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2009年10月21日 (水)

「第百七十五話」

 海中を散歩してると、いろんな生物達と出会う事が出来る。これは、かなり素敵な事で、だいぶ無敵な事だ。オッサン、色とりどりな小魚達、クラゲ、イルカ、サメ、クジラ、えっ?オッサン?
「って、何でオッサン!?何でオッサンがいる!?」
「それはねぇ、キミ。いるからいるんだよ。」
「ごもっともだけど!ごもっともなんですけども!違う!海、パジャマ姿のオッサン、違う!」
「何だキミ、急にカタコトになって、外国人観光客気取りか!」
「いや、地元で海のガイドをやってる者です。」
「こんな朝早くから、いったい誰をガイドしていると言うんだね?見たところキミ、一人ぼっちじゃないか!」
「淋しっ!何か淋しいその比喩表現!」
「比喩表現なんてしてないよ。」
「いや、朝早くの誰もいない海をガイドの下見がてらに、海中散歩ですよ。」
「なっ?」
「なっ?って、何が、なっ?」
「キミは、さっき、パジャマ姿のオッサンが、違うとか何だとか、若気の至り的ないちゃもん的なもんをつけて来たが、朝早いんだ!パジャマ姿、違う、違うだろ!」
「ああ、時間帯と服装面の話じゃなくって、場所柄と生息地の兼ね合いです。」
「はあ?????何を言っているんだ、キミは?」
「だから、オッサンが海中で、何の装備も無しにいる事が、違うんだってば!オッサンの生息地は、陸地だろって!」
「おい!ちゃんと装備しているだろ!」
「パジャマじゃん!何でパジャマだけで、結構深いとこ楽勝状態なんだよ!何でパジャマだけで、こうして普通に会話が出来ちゃうんだよって!」
「・・・・・・・・・知らん。」
「ままま、まあね。出来ちゃうんだから、しょうがないよね。出来ちゃう事、わざわざ難しく解明しようなんてしないよね。ってか、オッサンは、こんなとこで何してんの?」
「何を言い出すのかと思ったらキミ、ここで何してるかだって?暮らしているに決まっているだろ。」
「違う、オッサン、海の中で、暮らさない!」
「その時折、外国人観光客に成り済ますのは、何だ?巷で流行っているのか?」
「別に流行ってないですけどね。いやいやいや、暮らしちゃダメでしょ!」
「何で暮らしてはいけないんだ!そんなもん、キミが海中暮らし出来ないから、私を妬んでの意見だろ!」
「妬むかー!!オッサンが海中で暮らしてるんだとしたら、オレは生態系を気にしてるんだー!!」
「ほっほー!腐ってもダイバーか。」
「どの辺りでオレは、腐った?」
「生態系が崩れる事を心配しているのなら、安心しなさい。私は、たま~に海面に浮かび上がり、太陽の光を全身に浴びてさえいれば、生きていける!キミが心配するような、魚を補食など断固としてない!」
「・・・・・・・・・何者?」
「何だと?」
「すいません。オレ、今までオッサンが、オレと同じ人間だと思って、人間のオッサンだと思って、会話してました。」
「あそう。」
「何なの?オッサンは、植物なの?海藻の類なの?」
「相変わらず何を言っているんだね、キミって奴は!喋る植物なんて聞いた事もないだろ。私が植物だったらキミ、大発見もいいとこだ。仮に私が植物なら、とっくの昔に私は私を自ら研究して論文を発表して何か大きな賞をいただいているよ。」
「なるほどね。えっ?ちょっ、オッサンまさか!?幽霊じゃないよね!」
「バカも休み休みにしておきたまえよ、キミ。いいかい?それは逆に、キミにも同じ事が言えるんだぞ?私からしてみれば、キミだって幽霊かもしれないって話ではないか。でも我々は、幽霊ではない。そう、幽霊ではないんだよ。それはもう、出会った時からの暗黙の了解の上で成り立っていた今までの会話ではないのか?ん?」
「ごもっともです。非常にごもっともなんです。なんですけどね。やっぱり海を知り尽くした者の立場から言わせてもらうと、幽霊であって欲しい!てか、事を幽霊で片付けたい!」
「私はさ。キミのやっている仕事を侮辱するつもりなどないよ?きっと、立派な心掛けで、誇りを持ってダイバーをしているんだろうと思う。海と真っ直ぐに向き合っているんだろうと思う。だがね。キミが海を!いったいどれほど知り尽くしていると言うんだ!!私を見て驚いているキミが!易々と海を知り尽くしたなどと!口にするな!!」
「ええーっ!?そうなの?オレなの?オレの反応の方が責められちゃうの?」
「当たり前だ!これからまだまだ、海を学び、海に学び、海と学び、成長し続けなければならない若者が!ここで知り尽くしてどうする!海は、キミが思っているよりも遥かに広いし大きいし、しょっぱい!!」
「・・・・・・あのう、何かすいませんでした。いや、よく分からないけど、ごめんなさいでした。」
「まあ、今は私が言った言葉の意味が分からないかもしれないが、キミならきっと、分かる日が来る!それは、私が保証する!」
「・・・・・・ああ、はあ、ども、ありがとうございます。で?実際のとこ、オッサンは何なの?」
「クジラだ。」
「クジラ!?そんな馬鹿な!?」
「やれやれ、気付かなかったのか?」
「いや、気付きようもなかったです。」
「まったく、言わんこっちゃないなだな、キミは!よ~く、その目で見てみなさい。」
「何をです?」
「ほら、歯に!」
「歯に?」
「毛が生えているだろ?」
「ホ、ホントだ!?」

第百七十五話
「新種発見!!」

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