« 「第二百二十四話」 | トップページ | 「第二百二十六話」 »

2010年10月 6日 (水)

「第二百二十五話」

「ふわぁ。」
特にやる事もない連休最終日。また明日から学校か・・・・・・って、ランドセルを見つめながらベッドの上で暇過ぎるから僕は一人、欠伸をしていた。そんな午後3時をちょっと過ぎた小雨の日。
「呼んだ?」
「いや呼んでない。ってか、誰??」
すると、そんな僕を見下ろす爬虫類系な顔立ちのくたびれた背広を着たオジサンが現れた。
「申し遅れました。わたくしは、こう言う者です。」
僕は、オジサンが差し出して来た名刺をベッドに横になったまま受け取り、眺めた。

第二百二十五話
「欠伸の人」

「欠伸の人?」
名刺には、ただそれだけの文字が書かれていた。
「はい。」
「いやちょっとこれだけじゃ、中々汲み取れないんですけど?」
「簡単に言えば妖精です。」
「はあ?」
「欠伸の妖精です。」
「いや、欠伸の人って、名刺には書いてあるし。」
「ミスです。」
「なら、直さなきゃでしょ!てか、抜本的に、名刺いる?妖精に名刺必要?」
「名刺は必要です!では仮に、この世に名刺が無いと考えましょう。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「人類滅亡です!」
「無茶苦茶だよ!てか、そこへ至るまでの過程を話してくれなきゃでしょ!何か考えてる間の無駄な動きの部分を話してくれなきゃでしょ!で、一回何かよく分からないけど、誰かに追われてるシーンあったのは何っ?だいたいが、名刺を普段使わない小学生の僕に問われても?って、そもそもそんなに重要視すんなら、やっぱり直さなきゃでしょ!」
「さて、わたくしが欠伸の妖精だと理解していただいたとこでですね。」
「簡単に流したね。」
「何か?」
「いや、何でもないですよ。とにかく早く帰って下さい。」
「帰る訳にはいかないんですよ。」
「何で急にシリアスモード?なら仮に、僕が欠伸した事で、欠伸の人を」
「妖精です。」
「欠伸の妖精を呼び出してしまって、何か願い事を叶えてくれるんだったら、帰って下さいが、僕の願い事です。」
「御子息。」
「そんな風な呼び方が存在すんのは知ってたけど、呼ばれたのも呼ぶ人も初めて出会ったよ。」
「妖精ですけどね。」
「ちょっといい?」
「どうぞ。」
「妖精、妖精って、言ってるけどさ。本当に妖精なのかもしれないけどさ。だったらもう少し妖精っぽくしたら?」
「と言いますと?」
「羽根があるとか。」
「花の妖精かよ!」
「先っぽが尖った帽子をかぶってるとか。」
「森の妖精かよ!」
「いや、ちょっとその漫才のツッコミみたいな感じやめて?真面目に話してんだからさ。」
「いやでも、御子息?妖精なんてこんなもんですよ?実際は、あっちが稀なパターンなんですよ。だから、図鑑とかに取り上げられるんですよね。」
「じゃあ、がっかりだ。」
「よく言われるーっ!」
「いや、笑うとこじゃないし!妖精だって事は分かりましたから、もう帰って下さいよ。」
「帰る訳にはいかないんですよ。」
「温度差!だったらずっとシリアスモードでいけば?他がおちゃらけ過ぎで、シリアスモードも逆におちゃらけてるとしか思えないもんね!つか、帰る訳にはいかないなら、さっさと目的を達して下さいよ。」
「じゃっ、殺すね。」
「急っ!?何その急展開っぷり!?じゃっ、殺すねじゃないよ!仮に殺すなら、理由を教えてよ!」
「欠伸したからですよ。」
「じゃあ、明日には人類滅亡だよ!」
「名刺と同じだね!」
「名刺知らない!そっちはよく分からない!それはなぜか?なぜなら人類滅亡に至るまでの詳細な話を聞いてないから!」
「わたくしだって、欠伸の詳細な話を聞いてないですよ!!」
「すっごく憤慨してるけど、分かるじゃん。欠伸したからって殺されてたら、人間なんて直ぐに滅亡だよ。人間どころか地球上の生物全般滅亡だよ。」
「名刺だって、ちょっと考えれば分かるじゃん!」
「分かるかーっ!!!」
「こっわーっ!!」
「鬱陶しいから出て下さいよ!」
「鬱陶しい?このわたくしが?」
「この、の自信たっぷりな言い方の意味が分からないけど、この状況下で鬱陶しいって思わない人を逆に見てみたいよ!って、お前以外だーっ!!ピーンっと手を上げるな!!」
「御子息はあれだね!」
「何っ!」
「ストレスのド塊だね!」
「ほぼ、お前のお陰ですけどね!」
「いやぁ。」
「誉めてないから!照れないでくんない!」
「いや、御子息。これは怒られて照れると言う斬新な発想です!」
「じゃあ、頭がおかしいんだよ。きっと。」
「ほら、あまり日常では、照れると言う事態に巡り合わないではありませんか。だからこそ、もっともっと日常的に照れてみようって、あえて違う場面で照れを取り入れると言う試みですよ。」
「何で照れに付いての話を広げたんです?」
「じゃあ、殺すね。」
「いや、それは絶対に照れながら言っちゃダメなフレーズだから!」
「しかし、御子息。全国照れ促進委員会の会長としては、ここは譲れません!」
「いや何か、どっちにしろよく分からないんだけど、どちらかと言えば今の方を名刺に書いとけば?」
「ヤダ!!」
「じゃあ、いいよ。そんなに無い髪を振り乱して嫌がるぐらいなら、ミスプリのままでいいよ。つか、そこでしょ!そここそ照れなきゃでしょ!」
「わたくしの肩書きを否定されて!照れていられるかーっ!!」
「じゃあ、会長やめちまえだし、名刺で既に肩書き否定されてっからね!」
「さてと、もうこんな時間だ。」
「腕時計も付けてなきゃ、眼鏡も掛けてないじゃん!って、えっ?もう9時!?いつの間に夜!?」
「良い子は寝る時間だね。悪い子はそうだなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「いい!いい!無理に何かを閃こうとしないで、いいです!」
「ありがとう!御子息は、命の恩人です!」
「死ぬぐらいなら言わなきゃいいじゃん。」
「さてさて、わたくしはこの辺で帰らさせてもらいましょうかね。」
「いや、帰ってくれるのは、ありがたいんですけど、何っ?いったいぜんたい、何だった訳?」
「欠伸の妖精ですよ。わたくしは、心底暇過ぎる人が欠伸をした時だけに現れ、暇潰しの相手をする欠伸の妖精ですよ。では、また何処かでお会いする事を楽しみにしていますよ。」
「えっ!?・・・・・・・・・消えた。」
こうして、僕の特にやる事もない連休最終日は、過ぎていった。そんな満月が雲間から顔を覗かせる月曜日の夜。

|

« 「第二百二十四話」 | トップページ | 「第二百二十六話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/37108482

この記事へのトラックバック一覧です: 「第二百二十五話」:

« 「第二百二十四話」 | トップページ | 「第二百二十六話」 »