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2010年7月

2010年7月 7日 (水)

「第二百十二話」

「時間よ・・・止まれ!」
出勤のため、朝、家を出るとそこには、隣の奥さんが、時間を止めようとしていた。
「おはようございます。」
「時間よ・・・ん?あら?お隣の旦那さん!グッモ、グッモ!これから出勤?」
「ええまあ、今日は朝一で会議なので、いつもより早めに家を・・・・・・。」
「そう!それは大変ね!」
僕は、隣の奥さんの方が、よっぽどだと、よっぽど大変だと、よっぽど思った。
「ええまあ。」
「頑張ってね!行ってらっしゃい!」
「ああはあ。」
「時間よ・・・」
「あ、あのう?隣の奥さん?」
「ん?お隣の旦那さん、ごめんなさいね。今ちょっと、忙しいのよね。そりゃもう、忙しくて忙しくて、暇に見えちゃうほどね!」
僕は、完全に後者だと、強く思った。
「その事なんですけど?もしかして隣の奥さん、時間を止めようとしていませんか?」
「あらやだ!分かっちゃった?恥ずかしいわ!」
これで分からない人を、逆に見てみたいもんだ。
「ええまあ。」
「さっきからやってるけどあれね!全然ダメね!まるで、止まる気配すら無いわね!」
いったい隣の奥さんの身に、何が起きたと言うんだ?どんな情報操作を駆使すれば、人をここまで時間って代物が止められる代物だと思い込ませる事が出来ると言うんだ?更に、それが実現可能クラスまで達するほどの図々しいまでの神経の持ち主に至るまで、どんな人生を歩めば成長出来ると言うんだ?
「・・・・・・・・・。」
「お隣の旦那さん?」
「えっ!?ああ、すみません。つい、考え事をしてしまいました。」
「考え事?もしかして、時間の止め方についての考え事!」
「えっ?」
「だってほら、お隣の旦那さん!私の事を見て、すぐさま時間を止めようとしてるって気付いたものね!で?何か思い付いちゃったかしら?時間を止める方法とやらを!因みに私はね。こう考えたわ!時間よ、と、止まれ!の間の取り方が問題じゃないかって考えてるのよ!どう?いい線行ってる?」
隣の奥さんを見ていると、人はもしかしたら、鼻と口以外でも呼吸が可能なんではないのか?僕は、少しだけそんな考えを巡らせていた。しかも、間だけでの問題で時間が止まるなら、世の中いつも大パニックだ。いやむしろ毎日が大パニック過ぎて、大パニックではない場合が、むしろ大パニックじゃないか。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「お隣の旦那さん?」
「ああ、すみません。また、考え事をしていました。でも、間の間隔で時間を止められると言うのは・・・・・・そもそも時間と言う代物が止められる代物なのかと言う問題なんでは?」
「・・・・・・・・・止まれ!」
聞いてない・・・・・・・・。
「ダメね。どうしてなのかしら?どうして止められないのかしら?もしかしらもう、私には・・・・・・・・・。」
「隣の奥さん?」
いつも陽気な、陽気と言う言葉を辞書で調べたなら、隣の奥さんのような、みたいに活用方法として例文に載っているんじゃないかってほどの隣の奥さんのこの落胆っぷり!?もしかしら・・・・・・もう、私には?まさか!?以前までは、時間が止められたと言う事なのか?確かに、時間を止められたら、止められている間、止められているんだから、止められている側には、止められていた事にすら気付く事なんて不可能だ!そんな!?隣の奥さんが本当に時間を?まさかな。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「時間を止められる力が無いのかしら?」
「やっぱり!?」
「やっぱり??」
「いえ、すみません。こっちの話です。それより隣の奥さん!隣の奥さんが、昔は時間を止められる力を持っていたと言う話は、本当なんですか!」
「あらやだ!」
「その話、詳しく聞かせてもらえませんか?いつ、どこで、どんな時、時間を止めたんですか!」
「あのね。話は、私が子供の頃まで遡るのね。そう、あれは約50年前!」
「ゴクリ!」
僕は、生唾を飲んだ。事が事なら、僕の生きているこの世界は、意図的に作られた世界。仮に隣の奥さんの時間を止められる力が、代々受け継がれている能力だとしたら?そもそもが、時間の操作によって遥か昔から歴史は誰かの脚本によって作られて来た。誰だ?いったい誰がそんな事を?誰、じゃない!隣の奥さんの力だけで、世界の全ての歴史を作れるのか?いや、奥さんの力だけじゃ無理だ!きっと裏には、何か大きな組織が存在していて、意図的な歴史を作り上げているんだ!そして、おそらく時間を止められる力を持つ人間は、隣の奥さんだけじゃないはず!・・・・・・待てよ!まさか、時間を止められる力を持つ人間を!?世界の規模が膨れるにつれ、能力の持ち主が一人では足りなくなった事を組織は、オリジナルからコピーを大量生産する事で解消した!なら、隣の奥さんはオリジナルではなくて、コピー?いや、コピーのコピーのコピーの、そのまたコピーの出来損ないに違いない。でなければ、こんなとこで主婦なんて陽気にしていられる訳がない。組織は、何らかの方法で記憶を消し去り、記憶を植え付け、不要なコピーを世間に送り出した。しかし、何かのきっかけで封印されていた隣の奥さんの昔の記憶と能力が、徐々に戻り出した!待て待て待て!記憶が戻った隣の奥さんは、どうなる?そして、その隣の奥さんの正体に気付いた隣の旦那さん、つまり僕はいったいどうなる?どうなるもこうなるも!組織は、間違いなく必ず消しにやって来る!!隣の奥さんも、その隣の旦那さんも、その家族もろとも世界から抹殺するためにやって来る!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「まあ、それで今朝に至るわけなのよ!」
「えっ!?」
き、聞き逃した!!いや違う!?隣の奥さんが、無意識に時間を止め
「えっ!?」
「あらやだ!話に夢中になり過ぎて、もうお昼じゃない!買い物に行かなきゃだわ!じゃあ、お隣の旦那さん、会議頑張ってね!グッバ、グッバ!はあ、こんな時、時間が止められたらいいのにねぇ。瞬間移動、使えたり、透明人間とかにもなりたいわぁ。やれやれ、夢見がちな主婦は辛いわぁ。」
「・・・・・・・・・・・・。」

第二百十二話
「そして僕の時間は止まった」

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2010年7月14日 (水)

「第二百十三話」

「ガバッ!!」
十数回繰り返された悪夢が終わった。ベッドから飛び起きた汗まみれの俺は、シャワーを浴び、洗面所の鏡の前で、右耳を切り落とした。これでもまだ、これが悪夢だと言うなら、仕方無い。ただ、俺には今が悪夢の中じゃないと言う確証が、右耳の他にもう一つあった。それは、悪夢の始まりがいつもドアチャイムで目覚める所から始まるからだ。インターホンカメラに映る彼女。来月に控えた結婚式の打ち合わせをするため、マンションにやって来た。そして、インターホンカメラに映るドアの前の彼女の後ろには、殺人鬼。殺人鬼の手には、スパナが握られてる。ドアまで走る俺、ドアチェーンを外すのにもたつく俺、ドアの向こう側で叫ぶ彼女の声を聞く俺、そして、またドアチャイムで目覚める俺。
「・・・・・・・・・。」
鏡越しに見ると、時計は23時08分だった。悪夢では、彼女がマンションにやって来るのが、23時11分。
「しまった!」
俺は、ベランダに飛び出した。すると、丁度彼女がマンションに入って行く姿が見えた。
「まずいぞ!」
俺は、その辺にある服を着て、ドアチェーンを外し、ドアを開け、ドアの外へ。目の前のエレベーターは6階を目指し、既に動き出してた。
「くそっ!」
このままじゃ、悪夢が現実になっちまうじゃないか!右耳を切り落としてる場合じゃなかった!何で気付かなかったんだ!何で俺は、いつも大事な事に気付かないんだ!
「・・・・・・・・・大事な事?」
待てよ?あの悪夢が現実なら、もう既に殺人鬼は、このフロアーに居る!?
「ガン!」
俺が大事な事に気付いた瞬間、俺の頭に激痛が走った。と、同時に俺の目の前には真っ赤な床。
「ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!」
倒れた俺に対しても、殺人鬼は容赦無く何度も何度も、何度も何度もスパナで頭を、何度も何度も殴り続けた。何度も何度もだ。
「・・・・・・く・・・来るな・・・・・・。」
声にならない声で俺は、上昇して来るエレベーターに向かって叫んだ。出来ればこれも悪夢であってくれればとも願った。
「チーン!」
俺の願いも虚しく、間も無くエレベーターが到着し、ドアが開くと、中には彼女の姿が見えた。もう体も動かなければ、声も出せない。視界もぼんやりして来たが、左耳だけは正常に機能していた。
「今回もまた、悪夢だったのね。」
と、彼女が呟くと、エレベーターの扉が閉まり、下降して行った。俺の悪夢じゃなくて、これは彼女の悪夢だったってのか?それとも・・・・・・
「ガバッ!!」

第二百十三話
「誰かの悪夢」

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2010年7月21日 (水)

「第二百十四話」

日々、書き続けると言う者が、物書きなのだと信じてやまない綴り暮らしていた日々。

しかし!

辿り着いた極みは、奇抜で不可解
辿り着いた高みは、突飛で不可思議

そこは、書かないと言う境地であった。

書けないのではなく、書かない。
面倒臭いのではなく、書かない。

これが物書きの極みであるのなら、ここが物書きの高みであるのなら、私は物書きでなくてよい。私は物書きでありたくはない。

空を翔べないから人であり、死ぬからこそ人である。

物を書かないから物書きであり、創作しないからこそ物書きである。

なら、私はただの人でよい。単なる人でよい。物書く人がよい。

愛を棄て
友を棄て
命を棄て

信じた道の行き止まりの終着点が此処であるのならば、私は愛を拾い、私は友を拾い、私は命を拾いながら、引き返す事を望み、そして選ぶ。

きっと何処かで道を間違えたのだと、きっと何処かで道を見失ったのだと、無謀にも過去を振り返りながら、果敢にも未来を無限視しながら、歩き出す。

ただ、ひたすらに歩き出す。

青い丸で奇跡を棄て飛び出し、黒い海へ希望を胸に漕ぎ出す。

私とはそんな、いたってシンプルな、まったくもってオーソドックスな、これでもかってぐらいスタンダードな人間だ。

第二百十四話
「最終話」

―あとがき―

作者が、不慮の事故や予期せぬ出来事で死亡した場合を考え、とりあえず先に最終話を書いたまでで、これからも、まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだ『COSMIC☆COMEDY』は続きますよ。

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2010年7月28日 (水)

「第二百十五話」

「サッカーやろうぜ!」
「いいぜ!って、ちょっと待て!」
「何だよ!サッカーで頭ん中イッパイのこのノリノリな感じを止めんなよ!」
「お前、それってタマゴだよな?サッカーボールじゃなくて、それタマゴだよな!」
「よっしゃっ!サッカーやろうぜ!」
「やるよ!やるやる!やるけど、待てって!」
「やるやるって言ったり、待てって言ったり、お前は余程のバンジージャンパーか!或いは、片付けられない大人女子か!」
「その変な例えは置いといてだよ。それ、タマゴだよなって!」
「そうだよ。よし!サッカーやろうぜ!」
「分かった!分かったやるから!の前に、解決しときたいんだよ。えっ?サッカーボールは?」
「あったら、わざわざタマゴなんて代物、持って来ないよ。」
「チョイスミス!」
「言われた事ないなぁ?似てるかなぁ?どの辺?どの辺が?髭!髭か?髭がちょいスミス氏か?でも俺、髭生えてないしなぁ?」
「誰がちょっとスミス氏に似てるだなんて言ったよ!チョイス、ミスだ!ちょいスミスじゃなくて!だいたい、スミス氏ってのは、誰なんだ!って、スミス氏どうだっていんだよ!」
「何を一人で興奮してんだよ。ストレスか?日頃のストレスなのか?だったら、やろうぜ!サッカーやって鬱憤晴らそうぜ!」
「やってやりたいよ俺だって!お前とサッカーを!でも、サッカーボールの代用品がタマゴじゃ無理だろって!」
「なぜだ!」
「逆に俺が聞きたいよ!なぜ、タマゴでサッカーが出来ると思った?」
「逆の逆に俺にも聞かせてくれ!なぜ、タマゴでサッカーが出来ないと思うんだ!」
「割れるからだ!始めの一蹴りで俺達のワールドカップが幕を閉じるからだよ!」
「そんなの!そんなのやってみなきゃ分からないだろ!」
「お前、それ本気で言ってんのか?なあ?お前、何かあったのか?」
「あったよ!」
「悩みがあるなら言ってくれよ。親友だろ?」
「その親友が!サッカーやってくんないんだよ!」
「悩みってそれかよ!だから、タマゴじゃなきゃサッカーやるって言ってるだろ!」
「はっは~ん?」
「な、何だよ!」
「お前さぁ。さてはさぁ。このタマゴが割れて、ピシャー!って中身が飛び散るのを気にしてんじゃないの?白身と黄身が、ピシャー!って飛び散って、白身と黄身まみれになって汚れるのを気にしてんじゃないの?だったら心配すんな!これは!このタマゴは!茹でタマゴだぁぁぁぁぁ!!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・茹でタマゴだぁぁぁぁぁ!!」
「生だろうが!茹でだろうが!タマゴでサッカーがやれるかぁぁぁぁぁ!!」
「・・・・・・・・・やれる!!」
「なあ?その自信は、どっから来んだよ?教えてくれよ。本当に。」
「シミュレーションでは、一度も割れなかった!」
「それ、お前の都合のいい都合だろ?俺のシミュレーションじゃ、ことごとく割れてるよ!」
「よし!なら、お前のシミュレーションが正しいか!俺のシミュレーションが正しいか!勝負だ!行くぞぉぉぉ!!」
「行かないよ?行かない行かない。行かないからさ。」
「そうか。さては、負けるのが怖いんだな?自分のシミュレーションが、ことごとく打ち負かされるのが、怖くて怖くて仕方ないんだな!この臆病者のスットコドッコイショ!!」
「分かった!そこまで意味不明な事を言われちゃったんじゃあ、やってやるよ!タマゴでサッカー、やってやるよ!」
「やりたいならやりたいって、最初から素直に言えよな。」
「絶対!割れるからな!」
「勝手に言ってろ。で?どっちら先に蹴る?」
「はあ?そりゃ、割れないってシミュレーションのお前からだろ?」
「嫌だ!」
「はあ?嫌だってなんだよ嫌だって!サッカーやろうぜって、持ち掛けて来たのは、お前だろ?」
「確かにそうだよ。確かに俺は持ち掛けた。でもなぁ?これから勝負だってのに、何かそのお前の譲るって姿勢が気に食わん!こりゃ勝負なんだ!例え遊びだとしてもだ!お前、サッカーの試合で、先にボール譲るチームいないだろ?」
「タマゴなら、誰だって譲るだろ。で、何だよ。どうしろってんだよ。」
「コイントスだよ!サッカーなら、このコインを使ってコイントスで決めるのが流儀だろ!」
「タマゴじゃん!」
「タマゴですけど?」
「コイントスって言ったじゃん!」
「家にコイントス用のコインが、無かったんだから仕方ないだろ。」
「コイントス用のコインを持ってる家を知らないよ俺は!仮にコイントス用のコインが無くても別のコインでよくない?何でタマゴ?」
「うるさいなぁ!そんな事言ったって、もうタマゴ持って来ちゃったんだから仕方ないだろ!」
「いや、俺出すよ。コイン、俺出すよ。」
「いいよ。」
「いや、いいよ。」
「いや、いいってば!」
「いや、出させてくれよ!」
「ダメだって、お前に迷惑掛かるから!」
「財布からコイン出すだけだよ?全然、迷惑じゃないよ。」
「ほら、お前はいつも人に気を使って我慢しちゃうタイプだから、内にストレスを溜め込むタイプだから、ダメだって!」
「いや、タマゴでコイントスの方がストレスだって!。」
「またまたー!いいっていいって、うんうん、分かる分かる!大丈夫だって、俺にまで気を使うなって!」
「どこをどう見て気を使ってると思ってんだ?じゃあ、落ちてる石でもいいよ。なっ?」
「ダメだよ。風情がない。」
「何だ風情って!コイントスに風情も情緒も無いだろって!」
「じゃあ、俺は裏!」
「タマゴに裏とか表とかって概念がまず無いだろ!」
「行くぞ!」
「いや、それはお前のさじ加減って事になっちゃうだろって!」
「せーの!」
「お、おい!!」
「おりゃ!よーし!裏、来いよ!」
「だから、どうなったら、裏なんだって!」
「来い来い!」
「何だ?あらかじめタマゴに書いたのか?」
「来い来い来い!!」
「だいたいタマゴが割れたら裏も表も無いだろって!って、割れたら!?な、なあ?」
「何だよ。恨みっこ無しだからな。」
「じゃなくて、このタマ」
「さあ!来いっ!!」

第二百十五話
「ピシャー!」

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