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2010年10月

2010年10月 6日 (水)

「第二百二十五話」

「ふわぁ。」
特にやる事もない連休最終日。また明日から学校か・・・・・・って、ランドセルを見つめながらベッドの上で暇過ぎるから僕は一人、欠伸をしていた。そんな午後3時をちょっと過ぎた小雨の日。
「呼んだ?」
「いや呼んでない。ってか、誰??」
すると、そんな僕を見下ろす爬虫類系な顔立ちのくたびれた背広を着たオジサンが現れた。
「申し遅れました。わたくしは、こう言う者です。」
僕は、オジサンが差し出して来た名刺をベッドに横になったまま受け取り、眺めた。

第二百二十五話
「欠伸の人」

「欠伸の人?」
名刺には、ただそれだけの文字が書かれていた。
「はい。」
「いやちょっとこれだけじゃ、中々汲み取れないんですけど?」
「簡単に言えば妖精です。」
「はあ?」
「欠伸の妖精です。」
「いや、欠伸の人って、名刺には書いてあるし。」
「ミスです。」
「なら、直さなきゃでしょ!てか、抜本的に、名刺いる?妖精に名刺必要?」
「名刺は必要です!では仮に、この世に名刺が無いと考えましょう。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「人類滅亡です!」
「無茶苦茶だよ!てか、そこへ至るまでの過程を話してくれなきゃでしょ!何か考えてる間の無駄な動きの部分を話してくれなきゃでしょ!で、一回何かよく分からないけど、誰かに追われてるシーンあったのは何っ?だいたいが、名刺を普段使わない小学生の僕に問われても?って、そもそもそんなに重要視すんなら、やっぱり直さなきゃでしょ!」
「さて、わたくしが欠伸の妖精だと理解していただいたとこでですね。」
「簡単に流したね。」
「何か?」
「いや、何でもないですよ。とにかく早く帰って下さい。」
「帰る訳にはいかないんですよ。」
「何で急にシリアスモード?なら仮に、僕が欠伸した事で、欠伸の人を」
「妖精です。」
「欠伸の妖精を呼び出してしまって、何か願い事を叶えてくれるんだったら、帰って下さいが、僕の願い事です。」
「御子息。」
「そんな風な呼び方が存在すんのは知ってたけど、呼ばれたのも呼ぶ人も初めて出会ったよ。」
「妖精ですけどね。」
「ちょっといい?」
「どうぞ。」
「妖精、妖精って、言ってるけどさ。本当に妖精なのかもしれないけどさ。だったらもう少し妖精っぽくしたら?」
「と言いますと?」
「羽根があるとか。」
「花の妖精かよ!」
「先っぽが尖った帽子をかぶってるとか。」
「森の妖精かよ!」
「いや、ちょっとその漫才のツッコミみたいな感じやめて?真面目に話してんだからさ。」
「いやでも、御子息?妖精なんてこんなもんですよ?実際は、あっちが稀なパターンなんですよ。だから、図鑑とかに取り上げられるんですよね。」
「じゃあ、がっかりだ。」
「よく言われるーっ!」
「いや、笑うとこじゃないし!妖精だって事は分かりましたから、もう帰って下さいよ。」
「帰る訳にはいかないんですよ。」
「温度差!だったらずっとシリアスモードでいけば?他がおちゃらけ過ぎで、シリアスモードも逆におちゃらけてるとしか思えないもんね!つか、帰る訳にはいかないなら、さっさと目的を達して下さいよ。」
「じゃっ、殺すね。」
「急っ!?何その急展開っぷり!?じゃっ、殺すねじゃないよ!仮に殺すなら、理由を教えてよ!」
「欠伸したからですよ。」
「じゃあ、明日には人類滅亡だよ!」
「名刺と同じだね!」
「名刺知らない!そっちはよく分からない!それはなぜか?なぜなら人類滅亡に至るまでの詳細な話を聞いてないから!」
「わたくしだって、欠伸の詳細な話を聞いてないですよ!!」
「すっごく憤慨してるけど、分かるじゃん。欠伸したからって殺されてたら、人間なんて直ぐに滅亡だよ。人間どころか地球上の生物全般滅亡だよ。」
「名刺だって、ちょっと考えれば分かるじゃん!」
「分かるかーっ!!!」
「こっわーっ!!」
「鬱陶しいから出て下さいよ!」
「鬱陶しい?このわたくしが?」
「この、の自信たっぷりな言い方の意味が分からないけど、この状況下で鬱陶しいって思わない人を逆に見てみたいよ!って、お前以外だーっ!!ピーンっと手を上げるな!!」
「御子息はあれだね!」
「何っ!」
「ストレスのド塊だね!」
「ほぼ、お前のお陰ですけどね!」
「いやぁ。」
「誉めてないから!照れないでくんない!」
「いや、御子息。これは怒られて照れると言う斬新な発想です!」
「じゃあ、頭がおかしいんだよ。きっと。」
「ほら、あまり日常では、照れると言う事態に巡り合わないではありませんか。だからこそ、もっともっと日常的に照れてみようって、あえて違う場面で照れを取り入れると言う試みですよ。」
「何で照れに付いての話を広げたんです?」
「じゃあ、殺すね。」
「いや、それは絶対に照れながら言っちゃダメなフレーズだから!」
「しかし、御子息。全国照れ促進委員会の会長としては、ここは譲れません!」
「いや何か、どっちにしろよく分からないんだけど、どちらかと言えば今の方を名刺に書いとけば?」
「ヤダ!!」
「じゃあ、いいよ。そんなに無い髪を振り乱して嫌がるぐらいなら、ミスプリのままでいいよ。つか、そこでしょ!そここそ照れなきゃでしょ!」
「わたくしの肩書きを否定されて!照れていられるかーっ!!」
「じゃあ、会長やめちまえだし、名刺で既に肩書き否定されてっからね!」
「さてと、もうこんな時間だ。」
「腕時計も付けてなきゃ、眼鏡も掛けてないじゃん!って、えっ?もう9時!?いつの間に夜!?」
「良い子は寝る時間だね。悪い子はそうだなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「いい!いい!無理に何かを閃こうとしないで、いいです!」
「ありがとう!御子息は、命の恩人です!」
「死ぬぐらいなら言わなきゃいいじゃん。」
「さてさて、わたくしはこの辺で帰らさせてもらいましょうかね。」
「いや、帰ってくれるのは、ありがたいんですけど、何っ?いったいぜんたい、何だった訳?」
「欠伸の妖精ですよ。わたくしは、心底暇過ぎる人が欠伸をした時だけに現れ、暇潰しの相手をする欠伸の妖精ですよ。では、また何処かでお会いする事を楽しみにしていますよ。」
「えっ!?・・・・・・・・・消えた。」
こうして、僕の特にやる事もない連休最終日は、過ぎていった。そんな満月が雲間から顔を覗かせる月曜日の夜。

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2010年10月13日 (水)

「第二百二十六話」

 私は、毒物を運ぶ男。50年間ずっと、私は、毒物を運ぶ男。
「おじさん!」
「ん?」
「下さい!」
そして私は、その毒物を運び売り捌いて歩く男。だが、この日は妙に違っていた。何がどうとか、説明は難しいが、私から毒物を買おうとしている少女を目の前にして、私の中の何かの切っ掛けが、どうにかなってしまったのだろう。
「お嬢ちゃん、ママのお手伝いかい?」
「うん!」
或いは少女ではなく、その母親の方が毒物を買いに来ていたのなら、私はいつも通りの感覚で、いつも通りに毒物を売り捌いていたのかもしれない。
「偉いね。」
「えへへ。」
この笑顔。きっと少女のこの笑顔が、私の中の何かを狂わしたのだろう。歯車の一部を停止させ、パズルのワンピースを抜き取ってしまった。そしてそれはきっと、当たり前の日常の中にある当たり前すぎる日常を疑問に思えと言う感覚を生んでしまっただろう。生まれた時から存在する当たり前が、本当に当たり前なのだろうか?極論で言ってしまえば、私は私なのだろうか?と言った具合だろうか?己が信じている事が覆される恐怖に怯え、真実から目を背ける。
「おじさん?」
いや違う。私は、初めからこの毒物を、毒物だと思って運び売り捌いている。真実を覆される恐怖も真実を真実だっと突き付けられる恐怖も、私には存在しない。ならば、何だと言うんだ?当たり前の日常の中に潜む当たり前すぎる日常とは?
「おじさん!ってば!」
「ん?ああ、すまない。で?いくつ欲しいんだい?」
「えーと?えーと、えーと??」
「忘れちゃったかい?」
「大丈夫!今、思い出すから!」
思い出すな!!私は、心の中でそう叫んだ。毒物と少女を何度も何度も交互に見ながら、何度も何度も私は、心の中で少女へそう叫んだ。
「えっとねぇ?」
今、今この瞬間、私がこの場から走り去れば、或いは毒物を少女へ売り捌かなくても済むのではないだろうか?しかし、それをしたとこで、何になる?おそらく少女は、他の毒物を運ぶ人を見付けて、買うだろう。私が売り捌かなくとも、少女が毒物を手にする当たり前の未来は、到底変える事の出来ない未来。
「「そうか!」だ!」
「!?」
「!?」
お互いが同時に何かを閃き思い出し、私と少女は驚いて見詰め合っていた。どうやら少女は、毒物をいくつ買うのかを思い出し、私は突っ掛かりの突破口を閃いた。
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ。それより、いくつ欲しいんだい?」
「20個!」
少女は、小さな両手で20の数字を作り、私に向かって突き出した。その先に見え隠れする少女の笑顔が、毒物を手にする私の手を震えさせているのは、明らかだ。
「20個だね。」
「うん!ママとパパとお兄ちゃんと私と妹の分!」
「じゃあ、はい20個!」
「ありがとう!」
「走って転ぶんじゃないぞーっ!」
「うん!」
私は、毒物を売り捌き、少女から受け取った毒物20個分のお金を鞄の中に入れながら、満タンの毒物の容器を手にして、間も無く空になる毒物の容器を取り出し、手にした容器を入れた。それは、日に7回行われる当たり前すぎる行為だった。そうしなければ、この地球上で人は、簡単に死んでしまうからだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
私が感じた妙な違和感とはきっと、こうして生きている当たり前すぎる日常が、当たり前でいいのだろうか?と言う理不尽で突飛な不安感だったのだろう。
「毒物か・・・・・・・・・。」
私が生まれるずっと以前からそれは、毒物と呼ばれていた。そして、私が運び売り捌いてるこれは、元々その毒物から汚染物質を68%以上取り除いて作り出された物だと言う真実を知っている。
「100%空気・・・・・・。」
毒物の容器に書かれた文字を呟き、それでも毒物を毒物だと知らないで待つ人々の元へ私は、再び毒物を売り捌く為、歩き出した。

第二百二十六話
「空気を売る男」

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2010年10月20日 (水)

「第二百二十七話」

野垂れ死んでも構わないから俺は、俺の信じた道を行く。

 
でもたまに、その道に霧が、その道に誘惑が、その道に雑音が、その道に別の道が、俺の心を踏みにじって、へし折ろうとする。

 
虚無感と焦燥感とに挟まれ、果てしなく近く遠くの理想を現実から見つめていると、重力に押し潰され、引力にねじ曲げられそうになる。

 
憎悪に希望が引き裂かれそうになり、愚行と愚考に誇りを木っ端微塵に爆破されそうになる。

 
睡魔と不眠に肉体が蝕まれ、負のスパイスへと堕ちて行く様子がスローモーションで脳裏を過る。

 
痩せ細り朽ち果てそうになる心の柱を必死になって修復する光景がまた、脳裏を廻る。

 
いっそ目の前の綺麗に舗装された曖昧な道を歩き出し、適当な雑音に耳を傾け、それなりの霧に身を包まれ、おざなりの誘いに身を任せて生きてしまおうかと、一歩足を踏み出しそうになる自分へ、ギリギリの所で達成感がブレーキを掛け、満足感でその場を何とか凌ぐ自分。

 
孤独が辛いのか?苦悩が辛いのか?孤独で苦悩なのが辛いのか?無駄に無駄な無駄を試行錯誤するが、ただ、孤独と苦悩だけしか辛い事が無いのなら、何処かの誰かの辛さに比べたら、其ほど、言うほど、ましてや、此れほど大した事じゃない事はない。

 
たまにこうして心を痛めて悩んで泣くぐらいだけなら、幸福なのかもしれない。

 
今なら野垂れ死に出来る可能性を秘めている俺は、幸福なのかもしれない。

 
まだ冷静に分析して解析して答えを導き出せるのなら、何も迷っちゃいないのかもしれない。

 
野垂れ死んでもいいはずなのに、野垂れ死ぬ事を恐れ、野垂れ死なないでいる現状に、ホッと安堵してしまったら最期なのかもしれない。

 
空がブルーなヒストリーを刻み続けているならまだ
 
月がイエローなマイストーリーで輝き続けているならまだ
 
太陽とシャドーのタぺストリーが爆ぜ続けているならまだ
 
サンセットでサンライズに埋もれながらも俺は、勇敢にもハローと、果敢にもマニュアルで交わせるならまだ

 
エバーグリーンな贅沢はいらないって笑って、家路に着く前に、何処か、誰も見聞きした事もないような、誰も考えつかないような、閃きのアイデアの中で、俺はまだ野垂れ死ねるに違いない。

第二百二十七話
「the sky won't snow and the sun won't shine」

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2010年10月27日 (水)

「第二百二十八話」

 俺は今、夢の中にいる。そして、夢の中を逃げ回っている。
「くそっ!ここにも!」
「はっはっはっは~!」
俺に銃口を向け殺意に笑うダンディーなコイツは、黒い帽子に黒いスーツなニヒルなヒットマン。そう、俺はヒットマンから逃げ回っている夢を見ていた。

第二百二十八話
「至る所にヒットマン」

 夢の中で起きた瞬間から悪夢は始まった。こんもりと異様に盛り上がった布団の中からヒットマン。
「はっはっはっは~!」
飛び起きてトイレに逃げ込むと便座に座るヒットマン。
「はっはっはっは~!」
俺は、今にも銃口から発射されそうな弾丸に恐怖し、無我夢中で逃げた。夢の中ってのは不思議な構造をしてるもんで、玄関へと続く廊下が異様に長かった。フルマラソン級に走り疲れた俺は、カラカラになった喉を潤そうと、一先ず冷蔵庫へ手を伸ばした。するとそこにはヒットマン。
「はっはっはっは~!」
冷蔵庫のドアを勢いよく閉め、俺はすぐ横にある蛇口を捻った。
「はっはっはっは~!」
蛇口からは、水ではなくヒットマン。驚いた俺が尻餅を付いた瞬間、場面は喫茶店へと移った。目の前のテーブルの上には、アイスコーヒー。相変わらず喉がカラカラな俺は、ストローへと口を近付けた。
「はっはっはっは~!」
ストローの中からは、ヒットマン。俺は、アイスコーヒーのグラスを手に取り、壁に投げ付け、喫茶店の出口へと駆け出した。
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
通り過ぎる客の全てがヒットマン。
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
通り過ぎる店員の全てがヒットマン。
「はっはっはっは~!」
つまりが、喫茶店内の俺以外が全てがヒットマン。俺は、地下にある喫茶店の出口を抜け、階段を駆け上がり、地上へと出た途端に場面は映画館へと移り変わった。そこで俺は、恋愛映画を観ていた。クライマックスシーンで、女性が立ち去る男性を呼び止めていた。後ろ姿でピーンと来てはいたが、案の定、振り向いた男性は、ヒットマン。
「はっはっはっは~!」
そんなヒットマンに向かって駆け寄り抱きつく女性も、やっぱりヒットマン。
「はっはっはっは~!」
何が悲しくてダンディーなヒットマン同士のダンディーなキスシーンを見なきゃならないんだ。と思っているうちに、スクリーンにはfinの文字。そして、スピーカーからはヒットマンの笑い声。
「はっはっはっは~!」
と、共にエンドロールには全てヒットマンの文字。ここで俺は、事の重大さに気が付いた。照明が点いた時、館内はヒットマンで埋め尽くされてんじゃないか?と。それを思い付いた時には、もう館内の照明が徐々に明るくなって来た時だった。
「えっ!?」
館内には、俺一人だった。呆然とする中、館内に清掃員が入って来た。
「はっはっはっは~!」
ヒットマンだった。無我夢中で逃げる俺だったが、何だろう?このヒットマンが出て来た時の妙な安心感は?と考えていたら、場面は診察室に移っていた。もちろんドクターは、ヒットマン。
「はっはっはっは~!」
レントゲン写真もヒットマン。カルテにもヒットマンの文字だらけで、ナースもヒットマン。
「はっはっはっは~!」
腕を捲った俺に刺そうとするドクターヒットマンの注射器の注射針の中からヒットマン。
「はっはっはっは~!」
ドクターヒットマンの手を振り切り、俺は診察室を出た。
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
廊下には、ギブスのヒットマン。点滴のヒットマン。松葉杖のヒットマン。真っ青なヒットマン。手術室へと運ばれて行くヒットマンを運ぶヒットメン。無我夢中で走る俺が気付いた時には、場面は何かの行列だった。
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
もちろん、行列に並ぶ俺の前と後ろには、ヒットマン。そして、行列に並ぶ老若男女なヒットマン。でも基本的にダンディーだから気味が悪い。ゆっくりだが、行列は進んで行く。けど、この行列が何の行列なのかは、全く不明だった。
「はっはっはっは~!」
勇気を出して後ろのヒットマンに聞いてみても銃口を向けて笑うだけで、話にならない。俺は、ただただ夢のルールに従い、行列の先頭になるまで並んでなきゃならなかった。
「はっはっはっは~!」
前のヒットマンの耳の穴からヒットマン。
「はっはっはっは~!」
その耳の穴のヒットマンの鼻の穴からヒットマン。
「はっはっはっは~!」
その耳の穴のヒットマンの鼻の穴のヒットマンの銃口の中からヒットマン。
「はっはっはっは~!」
その耳の穴の鼻の穴の銃口のヒットマンの帽子の隙間からヒットマン。
「はっはっはっは~!」
その耳の穴の鼻の穴の銃口の帽子のヒットマンの耳の穴からヒットマン。以降は、ずっと耳の穴からヒットマン。肉眼では見えないくらいになった先っぽのヒットマンを眺めながら俺は、むしろアッチからコッチだったらって考えたら、思わず笑いが込み上げて来た。そんな下らない考えを張り巡らしている間に、いつの間にか俺は、行列の先頭に立っていた。
「やっぱりか。」
店の看板には、ヒットマンの文字。いったい何の店なのかと、中に入るとヒットマンが迎えてくれた。
「はっはっはっは~!」
どうやら、定食屋のようだったが、あんなに行列だったのに、客は俺一人だった。とりあえず席に付きメニューを見たが、メニューは全て料金に至るまでヒットマンだった。
「はっはっはっは~!」
仕方無くヒットマンを注文した。笑いながら店の右奥へと消えて行ったヒットマンを見送ると、すぐに左奥からヒットマンが現れたのに、俺は驚いた。
「はっはっはっは~!」
ヒットマンのお盆には、丼と味噌汁とお新香が乗っていた。嫌な予感はしたが、俺は丼の蓋を開けた。だが、期待とは裏腹に丼の中身はカツ丼だった。お腹が減っていた俺は、箸でカツを一切れつまみ上げた。
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
「はっはっはっは~!」
ご飯が全てヒットマンだった。あまりの異様すぎる光景に、箸もカツも床に落としてしまった俺は、急いで丼に蓋をした。すると殺気を感じた俺が味噌汁に目をやると、味噌汁の中からヒットマン。
「はっはっはっは~!」
更に、お新香の下からヒットマン。
「はっはっはっは~!」
もうとにかく店を出ようとヒットマンを呼び、会計をしてもらおうとポケットから取り出した財布を開けるとヒットマン。
「はっはっはっは~!」
俺は財布を投げ捨て、急いで店を出た。その瞬間、場面は再び自宅へと移り変わった俺は、風邪を引いていた。
「イックション!!」
「はっはっはっは~!」
と、クシャミをすればヒットマン。
「ジュルルルー!」
「はっはっはっは~!」
と、鼻をかんだティッシュを開いてみればヒットマン。薬を飲んで寝ようと、薬に手を伸ばし瓶の説明書きを見ると、ヒットマン3錠の文字。中には、黒い錠剤かのように体を丸めたヒットマン。
「はっはっはっは~!」
ふと、隣を見ると消化に良さそうな食べ物をお盆に乗せたヒットマン。
「はっはっはっは~!」
テレビから流れるニュース番組のキャスターはヒットマン。コメンテーターもヒットマン。天気予報士もヒットマン。明日の天気は、どこもかしこもヒットマン。
「はっはっはっは~!」
ドアの隙間からヒットマン。窓の向こうにもヒットマン。天井からもヒットマン。押し入れの中にもヒットマン。ソファーに座るヒットマン。読書するヒットマン。真剣な表情でニュースを観ているヒットマンに、ちょっかい出すヒットマン。踊るヒットマン。歌うヒットマン。黄昏るヒットマン。泣くヒットマンを笑うヒットマン。それを怒るヒットマン。焦るヒットマン。照れるヒットマン。悔しがるヒットマン。一際大声で笑うヒットマン。爽やかなヒットマン。セピアなヒットマン。白いヒットマン。ロボットヒットマン。やる気のないヒットマン。とにかく、至る所にヒットマン。
「はっはっはっは~!」
なるほどな。
「はっはっはっは~!」
そうか。
「はっはっはっは~!」
俺は、ヒットマンだらけの夢を見ているんじゃない。
「はっはっはっは~!」
そう、夢の中までもヒッ
「バン!!」
「はっはっはっは~!」

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