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2009年10月14日 (水)

「第百七十四話」

 おそらく地球最期の日を眺めながらアタシは、泣いた・・・・・・・・・。
「すぅ~・・・・・・ふぅ~。」
そして、アタシは涙を拭き大きく深く呼吸をして、空を見上げながら、今日一日を思い出しながら・・・・・・・・・。そう、最初に紐を引っ張ったのは、目が覚めてから数秒後だった。天井から垂れ下がった紐を見付けて、アタシがベッドから上半身を起こして、その紐を引っ張ったら、金盥が頭に落ちて来た。
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
まずは、夢だって疑ってみた。だから、アタシはもう一度、紐を引っ張ってみた。
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
もう一度
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
もう一度
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
もう一度
「ガーン!!」
「夢じゃなーいっ!!」
夢じゃなかった。でも、天井はいつもの天井で、ただいつもと違うのは、謎の紐が垂れ下がってて、それを引っ張ると、金盥が落ちて来るって更なる謎なとこ。金盥が、どこから落ちて来て、どうして頭に直撃した直後に消滅しちゃうのかなんて、難しい事は考えなかった。
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
だって、バスルームの紐を引っ張っても
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
キッチンの紐を引っ張っても
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
トイレの紐を引っ張っても
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
そうなんだもん。
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
そうなんだもの。
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
家の至るところにある紐を引っ張ると金盥。
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
この構図が既にアタシの周辺で出来上がってるなら
「ガーン!!」
「いったーいっ!!」
それが現実なら、受け入れるしかないじゃん。そこからでしょ?謎を謎のまま追い求めるのと、謎を現実だって受け入れて追い求めるのとじゃ、辿り着く結果は全然違う。それはもう、恋愛と一緒!まあ、とにかく金盥が落ちて来る中、何とか仕事へ行く準備をしたアタシは
「ガーン!!」
「もうっ!!」
とりあえず玄関の紐を引っ張って、マンションの部屋を出たわけ。
「ガーン!!」
「やっぱり。」
で、エレベーターを待ってる時も
「ガーン!!」
「まあね。」
で、エレベーターの中でも当然、金盥。エレベーターを出て、管理人室の前を通った時に、管理人さんにマンション事態のこれからの方針なのか聞こうとしたけど、そんなわけないってのが、ちゃんと分かってたから、やめた。だいたいこんな事、誰かに話しても信じてもらえるはずがないしね。まあ、謎に巻き込まれた人特有の悲しい宿命ってやつ?そう、これは一人ぼっちの戦い。だってたぶん、紐からして、どうせアタシにしか見えてないんだろうしね。
「ガーン!!」
「はいはい。」
最後にマンションの出入口にある紐を引っ張って、アタシは駐車場へ向かった。車に乗り込んだアタシは、マンションでの出来事なんて、ほんの序章にしか過ぎなかったんだって思い知らされた。
「どう言う事!?あれは、マンションだけの話じゃなかったってわけ!?」
助手席の天井から垂れ下がってる紐を見てアタシは、思わず驚愕的な言葉を発した。でも、ここでアタシは思った。
「この距離で金盥?」
って、だって天井とアタシの頭との空間なんて、ほとんど無いに等しいわけだし、何なら頑張ればその空間すら埋める事が可能なわけだし、何?何が落ちて来るの?やっぱり金盥なわけ?アタシは、紐に手を伸ばし、引っ張った。
「ザバー!!」
「ちょおっとーっ!!」
水だった。
「ザバー!!」
「つめたーいっ!!」
しかも、冷水。
「ザバー!!」
「つめたーいっ!!」
冷水。
「ザバー!!」
「つめたーいっ!!」
何度やっても
「ザバー!!」
「つめたーいっ!!」
冷水。
「ザバー!!」
「つめ・・・あっつーいっ!!」
でもたまに、熱湯
「ザバー!!」
「何なのこれ?何かのバツゲームなわけ?」
でも、バツゲームを受けるような負け方、アタシには身に覚えがなかった。もちろん冷水や熱湯も、落ちた直後に消滅した。とにかくアタシは、車を走らせて駐車場を後にした。でもこの時、アタシはまだこの先に待ち受ける本当の恐怖を知るわけもなかった。そう、それはアタシの住むマンションから少し行った信号で、停車した時だった。バックミラーに映るマンションを見ながら、金盥づくしだったさっきの事を思い出しつつ、アタシは助手席の紐を引っ張った。
「ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!」
「えっ!?」
轟音と共にバックミラーに映るマンションが、みるみる倒壊してった。
「どうなってるの!?水じゃないの!?何!?何が起きたわけ!?」
震える手で、アタシがもう一度、紐を引っ張ると
「ズドォォォォォォォン!!」
今度は、後のバスに隕石が落ちて来た。隕石!そう、金盥と冷水熱湯の次は、隕石が落ちて来た!でもやっぱり隕石は、直撃の直後に消滅した。
「うそ・・・でしょ・・・?」
何回?いやもう、覚えてなかった。信号待ちの最中に、紐を引っ張った回数なんて・・・。何で水が落ちて来ないんだろうって、引っ張った紐の回数なんて・・・。カーラジオから流れて来る臨時ニュースは、世界中からの見えない謎の物体直撃のニュースだった。もう、アタシがターゲットなわけじゃない!もしかしたら、それ以前からアタシがターゲットだったわけじゃないのかもしれない。
「何がどうなってるのよ!!」
混乱して怖くなって、アタシは一心不乱に車を走らせた。どこへなんて分からない。頭の中は、どこかへだった。
「何で!!」
とにかく無我夢中で
「何でなの!!」
現実逃避で車を走らせた。
「何で引っ張っちゃうのよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
それでもアタシは、紐を引っ張る事をやめなかった。違う!頭の中では、分かってても、やめる事が出来なかった。
「ここは?」
気付くとアタシは、いつの間にか、どこかの峠に来てた。アタシは車から降りて、夕陽に照らされてるまるで地球最期の日のような光景を見下ろしてた。
「ペチ、ペチ。」
「えっ!?」
そしてアタシは、風に揺られて肩にぶつかる空から垂れ下がってる紐を見付けた。もう、アタシの意思なんて存在しない。当たり前のように紐を掴むアタシの手。
「どう・・・・・・なっちゃうわけ?」
震える声でいったい、誰に答えを求めてるんだろう?きっと、おそらく地球最期の日を眺めながらアタシは、泣いた。どれぐらい泣いたんだろう?
「すぅ~・・・・・・ふぅ~。」
そして、アタシは涙を拭き大きく深く呼吸をして、空を見上げながら、今日一日を思い出しながら・・・・・・・・・紐を引っ張った。

第百七十四話
「垂れ下がってる紐を引っ張らないというストレス」

「・・・・・・・・・えっ!?」
ゆっくりと瞼を開けたアタシの目に映ったのは、天井だった。
「夢?」
いつもの朝
「夢だったの?」
いつもの部屋
「まったく・・・・・・・・・。」
紐の垂れ下がってない天井
「良かったぁ・・・・・・ん?」
安堵感に包まれたアタシの目に飛び込んで来たのは
「ピアノ?」
ピアノだった。
「何で?」
昨日の夜まで存在しなかったのにって答えを頭の中で導き出すよりも先にアタシは、ピアノへ近付いてって、人差し指を鍵盤の上に置いて
「ドー!!」
弾いた。

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