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2010年5月26日 (水)

「第二百六話」

 凄く凄く風の強いぽかぽか陽気な祝日。僕は、桜の花びらが舞踊る並木道を歩いていた。
「ばびゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
すると、現段階での今日一番の風が吹いた。僕は立ち止まり、とっさに目を瞑り、利き腕で顔を覆った。
「えっ?」
風が止み、僕が目をゆっくりと開き、ゆっくりと覆ってた利き腕を下ろすと、そこには見た事もない光景が、それは異様でいて畏怖で、あまりにも異美な光景だった。
「どう言う事だ?」
それは、風が止んだと言うのに、それでも僕を中心に桜の花が渦を巻いて、僕を取り囲んでいた。
「やあ!」
と、次の瞬間、あんなにたくさん渦を巻いていた桜の花が一瞬にして消えたかと思うと、見渡す限りピンクな世界とピンクな少女が僕の目の前に姿を現した。
「君は誰で、ここはいったい何処なんだ?」
まるでこれじゃあ、メルヒェンじゃないか。そんな困惑する僕を見て、ピンクな少女は笑っていた。
「まさか?ここは、桜の世界で、君は桜の妖精?」
「半分だけ正解!」
そう言うとピンクな少女は、また笑った。
「半分?」
「そっ、半分!ここは、桜の世界だけど、ボクは桜の妖精じゃない。」
「妖精じゃない?」
「そっ、ボクは桜の世界の住人!」
「なるほど。」
「そっ、だから半分!」
そして、再びピンクな少女は笑った。だがここで僕は、少女の一人称に疑問を抱いた。
「ボク?君は、女の子じゃないの?男の子だったの?」
ピンクな少女は、首を傾げていた。
「女の子?男の子?ボクは、ボクだよ。」
そう言うとピンクな少女風の桜の世界の住人は、笑った。なるほど、おそらくこの桜の世界では、男女の概念が無いんだ。と、僕はそれと無く納得した。
「あのね。桜の女王様がね。会いたいんだってさ。」
「えっ!?」
桜の女王様だって?何やら元々がメルヒェンなこの状況が、更にメルヒェンに加速して行くぞ?そもそもが、これって本当に現実なんだろうか?本当は今頃、僕はさっきの物凄い風で何らかの事故に巻き込まれてて、病院のベッドの上で眠っているんじゃないだろうか?或いは、何かの下敷きとか?てか、女王様って、男女の概念あるのか?いや、蟻や蜂みたいな事なのか?桜ってそうなのか?とにかくめちゃくそパニックな僕だったが、ピンクな少女風の桜の世界の住人と手を繋ぎ、桜の女王様の待つ、桜の城に向かう事にした。これが、夢だろうが現実だろうが、そうしなければきっと、何にも進まないんじゃないかと思ったからだ。
「聞いてもいいかな?」
「なあに?」
ピンクな世界を歩きながら、僕は桜の城に辿り着くまでの間、少しピンクな少女風の桜の世界の住人に、この世界について尋ねてみる事にした。
「この桜の世界は」
「木の中だよ。桜の木の中!」
「えっ?」
僕の質問が、まるで始めから分かっていたかのようなピンクな少女風の桜の世界の住人の笑顔な答えに、僕は少し驚いた。
「みんな、それ聞くんだね。」
「みんな?」
「そっ、みんな!」
「って事は、何人もの人間が、この桜の世界に来てるって事?」
「そだよ!で、次に聞くのがこうだよ。この世界から出られるのか?」
統計学を用いらなくとも突然、桜の世界に来た人間が、この質問をするのは、目に見えている。
「答えはね。」
そう言って僕の顔色を伺うピンクな少女風の桜の世界の住人の笑顔が、さっきまでの笑顔と少し違った。
「答えは?」
僕は、思わず生唾を飲でピンクな少女風の桜の世界の住人の目を見た。頭の中では、何か考えてはいけないような考えがぐるぐると巡っていた。
「あっ、着いたよ!」
「えっ?」
「ここ、ここが桜の女王様の桜のお城!」
さっきまでの笑顔に戻ったピンクな少女風の桜の世界の住人が指差す目の前には、大きなピンクな城が聳え立っていた。
「さっ、入ろ!桜の女王様が待ってるから!」
「いやでもまだ、さっきの答えを僕は」
半ば強引に、いやかなり強引に僕は、ピンクな少女風の桜の世界の住人に手を引かれ、桜の城の中へと。もちろん城の中もピンクで、ピンクで豪華で、豪華でピンクだった。これは、あまりにも自分のキャパシティとボキャブラリーを越えた状況下に置かれた、とてもチープな僕の感想だ。
「じゃ~ん!この扉の向こうに、桜の女王様がね。待ってるの!」
「ゴックン・・・・・・・・・。」
ピンクな大きな扉を前に生唾ゴックンで冷静さを保とうとしたものの、もはやあらゆる感情やら概念やら思考やらで、しっちゃかめっちゃかな僕の頭の中は、真っ白ケッケッだった。
「じゃ、開けるね。」
「えっ?あ、ああ、お願いします。」
ピンクな少女風の桜の世界の住人は、ゆっくりとピンクな大きな扉を開けた。
「人間よ。」
そして、ピンクな玉座に威風堂々と腰掛けた桜の女王が姿を現した。
「ちこう寄れ。」
その呼び掛けに僕は、ゆっくりと桜の女王の下へ歩みを進めた。
「よくぞ参った人間よ。」
さすがと言うか当たり前と言うか、目の前で見る桜の女王から放たれるオーラは、凄まじかった。
「・・・・・・・・・。」
「ん?どうしたのだ人間よ。リラックスしてよいのだぞ?」
「・・・・・・・・・な、なぜ?」
「ん?もう少し大きな声でないと聞こえぬぞ?」
この直後、僕は死んだ。いや、桜の女王の逆鱗に触れ殺された。なぜ、桜の世界に連れて来られたのか?桜の女王が僕に何を言いたかったのか?どうすれば元の世界へ戻れるのか?殺された今なら、あらゆる疑問が僕の頭の中を巡る。だけど、桜の女王を前にした僕には、何から聞こうか?なんて疑問の選択肢は無かった。ただ一つ、そう、聞きたかったのは、ただ一つだけ・・・・・・・・・。
「人間よ・・・・・・コレ愚かな生き物なり。」

第二百六話
「ブルーな女王」

目が覚めると僕は、桜の花びらが舞踊る並木道に立っていた。風は・・・・・・・・・止んでいた。

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