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2010年5月 5日 (水)

「第二百三話」

 大雨の次の日の晴れた日の朝。僕は、道に出来た水溜まりをしゃがんで見ていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
すると暫くして、局の人がやって来た。
「こんにちは。」
局の人は、気さくな笑顔で僕に挨拶して来た。
「こんにちは。」
だから僕も水溜まり越しで、挨拶を返した。
「水溜まり局の者です。」
局の人は、水溜まり越しに僕へ手帳を見せた。
「ども。」
それを水溜まり越しに見た僕は、軽い会釈で返した。
「あのう?」
「はい?」
「水溜まり局の者です。」
「はい。それはもう、伺いました。」
「あのう?」
「はい?」
「これからその水溜まりを退治したいので、そこをどいて貰えませんか?」
「はあ・・・・・・・・・。」
水溜まり局。水溜まりを退治する為に発足された機関。でもなぜ?放って置けば自然消滅する水溜まりをなぜあえて人の手で?それに退治って?
「あのう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
きっともうこんな事を、わざわざ疑問に思う人なんていないんだろう。水溜まりを退治するのが当たり前の世界で、当たり前を当たり前じゃないなんて思う程、みんな暇じゃないんだ。
「あのう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
それでも僕は、知りたい。どうして水溜まりを?みんなが忙しいなら、暇な僕が真実を追い求めるのが、当たり前だ。だから、わざわざこんな朝早くから僕は、水溜まりの前で局の人を待っていたんだ。
「あのう?」
「・・・・・・はい?」
「あのう?水溜まりを退治したいので、どいて貰いたいのですが?」
「その掃除機みたいなので、水溜まりを退治するんですか?」
もちろん、僕は水溜まり越しで尋ねた。
「そうです。このBW―T03を使い、一気に水溜まりを退治するのです。」
「BW―T03?」
「バキューム・ウォーター・タイプ03の略です。」
「ああ、なるほど。」
政府が開発した対水溜まり用の武器って事か。水溜まり越しに見る限り、まだまだ他にも色んな武器を装備しているみたいだ。
「すいません。いいですか?どいて貰っても?」
「退治って?退治って何ですか?駆除でも排除でもない。退治。退治って表現じゃなきゃダメな理由は、何ですか?単なる水溜まりですよ?これは?」
「危いっ!!」
「!?」
それは、僕が水溜まりに触れようとした時だった。局の人が発した大きな声で、僕は思わずその手を止めてしまった。
「なに、水溜まりを触ろうとしているのですか!」
「いや、水溜まりだから触ろうとしたんです。」
「これだから、一般の方は困るのですよ!何かが起きてからでは、我々水溜まり局が、なぜ水溜まりを退治しているのかが!分からないではないですか!」
僕は、水溜まり越しに物凄く叱られていた。でも、なぜたかが水溜まりを触ろうとしたぐらいで、こんなに怒られなければならないんだ?
「すいません。でも、水溜まりですよ?水の溜まりですよ?何がそんなに危いんです?何一つ危くないでしょ。」
「何一つ危くない。その考えが一番、危いのです!!」
「何か居るんですか?」
「へ?」
「水溜まりの中に、何か居るんですか?だから、退治なんですか?だから、危いんですか?」
「それだけではありません。例えば、水溜まりの上を車が猛烈なスピードで通ったとしたらどうです?横を歩いていた通行人の方は、バシャアアアって、ずぶ濡れですよね!」
「はい。」
「それだけではありません。躓いて転んだ先に水溜まりがあったならば、バシャアアアって、ずぶ濡れですよね!」
「はい。」
「それだけではありません!その転んだ勢いで、絶対に水に濡らしてはならない機器が鞄やポッケから飛び出し、その先に更に水溜まりがあったならば、バシャアアアって、おじゃんですよね!」
「ええ、まあ。」
「それだけでは済みませんよ!雨上がり、水溜まりのパシャパシャ感を楽しむお子様が!次から次へと水溜まりを経由しながら登下校をしている中!その一つ水溜まりが、誰かの掘った落とし穴だったとしたら?これはもう!バシャアアアって、ずぶ濡れになる事態では済まされないのです!命に関わる問題です!」
「だいぶ特殊なケースですけどね。」
「事は、それだけで済む問題ではないのです!もしも、水溜まりを水溜まりのままに放置していて、その水溜まりを太陽が温め続けたら?水溜まりの水温は、グングン上昇する一方です!グングン上昇し続けたらどうです?その結果、水溜まりはいずれ、ボコボコと熱湯と化してしまうのです!そして、その熱湯と化した水溜まりの上を車が猛烈なスピードで通ったとしたらどうです?横を歩いていた通行人の方は、バシャアアアって、ずぶ濡れって具合では済まされないのですよ!」
「いくらなんでもそれはちょっと・・・・・・・・・。」
「いいですか?何かが起きてからでは!いやぁ、いくらなんでもそれはちょっと・・・・・・・・・デヘへ。では、済まされないのです!あらゆる角度から水溜まりの危険性を考慮し!それを事前に防がなければならないのです!そして、それを行う機関こそが!水溜まり局なのです!」
何よりも熱の入った話を僕は、水溜まり越しに聞かされていた。それでも僕は、建前に騙されるようなヘマはしない。
「何が居るんですか?」
「何も居ませんよ。」
いや、居る!絶対に水溜まりの中に何かが居る!局の人は、僕の最初の質問に対し、それだけではありません。とヘマを言っていた。
「なら、僕の始めの質問、中に何が居るんですか?の答えが、最初からそれだけではありません。は、おかしくないですか?」
「ですからそれは、あくまであらゆる可能性を示唆しての、それだけではありません。ですよ。」
それは、建前だ。完全なる建前だ。なぜなら、局の人が言っている事が全て本音だとして、やっぱり退治と言う表現方法が腑に落ちないからだ。
「退治って?なら、退治って何ですか?何かが中に居るからこその退治って表現なんじゃないんですか?例えばそれは、人を食べてしまう何か?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
水溜まり越しの局の人は、黙り込んでしまった。きっとそれがおそらく本音なんだろう、たぶん。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
水溜まりの中には、人を食べる何かが居る。だから、それを水溜まり局の人が、退治している。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・分かりました。すぐ、どきます。」
「えっ!?」
いったい何が水溜まりの中に居るのかは、気になった。でも僕には、なぜ水溜まり局と言う機関が存在しているのか?の存在理由が解決しただけで十分だった。
「帰ります。」
「そうですか。」
水溜まりの中に居る何かを知る必要もないし、それを知ったとこで、どうしようもない。水溜まり局の人が、それらを退治してくれるんなら、それでいい。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ご協力、感謝します。」
明日からまた、当たり前を当たり前に生きる僕には、それはあまりにもどうでもいい話だ。
「じゃあ、退治、頑張っ!?えっ!?」
「あっ!?」
しゃがんだ体勢から立ち上がろうとした瞬間、急な立ち眩みに襲われた僕は、局の人が差し伸べる手を掴み損ね、水溜まりの方へ倒れ込んで行った。

第二百三話
「パクッ!!」

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コメント

Dear brother PYN

This time, thank you so much for accepting my offering of becoming friends officially at the 'blog square' in cocolog. I really really appreciate your friendship and kindness.
May your 'funny' creative writings be fruitful to you as well as to all the funs of you!
Best Regards,

MASSIVE

投稿: MASSIVE | 2010年5月 7日 (金) 21時04分

Wow!! Oh yeah!!
You are welcome!
Thank you very very super very much!!

投稿: PYN | 2010年5月 7日 (金) 23時15分

どうもです……(^^;)。

夜中に目が覚めたもので。

「第三十五話」……バレンタインデーだから「チョコ」が喋れるようになったというオチですか……。なるほど「小アリ!」

えーっと、英文はそのままにしておいてください!ひょっとして、たまたま訪れた外国人のひとが読んでクスッと笑ってくれるかもしれ(そんなことはないか!)る可能性もないとは言い切れないので!

そう、ここはコメディのサイトなので……。

またお邪魔しまっす!

投稿: MASSIVE | 2010年5月22日 (土) 02時46分

コメントありがとうございました。

了解しました。いつか訪れるやもしれぬ異国の方の為に・・・・・・保存!

「三十五話」は、バレンタインでチョコ!しかも昔、飼っていた柴犬の名がチョコ!

では、またお待ちしてます。

投稿: PYN | 2010年5月22日 (土) 22時23分

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