« 「第百九十四話」 | トップページ | 「第百九十六話」 »

2010年3月10日 (水)

「第百九十五話」

「父さんはー!怒っているんだぞー!」
家族団欒の楽しい日曜日のはずだったのに、僕のパパは、寝起き開口一番で、激怒です。あっ、おはようございます。二階の寝室で叫ぶパパの声を、一階の朝食の並ぶテーブルをママと二人で囲んで聞いてる僕は、小学四年生のこの家の長男です。
「パパ、どうしたのかしら?いつになく激怒してるみたいだけど?」
「さあ?」
「そんな事より?」
「分かってるよ、ママ。」
パパの開口一番を不思議に思いながらも、それでも僕とママは、特にそれを気にする事なく、箸を進めてたんだ。
「おはよー!マイ、ファミリー!」
「おはよう、アナタ。」
「おはよう、パパ。」
で、数秒後にパパがドタドタドッタガタガタバーン!って階段を下りて、爽やかな笑顔でやって来たんだけど、鼻血が出てたから、何だか凄く怖いって言うか、不気味。
「ほら、そんなとこで不気味な笑顔なんて作ってないで、アタナも朝食を食べたら?」
「そ、そうだよ。」
「おやおや?何だか今日の朝食は、やけに豪華だな。まるで、誕生日か記念日なみの夕食みたいじゃないか!」
「それがね、パパ。」
「ちょっと!パパには、夕食まで内緒って言ったでしょ!」
いやいや、ママ。朝食で夕食のリハーサルをしといて、やっぱりそれは無理だよ。しかも、パパに、パパには内緒って聞こえる感じで言っちゃってるしさ。小学四年生の技術じゃ誤魔化しきれないよ。
「いただきまーす!」
「召し上がれ!」
「えっ!?」
まるで気にせず、ステーキを頬張っちゃったよ!?ワインもグビグビいっちゃってるし、ええーっ!この状況で、それが出来るって、余程の食いしん坊か、でなきゃ素晴らしく大人な対応だよ。
「で、アナタ?」
「ん?」
「何をそんなに激怒していたの?」
「そうだよ、パパ。」
「おっとそうだ!暢気にステーキ頬張って、ワイングビグビいっちゃってる場合じゃなかった!家は、どうして大家族じゃないんだー!!」
「はあ?」
「パパ?」
「母一人、息子一人、父一人、たったの三人じゃないか!八男九女ぐらいが良かったなー!」
ええーっ!僕が生まれて十年経過してから言う事!?八男九女が理想の人は、今更言わないって!?いや、そもそもそう言うのって、結婚する前にママと話し合うもんじゃないの?あり得ないぐらい口パクパクさせながら白眼むいて驚いてるんですけど!?
「ママ?大丈夫?」
「アナタもそう思っていたんですか!」
ええーっ!僕が生まれて十年経過してから言う事!?八男九女が理想の人は、今更言わないって!?いや、そもそもそう言うのって、結婚する前にパパと話し合うもんじゃないの?あり得ないぐらい口パクパクさせながら白眼むいて驚いてるんですけど!?って、何でパパが驚いてんの!
「パパ?大丈夫?」
って、僕はいったいこの訳の分からない時間を豪華なテーブルを前にして、どう過ごしたらいいの?
「お前、いつ頃からその野望を!」
「野望って!」
「アナタこそ、いつ頃からそんな大それた野望を!」
「だから、大それたって!」
「今朝だ!」
「今朝!?」
「私は、今!」
「今!?」
恐ろしい。とんでもなく恐ろしい事が僕の身の回りで今、起きちゃってるよ!?これはきっと、昨日の夜に大家族を取り上げたドキュメンタリー番組をテレビにかぶり付いて観てたパパが、一晩寝てる間に発酵して熟成された影響で発した開口一番に違いないよ!そして、その影響の影響をモロに受けまくったママで間違いないよ!
「ああ、あのう?パパ?ママ?大家族は、あくまで大家族で、そのう?今から家も大家族ってのは、ちょっと?」
「いや、十六つ子なら一発だ!」
「十六つ子!?」
「そうね!」
「マ、ママ!?」
いやいや、手を取り合って意気投合してるけど、無理だよ!十六つ子って、理屈ですらまかり通ってないんだよ?その辺、大人が二人いて何で分からないの?
「ちょちょちょちょ!十六つ子ってのは、どうかと思うよ?」
「いやなに息子よ!こんな時こそ気合いだ!」
「気合い!?いや、でもママのお腹が破裂しちゃうでしょ!」
「大丈夫よ!こんな時こそママも気合いよ!」
「ええーっ!?」
気合いって、そんなオールマイティーツールじゃないんですけど?絶対不可能を可能にするには、気合いには荷が重すぎるんですけど?
「いいいいやいやいや、例え気合いと気合いで、十六つ子がママのお腹の中に生命を宿したとしてだよ?」
「おおっ!」
「凄いわ!」
「いや、まだ例え話だから!そそそそれにほら?割合は?男女の割合!男女比が八対八になる割合はどうなの?そればっかりは、神様でも無理なんじゃないかなぁ?」
「息子よ!」
「嫌な予感がする。」
「この世に神など存在しない!」
「的中しそう。」
「そう!神様なんて存在しないわ!」
「的中したかも?」
「いいか息子よ!気合いで十六つ子がママのお腹の中に生命を宿した時点で!既に男女比は、八対八だぁぁぁぁ!!」
「よっしゃあっ!!」
「うわぁ・・・・・・・・・。」
ひくよ。ひいちゃうよこの状況。こんな神様より気合いって自己申告な感情を崇め奉ってはしゃぎまくる両親の姿なんて、この家族団欒の日曜日の特別な日に見たくなかったよ。
「安心しろ息子よ!」
「何を?」
「安心して!」
「だから、何を?」
「例え十六つ子が生まれて、八男九女になろうが!お前はこの家の長男だ!」
「はあ?」
「そうよ!永遠にこの家のお兄ちゃんよ!」
「はあああ???」
そりゃそうでしょ!そりゃそうでしょってば!だって長男って別に、長男って称号を賭けて、各家庭で長男決定戦や長男入れ替え戦が毎日毎日、繰り広げられてる訳じゃないもん!なりたくてなれるもんでもないし、やめたいからってやめれるもんじゃないもん!ああーっ!無茶苦茶だ!何もかもが無茶苦茶だよ!
「どうした?息子よ!」
「そんなに髪の毛をグシャグシャってして!」
「ああーっ!もーっ!」
滅茶苦茶だ!これじゃあ今日が滅茶苦茶だよ!訳の分からないパパの開口一番と影響受けやすいママのせいで、大事な大事な家族団欒の日曜日の特別な日が、朝の段階から既に無茶苦茶の滅茶苦茶じゃないか!!

第百九十五話
「僕は既にお兄ちゃん(仮)」

|

« 「第百九十四話」 | トップページ | 「第百九十六話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/33521166

この記事へのトラックバック一覧です: 「第百九十五話」:

« 「第百九十四話」 | トップページ | 「第百九十六話」 »