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2010年7月14日 (水)

「第二百十三話」

「ガバッ!!」
十数回繰り返された悪夢が終わった。ベッドから飛び起きた汗まみれの俺は、シャワーを浴び、洗面所の鏡の前で、右耳を切り落とした。これでもまだ、これが悪夢だと言うなら、仕方無い。ただ、俺には今が悪夢の中じゃないと言う確証が、右耳の他にもう一つあった。それは、悪夢の始まりがいつもドアチャイムで目覚める所から始まるからだ。インターホンカメラに映る彼女。来月に控えた結婚式の打ち合わせをするため、マンションにやって来た。そして、インターホンカメラに映るドアの前の彼女の後ろには、殺人鬼。殺人鬼の手には、スパナが握られてる。ドアまで走る俺、ドアチェーンを外すのにもたつく俺、ドアの向こう側で叫ぶ彼女の声を聞く俺、そして、またドアチャイムで目覚める俺。
「・・・・・・・・・。」
鏡越しに見ると、時計は23時08分だった。悪夢では、彼女がマンションにやって来るのが、23時11分。
「しまった!」
俺は、ベランダに飛び出した。すると、丁度彼女がマンションに入って行く姿が見えた。
「まずいぞ!」
俺は、その辺にある服を着て、ドアチェーンを外し、ドアを開け、ドアの外へ。目の前のエレベーターは6階を目指し、既に動き出してた。
「くそっ!」
このままじゃ、悪夢が現実になっちまうじゃないか!右耳を切り落としてる場合じゃなかった!何で気付かなかったんだ!何で俺は、いつも大事な事に気付かないんだ!
「・・・・・・・・・大事な事?」
待てよ?あの悪夢が現実なら、もう既に殺人鬼は、このフロアーに居る!?
「ガン!」
俺が大事な事に気付いた瞬間、俺の頭に激痛が走った。と、同時に俺の目の前には真っ赤な床。
「ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!」
倒れた俺に対しても、殺人鬼は容赦無く何度も何度も、何度も何度もスパナで頭を、何度も何度も殴り続けた。何度も何度もだ。
「・・・・・・く・・・来るな・・・・・・。」
声にならない声で俺は、上昇して来るエレベーターに向かって叫んだ。出来ればこれも悪夢であってくれればとも願った。
「チーン!」
俺の願いも虚しく、間も無くエレベーターが到着し、ドアが開くと、中には彼女の姿が見えた。もう体も動かなければ、声も出せない。視界もぼんやりして来たが、左耳だけは正常に機能していた。
「今回もまた、悪夢だったのね。」
と、彼女が呟くと、エレベーターの扉が閉まり、下降して行った。俺の悪夢じゃなくて、これは彼女の悪夢だったってのか?それとも・・・・・・
「ガバッ!!」

第二百十三話
「誰かの悪夢」

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