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2010年3月24日 (水)

「第百九十七話」

 僕の店は、たくさんの店で賑わう商店街に面した所にはなく、少し分かりづらいかもしれませんけど、僕の店は、商店街を右屋さんから入ってもらって、しばらく歩いて行くと螺旋状の細い曲がり角が見えて来て、その螺旋状の細い曲がり角を曲がってもらって、果てしなく続く螺旋状の細い道を歩いて行くと、その途中にあります。螺旋状の看板が目印です。そこが、僕の店です。

第百九十七話
「スパイラル屋」

「シックなの無いの?」
「シックは一番人気なんで、次回の入荷も未定なんですよ。」
「あら、そう。」
「ベーシックなら、ありますけど?」
「あら、そう。」
もちろん売っている物は、スパイラルです。スパイラル屋ですからね。多種多様なスパイラルを取り扱っています。まあ、どこにでもあるスパイラル専門店ってヤツです。でも、そんじょそこらのスパイラル屋や大手スパイラル店では、売っていない珍しいスパイラルや稀少なスパイラルを取り扱っているのが、他のスパイラル屋と一味も二味も違う所です。
「シックなのがいいのよね。ねぇ?あのケースに入ってるスパイラルって、やっぱり高いの?」
「高いですよ~!」
「いっつもここへ来る度に気になってたのよ。」
「世界に一つあるかないかのスパイラルなんですよ。」
「へぇ~!」
珍しいスパイラルや稀少なスパイラルが、どうしてこんな小さな僕の店にあるのか?それは、僕がスパイラルを求めて、果てしなく世界中を歩き回っているからです。まあ、買い付けとかスパイラル探しってヤツですね。
「って、ないか、はまずいんじゃない?」
「一つだけの稀少価値なスパイラルなんです!」
「本当に?」
「このスパイラル図鑑を見て下さい!」
「あら!」
「スパイラル史でも最古の物だと言われていて、値が付けられないと言われているんです。」
「あら、だったら非売品なんじゃない。」
「チッチッチッ!」
「チッチッチッ?」
「左屋の奥さん!僕をそんじょそこらのスパイラル屋と一緒にしないで下さいよ。スパイラル屋がスパイラルを非売品として店に展示してどうするんですか!それなら始めからスパイラル博物館に寄贈していますよ。僕は、売らない物を店に出すようなエゴイストじゃないんですよ?」
「なら、あれは?」
「もちろん!売り物です!でも、この国の数単位では付けられない値なんですけどね。いや、あのスパイラルに付けられる数単位を保持する国が果たしてあるのかすらも疑問です。」
「高っ!!」
「だから、高いですよ~!って、言ったじゃないですか。」
「本当の意味で値が付けられないって、もはや非売品同然じゃない!」
「買う!って人がいたら、売る!って、心意気が違うんです!」
「いや、だからもはや世界を引き換えにしたとしても買えないんでしょ?」
「はい。まあ、太陽と同額ぐらいかそれ以上ですね。」
「貴方、銀河海賊団なる者達が存在していたら、真っ先に狙われるわね。」
「おおっ!SF~!まあでも、今現在、銀河海賊団なる者達の確認情報が飛び込んで来ていないんで、安心です。」
「それぐらいの事だって言ってるのよ!あのスパイラルは!」
「ああ、なるほど!」
「博物館に寄贈しちゃえばいいじゃない。」
「ダメですよ!売り物なんですから!」
「実質、展示品じゃない!いい?仮に太陽と物々交換してくれって人が来たとしてよ?アンタ、太陽を手に入れて、いったいどうするの?なにが出来るの?」
「まあ、こう、とりあえず少し動かしてみます。」
「なんで太陽がリモートコントロールなのよ!じゃあなに?太陽って、太陽管理人みたいな人がいて、その人が毎日、毎日、リモコンで動かしてるわけ?」
「仮に太陽管理人がいたとしたら、物凄くその資格を取るのって難しいでしょうね。それに、仮に資格が取れたとしても、その先の人生は、一生太陽管理人に捧げないとダメなんでしょうね。僕には、出来ないなぁ。無理だなぁ。」
「仮の上乗せやめてくれる?まあ、いいわ。あのスパイラルが稀少価値なのは分かったわよ。で、シックなのはいつ頃入荷なのか分からないのね。」
「すいません。あっ!」
「どうしたの?」
「そう言えば奥に一つだけ売れ残りのシックなヤツがありました!そうだそうだ!」
「いや、それこそ店頭に置いとくべきじゃない!」
「21時10分専用スパイラルのシックなんですけどね。あまりにも売れ残るんで、もう奥にしまっちゃえって!忘れてた忘れてた!今、持って来ますね!」
「ちょっと待った!」
「はい?」
「いいわ!」
「いい?」
「わざわざ取りに行かなくてもいいわよ。」
「えっ?でも、買って持ち帰らないで、そのまま店に置いとかれるのとかって、凄く困りますよ。やっぱり代金引換で行きましょうよ!ねっ?代引きで!」
「今の話の中のアタシ、なにやってんのよ!それじゃあ、おこずかい上げてるのと同じじゃない!」
「そうなんですよ!」
「そうなんですよ!じゃなくて!買わないわよって事よ!いくらシックだからって、21時10分専用スパイラルって、使い所が分からな過ぎよ!」
「だから、売れ残ってるんですよ。」
「いや、21時10分専用スパイラルを奥にしまって、あの太陽と同額かそれ以上を店に置いとくって、やっぱりアンタ、エゴ展示してんじゃない!」
「違います!あのケースに入っているスパイラルは、売れ残ってるんじゃなくて!買いそびれられ続けているだけです!」
「屁理屈じゃん!」
「屁理屈です!」
「あらま!?あらまよ。出ちゃったわよ。あらまが!で?だいたい、あのケースに入ってるスパイラルって、一体全体どんなスパイラルなの?」
「それがですね。あのケースに入っているスパイラルはですね?」
「なんで、ここに来て耳打ち?」
「いやちょっと、銀河海賊団に聞かれると、あれなんで。」
「あら、そう。」
もし、そんじょそこらで手に入らない珍しいスパイラルや稀少なスパイラルが欲しくなったら、螺旋状の看板が目印の僕の店に来て下さい。でも、すいません。スパイラルを探し求めて世界中を歩き回っているもんで、せっかく足を運んでもらっても、休みかもしれません。でもでも、その時は是非、またの来店を!
「あら、そうっ!!!」

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