって、後悔している人間の一人なんですよ、これがね。」
そう言って紹介所の男は、無機質に微笑んだ。

第百七十六話
「ナミダ買イマス」

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