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2010年6月23日 (水)

「第二百十話」

「私は、霊能力者です。」
「霊能力者?」
「私は、人を呪い殺す事が出来ます。」
「呪い殺す?誰かを呪い殺したのですか?」
「いえ、呪い殺し続けています。しかし、誤解しないで下さい、神父さま。私は、たった一度、呪いをかけただけなんです。」
「ふむ。いったいどう言う事なのでしょうか?一度しか呪いをかけていないのに、呪い殺し続けている?不思議ですね?」
「何も不思議な事なんてありませんよ、神父さま。話は、私がこの地球上に誕生した時に遡ります。」
「地球上・・・・・・・・・。」
「私が、地球上に誕生してかれこれ39年経ちます。」
「39歳と言う事なのですね。」
「いえ、明日で40歳です。」
「・・・・・・おめでとうございます。」
「ありがとうございます。そして、私は地球上に誕生したと同時に、呪いをかけたんです。」
「誰にです?」
「地球上の人間全てにです。」
「はい?」
「約40年前に私は、地球上に存在する全ての人間へ呪いをかけました。でも、神父さまはきっとこう疑問を抱くはずです。なら、約40年前以降に誕生した人間の死は、呪いではないんではないだろうか?」
「抱きませんよ?」
「答えは、私の呪いです。それはなぜか?約40年前に、私に呪いをかけられた人間から誕生する者達にも呪いは、継続されているからです。だから、この約40年の間に地球上で死んだ人間の死は、私の呪いなんですよ、神父さま!私は、本物の霊能力者なんです!」
「・・・・・・・・・これは今日もまた、大変な方がやって来てしまいましたね。つまり、貴方は地球上の人の死全てを自分の呪いだと言う訳ですか。それは、有り得ないのでは?」
「神父さま?どうしてそんな事を言い切れるんです?」
「常識的に考えて、いや常識的に考える事すら馬鹿馬鹿しい事です。」
「常識的?神父さま、これは、霊能力の話、非常に非常識な話なんですよ?常識で捉えないで下さい。」
「なら、何の為に?貴方は、何の為に全ての人間に呪いをかけたのです?」
「それは、私が霊能力者だからです。しかし、ただ自分で霊能力者だと名乗り出ても、信じる人なんていない。だから、呪いをかけたんです。それはなぜか?そうでもしなければ、私が霊能力者だと証明出来ないからです。誰も信じてくれないからです。」
「かなりの歩数を譲って、貴方が霊能力者だとしましょう。では、私を今、この場で、霊能力を使って呪い殺して下さい。」
「神父さま、無茶苦茶ですよ。そんな事、出来る訳ないじゃないですか。」
「それじゃあ、話の辻褄が合いませよ?貴方は、霊能力者なのでしょ?私を呪い殺す事など、容易いはずです。」
「神父さまは、何か誤解しているみたいですね。」
「誤解?」
「神父さま、神父さまは既に私の呪いにかかっているんです。その神父さまへもう一度呪いをかけると言う事は、つまり現在神父さまにかかっている呪いが私に跳ね返って来ると言う事になります。私はまだ、死にたくはない。」
「呪いとは、そう言う仕組みなのですか?」
「そう言う仕組みなんです。何なら分かりやすくメモ用紙にでも図を踏まえて説明しましょうか?」
「いいえ、それはいいです。しかしそれじゃあ、私も貴方を霊能力者じゃないと証明出来ませんが、逆に貴方も自分が霊能力者だと私に証明出来ないではないですか。」
「なぜです?今も地球上の何処かで誰かが死んでいるんですよ?」
「だから、それを呪いだと証明出来ないと言っているのです。」
「なぜです?」
「人は、必ず死ぬからです。いいですか?その絶対的な死へ呪いをかけたとこで、それを呪いだとは証明出来ないのです。貴方の言っている事は、言った者勝ちの理論でしかないのですよ。」
「神父さまは、私の呪いを信じていないと、そう言う事ですか?」
「じゃあ聞きますが、貴方が呪いをかけた地球上と、かけなかった地球上との違いは、何なのです?」
「苦しみです。」
「苦しみ?」
「神父さまに、分かりますか?毎日毎日、大勢の人間が自分の呪いのせいで死んでいく、私のこの苦しみが!」
「だったらなぜ、呪いなどかけたのです!」
「ですからそれは、言ったじゃないですか!私が本物の霊能力者だと言う事を証明する為だと!」
「なら、質問を変えましょう。貴方は、自分が霊能力者だと証明出来たとして、何がしたいのです?お金が欲しいのですか?名声が欲しいのですか?それとも地球を支配でもしたいのですか?」
「お金も名声も地球もいりません。私はただ、私が霊能力者だと言う事を知ってもらいたいだけなんです。それだけでいいんです。他に何もいりません。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「神父さま?」
「・・・・・・分かりました。貴方は、本物の霊能力者だーっ!!!」
「ありがとうございます!神父さま!」

第二百十話
「昨日は過去から来た女」

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